71話
短いです2
6月下旬の土曜日。マップの南東に位置する港町「ティギアー」に集まる何時もの4人。
「海だー!」
広がる海を前に叫ぶミコ。
「叫んでないで、ほら、装備付けて」
ユカはミコの顔に装備を押し付ける。
ネアに作って貰った水中呼吸の装備。それは、口に咥える楕円形の装置だった。
「咥えるだけで無制限に潜れるって、なんか不思議」
「一応注意しておくけど、水中でくすぐられて装置を口から離したりしないでね?」
装置の端に喪失防止用のコードが付いている為、口を放しても無くしたりはしない。
「じゃあ行ってみよー」
ニナの掛け声と共に、埠頭の先から海へと飛び込む。
「おもっふぁふぉりふふぁいへー(思ったより深いねー)」
口に装置を咥えている為、当然まともに喋れるはずがない。また、余程距離が近くない限り、仲間の声も聞こえない。
海の深い場所へ向けて泳ぐ4人。その最後尾を泳ぐミコを襲う魔物が現れる。
「なんっ……ふぁっ!?」
肩に何か触れたと思った瞬間、全身に一瞬電気が走り、痺れて動けなくなるミコ。
見れば、ミコの頭を呑み込める程巨大なクラゲが、触手でミコの体を絡め捕っていた。そして周囲に他のクラゲがまだ3体。計4体漂っている。
(クラゲかぁ……また面倒な魔物が出て来たわねぇ)
ユカは急に減りだしたミコのHPから何かに襲われたのだろうと気付き、振り向いてクラゲを認識する。
(「オオマヒクラゲ」かぁ。今は海底洞窟まで一気に行きたいんだけど、こいつは厄介かなぁ)
ニナはユカの行動に気付き、振り向いてその存在を認識する。
(思えば、私って水中だとどう戦えばいいのよ……)
モモも二人の行動からクラゲに気付いたが、水中では笛を吹く事が出来ず、魔人も満足に戦わせることが出来ないので、観戦するしかない。
そもそも水中戦は、上級者でも苦戦し、適正レベル以下の相手に弄ばれる事も少なくない鬼門である。物理は威力と攻撃速度が半減し、雷魔法は味方を巻き込むため使えず、炎は論外。水属性は使えるが、敵も耐性を持っている事が多い。
(触手に触れたら終わりね。土遁と風遁をメインで戦うしか無いか)
ユカは考えを纏めると、こちらに向かってくるクラゲに対して戦闘態勢をとる。
一方、体が動かず、触手に絡み付かれたミコ。
「ふっふゃぁっ!ふふぁっ!ふぁっふぁふぁふぁふぁ!ふぁふぇっ!ふぇぇっ!っへへへへへ!」
大量の触手が服の中へ潜り込み、その素肌を撫でまわす。その度にミコは笑い声でくすぐったさをアピールする。
「ふぁぁ~~~っ!ふぁふぁっ!ふぁっ!ふぁふふふふふっ!」
触手のくすぐったさは相当なものだが、それでも装置だけは離さない様に必死に耐えるミコ。
「ふぁっは!ふぇっぷ!?」
突如ミコの頭にクラゲが覆い被さる。そしてクラゲの傘の中に魔法で空気を生んでいき、ミコの顔の周りに空気が満ちる。
まるで、ちゃんとした笑い声を聞かせろと言ってるかのように。
「ふぁひゃぁっ!ひゃっ!やめっ!っはははははは!あはっ!やぁ~~~っはははははは!」
そして一気にくすぐってくる触手の数を増やし、我慢すら出来ないくすぐったさをミコに与える。
「あはぁっ!ひっ!ひっ!ひぁっ!ひぁっはははははは!あはっ!あっはははははははは!」
ミコの脇の下に、片方に5本づつ、計10本の触手が、先端でなぞったり突っついたりしてくすぐる。
「あっははははは!あぁ~~~っ!っはははは!あはっ!やぁっはははははは!」
麻痺で動けず、触手に万歳の姿勢をとらされているミコに触手の蹂躙を防ぐ術は無い。
「あぁぁっはははははははは!あっははは!はっ!はぁっ!はひっ!ひぁっははははははは!」
体の側面は脇から脇腹に至るまで、何十本もの触手が突っついたり撫でたりしてミコに更なる刺激を与える。
「ふひゃっはははははははは!あはっ!やっ!やすまっ!あぁ~~っははははははははは!」
太ももには二本の大きな触手が巻き付き、上下に優しくゆっくり動いて全体に刺激を与える。
「はぁぁぁ~~~~~っははははははは!あっは!あはっ!はぁっ!っははははははは!」
靴下の中へもぐりこんだ細い触手は、足首に絡み付き、足の裏を這い回る。
「やぁぁっ!やらっ!やぁっはははははは!あはっ!はぁっ!はぁっ!はっ!はぁっ!あはっ!」
そしてミコの顔を覆うクラゲの傘の内部に生えた、細くて短い触手が、ミコの耳や首筋にも這い回る。
「あっはははははははは!はぁっ!あぁっははははははは!もっ、だめっ!やぁっははははははは!」
頭から足まで全身を触手にくすぐられるミコ。その刺激はHPをみるみると減らしていく。
「やぁぁぁ~~~っははははははは!やはっ!あっはははははははは!あはっ!」
そして残り1割を削った所でユカの忍者刀がクラゲの頭だけを貫き、そのまま倒す。
「ぶくぶくぶく……」
装置を付けなおす体力すら残っていないミコを、ユカはすぐに捕まえて口に装置を咥えさせる。
「ぼこぼこ……」
装置を咥える程度の力は残ってるミコは、咥えさせられた装置を咥え続ける。
(仕方ないわね、このまま引っ張っていきましょう)
ユカは水死体の様に浮かび上がっていくミコの体を掴み、海の更に奥へと進んでいく。
そうして潜り続ける事数分。ようやく回復して自分で泳ぎ始めたミコと共に、いよいよ海底洞窟へとたどり着く。