手とあなた / スライドショー / 疼き
〔手とあなた〕
口ほどにお喋りではないけれど
「おはよう」も
「よっ」も
「いってらっしゃい」も
「おやすみ」も
「辛かったんだね」も
「よく頑張ったね」も
口よりも
あなたという魂の確かさを伝えてくれる
あなたの手
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〔スライドショー〕
昨日を思い苦しむあなたを見て
絵筆が欲しくなりました
今日を悩み歩くあなたを見て
絵の具が欲しくなりました
明日を嘆き足掻くあなたを見て
パレットが欲しくなりました
絵心もない私ですが
あなたの先に見るのです
筆洗いの中の
混沌とした茶色を巻き戻し
リボンのように柔らかく織りなされる美を
人と向き合うことも拙い私ですが
あなたの中に感じるのです
限りなく溜まる澱を沪し続け
己を澄ませようとするひたむきさを
昨日と今日の
今日と明日の
あなたの境界に私は立ち
色も形もまだ定まりきらないその像を
描き慈しみたいのです
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〔疼き〕
何故だ
何故なんだ
と
夕立が
私の代わりに世界を殴る
増えることのなくなった友の痕跡
粘土で作ったゲーム画面
押し入れいっぱいのゾイド
1日1時間のファミコン
浮かぶ毎に
今が霧散させていく
集団嫌いでコメディアン
日常への冷めた目
大きな何かへの飢え
そうして息苦しい雲がまた
どうしようもなく溜まっていく
何故だ
何故お前なんだ
と
今年も夕立が
私の代わりに世界を殴る
路面のカエルのような友を思い