番外編 ホラーゲーム1-2
前回の続きです。
次は本編に戻り……たい……。
リリィの妹から送られてきた新作ゲームのテスト版をプレイする4人。
幽霊が徘徊する屋敷から脱出するゲームで、既にミコが捕まり、ニナは救出に向かう。ユカとモモは脱出に必要なアイテムを探しに行く。
3階を一人で探索しているユカ。
「これは、キッチンタイマー?」
ユカが入った小部屋で見つけたのは、ごく普通のキッチンタイマー。ユカはそれを注視して調べる。
・キッチンタイマー
電池式のキッチンタイマー。セットした時間後に大きな音が鳴る。
「陽動に使える、のかな?でも電池が無いわね」
一先ずアイテムボックスに仕舞うユカ。
「でも、持てる数に限りがあるから、いっぱいになったら捨てようかな……」
このゲームにもアイテムを出したりしまったりできるアイテムボックスがあるが、その上限はかなり低く、合計6つまでしかアイテムを持てない。
「まぁ、いっぱいになってから考えればいいか」
ユカはそのまま隣の引き出しを開ける。
「え、なにこれ……怖っ」
ユカが開けた引き出しの中には、顔に札が付いた手のひらサイズの藁人形があった。
「これ、アイテムなの?普通に不気味なんだけど……」
ユカは藁人形を注視する。
・呪いの人形
顔にある札を剥がすと幽霊が即時活性化状態に移る。くすぐられたいド変態さん御用達の一品。
「えぇ……」
ユカは普通に引いていた。
「まぁ、取り敢えず持っていよう。さ、次の部屋行こ」
ユカはそう言って次の部屋に移動する。
一方、4階を探索しているモモは、大きめの部屋に辿り着いていた。
「ここは、食堂?……何で4階に食堂があるのよ」
広い部屋に大きな楕円型のテーブル。沢山の椅子が並べられたそこは、モモの言う通り食堂だった。
「机の上に何かあるわね」
机の上に置かれた燭台の灯りのみが照らす薄暗い食堂の中、モモはテーブルで光る何かを見つける。
「これは、鍵?また?」
モモが手に取ったのは金色の鍵だった。モモはそれを注視する。
・金の鍵
金色の鍵。鍵のかかった箱や引き出しを開ける事が出来る。扉には使えない。
「鍵が掛かってるのは扉だけじゃないという事ね……」
新たに判明した事実にうんざりした顔をする。
モモはそのまま部屋の探索を続行する。
その頃、ミコの救出に向かったニナ。
「……迷った」
中々地下室の入り口を見つけられず、一階を徘徊している内に道に迷ってしまっていた。
「同じような部屋とか構造が続くから、道が分かんなくなる~っ!」
一人愚痴を言いながらあってるのかも分からない道を進むニナ。
「それにしても、途中やたら鍵が見つかったけど、これ偏ってない?」
ニナのアイテムボックスには銀の鍵が3つ、金の鍵が2つ入っていた。
鍵の様な小物はストック出来る為、鍵は計5つあるが、アイテムボックスの枠は2つしか使っていない。
「ここの部屋はぁ~……鍵が掛かってるなぁ。早速出番ね」
進んでいくと、鍵のかかった扉にあたり、ニナは銀の鍵を取り出して解錠する。
「なぁーにが手に入るかなぁっと。あれ、階段……」
脱出に必要なアイテムが手に入ると思い込んでいたニナは、下に降りる階段が現れた事に驚く。
「まさか、救出に鍵が必要になるの?」
鍵のかかった扉の先に地下に降りる階段が現れる。これは偶然そうなったとは考え辛いだろう。
「まぁ、冷静に考えてみれば簡単に救出できちゃったら難易度低すぎるもんねぇ」
一人で納得しながら、階段を下りていく。
その先には石畳の廊下と、その壁に幾つかの扉が並んでいる。その数は10。
「つまり、地下室は全部で10部屋あって、何処に捕まってるか分からないって訳ね!……めんどっ!」
やけにテンションが高いニナ。
「うーわー……。これ、全部の扉に鍵かかってるのかぁ……」
一番近くの扉を開けようとして、開かない事実にニナはうんざりした顔をする。
「たしか、10分おきにくすぐられるんだっけ。待ってたらミコちゃんの笑い声聞こえるかな」
ニナは廊下の中央に移動し、静かにして集中を始める。
その頃、ユカ。
「持ち物がいっぱいになったわね……」
ユカはニナが地下室を探してる間に鍵も幾つか見つけ、脱出アイテムを一つ手に入れた。
