ちょっとしたプロローグ
わたしの名前は栗沢ほしの。
今年で高校一年生。
勉強もスポーツも決して得意なわけではない。
趣味や特技もこれといって特になし。
わたしは昔から、なにかに熱中するということがなかった。
興味を惹かれるものがなかなか見つからないうえ、親のいいつけで習い事を始めてみても、続いたためしがないのだ。
好きなものだって、そう簡単には思いつかない。
なにが好きなのかは関係ない。ただ、自分はこれが好きだ、と胸を張って明言できるものがない――そんな自分の人生が、なんとも味気ないものだと感じてしまう。
だからといって、なにかに挑戦してみようという気にもなれないでいた。
それはきっと、最初の一歩を踏み出すことを恐れているからだろう。
今までの自分が変わるということが怖いのだ。
たった一度きりの人生、平穏無事に過ごすことがなによりも大事だ。
わたしのような平々凡々の道を歩む人間だって少なくない。いや、むしろ、そのような人間のほうが圧倒的に多いはずだ。
毎日穏やかに過ごすことができれば、それで充分。
両親や学校の言いつけ、社会のルールをきちんと守りつつ、友達と楽しい学校生活を送る。それさえできれば、十五歳の女子高生としてはまずまず合格といったところだろう。
だから――
自分にとって誇れるものがなくても、なにもおかしくなんかない。
好きなものや得意なことがなくたって、なにも問題はない。
だって、それでも生きていけるのだから。