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グレイグ  作者: 夢之中
16/52

石板


3人は淡く光る壁を見ていた。

キーラ:「どうやら、始まったようね。」


壁は急激に光を帯び、そして消え失せた。

その時、パインは声を聞いた。

グレイグ:(見つけた。

     新たなる玉だ。)

消え失せた壁の先には短い通路があった。

短い通路を進むと、その先に半球状の部屋があった。

部屋の中心には台座があり、何かが安置されていた。

3人は台座に近づいた。

台座の上には、2枚の石板と白い玉があった。


キーラ:「これが石板よ。」

パインとゾルは石板を見た。

石板には文字らしき模様が彫り込まれていた。

しかし、それを読むことは出来なかった。

ゾル:「何と書かれているんですか?」

キーラ:「2枚の内、1枚は全く解らないわ。

    解読にはまだ時間が必要ね。

    1枚は、古代文字に似ているの。

    正確には解らないけど、

    分かっている部分だけでも読み上げるわね。」


=====

グレイグ。

人、神、生む。

神、(しもべ)、力、与える。

僕、肉体、限界、超える。

終焉、始まる。

白、黒、分ける。

僕、従う。

神、戦い、始まる。

世界、戦い、始まる。

白、黒、消える。

世界、終わる。

神、分ける、天、送る。

=====


パインは呟いた。

パイン:「グレイグ。」

キーラ:「たぶん、人が造りし神の名前ね。

    これを記録としてみるならば、

    人は神を造り、

    (しもべ)は肉体の限界を超えた力を得た。

    しかし、神は白黒2つに分かれ争いを始めた。

    僕は神に従い世界を巻き込む戦いに変わった。

    2つの神は消え失せ、同時に文明も終わった。

    神は複数に分けられ天へと送られた。

    というところかしらね。」

キーラはパインを見て言った。

キーラ:「ところで、パインのグレイグは白かしら?」

パインには、何故かグレイグが白であることが判った。

パイン:「たぶん。」

キーラ:「そう。

    もし、これが予言ならば、戦いはさけられないわね。」

パイン:「どうして。

    何故、何のために戦うんですか?」

キーラ:「戦う理由は私には解らないわ。

    人間ならば、戦いを始める理由の多くは、

    何かを手に入れる為か何かを守る為かしらね。

    特に守る側は、巻き込まれる形で戦いに突入するわ。」

パイン:「そんな。」


キーラ:「さて、今までの出来事で何か気になる事は無い?」

ゾル:「急に言われてもすぐには。」

キーラ:「まあ、そうよね。

    パイン。

    今までで神の啓示を受けた者を何人知ってる?」

パイン:「私。ノリス。監視塔での襲撃者。

    そして、野営地での襲撃者3人。

    あと、包帯を巻いた者。

    監視塔と野営地の襲撃者が同じかもしれないので、

    全部で、5~7人です。」

キーラ:「そうね。

    多すぎると思わない?」

パイン:「確かにそうですね。

    力を得るには、白い玉に触れなければならない。

    そんなに多くの者が、白い玉に触れたとは思えません。

    それに、白い玉を回収していないことも気になります。」

キーラ:「野営地の襲撃者は言っていたわ。

    仲間を探していると。

    そして、行方不明になっている人々。

    どうやって仲間と判断するのでしょうね。」

パインには、思い当たる節があった。

それは、他人に触れた時、『同じ』という感覚があったのだ。

それが、(しもべ)にできると言う意味であるならば、

正に仲間とも言えるのではないだろうか。

パイン:「もしかして、接触して判断しているのでは?」

キーラ:「なんでそう思ったの?」

パイン:「なんとなく同じと感じるんです。」

キーラ:「なるほどね。

    どうやら、パインには分かるようね。

    ところで同じと感じた人は居た?」

パイン:「はい。」

キーラ:「それは、誰?」

パイン:「えっ。

    いや、それは。」

キーラ:「言いたくない気持ちは分かるわ。

    巻き込みたくないのよね。

    でも、パインのことが敵に知られれば、

    嫌でも巻き込まれることになるのよ。

    力を与えられるならば、与えてしまわないと、

    自分の身を守る事すらできないのよ。

    そして悲惨な運命をたどる事になるわよ。」

パイン:「しかし、そうならないかもしれない。」

キーラ:「それって、そうなるかもしれないという事の

    裏返しよね。

    安全とはね。

    常に最悪の事態を想定して検討するものなのよ。

    その時になって後悔しないためにね。」

パインはしばらく黙っていたが、

意を決したかのように言った。

パイン:「わかりました。」

キーラ:「それで、誰なの?」

パイン:「同じと感じたのは2人います。

    1人目はアリスです。」

キーラ:「そうなの。

    辛いわね。

    それで、2人目は?」

パインは、ゾルをちらっと見ると言った。

パイン:「ゾルです。」

ゾルは驚いた。

ゾル:「えっ。

   本当なのか?」

パイン:「あぁ。」

ゾル:「よっしゃーーー!!!」

パイン:「えっ。」

パインはゾルの反応に驚いた。

ゾルは、まくしたてるように言った。

ゾル:「まっ、まさか選ばれるとは思ってもいませんでした。

   大魔導士キーラ、そして神に選ばれし者パイン。

   お二人に同行していながら、何もできない自分が

   歯がゆくてたまりませんでした。

   これで自分も役に立てると思うと感無量です。」