手に入ったアイテムは、電子ロックのパスワードを書いたメモ。
「……まぁ、捨てるとしたら人形よねぇ」
ユカは人形を取り出す。
「……折角だし、使ってみようかな。多分大丈夫でしょう」
そう言って、人形の顔についている札を剥がす。すると、先程までしなかった足音が突然響いてくる。
「……え?」
突然響いてくる足音に驚き、戸惑うユカ。
そして開かれた扉の向こうに幽霊の女の子が現れる。
「やばっ」
咄嗟に逃げようとするが、女の子の方が足が速く、あっという間に捕まってしまう。
「体が……うごかなっ……」
女の子に捕まった瞬間、ユカの体は指一本も動かせなくなった。
(まぁ、動いて抵抗出来たらバランス壊れるものね……)
そのまま地下室まで運ばれるユカ。その頃のモモ。
「なるほど、金庫を開けるのに金の鍵が必要なのね」
モモは4階の奥の方の部屋で金庫を見つけ、金の鍵で解錠していた。そして中から出て来たのはチェーンカッター。
「これがあればドアチェーンを切れるかしら」
これで玄関からの脱出に必要なアイテムが揃ったが、その内の一つを持ったユカが幽霊の女の子に捕まってしまった。
「一旦皆と合流を目指した方が良いかしら?大分奥まできてしまったし……」
モモは皆との合流を目指して来た道を戻る。
その頃、ニナ。
「……ん?足音?」
地下室の廊下で笑い声が聞こえないか待機していたニナは、後ろから、つまり地下室の出入り口の方から足音が響いて来ている事に気付く。
「やばっ、幽霊来たかな」
ユカとモモがここまで来る理由が無いので、この足音は幽霊のものだろう。ニナはそう判断し、一番近くの扉を解錠して、中に入る。
「誰も居ないわね……どこかに隠れられるところは……」
入った部屋の中には、クローゼットが二つ、部屋の隅に置かれており、中央には人をX字に拘束できる拘束台が置かれていた。ニナはクローゼットの中に隠れる。
ニナがクローゼットの中に隠れて1分程経つと、その部屋にユカを担いだ幽霊の女の子が入って来る。
(ありゃ……。ユカちゃん捕まっちゃったんだ)
ニナは息を潜めて、僅かに空いたドアの隙間から様子を伺う。部屋が全体的に薄暗い事もあり、ニナの存在は気付かれていないようである。
幽霊の女の子がユカを拘束台に拘束すると、後ろに回り両脇腹を掴み、指をゆっくり動かしていく。
「んっ……!ふっ……!ふふっ……!」
脇腹を襲う刺激にユカの口から笑い声が微かに漏れる。
「んふふっ……!ふはっ……!はっ……!ひっ……!」
段々と動きが早くなっていく指。
「やっ……!はぁっ……!はひっ……!」
手は二つだけだからか、まだ若干の余裕があるユカ。
「んっ……ふふっ!……ふぇ?」
だが、変化は突然訪れた。ユカの前に女性の手だけが4つ、いきなり現れる。
「ちょっと、まって……ひゃぁっ!」
4つの内、二つは太ももに指を這わせ、残る二つは靴と靴下を器用に脱がし、足の裏を責める。
「あっは!あっはははははははは!やめっ!っははははははは!」
突然増えた刺激にユカは耐える事も出来ずに笑い悶える。
「やぁっはははははははは!あはっ!あっははははは!」
幽霊の女の子の両手は指を高速で蠢かし、手を上下左右に動かし刺激に慣れさせない様に工夫する。
「やぁ~~っははははははは!はぁっ!あはっ!はぁっはははははは!」
太ももを責める手は、手のひらでさすりつつ指を小刻みに動かす。
「あっははははははははは!やぁっ!やっははははははは!」
足の裏を責める手は、右足は土踏まずを重点的に、指の腹で撫でたり爪を立てたりと強い刺激を与える。
「ひぁっははははははははは!あはっ!あっはははは!はひっ!ひっ!んんっ!」
左足の裏を責める手は、足の指や、母趾球を優しく丁寧にくすぐる。
「んっふ!ふふっ!ふぁっははははははははは!あはっ!はぁっ!」
もうすぐ5分経つからか、ラストスパートと言わんばかりに全ての手が動きを速める。
「はひっ!ひゃっははははははははは!はげしっ!っふふふふふふ!あっはははははははははは!」
これまで以上の声で笑い悶えるユカ。それをクローゼットの中から眺めるニナ。
「やぁっははははははははははは!あはっ!はぁっ!ひぁっはははははははは!」
