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55話

 GWの最終日に行われている団長リリィのギルド『アイリス』と、その妹のリーシャのギルドとの模擬戦。

 その最終戦。ここまでの戦績はどちらも2勝2敗。この最終戦で勝敗が決する。

 試合会場に二人が現れる。アイリスからは、複数の魔法の同時発動という高等技術を使いこなし、団長のリリィを除けばアイリス最強と言われる災厄の魔法少女(自称)イリーナ。イリーナはいつも通りの桃色の魔法少女の衣装を身に纏った金髪の少女。手にはオリハルコンで作られた星を象った魔法少女風の杖が握られている。

 リリィの妹、リーシャのギルドからは豪腕の二つ名で呼ばれる 、身長180は超える筋骨隆々の大男。何より特徴的なのは、女性用のセーラー服を着ている事だろう。そしてかなり大きな大槌を片手で軽々と持ち上げている。

 その二人が会場の中央で見合う。


「久しぶりねぇ、イリーナちゃん」


 クブルが、女性の様な口調でイリーナに話しかける。


「そーねー。私は未だに貴方の喋り方に慣れないわ……」


 術師と戦士の戦い。常識で考えれば術師であるイリーナの方が不利ではある。


「今日はいい試合にしましょうねぇ」


「まぁ、それには同感かな。勝つのは私だけど。何故なら魔法少女に敗北は無いから!」


 頃合いを見て、リリィが「はじめー」と気の抜けた合図を送る。


「むぅんっ!」


【槌技:ブレイクハンマー】


 開始の合図とほぼ同時に、クブルがスキルを発動し強烈な破壊力を秘めた一撃をイリーナに向けて振るう。


【降星術:星光波】


 イリーナは術を発動させ、光の波動を放ちクブルの大槌を押し返す。


「ぐっ!流石ねぇ……。私の技が押し返されるなんて久々だわぁ~。……でも、魔術にそんな術あったかしら?」


「さぁて、何でしょうねぇ」


 イリーナは不敵に笑いつつ、答えを教えるかのように術を行使する。


【降星術:メテオ】


 術が発動すると、イリーナの頭上高く空に魔法陣が浮かび、そこから隕石が生まれクブルに向けて落ちる。


「なっ!?」


【槌技:インパクトハンマー】


 クブルは一瞬驚くも、直ぐにスキルを発動し、隕石を破壊して防ぐ。


「降星術……。イリーナちゃんが転職したって噂は聞いたけど、本当だったのねぇ」


「ふっふーん。ユニーク持ちがユカちゃん達だけだと思ったら大間違いだよ!新しい魔法少女の力を見るがいい……!」


 イリーナは無駄に決め顔で、無駄にポーズを決める。


「お姉ちゃん。何でお姉ちゃんのギルドにはユニーク持ちが5人もいるの?」


 リーシャが隣にいる姉を睨みつけて言う。


「偶然だよ。いや、ホントに……」


 リリィは不正は無いと言い張る。事実、5人共自力で見つけ出したユニークジョブである。


「でも、降星術師がイリーナちゃんの手に渡ったか……。あのイリーナちゃんに……」


 リーシャは不安げに試合を見つめる。


「さぁて、クブル君相手に手加減なんてしてられないし、全力でいくよー!」


 イリーナは全身から魔力を溢れさせ、術を発動する。


【降星術:メテオ】


 発動した術は降星術師の初期スキル。だが、4つ同時に発動する。


「きたわね。イリーナちゃんの得意技」


 術の同時発動。術師であるならば上級者の殆どは使える技術だが、同一の術ではなく複数種類の術を同時発動出来る術師はイリーナ以外に居ない。リリィですら習得出来なかった高等技術である。


【槌技:破壊の鉄槌】


 クブルは臆することなく、一つを確実に破壊し残りを回避する。


「やるねぇ。じゃあこれはどう?」


【降星術:メテオ】

【降星術:ミーティア】


 今度は速度の違う隕石を混ぜて落とす。

 

「ぬぅぅんっ!」


 だがクブルは槌を振るい、破壊と回避を上手く使い分けて対処する。


「中々当たらないなぁ」


「まぁね。降星術自体はイリスちゃんとの戦いで対処を覚えてるから」


 ユカ達4人のユニークジョブと違い、降星術は女神イリスを始めに幾つかの敵が使って来る技である。なのでクブル程の強者であれば対処も自然と身に付いている。


「なら、手数で攻める!」


【降星術:スターダストブレイク】


 イリーナが術を行使すると、空から破壊の力を持った星屑が雨霰の如く降り注ぐ。


「これは、避けれないわね」


【闘技:魔導鋼体】


 クブルは空から降り注ぐ星屑は防ぐ事も回避する事も出来ないと判断し、一時的に魔法防御を飛躍的に高める闘技を発動する。そして全ての星屑を耐え切ると同時に駆け出し、イリーナに向けて大槌を振り下ろす。


「あぶなっ!」


 イリーナは当たる直前に身を翻し、大槌の一撃を回避する。


【槌技:アースブレイク】


 クブルはそのまま大槌を横に振るって薙ぎ払い、そのままイリーナに向けて振り下ろす。イリーナは後ろに飛んで躱すが、大槌が地面にぶつかった瞬間に衝撃波が発生し、少しダメージを受けてしまう。


