67話
珍しくユカが居ない回。
5月中旬の土曜日。珍しくユカが用事で学校に行っており、他の3人がお馴染みの喫茶店に集まる。
「ゆかちーが居ない……。つまり、今日は例の話をするのに最適という事」
「いきなり何を言っているの?頭でも打った?」
冷めた目でミコを見据えるモモ。
「私達何も聞いて無いけど……」
ニナも訳が分からないといった顔をしている。
「来週ゆかちーの誕生日あるから、何かしたいなーって」
「待ちなさい。そんな重要な事を何故こんなギリギリに言うの」
「誕生日かぁ。リアルでプレゼントはするとして、パーティーはこっちでやった方が豪華にできそうだね」
そのまま3人のサプライズパーティー計画は進んでいく。
「会場はどうとでもなるし、プレゼントもリアルで渡すから問題ない。飾りつけも高くないから買えばいいし。なら問題は料理ね」
3人とも料理スキルはそこそこ高い。ならば後は食材だけである。
「食材って買うと結構高いんだよねぇ……リアルマネーを使う訳じゃ無いから多少はマシなんだろうけど」
「でも、前衛火力が私だけだから、あんまり敵が強いところには行けないし……」
いい食材は、相応に手に入れられる場所は適正レベルが高かったり、滅多に出現しなかったり、行くのが難しかったりする。
「あれ?3人共どうしたの」
そんな3人の元に桃色の魔法少女風の衣装に身を包んだイリーナが現れる。
「イリーナさん?どうしてここに」
「たまたまだよ」
イリーナにこれまでの話を説明するニナ。
「んーそう言う事なら、私が船出そうか?」
全て聞き終えたイリーナは、そんな事を言いだす。
「いいんですか?」
「いいよ。どうせ暇だし」
そうして話は纏まり、イリーナとニナとミコは海で釣りをする事になる。
尚、殆ど釣りレベルを上げていないモモは飾りつけ等の買い出しをする事になった。
街から移動する事数時間。3人はイリーナの小型船で海へと出る。
「船釣りは初めてだからワクワクするね」
「船釣りは釣りの中では最も良いモノが釣れるからね。まぁ、その分難易度も高いし、強い魔物もつれやすいんだけどね」
船で1時間程移動し、陸から遠い場所に停泊する。そこで3人は釣り糸を垂らす。
「みんなは何狙いでいくの?」
イリーナは大型魚を釣る為の装備で二人に聞く。
「私はカワハギかなぁ。新鮮なやつって食べた事無いんだよね」
そう言うミコの装備はカワハギを釣るのに特化したものだった。
「私はイリーナさんと同じで大型魚」
ニナの装備はイリーナのものに似ていた。
釣りを始めて30分。ニナの竿に強いアタリがくる。
「これは手ごたえ大きいよ!」
格闘することおよそ5分。いよいよ釣り上げた瞬間、エリアが形成される。
「……これは当たりかな?ハズレかな?」
ニナが釣り上げたのは「ティックオクトパス」というタコの魔物。通常のタコより一回り大きく、触手は倍以上に長い。吸盤は肌に吸い付くと筋力値の高い戦士系ですら剥がすのに苦労するほど強く、それでいて痛みは無く、跡も残らない新設設計。そしてその身は通常のタコよりも美味しいらしい。
「当たりじゃない?倒せればの話だけど」
イリーナは横目で見つつ答える。釣り竿を話さない事から助ける気はないらしい。
「折角だし、滅多にお目にかかれない魔物だし、ちょっとくらいいいよね」
ニナはタコが伸ばしてくる触手に大人しく捕まる。そして手と足に触手が絡み付き、本体はニナの腰の辺りにしがみつく。
「何度体験しても、触手に絡み付かれるのって不思議な感覚……」
現実では決して体験できない現状を楽しむニナ。そんな気持ちに応えてか、腕に絡み付いている触手はニナの服の袖から中に侵入し、先端で両脇をなぞり始める。
「んふっ……!ふひっ……、ひぁっ……!変な感じ……!」
触手は粘液に覆われており、それが滑りをよくしている。
更に二本の触手が上着の裾をたくし上げ、お腹から腰までぐるぐる巻き付く。そして上下に緩やかに動き出す。
「んひっ……!ふぁっ……!ぁはっ!これぇ……!やばっ……!はぁっ!あはっ!」
触手の肌に触れている面には小さな吸盤があり、それがブラシの様な役割を果たし、くすぐったさを増している。
「あっ!あはっ!限かっ!ぃっひひひひ!ひぁっはははははは!」
遂に堪えきれず、大きな声で笑いだすニナ。
「あはぁっ!っはははははは!あはっ!あぁっははははははは!っふふ!ふぁっははははは!」
ニナの両足も、足首から太ももまで触手が螺旋の様に巻き付き、上下に動き出す。勿論、吸盤の突いている方を肌に触れさせて。
「あはっ!あっはははは!はぁっ!あっ!あはっ!あはははははは!」
ニナは立つ事すらままならず、地面にうつ伏せで倒れる。
「やぁっははははは!あはっ!んんっ!んふっ!ふぁ~~~っははははははは!」
地面に倒れても触手の動きは一切衰えない。どころか、段々と動きが早くなっていっている。
「んっふっふっふふ!ふぁっはははははは!あぁっはははははは!あっはは!」
むしろ地面に触手が押し付けられた事により、ニナの前面の触手が肌に押し付けられ、刺激は増している。
「あっは!あはっ!あっ!あっはははははは!あぁ~~っははははははは!」
