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グレイグ  作者: 夢之中
10/52

ジェムの称号


次の日、パインは軍議室にいた。

ドリムのほかには、マッカス、シルカー、ゾルだった。

ドリム:「さて、今日集まってもらったのは、

    大魔導士キーラについてだ。」

パインは驚いて声を上げてしまった。

パイン:「キーラだって?」

全員の視線がパインに集まる。

パイン:「申し訳ありません。

    つい大声を上げてしまいました。」

ドリム:「よい、よい。

    パイン君は、大魔導士キーラを知っているな。」

パイン:「もちろんです。

    魔導書を最初に作った伝説の魔導士の一人ですね。」


今から200年ほど前。

魔導士は、魔導を一人で研究する者がほとんどだった。

中には、弟子をとり一緒に研究を行っている者もいたが、

それはごく少数であったため、魔導士への道を閉ざしていた。

そんな中で3人の魔導士が立ち上がった。

精霊魔導士の深紅のキーラ、

神聖魔導士の純白のセイラ、

邪神魔導士の漆黒のゾーラの3人だ。

3人は魔導士への道を開くため魔導書の製作に注力した。

そして現在の魔導書の基礎となるものを作り上げた。

3人を超える魔導士が過去には存在したかもしれない。

しかし、その記録は存在しない。

3人が作り上げた魔導書は高度であり、

その全てを理解できた者は、現在でも現れていない。

その為、3人を大魔導士と呼ぶようになった。

そして、国として大魔導士と正式に認定している者は、

伝説の3人以外には存在していない。


ドリム:「そう。

    伝説では3人の大魔導士はどうなったか知っているか?」

パイン:「セイラとゾーラは、魔導書を書き上げた後に

    亡くなっています。

    確かキーラは、山に籠ったはずです。」

ドリム:「その通りだ。

    ところで、裏伝説というのを知っているか?」

パイン:「裏伝説ですか。

    いえ、聞いた事はありません。」

ドリム:「そうだろうな。

    この伝説は限られた者にしか伝えられていない。」

パイン:「それで、どんな話なんでしょうか?」

ドリムはニヤニヤとしながら言った。

ドリム:「おっ、乗ってきな。

    裏伝説はこんな話だ。」

そう言って、ドリムは話始めた。


魔導書を作り上げた後、3人は協力し合い、ある研究を始めた。

研究は順調に進んだ。

そしてついに完成まで漕ぎ着けることが出来た。

しかし、材料の一つがあまりにも希少すぎ、

3人分の薬しか作る事が出来なかった。

量に制限がある以上実験等を行う事は出来ない。

そこで3人は、3等分した薬を己の身体で試すことにした。

これにより、3人の内2人が死亡し、1人が生き残った。

生き残ったのは、キーラだった。

そしてキーラは北の山に籠った。

王国、公国が建国したとき、キーラは山を下りた。

そして初代国王と初代大公と密約を交わした。

それはキーラの住んでいる北の地をキーラの領地とすること。

通常時は、お互いに干渉しない。

非常時は、お互いに助け合う。

お互いにそれを守る事を誓い、

何時の日にか起こるであろうことを想定し、

このメダルを持ちあった。


ドリムはメダルをテーブルの上に置いた。

ドリム:「まあ、こんな話だ。」

パイン:「まさかキーラはまだ生きているというのですか?」

ドリム:「大魔導士が3人も集まって、

    何を研究していたと思う?」

