表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレイグ  作者: 夢之中
15/52

遺跡


パインは、テントの発光が終わったのを確認した後、

松明を手にするとテントの中へと入って行った。

中へ入ると、右奥に置かれたベットの前に、

魔法の糸でグルグル巻きになった何かがクネクネと動きながら、

横たわっていた。

丁度その時、反対側の床が開き、ラキ(キーラ)が現れた。

ラキ:「案の定、効果があったようね。」

ゾル:「どういう意味ですか?」

ラキは、ラングに聞こえないように小声で言った。

ラキ:「貴方達。

   遺跡で拘束の呪文で捕まってたでしょ。

   あれを見て、襲撃者にも効果があると思っていたのよ。

   只、発動呪文が長いので、気が付かれる恐れがあったの。

   そこで、拘束の呪文を魔法陣にして、発動トリガーを

   短いキーワードにしておいたのよ。

   魔法陣にはその他の効果も追加しておいたけど、

   まあ、それは大したことではないわ。」

ラキは、グルグル巻きになった襲撃者に近寄った。

ラキ:「さて、芋虫さんに色々と聞きたいことがあるわ。

   まず、頭だけ自由にしないとね。」

そう言うと、頭部のある場所に手を当てて、呪文を唱えた。

直ぐに効果が現れ、頭部の魔法の糸は消え失せた。


襲撃者は動きを止め、大きく見開いた目でぎょろぎょろと

辺りを見回した。

そして声の主と思われる女性を見つけ睨み付けた。

その場にいた者達は、その目を見て狂人の目だと思った。


ラキ:「尋問を始めます。」

ラングは黙ってうなずいた。

ラキ:「さて、教えて頂戴。

    メルキスで占領している人達との関係は?」

襲撃者:「・・・」

襲撃者は何も語らない。

ラキ:「話したくないようね。

   まあ、当然よね。

   答えるはず無いわよね。」

ラキは、そう言いながら襲撃者の頭に手を当て呪文を唱えた。

ゾルとパインは、その呪文が魅了の呪文だとわかった。

呪文を唱え終わると、襲撃者の目が変わった。

それはまるで寝起きの様な虚ろな目をしていた。

ラングは、少し離れたところで黙って聞いていた。


ラキ:「さて、もう一度聞くわね。

    メルキスで占領している人達との関係は??」

襲撃者:「な・か・ま。」

ラキ:「仲間ね。

    じゃあ、目的は何?」

襲撃者:「な・か・ま・み・つ・け・る。

    た・ま・み・つ・け・る。」

ラキ:「ここには、何人できたの?」

襲撃者:「さ・ん・に・ん。」

ラキ:「なるほど。

    あなたは、誰の指示で動いているの?」

襲撃者:「し・じ・な・い。

    じ・ぶ・ん・の・い・し。」

ラキ:「なら、何故ここを襲おうと思ったの?」

襲撃者:「・・・」

その時、突然襲撃者の顔つきが変わった。

襲撃者:「こいつは、喋りすぎだ。」

ラキ:「やっとお出ましね。

   さて、あなたは誰?」

襲撃者:「それに答えるつもりはない。」

ラキ:「そう。

   貴方には魅了は効かないようね。」


魅了が効かない。

これはキーラにとって大きな問題だった。

魅了が効くならばキーラは、一人でも対処可能だと思っていた。

しかし、魅了が効かないとなれば話は別だ。

確かに魔法の糸で拘束は可能だが、この方法は奇策であり、

警戒すれば対処可能なのだ。

つまり直接戦闘で対処しなければならない。

キーラは身体的能力が高いわけでは無い。

不意打ちを食らえばひとたまりもないのだ。

その為に準備していたのが魅了の魔法を封じ込めた服装なのだ。

そして、魅了を解除するときに、敵か味方かを判別していた。


ラキ:「でも、これならどうかしら?」

ラキは、襲撃者の耳元に口を近づけると何か言った。

襲撃者は大きく目を見開き驚いた。

襲撃者:「何故、それを知っている。

    お前は何者だ?」

ラキ:「私はラキ。

   覚えておいてね。」

襲撃者:「そうか、なるほどな。