ニナのHPが残り半分を切り、そろそろ助けようかなと二人が思い始めた時、突然ニナの全身が蒼い炎に包まれる。
【死神技法:蒼炎の珠】
ニナが最近覚えた新しい術。自身を中心に蒼い炎を生み、拘束を振り解く術。
炎が効かない敵には効果が無かったり、自身のHPが半分を切らないと使えないのでユカの縄抜けほど便利な術ではない。
「はぁ……満足……」
海の魔物は大抵炎に弱い。ティックオクトパスも例外ではなく、ニナの一撃で倒れる。そして残ったのは、満足気な顔で地面に倒れるニナ。
その後は特に魔物も釣れず、順調に食材が集まる。若干イリーナが不満気ではあったが。
「これだけあれば足りそうだし、そろそろ戻りますか?」
「そうねー……。ん?」
イリーナは海の向こうに何かを見つける。
「……二人共ワープクリスタルで先に戻ってていいよ。食材だけ渡しておくね」
それが何かを確認すると、二人に向かってそう告げる。
「ミコちゃん。私の釣った食材預けておくから、先に一人で戻ってて」
ニナもイリーナと似たような事を言う。
「……分かったー」
二人が揃ってそう言うのであれば、きっとそう言う事なんだろうなと察したミコは、食材を受け取ると一人先に帰る。
「ニナちゃん。さっきあれだけくすぐられてたのに、まだ足りないの?」
「いやぁ、これを逃したら次がいつになるか分からないから」
二人の視線の先には、イリーナの船に向かってくる海賊船があった。
それは、広い海にたった5隻しかスポーンしない、かなりレアなNPC集団の海賊船である。
海賊とはいえ、当然するのはそう言う事で、当然女性しかいない。
「まさかアレに会えるとは、やっぱニナちゃん達運がいいね」
「イリーナさんも大概だと思うけど?」
それから数十分後。
「んひひひひっ!ひぁっはははははは!あはっ!あっはははははは!」
「やぁ~~っははははははは!あはっ!はげしっ!っははははははは!」
海賊船の船内で、大勢の海賊の恰好をした女性にくすぐられる二人。
女性たちは一目で海賊と分かる、お手本の様な赤と白と黒のワンピースタイプの服を着ている。
「あぁっははははははは!あはっ!やぁっははははははははは!」
ニナは天井から吊り下げられた枷に両手を拘束され、がら空きになった脇を中心に4人の海賊にくすぐられる。
「だめぇっへへへへへへへへ!あはっ!あっはははははははは!」
イリーナも同じ様に拘束されているが、イリーナをくすぐる海賊は二人しか居ない。にもかかわらず、ニナと同じぐらいの反応をしている。
その理由はニナの来ている魔法少女風の衣装にある。
イリーナが愛用している桃色の魔法少女風の衣装は最上級の素材である神威の布で作られた一級品である。だが、イリーナの衣装には他に妖精の加護というのが付与されていた。
妖精の加護は、妖精の島にいる妖精の女王を倒すと装備に特殊効果を加護という名称で付与してもらえる。
だが、妖精の加護はメリットに匹敵するデメリットも同時に付与され、加護を消すには女王にくすぐられなければならないので、利用するプレイヤーは少ない。
イリーナの衣装に付与された加護の内容は、魔力値が1.5倍になるが、くすぐりに非常に弱くなるという内容。その為、イリーナは同じくすぐりでも現実の肉体の倍近いくすぐったさを感じるようになる。
「くひぃっひひひひひ!ひぁっはははははは!あはっ!あっははははははは!」
「やぁっ!ぁっはははははははは!やぁんっ!あはぁっははははははは!」
尚、イリーナの魔力値は素で結構高く、降星術は威力も高い。なので、殆どの敵は一撃ないし二撃で倒せるので、わざわざ魔力を1.5倍まで高める必要性は無い。
「あはははっ!あはっ!あっ!あっははははははははは!」
「やぁぁ~~~~っははははははははは!はにゃっ!にゃぁっははははははは!」
それでもその衣装を着続けるのは、純粋に上があるなら上を目指し続ける果て無き向上心と、くすぐられたいという欲望が合わさった結果だろう。
「あはっ!はっ!やっ!はぁぁっ!あはっ!あっはははははははは!」
ニナは服の上からスライムの粘液を浴びせられ、服の上からでも素肌をくすぐられているのと対して変わらない刺激を受けている。
「んひぃっひひひひひひ!ひぁ~~っはははははは!あはっ!やぁっはははははは!」
イリーナは服を着たまま、ニナと違って粘液を浴びせられる事も無く、普通にくすぐられている。
だが、声や反応はニナ以上である。
「んふっ!ふふっ!ふぁっはははははは!あはっ!あっはははははは!」
「はぁっ!はぁっ!はぁぁっははははははは!きちゅぃっひひひひひひ!」
海賊たちはニヤニヤしながら、実に楽しそうに二人をくすぐる。
「んっふっふっふ!ふぁっははははは!あははははは!あはっ!あっはははははは!」
「んやぁ~~っははははははは!やぁっ!あぁーーっはははははははは!」
二人はHPが尽き、10分後に強制帰還させられるまで海賊達のオモチャにされ続けた。
だが、ギルドハウスに戻って来た際の二人は満足気であった。
ミコも混ぜようか悩んだけど、3人同時だとごっちゃごちゃになりそうなのでミコは帰って貰いました。