パインは考えた。

そして、ある言葉にたどり着いた。

パイン:「まさか、不老不死の研究ですか?」

ドリムは、ニヤッと笑うと答えた。

ドリム:「やはり、そこにたどり着くな。

    まぁ、裏伝説を知ったなら、

    大抵の者は、そう考えるだろう。

    一番しっくりとくるしな。

    私もそう考えた。」

パイン:「いや、でも。」

ドリム:「実は、私も半信半疑だ。

    しかし、先代の大公はこのメダルを渡すときに

    密約が無効になった時に、

    このメダルは壊れると言っている。

    つまり、まだ密約は有効だと言う事だ。」

パイン:「キーラが生きていればメダルは壊れないと。」

ドリム:「その通りだ。」

パイン:「非常時というのは?」

ドリム:「もし、君と同じ力を持つ者が、

    敵に100人いたとしよう。

    王国、公国は、国を守り切れると思うか?」


パインは驚いた。

そんなことは考えもしなかった。

しかし、そんなことはあるはずはない、とは言えなかった。

この短い間に3人もの存在を知ったのだ。

自分、監視塔での襲撃者、そしてノリス。

存在する可能性は高いし、さらに増える可能性もあるのだ。


パイン:「難しいでしょうね。」

ドリム:「隠密行動等、直接戦闘で無いとしたら、

    たとえ10人だったとしても、

    守り切る事はできないだろう。

    つまり今は非常時なのだよ。」

パイン:「分かりました。

    それで、私はどうすればよいですか?」

ドリム:「ゾルと共に大魔導士キーラの元に行ってほしい。

    そして、このメダルを見せるのだ。

    キーラは必ず協力してくれるだろう。」

パイン:「ちょっと待ってください。

    北の山といっても広すぎます。

    何処をさがしたらいいのですか?」

ドリム:「それならば、案ずることは無い。

    このメダルが導いでくれるだろう。

    あと、これを持って行け。」

ドリムは、小瓶を取り出すと2人の前に差し出した。

ドリム:「回復のポーションだ。

    数は少ないが何かの助けになるだろう。」



その日の夕方、パイン、ゾルの2人は、公国の最北の村である、

トモフ村に到着していた。

酒場で食事をしているときに、その噂を耳にした。


 「おぃ、聞いたか?」

 「この村に、ヘマタイトが来てたらしいぜ。」

 「ヘマタイト?

 それ、うまいのか?」

 「冒険者だよ、ボ ウ ケ ン シ ャ。」

 「冒険者かよ。

 そいつは有名人なのか?」

 「いや、俺も初めて聞いた。」

 「なんだそりゃ。」

 「この村の冒険者協会の友人が驚いてたんだよ。

 ヘマタイトが来たってな。」

 「ふーん。それで?」

 「友人が言うには、冒険者チームってのは

 ランク分けされてるんだが、

 その最高峰には、宝石の名前がつくらしい。」

 「ヘマタイトってのは、宝石の名前なのか?」

 「どうもそうらしいんだ。」

 「へー、それで?」

 「なんでも、北の山に住む魔物を倒しに来たらしいんだ。」

 「北の山に魔物なんているのか?」

 「ヘマタイトの話では、いるらしい。」

 「しかしなあ、生まれてこの方、北の山の魔物なんて

 聞いた事すらないけどな。」

 「あぁ、家の親父や爺さんにも聞いてみたけど、

 そんな話は聞いたことが無いって言ってたよ。」

 「まあ、冒険者のやることは俺らにゃわかんねえよ。

 とりあえず飲もうぜ。」

 

