七話
庭園を歩く事暫く、ユカは状態異常系の知識を学ぶために学校を目指す。
「ここが、学校……」
見た目は現実の一般的な学校と大差無いそこは、女子校なのか団長の趣味か、女の子しか見当たらなかった。
ブレザーの制服に身を包んだ生徒達は、JKかJCかは分からないがユカは制服少女にくすぐられるのも良いなと思いながら門をくぐり、中に入っていく。
中に入ってすぐの場所に受付があり、そこで任意の授業を受けられるようだ。
(思ったより色々ある……)
受けられる授業は以下のとおりである。
・基本コース(上・中・下)
・状態異常学習コース
・水中戦闘コース
・美術授業コース
・対触手戦闘コース
・対霊体系コース
それぞれの授業を完了すると一定の経験値が貰えるシステムになっているらしい。最も、普通に敵を倒して稼いだ方が当然効率はいいが。
幾つか気になる授業はあったが、ユカは取り敢えず状態異常学習コースを選択する。
「それでは、2-1の教室に移動してください。教室は二階になります」
選択すると、ユカの体が光に包まれ、制服に着替えさせられていた。どうやら装備を強制的に変えられる仕様らしい。
ユカは指定された教室へと向かう。教室に入ると、既に席の殆どが制服に身を包んだ少女達が座っており、真ん中の席のみが空いていた。
ユカは空いてる席に座ると女性教師が教室に入って来て、教壇の前へと立つ。
「皆さん、席に着きましたね?これより、授業を始めます」
そうして教師が内容の説明を開始する。と思っていたユカは後ろの席の生徒達に両手を捕まれ、困惑している内に制服のリボンで椅子に四肢を縛られていった。
「へ?あの、どういう状況……」
ユカが状況を把握する前に、左右に居た生徒達が立ち上がり、ユカに近づいていく。よく見るとその生徒達は人型の魔物だった。
「では、まず状態異常の種類とそれぞれの効果について説明していきます」
教師はお構い無しに授業を進めていく。
「最初は、『毒』です」
そう言うと右側に立っていた魔物の少女、肌が緑色なのでアルラウネ系だと思われる、がユカに先端が花の触手を向け、花粉を浴びせる。
「なにっ!?」
花粉を一気に大量に吸い込んでしまい、咽るユカ。しかし落ち着く暇もなく変化が現れる。
「けほっ、けほっ……ふふっ……ふふふっ……」
誰にも触られてないのに体がくすぐったくなる。
「ちょっ、くくっ……何これ、どうなって……んふふ……」
「このように毒は、くすぐらなくても相手がくすぐったさを感じる状態異常です。当然、HPは徐々に減っていきます。治療は一定時間の経過か聖術や道具で治す事が出来ます。特に上位の猛毒はすぐに治療しないと大変な事になります」
教師がそう言うと、再びユカに花粉が浴びせられる。先程より量は少なめだが、色が明らかに濃かった。
「んんっ、けほっ、また……?んっ……ふふっ……ちょ、や、やめ、あはっ、あっははははは!」
「猛毒は更にくすぐったさが増すばかりではなく……」
ユカは全身を襲うくすぐったさに身を捩ろうとするが、椅子がガタガタいうだけである。そんなユカの後ろに立っていた生徒が二人、ユカの脇腹を左右それぞれ両手でくすぐり始める。
「やぁっ!ちょっ!今はダメぇぇぇぇぇぇぇへへへへへへへへへ!!」
先程よりも激しく悶えるユカ。
「あっははははははははははははは!くすぐったいいいいいいいい!!」
「このように、直にくすぐられた時の感覚が増幅する効果もあります」
「やぁぁぁぁぁっははははははははははは!!」
教師が話を締め括ると、くすぐっていた手が止まり、正面に立っていた生徒が聖術でユカの毒を治療する。
「はぁっ、はぁっ……」
体力までは流石に戻らないので、ユカは大きく呼吸をして体を落ち着かせていく。教師は構わず授業を進めていく。
「次は『麻痺』です」
すると、生徒達がユカの拘束を解いていく。話を殆ど聞いていなかったユカは予想外の事に困惑し、その場で座り込んだまま周囲を警戒する。が、正面に居た生徒の一人がユカに向かって術を行使する。
【魔術:パラライズ】
瞬間、ユカの体に一瞬電気が走ったような感覚が襲い、そのまま全身が痺れて動けなくなる。そして奥の方に居た生徒達が5人ほど、まってましたと言わんばかりの表情でユカの周りに集まっていく。
「ふぇ……体が……痺れて動けな……まって、嘘だよね……」
5人は一斉にユカの体をくすぐり始める。
「まって、まってまってまってえええへへへへへへへへへへ!!」
ユカは少しでも抵抗しようとするが、指先一つ動かす事が出来ない。
