75話
ユカ達が人魚に弄ばれた翌日。
「リベンジだよ!装備も新調したし」
ニナが張り切って言い、首輪の様な装置をユカとミコに渡す。
尚、モモは今日学校の用事で不在である。
「何、これ?」
「首輪型の水中呼吸装置。首に付けると、顔の周囲を空気がシャボン玉みたいに展開されるから、前のと比べると水中でくすぐられても装置の事を気にしなくて済むんだよ」
「くすぐられること、前提?」
「大丈夫、まだあるから」
そう言ってニナはミコにアサルトライフルを渡す。
「これは?」
「ネアさんに頼んで用意してもらった、水中戦用の特殊銃。その名の通り水中でも使えるから、ミコちゃんはこれ使って」
準備が整った所で3人は海底洞窟へリベンジに行く。
「そう言えば、今年から海底洞窟はパーティー組んでない他プレイヤーが入れない仕様になったらしいね」
「まぁ、マップ狭いし妥当じゃない?」
そんな事を話しながら移動し、問題なく港町まで辿り着き、海へ飛び込む。
「こんな感じかぁ。確かに、咥え続けなくていいから楽だねぇ」
ミコは頭を包むシャボン玉のような空気を泡を見渡して呟く。
そのまま魔物に遭遇する事も無く海底洞窟まで辿り着く。
「流石に入り口に敵は居ないよね」
「いたらムズ過ぎるでしょ」
「内部も、前回とは変わってるっぽい?」
入り口から続く道は、2つに分かれていた。右の道はすぐに水面があり、左の道は随分と陸路が長く続いているようである。
「左、かな。わざわざ危険な水中を選んで通っていく必要も無いし」
二人はユカの提案に従い、3人は左の道を進む。
進み始めて数分経つと、水中への入り口が見えて来る。そして、入り口の手前に半透明の水色の四角い体を持つ1メートル程の大きさの魔物が8体立ち塞がっていた。
「何、こいつ……。生き物なの……?」
「『ゼリー・キューブ』だね。スライムの親戚みたいなやつだよ。動きは遅いけど、魔法耐性が高いから。物理で体の中心にある核を破壊するのが一番なんだけど、当然捕まったら激しいくすぐりが待ってるよ」
ニナの解説にげんなりした表情をするミコ。
「あ、この銃で核だけ貫けない?」
「それは水中戦用に調整された物だから、ちょっと厳しいかなぁ。何より、ミコちゃんエイム上手いの?」
「……弾を無駄にして終わりそう」
魔物の核は直径1センチ程度。それを遠くから狙って当てるのは至難の技である。
「まぁ、私が手裏剣で片付ければ終わりでしょう。ここ陸だし」
そう言ってユカが日緋色金の巨大な手裏剣を構え、投げる。
ユカの意思で空中を自由自在に動き回るそれは、燃費は悪いがそれに見合う火力を叩き出せる。そして、ゼリー・キューブの核を次々と破壊し、8体を瞬く間に倒す。
「流石にそろそろこれの名前を考えないとなぁ」
ユカが戻って来た手裏剣を眺めて呟く。
尚、水中でこの手裏剣を放った場合、スピードが著しく落ちる為、まともに当たらなくなり、燃費の割に合わなくなるのでユカは水中では使わない。
「さ、これで片付いたし、さっさと進もう!」
ミコが早足でゼリー・キューブ達が居た場所を通り過ぎようとした瞬間。突如隠れていたもう一体のゼリー・キューブがミコの足元から現れる。
「へっ!?」
当然、ミコは回避できず、捕まる。
「言い忘れてたけど、こいつら体の色や形を変えて周囲に潜んでいる可能性があるから。倒しても油断しちゃだめだよ」
「そう言うのは先に言ってぇっ!」
ミコの首から下は殆どゼリー・キューブの中に包み込まれてしまっていた。唯一、両手の手首から先は外に出ているが、それでどうにかできる手段をミコは持ち合わせていない。
そしてゼリー・キューブはスライムとは違う、ゼリー状の体を使い、ミコの全身をくすぐり始める。
「やっ、んっ!ふふっ!……あはっ!はぁっ……!~~~っ!だめっ!たえれなぁっははははは!あっは!あはっ!はぁっ!あぁ~~~っはははははははは!」
感覚で言えばスライムにくすぐられた時と似ているが、ゼリー・キューブの体は粘液ではなくゼリーなので、スライムよりも硬い。
「あぁっ!っはははははは!はぁっ!はっ!あはっ!んふぅっふふふふふ!ふぁっははははははは!あっはっはっははははは!」
つるつるした肌触りのゼリー体に包まれたミコは、まるでゼリーに逆に食べられているような光景になっている。
尚、ユカとニナの2人は眺めているだけで助けようとしない。
「あっはははは!あはっ!たすけっ!やぁぁっはははははははは!あはっ!あっはははははは!」