そして5分が経過すると、手は消え去り、幽霊の女の子もゆっくりと消える。そして部屋の外に向かって足音が響き、ゆっくりと遠ざかって行った。
足音が完全に聞こえなくなると、クローゼットの中からニナがゆっくりと、様子を見ながら出て来る。
「……ニナ?何でそんなところに……。まって、そこから出て来たって事は、見てた?」
やや頬を赤らめながら、ニナを睨むユカ。
「可愛かったよ!」
凄い笑顔で答えるニナ。
「……いいから、早く助けて」
「はい」
ニナは言われた通り、ユカの拘束を解除して、そのまま二人共部屋を出る。
「それで、ミコはどうしたの?」
「いや、それはかくかくしかじかでね」
「なるほど、そうだったのね」
「えっ、通じた?」
「全く?」
無駄なやり取りを行った後、事情を説明した。どの部屋にミコが居るのか分からない事と、鍵が掛かっている事を。
「なるほど……。鍵は私も一本だけ持ってるわね」
「そっかー……。どの道全部は開けられないねぇ」
そして一時の静寂が訪れ、その時気付く。
「……あっちから何か聞こえない?」
ユカが指差したのは、二人が居た部屋の反対側の扉。
「確かに。ミコちゃん、かな?モモちゃんは捕まってないだろうし」
他に手掛かりも無いので、持っていた鍵でドアを開ける二人。開けた瞬間、笑い声が響く。
「あっははははははははは!やめっ!やっははははははは!」
開けたドアの向こうには、ベッドの上で4つの手にくすぐられるミコが居た。
「当たりを引いたわね」
「わー、たのしそー」
「はひっ!?二人共っ!あはっ!みてないでぇっ!っへへへへへ!たすけっ!あっははははははは!」
程なくして、ミコは二人に救出される。
「はぁ、はひっ……」
「みこは置いといて。私、パスワードのメモを見つけたから、後はチェーンをどうにかすれば脱出できるわ」
「おぉ。なら、一階モモちゃんと合流しよっか」
ミコが歩ける程まで回復してから、初期位置の部屋まで戻る3人。二階に上がり、少し歩くと偶然にもモモと出会う。
「あら、3人共。何故一緒に……?」
「偶然会っただけだよ……」
「そう。ところで、私これを見つけたんだけど。これでドアチェーンを切れないかしら?」
モモは3人にチェーンカッターを見せる。
「おぉ!ユカちゃんがパスワードのメモを持ってるから、これで脱出が出来るね!」
モモも合流し、4人は一階の正面玄関まで移動する。
「まずはチェーンカッターでドアチェーンを切って……」
モモがチェーンカッターでドアチェーンを切る。
「パスワードを入力して……」
ユカが電子ロックのパスワードを入力する。機械音と共にロックが解除される音が鳴る。
「鍵を開ける」
ニナが玄関の鍵を開ける。そして、玄関の扉が開く。
「これで、脱出出来るわね」
「初見プレイでクリア出来るとは。私達結構運がいいね」
4人が扉をくぐると、最初のロビールームに戻って来る。4人の目の前に現れたシステム画面には獲得した経験値と上昇したレベルが表示される。
「結構経験値貰えるのね。……脱出できたからかしら」
4人共、レベルは一気に3まで上がっていた。
「本が追加されてるね。……どれどれ」
ニナが追加された本を手に取り、読み始める。
それによってまず判明したのは、今回の幽霊は『ゴースト』という種類であったという事だった。
「名前がまんまね」
思わず突っ込むモモ。
「えーっと、特徴は……。基本的な動きをする幽霊。退治は出来ない。活性化状態に移るとプレイヤーの近くに瞬間移動するので注意。だって」
「基本がまず分からないんだけど……」
「こっちの本は、攻略のヒントね」
ユカがもう一つ追加されていた本を手に取り、読む。
「……幽霊の近くにプレイヤーがいると、活性化状態に移りやすくなる。って、それ最初に言いなさいよ……」
そこに書かれていた内容にしかめっ面で突っ込むユカ。
「まぁ、今日はもういいかな。でも、結構面白かったね」
「そう、ね。1プレイが結構時間かかるけど、普段ホラーはやらないから新鮮ではあったわね。……そもそもこのゲーム、ホラー要素ない気もするけど」
1プレイに結構な体力を使うためか、4人はそのまま、お開きとなりログアウトしていった。
気付かないだけで、結構設定とかガバってるかも……。