パイン:「今の話、聞きましたか?」

ゾル:「あぁ、ヘマタイトと言えば、

   悪い噂の絶えない冒険者チームだな。」

パイン:「えっ、どんな噂なんですか?」

ゾル:「噂というか訴えだな。

   多いのは窃取だ。」

パイン:「窃取ですか。」

ゾル:「あぁ、運搬依頼された品物の中から高価なものを選んで

   窃取したと言われている。」

パイン:「言われている、だけですか?」

ゾル:「証拠がないんだよ。」

パイン:「どういうことです?」

ゾル:「運搬依頼の場合、品物は目録と一緒に運搬される。

   受取時に双方立ち合いの元、目録で確認される。

   受渡時も同様だ。

   訴えでは、目録が改ざんされたらしい。

   それを証明することができなかったんだ。

   今までに同じ訴えは3件発生している。」

パイン:「そんなに。」

ゾル:「次に多いのが依頼人への提訴だ。」

パイン:「提訴ですか。」

ゾル:「彼等に依頼すると訴えられると

   一時期話題になったものだ。

   次に多いのは盗掘だ。

   王国、公国の領地内で発見された遺跡や財宝は、

   発見者と土地の所有者の間で相談分配されるのが

   決まりになっている。

   しかし、彼等はそれを盗んでいるという噂があるんだ。

   どこから情報を入手しているのか分からないが、

   発見から申請までの間に盗掘していると思われる。

   これについては多くの目撃情報も得られている。」

パイン:「それが事実なら、酷い奴らですね。」

ゾル:「あぁ、だが証拠が無いので手が出せないんだ。」

パイン:「ところで、彼等は北の山の魔物を退治しに行くと

    言っていたみたいですが、

    まさかキーラってことはないですよね?」

ゾル:「どうだろうな。

   そもそも彼等が本当の事を言っている

   とも限らないしな。」

パイン:「ところで、メダルがキーラの所に導いてくれるって、

    本当なんですか?」

ゾル:「さあな。

   あれは、あくまでも言い伝えだ。」

パイン:「だとしたら、何処に向かえば?」

ゾル:「あぁ、それならば、心配するな。

   行くべき場所は一つしかない。」

パイン:「どこです?」

ゾル:「遺跡だ。」

パイン:「遺跡?」

ゾル:「北の山の山奥には遺跡がある。

   その場所ははっきりとしている。

   3人の大魔導士は、その辺りをねぐらにしていたんだ。

   これはあくまでも言い伝えだけどな。」

パイン:「また、言い伝えですか。」


2人はこの後も話に花を咲かせた。

一泊すると次の日の早朝、北の山に向けて出発した。


登山は特に問題もなかった。

そして、昼には一番手前の山の山頂にたどり着いた。

そこから見えるのは、鋭く尖った山々だった。


パイン:「これはすごい。

    絶景ですね。」

ゾル:「何を呑気な事を。

   これから向かうのは、あそこだぞ。」

ゾルは、一ヵ所を指さした。

パインが指さす方向を見ると、黒ゴマのような小さな影が

山頂辺りの空を飛びまわっていた。

パイン:「あれは何だ?」

パインは、その影に意識を集中した。

パイン:「鳥?

    いや、人か?

