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グレイグ  作者: 夢之中
13/52

王都アルタナ


王都アルタナは、バーランド王国の首都である。

人口は50万人にも達し、王国最大の都市である。

もっとも盛んな産業は農耕と牧畜であり、首都の城壁の外側に

広大な農地と放牧地を有する。

王国の兵士は、実に全体の8割が民兵であり、

正規兵は2割程度しか存在しない。

民兵は通常は他の職業に就き、必要に応じて招集される。

正規兵はおよそ2万、その3割が警備兵である。



パイン、キーラ、ドリム、ゾルの4人は、転移の魔法陣を使い、

バーランド王国の首都アルタナに転移した。

ドリムは、出迎えた王国の者と共に一人国王の元へと向かった。

謁見の時間までは、まだ時間があった。

残された3人は、出迎えの王国高官の案内で王宮内を散策した。

王宮高官は、ミンサと名乗った。

彼の着る紫色のローブは、ゾルとパインの目には眩しかった。


ミンサ:「大魔導士キーラ様。

    少しお話させていただいてもよろしいでしょうか?」

キーラ:「はい。」

ミンサ:「キーラ様は、不老不死の霊薬を完成させたのですか?」

キーラ:「不老不死の霊薬?

    なんですか、それは?」

ミンサ:「キーラ様は、200年以上も生きておられます。

    そしてその年数を感じさせない肌の色艶。

    不老不死ではないのでしょうか?」

キーラ:「貴方は精霊魔導士でしょ?」

ミンサ:「はい。」

キーラ:「ならば、私の書いた魔導書を読み解きなさい。

    そこに全て書き記してあります。」

ミンサ:「最終章は、あまりにも高度すぎて、

    手に負えませんでした。」

キーラ:「高度すぎるか。

    ならば、資格が無いと思って、諦めることですね。」

ミンサ:「・・・」

キーラ:「あの魔導書は、全ての魔導士の為に

    書いたものでは無いの。

    運によって埋もれてしまうかもしれない、

    才ある者の為に作ったものなのよ。」

ミンサ:「ならば、私を弟子にして頂けないでしょうか?」

キーラはミンサの求めに即答した。

キーラ:「残念ながら、弟子は取っていないわ。」

パイン:「!!!」

見習い魔導士の自分を弟子に迎えると発言していたキーラが、

マスターと呼ばれる魔導士の弟子入りを断った。

キーラのなかで資質というものが、

それほどまでに重要視されるということに、

パインは驚きを隠せなかった。

ミンサ:「それは、残念です。」


4人は気まずい雰囲気の漂う中、無言のまま庭園を歩いていた。

作られた自然ではあったものの、

緑の多い空間は居心地がよかった。

そんな気分をグレイグは打ち破った。


グレイグ:(気をつけろ!!

     右上だ。)


パインはとっさに右上を見た。

何本か生えている木の上に人影を確認した。

突然、全ての景色がゆっくりと動き始める。

グレイグの力が発動したのだ。

パインはハッキリと分かった。

奴は襲撃者だ。

その時、襲撃者の手から何かが放たれた。

パイン:(速い!!)

投げ放たれた物は、公国で行われた反射速度の試験よりも

遥かに速い速度で近づいてくる。

パインがそれを短剣だと識別できたときには、

それは間近まで迫っていた。

標的はキーラだ。

パイン:(間に合うのか?)

パインはそれを掴もうと手を伸ばした。

しかし、無情にも伸ばした指先の先を短剣は通過して行き、

キーラの胸へと吸い込まれていった。

ゆっくりと進んでいた時間が普通に戻った。

同時にキーラが崩れ落ちた。

その光景を目にしたパインは、頭が真っ白になった。

   :

   :

   :