    石板か。

    まだ存在しているとはな。

    ならば仕方がない。

    一つだけ教えよう。

    私は黒だ。」

ラキ:「そう、黒なのね。」

ラキは、ラングの方を向くとラングに行った。

ラキ:「ラング司令官。」

ラング:「なんだ?」

ラキ:「尋問は終わりました。」

ラング:「それで、知りたい事は得られたのか?」

ラキ:「えぇ、最低限の事はね。

   襲撃者は、3人とも確保できています。

   直ぐに3人共、王国へ転移します。」

ラング:「私も知りたいことがあるんだが、

    尋問してもよいかな?」

ラキ:「彼等は、もう何も話さないでしょう。

   それに、この件は極秘事項です。

   これ以上知らない方が身のためですよ。」

ラング:「そっ、そうか、わかった。」

その後、転移の魔法を使って3人の襲撃者を王国へ転移した。


パイン:「それで、我々はどうするんですか?

    それに石板というのと黒というのは何なんですか?」

キーラ:「そうね。

    もう、知ってもいい頃かも知れないわね。

    仮眠した後に、もう一度遺跡に行きましょう。」

キーラ、パイン、ゾルの3人は、駐屯軍の出発を確認したあと、

転移の魔法で遺跡へと向かった。



3人は、遺跡の中を歩いていた。

キーラ:「この遺跡は、ある物を守っているのよ。」

パイン:「ある物?」

キーラ:「石板よ。」

パイン:「石板?」

ゾル:「その石板には、何が書かれているんですか?」

キーラ:「予言あるいは記録かしらね。」

ゾル:「古すぎて、今となっては予言か記録か分からないという

   意味ですか?」

キーラ:「そう。

    私の予想では、今の文明よりも、

    遥かに前の文明かしらね。」

パイン:「それって、文明が滅んだってことですか?」

キーラ:「そうよ。

    長い時をかけて、文明が生まれ、発展し、滅びる。

    そして、また生まれ、発展し、滅びる。

    人間の一生と同じで、この繰り返しなのよ。」

パイン:「今の文明もいずれ滅びるということですか?」

キーラ:「その通りよ。

    永久に続く文明など存在しないわ。

    それが、百年なのか、千年なのか、1万年なのか、

    あるいはもっと先なのか、

    それは判らないけど、いつかは滅びるでしょうね。」

パイン:「どうして滅びるのでしょう?」

キーラ:「それは難し質問ね。

    ただ、過去の記録を見た限りでは、

    そのほとんどが戦争か大きな過ちね。」

パイン:「大きな過ち?」

キーラ:「そうね。

    例えば、私達魔導士は魔導を追求している。

    精霊や悪魔を召喚することもあるわよね。」

パイン:「そうですね。」

キーラ:「もし、大魔王を召喚できる方法を見つけたとしたら、

    試してみたい?」

パイン:「えっ?

    いや、その時になって見ないと分からないですが、

    召喚してみたい気持ちもあります。」

キーラ:「普通そう思うわよね。

    でも、ちょっと待って。

    私達が知っている召喚魔法陣は、低級な精霊や悪魔を

    召喚して従わせることができるけど、

    大魔王が素直に従うかしら?」

パイン:「まさか、従わないんですか?」

キーラ:「いえ、実際に召喚した者が存在しないので、

    それは判らないわ。

    やったことが無いから当然ね。

    愚かなことに、過去の経験や知識から大丈夫と

    決断する者がいるの。

    安全よりも好奇心や利を優先するのよ。

    そしてパンドラの箱を開いてしまう。

    それが文明を終わらせるとも知らずにね。」

パイン:「そんな。」

キーラ:「脅かすつもりは無かったけれど、

    これだけは、覚えておいてね。

    魔導の追究は、表裏一体だということをね。」

パイン:「わかりました。」

ゾル:「あの、よろしいでしょうか?