ゼリー・キューブの体は、ミコの周囲だけ細かく砕き、服の隙間から中に侵入して素肌を直接刺激する。
「っ!はっ!あはっ!はぁっ!やっ!ぁっははははははは!あっははは!はぁっはははははは!だめぇっへっへっへへへへ!」
ゼリー・キューブの外に出ている首や手の平が上下左右に振られ、どこか間抜けな絵面になっている。
「やぁっははははははは!もっ、やめっ!っ!んひゃぃっ!はっ!ひゃぁっははははははははは!」
腋もお腹も腰も足も、くすぐったく感じられる部位を全てくすぐられているミコの体力はどんどん減って行く。
「んやぁっははははははははは!あっははははは!はぁっ!んふふふふふふ!ふひゃぁっははははっはははは!も、むりぃっひひひひひひ!」
「流石にそろそろ助けましょうか」
「2割切ったし、流石にね」
ミコの体力が2割を切った所でようやく2人が動き、ニナの鎌の一振りがゼリー・キューブの核を的確に砕き、ミコはようやく解放される。
「もっと、早く、助けてよぉ……」
「ひどい目にあった方が学習するでしょ」
「ミコちゃんのくすぐられている姿も可愛かったよ?」
それから5分程、主にミコの為に休憩し、3人は先へ進む。
「水中は、一本道ね」
水中に飛び込むと、広い一本道が大分先まで続いていた。
「暫くは水中かなぁ。エンカウントしなければいいけど……」
フラグめいた発言をニナがして、少し進むと当然の様に敵が現れる。
「これは、まずいかなぁ」
3人の前に現れた5人の魔物は、女性の上半身にタコの下半身を持つ『スキュラ』
「普通のスキュラか。普通とは言え、水中だとヤバいわねぇ」
8本の触手をもつスキュラは陸上でも強敵だが、水中ではスピードが増して更に強くなる。
「5体、か……逃げれる場所じゃ無いし……やるしかないか」
ユカは覚悟を決めて刀を構える。
「この距離なら、私だって当てられるよっ!」
ミコはアサルトライフルを構え、一番近くにいるスキュラに向かって発砲する。
「あ、マジで当たった」
偶然か実力か、セミオートで撃たれた数発の弾丸は、水中とは思えない速度でスキュラに命中し、1体を倒す。
そして(死んではいないが)仇討ちとばかりに残りの4体がミコを狙い始める。
「何で私ばっかりー!?」
「ヘイト買ってるわねぇ」
「まぁ、私達が後ろから刺せばいいんじゃない」
近距離で高速移動するスキュラ相手に正確に命中させられる程、ミコのエイム能力は高くない。何度か発砲するが健闘むなしく触手に捕まる。
「うぇぇ……またかぁ……」
服の裾や袖から入って来る触手の感触を感じながら、どこか諦めた顔をするミコ。触手は先端でミコの両脇をくすぐり始める。
「んふっ……!ふふっ!やっ……!あはっ!あ、やっ、靴脱がしちゃ……はひっ!」
別の触手がミコのブーツを脱がし、靴下も脱がそうとする。更にミコの体をスキュラの真正面まで移動させ、脇腹を両手でつかむ。
「んにゃぁっ!やめっ!あっははははははは!はげしぃって!あはっ!はぁっ!はぁっははははははは!」
靴下を脱がし終わった触手が両足に絡み付き、吸盤を足裏に押し付けてブラシの様に擦り付けつつ、足の指に触手の先端が絡み付き、付け根を優しく撫で回す。
「やぁぁっ!あっははははははは!やっ!めぇっへへへへへ!はぁっ!はぁっはははははは!」
人の手と触手による2パターンの刺激に翻弄されるミコ。
「あっはははは!はひっ!くっふふふふ!んふっ!くひっ!ひゃめっ……!ひゃぁっはははははははは!」
みるみる体力を減らしていくミコ。
「くひゅぅっふふふふふふ!ふぁっははははははは!あはっ!はぁっ!はぁっ!はぁっははははははは!」
ユカとニナは他の3体のスキュラと奮戦している。
「やぁっはははははははは!あはっ!はぁっ!はひっ!ひぁっははははは!ははっ!はぁっ!ひゃぁっはははははははは!」
触手に四肢を絡み付かれたミコは抵抗も出来ず、ただくすぐられ続ける。
「あっはははははははは!あはっ!はぁっ!はっ!んふふふふふっ!ふぁっははははは!あっ!あはっ!」
反射的に体を動かそうとするが、触手の力は強く振り解く事は出来ない。
「あぁ~~~っはははははははは!あはははははははっ!っ!はぁっ!はっ!はぁ~~っはははははははは!あぁっは!もっ、むりぃっひひひひひひ!」
体力が残り1割を切った所で、ようやく他のスキュラを倒したユカとニナがミコに夢中なスキュラを背後から襲い救助する。
そして力尽きて水死体の様なポーズで浮いて行くミコを近場の陸地まで引っ張っていき、そこで休憩する。