60話
書く時間があんまり取れなかったので短いです・・・
5月も折り返しを過ぎた中旬のある日。ユカ達4人は最上級ダンジョンの一つ、天を貫く巨塔の入り口前に集まった。
「さて、ここは特殊なダンジョンだから、説明するからちゃんと聞いてね」
ユカが、特にミコに対して説明を始める。
最上級ダンジョン『天を貫く巨塔』は、100階層まであるとても大きく、長いダンジョンである。なので、途中に中間地点の様な場所もある。
一桁の数字が1の階層は、敵が一切出て来ない休憩エリア。一桁が5の階層は中ボスみたいな、ちょっと強い敵が出て来る。一桁が0の階層は、ハーフレイド級の強めの敵が出て来る。そして、ハーフレイド級を倒して次の階層に行けば、次からはその階層から始められるワープが解放される。
「つまり、10層の敵を倒して11層まで行けば、次からは11層からスタートできるって訳。わかった?」
「ゆかちー、私3人ほどじゃ無いけど、結構成績いい方だよ?」
ミコはユカを軽く睨む。ユカは咄嗟に顔を逸らす。
「まぁ、そんな事より。早くいくよ!」
ニナが待ちきれない様子で塔の中に入っていき、3人がそれに続く。
入り口から中に入った一層目は、何処か厳かな雰囲気のあるエントランスで、入り口の反対側に大きな魔法陣が光り輝いている。この魔法陣の上に立つと任意の階層へ飛ぶ事が出来る。だがユカ達は初めてなので行先は2層目しかない。
「一桁の階層は、植物系がメインで出て来るから、気を付けてね」
「まぁ私のメイン火力で文字通り焼き払えるから楽勝よ!」
ユカが注意を促し、ニナが張り切る。そして4人は魔法陣の上に乗り、目の前に出て来たウィンドウの2階層を選択して転移する。
「ここが、塔の中かぁ……」
「思ったより、何と言うか……。ダンジョンっぽいのね」
初めて見る2層目。そこは、全体が灰色の石で造られているが、床から壁から天井まで植物が覆い尽くし、石の部分が見えるのは僅かな植物の隙間だけであった。
「出て来る敵が植物系だからこうなっているんじゃない?」
そういうものかと納得し、移動を開始する。
「ところで、次の階層への階段ってどの辺にあるの?」
「階段なんか無いわよ」
ミコがさり気なく聞くと、ユカから予想外の返事が返って来る。
「どこかに魔法陣があって、その上に乗ると次の階層へ行けるのよ。ただ、日付と同時に場所も変わるから、何処にあるかは分からないわ」
「なるほど。じゃあ当ても無く探すしか無いんだね」
どこにあるか分からない魔法陣を探し、11層を目指す。そんな4人の前に最初の魔物が現れる。
「何?こいつ……。トレント?」
「フォレスト・トレントよ。物理耐性を持ってる厄介な奴よ」
木から人間の手が何本も生えたような見た目のトレント。その上位種である『フォレスト・トレント』は、通常のトレント3体を一体に合体させたような見た目をしていた。それが二体。行く手を阻む。
「何か、腐ったブロッコリーみたいな見た目だね」
ミコが思ったままの事を口にする。
「くふっ!」
笑ったのはニナだけであった。
「はぁっ……。炎はよく効くから、いつも通り私とユカちゃんが前にでるね」
「ま、妥当ね」
そう言ってユカとニナの二人がフォレスト・トレントに向かって突撃する。
【忍術:火遁・業火】
【死神技法:滅却の焔】
紅蓮と蒼の炎に飲まれる二体のフォレスト・トレント。炎に対して非常に弱い二体はそのままHP全損で消える。
「まぁ、私とユカちゃんがいるし。10層までは楽かなぁ」
「になっち。それ、フラグっていうんだよ……」
そんな事を言い、先に進む。途中で襲ってくるフォレスト・トレントを炎で焼き払い、無事に小部屋で輝く魔法陣を見つけて3層目に辿り着く。
「3層目も、2層目と変わらないんだね」
ミコが植物で覆われた部屋を眺めて呟く。
「10層まではこんな感じだと思うよ」
3層目も張り切って進む4人。少し進むと、フォレスト・トレント2体と共に新しい魔物が現れる。
紫色の花が咲いた球根から伸びた茶色く細い根が、人の体や手足の様に絡まり伸びて2足歩行で動く魔物。『アラウネ』
「何、あのヤバそうなやつ……」
「アラウネだよ。状態異常を駆使してくる上に、仲間を呼んだりする厄介な敵ね」
ユカがそう注意を促した瞬間。アラウネが突然、湯が沸騰したヤカンの様な高い音を出す。そして2体のフォレスト・トレントが前に出てユカ達に近づく。