    上半身が女性の鳥に見える。」

ゾルも同じ方向を見た。

しかし、見えるのは只の点だった。

ゾル:「あれが、見えるのか、、、。

   上半身が女性に見えるなら、ハルピュイア*1だろう。」

パイン:「ハルピュイアですか。」

ゾル:「足元がしっかりとしている場所ならば、

   それほど脅威ではないよ。

   空を飛ぶから戦いにくい事はたしかだが、

   落ち着いて対処すれば問題はないだろう。」

パイン:「なるほど。」

ゾル:「しかし、気になる事はある。

   あの辺りは、これから向かう方向だという事だ。」

パイン:「ハルピュイアと戦闘になるかもしれませんね。」

ゾル:「場合によっては、そうなるだろうな。

   慎重に進むとしよう。」

パイン:「分かりました。」


2人は北方向へと山を下って行った。

山の中腹まで下った辺りで、景色は一変した。

峡谷*2だった。

少し進むと崖になっており、先へと続く道が無いように思えた。

パイン:「この先、どうやって進むんですか?」

ゾル:「あれだよ。」

ゾルはある一方方向を指差した。

それを見たパインは驚いた。

桟道(さんどう)だった。

切り立った崖に板が延々と張り付いていた。

板の幅は20cm程度しかない。

そして身体を支える為の鎖が一直線に延びていた。

パインはゾッとした。

パイン:「まっ、まさかあんなところを進むんですか?」

ゾル:「あぁ、その通りだよ。

   あれしか道が無いんだ。

   大丈夫だよ。

   身体を支える為の鎖もある。」

パイン:「板が腐っているとかないんですか?」

ゾル:「問題ない。

   板も鎖も魔法で補強されている。」

パイン:「んー。」

ゾル:「さっさと行くぞ。」

そう言うとゾルは桟道に近づき足を踏み出した。

しかたなくパインも続く。

2人は、鎖をしっかりと掴みながら、

カニ歩きの要領で進んで行った。

ゾル:「下を見るなよ。」

パイン:「見たくても、みれませんよ。」

ゾル:「そうか、それが賢明だよ。」

パイン:「ところで遺跡には行ったことがあるんですか?」

ゾル:「いや、残念ながら、遺跡までは行ったことは無いんだ。

   メダルを持たぬ者は近づいてはいけないと

   言われているからな。」

パイン:「また言い伝えですか。」

ゾル:「あぁ、そうだ。」


最初のうちは、恐怖を感じていたパインだったが、

進むに従い、恐怖は薄れていった。

そして、なんとか1つ目の桟道を渡り切った。

崖をくり抜いて作ったのだろうか?

休憩場所のような空間だ。

パインは、地面には赤黒い染みがあるのに気が付いた。


パイン:「これ、血でしょうかね。」

ゾル:「そうみたいだ。

   結構新しそうだな。」

そう言いながら、ゾルは腹ばいになり、慎重に崖下を覗き込む。

そして崖の途中に生えた木の上に両羽を広げて倒れている

ハルピュイアを発見した。

ハルピュイアは全く動かない。

ゾル:「崖下にハルピュイアの死体がある。

   どうやら、誰かがハルピュイアに襲われたみたいだな。」

その時、パインはゾルの身体の上に影が移動するのを見た。

素早く上を見上げた。

ハルピュイアだ。

ハルピュイアは、羽を大きく広げ、鉤爪を伸ばして、

今にもゾルに掴みかかろうとしていた。

パインは居合抜きの要領で、剣を抜くと上段に向けて振った。

手ごたえはあった。

ハルピュイアは、バランスを崩して落下する。

パインはほっとした。

パイン:(もう大丈夫だ。)

そう考えた時、ゾルの身体が崖下に向けて、

引きずられて行くのが見えた。

パイン:(まずい!!

    間に合うか?)

パインは知っていた。

グレイグが助けるのは、己の身に危険が迫った時と

グレイグが有益だと判断した時だけだと。

パインはとっさにゾルのローブを掴んだ。

ゾルとハルピュイアの体重がパインの片腕にかかる。

重さに関しては全く苦ではなかった。

問題は足場だ。

滑らかな足場は身体を支える所がなかった。

パインはずるずると引きずられて行く。

咄嗟に腹ばいになった。

しかし、身体の滑りは止まらなかった。

ゾルはハルピュイアと共に足場の外側にいた。

唯一の支えは、ローブを掴んだパインの右手だけだった。

その時、ハルピュイアが羽をばたつかせた。

同時にゾルのローブがビリビリと音を立てた。

パイン:「手に掴まれ!!!」

そう言って、パインは左手を差し出す。

ゾルは、身をよじってパインの手を掴もうとする。

 「ビリビリビリッ。」

パインの右腕が重さから解放された。

ローブが破れ、大きな塊が崖下へ落下して行った。

パインは焦った。

しかし、同時に左腕に強く引っ張られる感覚があった。

ゾルは、パインのローブの袖口を掴んでいた。

パインは直ぐに右手を伸ばしゾルの手首を掴んだ。

パイン:(同じだ。)

それはアリスの時に感じた感覚と同じだった。



*1:ハルピュイア

 顔から胸までが人間の女性で、翼と下半身が鳥。

 ハーピーとも呼ばれる。


*2:峡谷

 谷の断面が、V字形をなす両岸が険しい崖になっていて

 谷底平野を持たない。

 渓谷と比較してさらに深い谷の事。


*3:桟道

 切り立った山腹や崖等に沿って、

 木材で棚のように張り出して設けた道。

 桟道で画像検索すればイメージがつかめるだろう。


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