パインは、ふかふかのベッドの上で目を覚ました。

豪華な部屋だった。

公国の部屋も豪華であったが、それ以上だと感じた。

パインは、ハッとした。

パイン:「キーラ。」

パインは確かに見た。

キーラに胸に短剣が吸い込まれるのを。

パインはベッドから降りると扉へ向かおうとした。

そのとき突然扉が開き、ゾルが入ってきた。


パイン:「ゾル。」

ゾル:「パイン、大丈夫か?」

パイン:「えぇ、大丈夫です。

    ところでキーラはどうなったんですか?」

ゾル:「その事だが、一緒に来てくれないか。」

2人は廊下にでると長い通路を進んで行った。

メイド達が慌ただしく移動している。

中には真っ黒いドレスにベールをかけている者もいる。

葬儀用の服装だ。

パインの頭の中には、嫌な想像が渦巻いていた。

ゾルはパインを引き連れると、玉座の間へと移動した。

玉座の間には、誰もいなかった。

ゾルは玉座を越え、その先にある真っ赤なたれ布の前まで

行くと、それをめくりあげた。

パインは、玉座の後ろのたれ布の先には、

国王の私室があるということを聞いた事があった。


パイン:「国王の私室?」

ゾル:「よく知っていたな。

   まあ、大抵の者が知っているのはその程度だがな。」

パインとゾルはたれ布をくぐると、先にある通路へとでた。

そこは王宮には似つかわしくない質素な通路だった。

入って正面に両開きの扉、右には上へと向かう階段、

左には扉があった。

パインがキョロキョロとしているのを見てゾルが言った。

ゾル:「気になるようだな。

   正面の扉は、国王が密会する為の部屋だ。

   上の階は、国王の私室がある。

   左の扉は、脱出用通路へと繋がっている。」

パイン:「公国の人間なのに、ずいぶん詳しいんですね。」

ゾル:「一蓮托生なんだよ。

   王国も公国もどちらが滅びた時は、

   自分も滅びると思っている。

   だからお互い助け合っているし、

   秘密も存在していないんだ。

   分かったかな?」

パイン:「はい。」

ゾル:「ならば、入るとしよう。」

ゾルはそう言うと密談室の扉を開けて中へと入った。


5m四方の小さな部屋だった。

床には大きな魔法陣が描かれている。

パインは、その魔法陣は密談用の魔法陣ではないかと考えた。

部屋の中央には、ラウンドテーブル*1が置かれ、

国王と大公が座っていた。

パインはラウンドテーブルを見て、この部屋の意味を理解した。

国王:「うむ。

   そなたが啓示を受けし者パインか?」

パインは、(ひざまず)いた。

パインは王国で生まれ、王国で育った。

両親は王国に忠誠を誓っており、

パインも同様に忠誠を誓っていた。

忠誠を誓った者以外には跪かないという習慣がある為、

大公には跪かなかったのだ。


国王:「儀礼は無用じゃ。

   立ちなさい。」

パインは立ち上がると答えた。

パイン:「私がパインです。」

国王:「そうか、そうか。

   そなたを呼んだのは他でもない。

   今回の騒動に対して手を貸してほしいのだ。」

パイン:「はい、喜んで。」

国王:「そうか、そうか。」

パイン:「国王様にお尋ねしたいことがあります。」

国王:「なんじゃ?」

パイン:「大魔導士キーラの事です。

    まさか彼女は亡くなったのですか?」

そう言った途端、目の前の何もない空間に人が出現した。

インビジブルの魔法だろう。

パインは、その人物を見て驚きを隠せなかった。

同時に目頭が熱くなるのを感じていた。

その人物は、大魔導士キーラだった。

キーラ:「パイン、私を勝手に殺さないでほしいわね。」

パイン:「キーラ!!

    よかった、生きていたんですね。」

キーラ:「えぇ、なんとかね。

    この件は、警戒を怠っていた、私の落ち度だわ。」

パイン:「でもどうして、短剣はあなたの胸に吸い込まれた。」

そう言ってパインはキーラの胸を見た。

キラーは、笑顔を見せるとローブから何かを取り出した。

キーラ:「これの事?」

そう言って、短剣をパインに見せた。

短剣の刀身は、元々存在しなかったかのように無かった。

パイン:「えっ!?」

キーラ:「命は助かったけど、その代償として、

    私の大切な指輪の一つを失ってしまったわ*2。」

パイン:「魔法具ですか?」

キーラ:「そう、完全物理防御魔法を封じ込めた指輪よ。」

パイン:「完全物理防御魔法?」

パインは、(いぶか)し気な顔をした。

パインは、物理防御の魔法は知っていた。

しかし、完全と呼ばれる魔法は知らなかったし、

一般的に攻撃は威力に依存する為、それを全て防ぐことは

不可能と考えられていた。

キーラ:「信じられないという顔をしているわね。

    完全物理防御魔法は、強化系魔法ではないわ。

    部分転移魔法*3の応用よ。」

パイン:「!!」

パインが驚くのも無理はなかった。

部分転移魔法を防御に使うなど考えもしなかった。

キーラ:「攻撃を受けて守るのではなく、

    攻撃武器そのものを消し去る魔法。

    それが、完全物理防御魔法*4よ。」

パインは思った。

見習い魔導士の自分でも対策を見つける事ができる。

しかし、普段から所持する武器に転移魔法を無効にする

魔法を付与した場合、通常移動時や緊急時に支障を来す。

たった一つの対策の為にそこまでする者が存在するだろうか?