キーラ:「何かしら?」

ゾル:「前の文明とは、どんな文明なんでしょう?」

キーラ:「そうね。

    はっきりと言えることは、

    今の文明とは大きく違う文明だということね。」

ゾル:「大きく違うとは?」

キーラ:「魔法が存在しないこと。

    だけど、今より高度な文明。」

ゾル:「そんな文明が存在するのですか?」

キーラ:「証拠は無いわ。

    ただ、そう考えないと辻褄が合わないのよね。

    まあ、とりあえず、石板まで行きましょう。」

少し歩いたところで、キーラは、何かを思い出したかのように

立ち止まるとローブの中から2つの腕輪を取り出し、

2人に与えた。

キーラ:「これを着けておいて。」

パイン:「これは、なんですか?」

キーラ:「遺跡の魔法陣を発動させないためのものよ。

    これを着けていれば魔法陣は発動しないし、

    その効果も受けないわ。」

パイン:「なるほど。

    これを身に着けていたから、

    あの時飛ばされなかったんですね。」

キーラ:「そう。

    この腕輪はこの遺跡に在った物よ。」

ゾル:「ひとつ教えてください。」

キーラ:「なにかしら?」

ゾル:「さっき、前の文明は魔法が存在しないと言いましたよね。

   なのに、この遺跡は魔法が存在する。

   矛盾していませんか?」

キーラ:「あぁ、その事ね。

    何も矛盾はないわよ。

    石板を作った文明は魔法が存在しない文明。

    この遺跡を作ったのはその後の文明ってことよ。

    遺跡を作った文明は、石板が重要なものであると

    判断したのね。

    そしてこの遺跡を作って保管した。

    そういう訳よ。」

ゾルは、歩いている場所に違和感を感じた。

記憶に間違いが無ければ、さっき通った場所だった。

ゾル:「ところで、ここはさっき通った場所のように

   思えるんですが。」

パイン:「えっ、そうなのか?」

キーラ:「よく気が付いたわね。

    いい観察力よ。

    別に迷子になっているわけではないわよ。

    この遺跡は複雑なのよ。

    進む道が一筆書きの様に決まっていて、

    その通りに進まないと、

    石板の部屋まで、たどり着けないのよ。」

パイン:「そんな仕掛けが。」


そして、しばらく歩いたのち、通路の突き当りにたどり着いた。

キーラ:「到着したわ。

    この場でしばらく待つわよ。」

ゾルは、歩いた経路を頭の中に描いた。

そして、この場所が遺跡の中心ではないかと思えた。

ゾルは、それが正しいかをキーラに(たず)ねた。

ゾル:「ここは、遺跡の中心ですか?」

キーラ:「へぇーっ。

    あなた記憶力、空間認識能力が高いのね。

    その通りよ。

    ここは、遺跡の中心。

    そして石板の安置されている場所への入口よ。」

ゾル:「しかし、どうやって一筆書きの経路を知ったのですか?」

キーラ:「この遺跡の様々な場所には一筆書きの部分地図が

    存在するのよ。

    それに気が付き、根気よく繰り返せば、

    いずれ全てが揃うのよ。」

キーラはさらっと言ったが、それには膨大な時間が必要だった。

ゾル:「一体どれだけの時間がかかったのですか?」

キーラ:「そうねぇ。

    よく覚えていないわね。

    ただ、年単位ということは確かね。」

ゾル:「そんなに。」

キーラ:「ここの魔法陣は、悪質だからね。

    制限魔法*1も同時に発動するのよ。」

パイン:「制限魔法って、1つの魔法のみですよね。

    それほど問題にはならないのでは?」

キーラ:「転移魔法を制限した上で転移魔法を発動するのよ。

    それに、一筆書き経路を外れると

    一定時間で発動するようになっているから、

    必然的に繰り返し挑戦する必要があるのよ。」

ゾル:「なるほど。

   殺傷するのではなく、諦めさせるという防御方法ですか。」

キーラ:「そうね。

    どうちらかというと、石板に辿り着く資格があるかを

    見極める試練ね。」

パイン:「試練ですか。」

パインがそう言った時、突き当りの壁が光り始めた。



*1:制限魔法

 特定の魔法を期限付きで使用制限する。

 レジストした量に応じて、数時間から数ヶ月に渡り

 特定の魔法の効果が制限される。

 スクロールや他者に掛けられた魔法も発動しない。

 邪神魔法あり、呪いに分類される。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