「って、早速っ!?」
その音は、仲間を呼ぶ音だった。アラウネの反対側、ユカ達の後ろから、宙に浮いた藻の塊の様な物体から先端に綿毛が生えてる蔓が何本も伸びている魔物。名前はそのまま『綿毛草』
それが二体、現れる。
「後ろから……囲まれたわね」
モモは後ろを振り返り、露骨に嫌な顔をする。
「なら、また呼ばれる前にあいつ倒そう!」
ニナはそう言ってアラウネの方に向き直る。すると、アラウネがプルプル震えだし、頭(?)の花から黄色の塊を前に出ているユカとニナに向けて放つ。
「うわっ、何!?」
ニナは反射的に鎌で塊を切り捨てると、それは黄色い煙を撒き散らし、充満させる。ミコとモモの位置までは届かなかったが、ユカとニナは思い切り吸い込んでしまう。
「うっ……、体が……、痺れ……」
ニナの手から鎌が滑り落ち、そのまま全身に痺れが回り、地面にうつ伏せで倒れる。一方、ユカはピンピンしていた。
「ねぇ、何でゆかちーは効いて無いの?」
「私この前、毒と麻痺を無効化するパッシブスキルを習得したから」
因みにこの無効化スキルの習得イベントでは、忍者屋敷のNPC4人から毒を浴びせ続けられたが、ユカは嬉々として受け入れていた。
ニナはそのままフォレスト・トレントに捕まる。両手首と両足首を掴まれ、X字のような姿勢で拘束される。そしてガラ空きになった両脇、脇腹、内ももにフォレスト・トレントの腕が伸び、くすぐり始める。
「ふひっ……!くくっ!やめっ……!あはっ!」
ニナの体に群がる大量の手。沢山の指が、ニナの体を這い回る。麻痺で指一本動かす事すら出来ないニナは、ただ送られてくる刺激通りに笑い悶えるしかない。
「やぁっははははははは!これきつっ!いぁっははははははは!はっ、はひっ!んふふふっ!」
他の3人、ユカはもう一匹のフォレスト・トレントと戦っており、ミコは綿毛草一匹と剣鉈を振り回して戦っている。モモは呼び出した魔人にアラウネの相手をさせている。救援は暫く望めない状況である。
更に、残っていたもう一匹の綿毛草が、蔓を触手の様に使い、モモを襲っている。モモは何度か回避するが、何度も躱せる様な攻撃ではなく、右手首に蔓が絡まり、気を取られた瞬間に反対側の手首にも巻き付く。そして先端の綿毛で肌が露出している脇や首筋、お腹等を優しく撫で回す。
「ふふっ……!やっ……!はなしっ……!やんっ!」
「……前々から思ってたけど、ももっちってくすぐられると妙に色っぽい反応するよね」
「アホな事っ……!ふふふっ!言ってないでぇっ!たすっ……!ひゃぁっ!」
綿毛の刺激はニナに比べれば大分優しいものだが、それでも素肌を撫でられれば我慢する事は出来ない。尚、魔人はくすぐられる前の命令に従ってアラウネと戦闘中である。
「ひぁっははははははははは!あはっ!はぁっ!はぁっはははははは!はげしっ!あっははははははは!」
「やっ……!んふっ……!ふふっ!やめっ……!あはぁっ……!」
ニナの体に群がる手は、気付けば倍近く増えていた。靴は脱がされ、足の裏にも指が這い回る。体の側面は脇から腰まで指で覆い尽くされている。
「あっははははは!あはっ!んっふふふふ!ふぁっはははははは!」
「ひぅっ……!んっふふふ!ふひっ……!ひぁっ……!あはっ!」
モモの体をくすぐっている綿毛草の本体は、モモの頭の後ろに浮かんでいる。モモが強引に体を動かしてもぶつからない安全な位置である。蔓は細いが、見た目以上に強靭であり、モモの力では引き千切る事は出来ない。
お腹や脇腹、腰を撫でられる度にモモは腰をくねらせ、刺激から逃れようとする。だが、動きが読まれているのか、綿毛は素肌に吸い付くように離れない。そして小刻みに動き、モモに我慢を許さない刺激を与える。
「ひゃぁっはははは!あはっ!あっははははははは!きちゅっ!ふぁっはははははは!」
「んひゅっ!んふふっ!ふひっ!やぁっ……!ふぁっ!んぅっ~~!っふふふ!」
既にユカもミコも他の魔物を倒し終わっていたが、二人を傷つけずに救出するにはどうしたらいいかで対応が遅れ、救出されたのは更に5分経ってからだった。
救出された二人は数分間、地面に寝転がり、大きく呼吸をして体を休める。
その後は特に苦戦もせず、4人は5層目に辿り着く。
このペースだと後2~3話ぐらい植物メインになりそう。
今年中に後一話はあげたい・・・