パインの結論は、『存在しない。』だった。

パイン:「そんな魔法聞いた事がありません。

    オリジナルなのですか?」

キーラ:「えぇ、そうよ。

    魔法は発想力でいくらでも進化するのよ。

    魔法の可能性は無限なの。」

パイン:「でも、公開してしまってもよかったのですか?

    万が一、対策をする刺客が現れたら、、、。」

キーラ:「問題ないわ。

    ほかにも対策しているしね。」

そう言って、キーラはニコッと笑った。

パインは、その笑顔にドッキとした。

ドリムがイライラしながら話を遮った。

ドリム:「キーラ。

    すまないが、話を先に進めてもらえないか?」

キーラ:「あっ、そうね。

    今回、国王、大公と話した結果、

    私の葬儀を行う事になりました。」

パイン:「えっ、どういうことですか?」

キーラ:「私は死んだことにするという意味よ。

    王国へ来ている事をどうやって知ったのかは

    分からないけれど、何者かが私の命を狙っている事は

    間違いないでしょう。」

国王:「まさか、内通者がいるのというのか?」

キーラ:「その可能性は否定できないでしょうね。」

国王:「分かった、調べさせよう。」

キーラ:「お願いします。

    そこで、私は死んだことにして、

    自由に行動できるようにする。

    私、パイン、ゾルが隠密行動をとり、

    情報を集めようってわけ。」

パイン:「なるほど。」

国王:「キーラよ。

   メルキスの駐屯軍だが、援護部隊は到着している。」

キーラ:「それで、準備は整ったのですか?」

国王:「メルキスの北東20Kmの地点で、

   野営の準備に入っている。

   日が暮れるまでには準備は完了するだろう。」

キーラ:「よかったわ。

    何も起こらなければいいのだけど、無理な話よね。

    今夜あたりが、もっとも危ないわ。

    早速、見物にでもいきましょう。

    パインとゾルは連れて行くわね。」

国王:「うむ、わかった。

   計画通りの名前を使ってくれ。

   総司令と同等の権限を与えておいた。

   ほかに必要な物や人はないか?」

キーラ:「そうね。」

キーラは国王に近づくと耳打ちした。

国王:「わかった。

   善処しよう。」

キーラ:「さて、あまり悠長な事はしていられないわね。

    さっさと見物に行きましょう。」


そしてパイン、キーラ、ゾルの3人は、王国を後にした。




*1:ラウンドテーブル

 いわゆる円卓のこと。

 上座下座が存在しない為、卓を囲む者すべてが

 対等であるとの考えからである。


*2:指輪を失ってしまったわ

 魔法具には使用回数が存在する。

 回数は魔法具に蓄積できる魔力量に異存する。

 大抵の魔法具は、再度魔力を充填することにより、

 回数を戻す事が可能だが、魔法具によっては魔法の発動に

 耐えきれずに壊れてしまう物もある。

 特に高位の魔法を封じ込めた魔法具は

 1回のみというものが多い。


*3:部分転移魔法

 部分転移魔法は転移魔法の基礎魔法である。

 部分転移魔法は、魔法の効果範囲内という制限がある。

 しかし、これでは不要な物も転移してしまったり、

 身体の一部を転移できなかったりと、多くの問題が発生する。

 このため、今の転移魔法は、条件を付加することにより

 対処している。


*4:完全物理防御魔法

 完全物理防御魔法は、文字通り物理攻撃を完全に

 無効化する魔法である。

 威力に関係なく一秒のみ物理攻撃を無効化できる。

 発動者に傷を与えようとする物質を

 消滅することによって防御する。

 詠唱時間が極めて長いため、

 通常は魔法具に封じ込めて使用する。

 しかし、要求される媒体がダイヤモンドの為、

 希少であると同時に超高値で取引される。



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