72話
短いです。
8月中旬ぐらいまでは仕事の方が忙しいので短めが続くと思います。
「ぷはぁっ!」
水面から顔を出すと、広い洞窟の一部屋の様な空間が広がる。
「ここが海底洞窟?……入り口が海底にあるってだけで、普通の洞窟なんだ」
ミコは周囲を見渡して呟く。
「いや、所々に陸地の様な空間があるだけで、洞窟の半分以上は水没しているわ」
ミコの考えをユカが否定する。
夏季限定ダンジョン「海底洞窟」。ユカ達はここを訪れている。
「水中戦、慣れる気がしないなぁ……」
「何も出来ない私よりマシでしょう」
「まぁやってれば慣れるでしょ。いってみよー!」
ニナが先導して少し進むと、すぐに行き止まりに着く。足元には水面が広がっている。
「早速潜らなきゃねぇ」
装置を咥えて水中へ飛び込むと、広大な水路が複雑に広がる。
(進路が5つあるわね……どこに行こうか)
少し悩んだ末、ユカは正面真ん中の道を選び、他の3人にジェスチャーでそれを伝える。
真ん中の道を少し進むと、道が狭まった箇所があり、そこに1メートルはある巨大なイソギンチャクが3匹、横に並び道を塞いでいる。
(これは、どうしようかな。戻って別の道に行っても良いけど)
そう思い、ユカは後ろを振り返ると、そのイソギンチャクを背負った、また1メートルはある巨大なヤドカリが2匹、ゆっくりと迫って来ていた。イソギンチャクを合わせれば2メートル以上の大きさである。道の広さから、戦闘を回避するのは難しい。
(これは、ヤドカリを優先すべきかしら……?)
そう考えるが、後ろを見るとイソギンチャクの触手がこちらに伸びてきている。気付けば既にエリアも形成されていた。
ユカがどうしようか悩んでいると、ニナが鎌で触手を切り裂き始める。水中なので、勢いはいつもの半分以下だが、柔らかい触手を切るには十分である。
(たまには率先して戦うのね)
ユカはそんな事を思いながら2匹のヤドカリと対峙する。
(イソギンチャクの触手責めも良いけど、折角の海底洞窟だし、やられるなら人魚ちゃんがいいなぁ)
ニナの動機は凄く不純であった。
そしてものの数分で、ユカは忍術でヤドカリ2匹を倒し、そのままイソギンチャクも倒して先に進む。
そして道を少し進むと、水面から出て広い空間に出る。
「潜って出て、これを繰り返して進むのね」
少し先を見ると、また水面が広がっている。つまりまだゴールでも行き止まりでもない。
「次はあっちだけど、またこいつらかぁ」
空間には先程のヤドカリが6匹、待ち構えていた。
「まぁ、さっき水中でゆかちーが倒せてたし、大丈夫でしょ」
「あなたも戦いなさい」
そう言いつつ、ユカは縮地で一気に距離を詰め、右端の一体に忍術を叩き込む。
【忍術:火遁・業火】
ユカの手から放たれた炎はヤドカリと背にあるイソギンチャクを呑み込む。
「え?」
だが、炎の中からイソギンチャクの触手が猛スピードで伸びて来て、ユカの両手に巻き付く。
「耐えられた!?」
水中での戦いは中級レベルの土遁数発で倒せていた為、地上なら高火力の火遁一発で倒せるだろうと判断していたユカ。
だが、イソギンチャクもヤドカリも、そもそも火属性に対する耐性を持っていた。
「あれは火に耐性持ってるかなぁ。なら、私も術は使えないし……。鎌で何とかしますか」
「援護は任せてー」
ミコはそう言って物理攻撃力上昇の効果をもたらす植物を生やす。
「くっ、流石に序盤でやられるのはっ!」
【忍法:縄抜けの術】
ユカは縄抜けを使い、拘束から無理矢理逃れる。
だが、周囲に居た他のヤドカリ&イソギンチャクが、待ってましたとばかりに四方から襲ってくる。
「ちょ、それは卑怯っ!」
縮地は直線距離を高速移動するスキルである為、進路をふさがれれば脱出できる術は無い。
大量に伸びて来る触手を捌ききれず、ユカはすぐに再び捕まる。縄抜けは一度使うと再使用に時間が掛かる為、連続で使う事は出来ない。
「やっ、離しっ……!」
気を付けの姿勢で捕まったユカは体を捩ったりするが、当然それで拘束が解かれる事は無い。
そんなユカをイソギンチャクはゆっくりと自分の元まで運び、中央にある口を開く。
「いや、ちょっ……、そこに私を入れるとか無いよね……?」
口の中には細く短い触手が数え切れない程蠢いている。その中に入れられるとどうなるかは分かるが、どれだけの刺激が送られてくるかは想像出来ない。
だがイソギンチャクは十分に中を見せつけると、口の中へユカを一気に運ぶ。
「やっ!あぁ~~っははははははははは!あははっ!あはっ!やっ!きつっ!」
顔だけ外に出た状態でイソギンチャクの口は閉じられ、ユカの首から下は無数の触手に覆い尽くされている。
「あっ!はぁっ!あはっ!あっはっはっははははははは!あっ!だめっ!あっはははははははは!」
ユカの忍者服は侵入できる箇所が少なく、殆どの触手は服の上からユカをくすぐっている。
「あはははっ!あはっ!あっ!っははは!あぁっはははははは!はっ!はぁっ!」
だが、数が数である。服の上も中も関係ない程の刺激を触手は与えて来る。
「やぁぁぁ~~~っ!あはっ!あっはははははは!やぁっ!やっはははははははは!」
更にイソギンチャクの口内全体に分泌されている粘液が、触手を通じてユカの全身に塗られていく。
「あぁ~~~っ!っははははははは!やっ!あっはははは!あはっ!はぁっ!あっははは!」
粘液は次第に服に染み込み、服自体がヌルヌルになっていく。
「やぁっははははは!やぁっ!あっはははははははは!これっ!むりぃっひひひひひひ!」
いつの間にかブーツも脱がされ、靴下にも粘液が染み込んでいく。
「ひゃぁっははははははははは!やっ!あっ!あはっ!あぁっははははははは!」
全身を襲うくすぐったさはユカのHPをみるみる減らしていく。
「あぁ~っははははははははは!もっ!やめっ!っ!はっ!はぁっ!あっ!あはっ!あっはっはははははははは!」
残り1割を切ったタイミングで、イソギンチャクの下に居るヤドカリが大きく揺れ、その衝撃でユカは吐き出される。
「ぐふっ!」
散々くすぐられたユカに着地する術は無く、地面に叩きつけられる。
首だけ動かしてみると、他のヤドカリを全て倒し終わったニナが鎌でヤドカリをぶった切っていた。
「おつかれ、ユカちゃん」
「もう、ちょっと、まと、もな、救出、出来ない、の?」
「いや、あの触手の量は無理だよ」
ユカが回復するまで待った後、4人は先に進み、水の中へと飛び込む。