62話
天を貫く巨塔の6層目。
ユカ達4人は5層目でドリアードを無事撃破し、6層目へ足を踏み入れる。
「相変わらず植物だらけの場所だねぇ」
6層目もこれまでと同様、壁から床から天井まで植物が覆い尽くしていた。
「出現する敵は変わる筈よ」
ユカのそんな言葉に合わせたかのように、都合よく魔物が現れる。
「人型かぁ……」
青紫色の葉っぱの様な長い髪に、黄緑色の肌をした小さな女の子。頭には茂みが生い茂り、桃色の花が咲いている。6層目唯一の人型の魔物、「マンドラゴラ」が現れる。
「マンドラゴラねぇ。異種族感が強い子だけど可愛いよねぇ」
ニナの言葉に返事をする人は居なかった。
「うーん……魔物でNPCとはいえ、小さな女の子に暴力を振るうのは流石に抵抗があるなぁ」
ミコがそんな事を呟く。
「ちなみに雑魚敵扱いだから、バリアとか無いよ」
ニナが「後は分かるよね?」と言いたげな笑みを浮かべる。
戦闘を開始して数分後。
「あっははははははは!やめっ!っへへへへ!」
モモが呼び出した魔人に羽交い絞めにされたマンドラゴラの体に、左右に陣取ったミコとニナの手が群がる。
「あっはは!このっ!はなしっ……!やっははははは!」
マンドラゴラは周囲の植物を操って抵抗を試みるが、ユカとその分身達が全てを切り捨てていく。
「マンドラゴラは初めて触るけど、肌の感触は人と大差無いんだねぇ」
「やだぁっ!っはははははは!ひぅっ!っふふふふふ!」
ミコはマンドラゴラの右脇を両手で弄び、久々の攻めの立場を楽しんでいる。
「こんな服着てるのに、くすぐったがりな方が悪いわー」
「そんなぁっ!っははははははは!ことっ!いわれたってぇっへへへへへへへ!」
ニナは左の脇を片手で、もう片手は脇腹やお腹を自由に弄っている。
因みにマンドラゴラの服は純白のノースリーブのワンピース一枚だけである。両脇は丸出しでくすぐりに対する防御力は低い。
「やぁっはははははははは!やぁっ!あっはははははははは!」
余ったモモは興味無さそうに様子を見ている。
「はっ!はぁっ!あはっ!あっははははははは!やぁっ!はぁっ!」
二人に一方的にくすぐられ続けて約5分。マンドラゴラはHPが全て削れて気絶する。
「思いの外時間かかったわね」
終盤は暇潰しに本まで取り出していたモモが呟く。
「まぁ、仮にも最上級ダンジョンだし」
4人は探索を再開する。
その後、4人は次の階層への魔法陣を見つける。
「目の前にあるのになぁ……」
だが、魔法陣を守るかのように6体の魔物が行く手を阻んでいた。
「二体は前の階にもいたよね?……あのキモいのは?」
6体中2体は、以前の階層でモモをくすぐっていた綿毛草。
残りの4体は初見の敵である。
壺の様な形をした植物から生えた、直径1メートルはある桃色の花を持つ魔物。花の中央にはワームの口のようになっており、細長い舌の様な触手を何本も蠢かせている。
「リップル・フロカンポだね。そこそこレアな敵らしいよ」
「別にレアな敵と戦いたい訳じゃ無いのに……」
ミコはげんなりしている。
「因みに、倒すと触手の残骸を落とすんだけど。天ぷらにすると美味しいらしいよ」
「いや、美味しくてもアレを食うのはちょっと抵抗が……」
話を聞いただけで食欲を無くすミコ。
「そんな事言ってないで、来てるから構えて」
ユカが雑談をしている二人に注意を呼び掛ける。モモは既に魔人に綿毛草を倒すよう命令を下し、笛を吹いていた。
「うわぁっ!?きもいって!」
リップル・フロカンポの一体がミコに触手を伸ばす。
ミコは咄嗟に剣鉈で応戦する。だが、剣鉈に当たらない様に触手は巧みに間合いを取る。
「うぇ……。何で植物なのに頭いいのよ……」
そんな事を言っている間にも、触手は数を増やし、あらゆる方向と角度から襲ってくる。
「これはっ、むりぃっ!」
一人だけでは対応できない数で一斉に襲い、ミコの両手首に触手が巻き付く。
「ヌルってしてるけど、なんかもうこの感触に慣れてきた自分がいやぁ……」
今まで沢山捕まって来たからか。人の舌の感触を再現した触手の感触に慣れてきてしまったミコ。
そんなミコの心中など知らないリップル・フロカンポは、ミコを引き寄せ、そのまま桃色の花びらで体を包み込む。
「やっ……!なにこれぇっ!」
てっきり触手で全身をくすぐられると思い込んでいたミコは、予想外の展開に混乱する。ミコを包み込んだ花びらはかなり肉厚で、見た目に反してブニブニしている。
その肉厚の花びらが蠢き、ミコの背面に大きな手で揉まれているような、不思議な感覚をもたらす。
「んぅっ!ふぁっ……!やめぇっ……!んひゃぁっ!」
唐突に声を上げるミコ。それもその筈で、花びらに包まれていて見えないが、ミコのお腹や脇腹を触手が好き放題にくすぐっているのである。
「あはっ!これっ!だめぇっへへへへへへへへ!あっははははははは!」
触手は花弁の中央の口の様な場所から出ている。つまり、触手の出入り口にミコの体がある為、大小様々な触手がミコをくすぐる事が出来る。
「やぁ~~っはははははははは!きつぃっ!っひひひひひひ!ふぁっはははははははは!」
ミコは手足をじたばたさせるが、その程度で離す程弱い魔物ではない。
「あっははははははは!はなしてぇっへへへへへへ!やぁっははははははは!」
服の上とはいえ、数の暴力が耐えがたいくすぐったさをミコに与える。
「ひゃぁっはははははは!あはっ!はぁっ!はぁっ!はぁっははははははははは!やぁっはははは!」
触手はミコのお腹や脇腹を突っついたり、なぞったり、這い回ったりと、抵抗できないミコに刺激を与え続ける。
「あっはははは!あはっ!きつっ!ふふふふふふっ!ふぁっははははははは!」
ミコを包んでいる花弁は、ガッシリと掴んで離さない。そしてグニグニと蠢き、それによって生まれる不思議な刺激にミコは段々と力が抜けていき、動きが弱まっていく。
「あぁっははははははは!はぁっ!はぁっ!やぁっははははははははははは!あはっ!」
ミコのHPがもうすぐ3割を切る時、ようやく他の魔物を片付け終わったユカとニナが救援に向かい、手裏剣と鎌でミコに夢中なリップル・フロカンポを秒殺する。
魔物が消え、地面に転がったミコは回復まで10分近くの時間を要した。
「そういえば、触手の残骸落ちたけど、今度御馳走しようか?」
ニナが地面に倒れているミコに聞く。
「はぁっ……はぁっ……。気が……向いたら……お願い……」
(食べるんだ)
ユカはそう思ったが、口には出さなかった。
その後は危なげもなく、10層まで辿り着く。