「やぁぁぁぁぁあはははははははははははは!!やぁっ!だめぇっ!くすぐったいいいいいいいい!!」
「このように、麻痺中はどれだけくすぐられても体を動かすことは出来ません。治療方法は毒と同じです」
「いやぁっははははははははは!!」
またも教師が話を締め括ると、くすぐっていた手が止まる。
息を整えながら、次を警戒するユカ。そのユカの前に一人の生徒が立つ。肌は褐色で悪魔のような角と羽と尻尾がある事からサキュバスと思われる。ユカはサキュバスをじっと見つめ警戒していると、体に異変を覚える。それは、人形にされた時と同じ感覚だった。
「次は『魅了』です」
「くすくす、ほら、そのまま万歳して、動いちゃだめだよ?」
サキュバスが命令する。するとユカは言われた通りに動いてしまう。
正座に両手を万歳した態勢のまま、5人の生徒がくすぐりを再開する。
「やぁ……あはっ、あはははははははははっ!」
ユカは一切抵抗できないまま全身をくすぐられる。
「あはははははははっははは!やぁっ、多いよぉっ!あっははははははははは!!」
両脇をカリカリと、脇腹は揉むように、太ももは筆で優しく撫で回され、足の裏はブラシでゴシゴシとくすぐられる。
「やぁぁぁっははははははははははは!!くすぐったいいいいいいいい!!」
「魅了は一部の上位の魔物しか行使しませんが、この通り非常に強力な状態異常です。治療方法は専用の術しかありません」
教師が話を締め括り、周りは次の準備を始める。
息を整えるユカにかけられる次の状態異常は。
「次は『睡眠』です」
教師がそう言うと、魔術師の生徒がユカに魔術をかける。
【魔術:スリープ】
術が発動すると、ユカは酷い眠気に襲われる。
「ふぁ……んんー……」
寝落ちる寸前、教師の言葉が聞こえてくる。
「睡眠は文字通り眠ってしまう状態異常で、治療方法は毒、麻痺と同じ。睡眠中にくすぐられると……」
そこで意識は途切れ、夢の世界に落ちるユカ。
夢の中は真っ白な何も無い空間で、ユカは一人、そこに佇んでいた。
「VRゲームの中でも夢って見るんだ……。まぁ技術を流用して自由に夢を見れる機械があるぐらいだから当然か……」
すると突然、ユカの周りに沢山の筆が出現する。
「本当に白い、何も無い空…か…ん…?」
一方、現実。眠ってるユカの体に生徒達は筆でくすぐりまくっていた。
戻って、夢。現実と同じようにユカは沢山の筆に体を撫で回され、くすぐられていた。
「くひゃんっ、くっふふふ……やぁ……くすぐったい……ふひゃっん……」
その筆はどういう原理か、服を透けてユカの肌を直にくすぐっていた。
一方、現実では生徒達がユカの制服の中に筆を潜り込ませてくすぐっていた。
「ひゃぁぁっ!?耳は……だめぇ……くっふふふふふふ……」
体を捩り、抵抗しようと試みるが、筆は実体がないのか、透けてしまい妨害する事が出来なかった。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!あぁぁぁ……あはっ、あっはははは!ひゃぁぁぁぁ!」
耳に3本、首筋に二本、脇に4本、お腹に5本、脇腹に4本、太ももに片側5本、足の裏に片側4本の筆にくすぐられ、抵抗する事も叶わず、弄ばれるユカ。
「ひゃぁっぁぁぁぁぁあっはっはははははははははは!はにゃぁぁぁぁぁぁっはははははははは!!」
特に耳によるくすぐりによって力が抜けてしまい、満足に動く事も抗う事も出来ない。
「ふひゃぁぁぁぁぁぁぁ!あっははははははははははは!!」
くすぐられる事暫く、筆の動きが止まり、現実世界に戻るユカ。
「睡眠の治療方法も毒等と同じですね。というか魅了以外同じです」
ユカに寝転がりながら息を整えるユカ。周りの生徒は席に戻って行く。
「残りは『沈黙』ですが、これは術系が使えなくなるだけなので実践は省きます」
そうしてチャイムが鳴り、教師が帰り支度を始める。
「ではこれで今回の授業を終わります。皆さん、気を付けて帰ってくださいね」
教師が教室から出ていくと同時に生徒達も教室から出ていく。教室に床に寝転がるユカだけが残っていた。決してダジャレではない。
(これは、ヤバいな……このゲーム最高……このままもう一つ授業受けて、宿屋に行って終わろう……)
ユカは気付いていないが、授業で得られる経験値は少ないが、序盤では地味に多い。この時ユカはレベルが1上がり、新たなスキルを覚えていた。それは、ギルド戦では裏方で活躍するスキルであった。
書きたいネタは多いけど書く時間が無いジレンマ