キーラ:「そんなふうに思っていたの。

    何故私が同行させたか、考えなかったのね。

    それは貴方に可能性を感じたからなのよ。

    もっと自信を持ちなさい。」

ゾルは、キーラの言葉に満面の笑みを浮かべて答えた。

ゾル:「はい。」

キーラ:「さて、最後に私自身も確認しないとね。」

そう言うとパインに右手を差し出した。

パインは、キーラの手を取った。

そして言った。

パイン:「同じではありません。」

キーラは残念そうな顔をした。

キーラ:「そう。

    仲間にできる人、つまり(しもべ)にできる人は、

    誰でもよいという訳ではないようね。

    ということは、私は知恵と魔法でサポートするしか

    なさそうね。

    ここからが最も重要なこと。

    これは、私の想像だけど。

    僕に力を与える能力をパインも持てる。

    僕にできる人を選び出し、

    そして力を与えることができるのよ。

    ノリスはそれをやらなかったのか、

    それとも出来なかったのかは分からないから、

    パインが今できるとは言わないわ。

    もし、その力を得る事ができるのならば、、

    我々にも勝機があるということになるわ。」

パイン:「しかし、どうやって。」

キーラ:「あなたは、白い玉を探していたのよね。」

パイン:「はい。」

キーラ:「きっと、そこに答えがあるのよ。」

パイン:「白い玉を探せば、答えが得られると?」

キーラ:「私はそう思うわ。」

パイン:「ひとつ気になる事が。」

キーラ:「なにかしら?」

パイン:「何故彼等は白い玉を回収しないのでしょう?」

キーラ:「そのことね。

    もし、全ての玉を1か所に集めた場合、

    何が起こると思う。」

パイン:「力を与えられる者がもっと増えると思います。

    それに敵に力を与えられなくなります。」

キーラ:「自分と同等の力を持つ者が自分に従うと言い切れる?」

パイン:「うーん。

    言い切れません。」

キーラ:「それに1か所に集めた場合、

    1度の失敗で同等の力を得る者が現れることもあるわ。

    玉を分散しておけば、力を得るには時間がかかるし、

    場合によっては力を集めている者を知る事も

    不可能ではないのよ。」

パイン:「では、何故隠さないのですか?」

キーラ:「あなたはどうやって玉を見つけているの?」

パイン:「近づくと分かるんです。」

キーラ:「でしょう。

    たとえ隠したとしても、隠す労力に見合う効果を

    得る事はできないのよ。」

パイン:「なるほど。」

キーラ:「まあいいわ。

    先ずはこの玉に触れてみましょう。」

パインは恐る恐る手を伸ばすと玉に触れた。


グレイグ:(ドクターの力を手に入れた。

     これは、他者を治療する力だ。)


キーラ:「どう?

    何か変わった?」

パイン:「えぇ。

    ドクターという力を手に入れたらしいです。」

キーラ:「ドクター?

    どんな力なのかしら?」

パイン:「なんでも、他者を治療する力だそうです。」

キーラ:「へぇーっ。

    なるほどね。

    だとすると、黒の神は他者を治療できないという事ね。」

パイン:「えっ。

    どうしてそうなるんですか?」

キーラ:「私の知る限り、同じ力を宿した玉は存在していない。

    つまり、黒の神がここへ来ない限り手に入れられない。

    私に知られずに、

    この場所へ侵入することは不可能なのよ。

    それに襲撃者は言っていたわ。

    『石板か。

     まだ存在しているとはな。』ってね。

    つまり、石板の在処を知らないってことね。」

2人の話を聞いていたゾルは、改めてキーラの洞察力に驚いた。

自分なら聞き流していただろう。

言葉の一つ一つがキーラの情報源なのだ。

ゾルはキーラが味方であることの安心感と同時に

恐ろしさも感じていた。


キーラ:「さて、長居は無用ね。

    一度公国へ戻りましょう。

    パイン。

    久しぶりにアリスに会えるわよ。」

パインはその言葉に驚きと戸惑いの表情を見せた。

パイン:「えっ、どうして?」

キーラ:「図星のようね。

    公国で能力を知っている者を聞いた時に、

    真っ先にアリスの名を出したでしょ。

    この場合、もっとも近しい者から名前をあげるのよ。

    そして名前から異性と判断し、

    そして今鎌をかけたのよ。」

パイン:「鎌をかけたんですか。」

キーラ:「悪かったわ。

    でも勉強の為よ。

    情報は一度に得るものではないわ。

    常に会話の中で、得られる情報を吟味しておくのよ。

    意味の無い情報というのは存在しないのよ。

    例えば単なる雑談にしても、

    何故その話題を出したのか?

    その話題に興味があるのだろうか?

    そう考えるのよ。

    人は興味の無い事や気にならない事を話題にしないわ。

    そして、別の会話の中でさりげなく聞き出す。

    よく覚えておきなさい。

    情報は、こんなやり取りの中からでも得られるのよ。」

パインは思った。

パイン:(自分には無理だな。)

キーラ:「いま、自分には無理だと思ったでしょ。

    無理じゃなわよ。

    常に意識していれば、いつか普通になるわよ。」

パイン:「そんなものなんですかね。」

キーラ:「そんなものよ。

    さて、公国へ戻りましょう。」


公国へと戻った3人は驚いた。

転受の魔法陣の部屋から続く通路は、

多くの兵士で溢れかえっていた。


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