【降星術:スターライト・レイ】


 そのままの流れで追撃を仕掛けて来るクブルに対して、イリーナは術を行使する。術の発動と共にイリーナの頭上高くに魔法陣が現れ、そこから光の弾が雨の如く降り注ぐ。

 クブルは流石に危険と判断し、一度飛び退いて距離を取って光の雨を躱す。


「中々大技を撃つ隙が無いなぁ」


 イリーナは杖を構え、思考を巡らせる。だが、クブルが動き出した為、思考を中断し術を行使する。


【降星術:コメット】


 空に浮かんだ4つの魔法陣。そこから魔法陣の数だけ巨大な彗星が生まれ、降り注ぐ。


「これは、壊すのは難しそうね」


 巨大な彗星はメテオやミーティアより一回り大きい。その巨大さから破壊は困難と判断し、推測される範囲圏外まで退避する。


『降り注げ、破滅の嵐』

【降星術:スターストーム】


 クブルが後方に退避した瞬間、イリーナは言葉を紡ぎ、術を発動する。それはクブルが後方に退避した時点で一切阻止されない完璧なタイミングだった。

 コメットが地面に着弾するのと同時に空に巨大な魔法陣が展開され、流星が雨の如く降り注ぐ。その範囲は会場全域にまで及ぶ。


【闘技:魔導鋼体】


 クブルは先程と同じ技で耐える事を選ぶ。というより、ひたすら攻撃方面に能力を特化させたクブルにとって、現状で取れる選択肢はこれしかない。


「やはり、そうするよねぇ。でも、いくら防御を固めても効かない訳じゃない。例え9割を防がれようと、残りの1割で消し飛ばせばいいのよ!」


 イリーナのセリフが魔法少女と言うより、魔王か何かのそれになってきている。


『渦巻く星々は、銀河となる』

【降星術:ミルキーウェイ】


 星が降り止み、次の術を発動する前に、あるいは相打ちを覚悟で大槌を担ぎ、イリーナに向けて飛び掛かる。

 だが、クブルがイリーナの元に到着する前に術が発動し、形を成す。イリーナの周囲に手のひらサイズの破壊の力を秘めた光の弾が次々に生まれ、イリーナを中心に渦巻く。それは、まるで小さな銀河のようだった。


「これはまた、綺麗だけれど……」


 クブルはイリーナの近くまで接近していたこともあり、いくらか光の弾を食らっていた。それだけでHPを何割か持っていかれた。この手のひらサイズの光の弾にどれだけの力が込められているかが窺い知れる。中心に飛び込めば、まず耐えられないだろう。


【降星術:スターフレア】


 イリーナはミルキーウェイを維持したまま別の術を行使する。別種の術を同時発動出来るイリーナにとって、術を維持したまま別の術を行使する事も十分可能である。流石に詠唱アリの術の同時発動は不可能だが。

 発動した術によって生まれた星の火が、遠くで攻めあぐねているクブルに向けて放たれる。


「流石に、これ以上は無理ね」


 星の火を耐え切ったものの、一切手出し出来ない状況で一方的に攻撃されれば流石に勝ち目は無い。そう判断し、素直に降参を選ぶ。


「よし、しゅうりょー!」


 リリィの掛け声で最終戦の終了する。そして二人は控室に戻って行った。


「無事勝って来たよー!おつかれー!」


 イリーナは変わらず元気に戻って来る。そのまま少し会話をしていると、リリィとリーシャが控室にやって来る。


「いやさ、お姉ちゃん。ユニークジョブ5人は流石に卑怯じゃない?」


「ここまで来てまだそれを言うの?」


 リーシャの顔はやや不満気味であった。


「ま、いいや。勝利おめでとう。流石はイリーナちゃんね。降星術師をあそこまで使いこなすなんて……」


 ミルキーウェイは、本来敵を引き付けて発動し大ダメージを狙う術である。それをイリーナの様に絶対の防御壁として使用するのは流石に想定外だっただろう。


「それに、忍者に死神に豊穣者に魔人使い。よくまぁ、集められたね」


 リーシャはユカ達4人を見回して呆れたように呟く。


「ところで、リーシャちゃん。約束、忘れてないよね?」


 リリィがリーシャに、何かを催促する。


「はいはい、忘れて無いわよ」


 8人が詳しく話を聞くと、どうやらリリィとリーシャは試合前に賭けをしていたようだ。そしてアイリスが勝った暁には、アプデ情報とか教えろという約束が交わされていたらしい。


「まぁ、アプデ情報はお姉ちゃんが望む様な内容は無いわよ。今年のアップデート予定は年末に発表したし、次の大型アップデートは少なくとも半年は先よ」


「なん、だと……」


「いや、それはそうでしょう」


 そもそも、あったとしても軽々しく言っていいものなのかとリリィ姉妹以外の8人が思った。


「……まぁ、これはアップデート情報とは違うんだけど」


「お、何かな?」


「会社はこのゲームが思ったより好評で売れたから、くすぐりをテーマにしたゲームを2つ、新たに企画してるわ。片方はネットゲーム。もう片方は、マルチプレイも出来るけど基本ソロプレイのゲーム」


 (むしろそっちの方が言ってはいけないのでは?)と8人全員が思ったが、口に出した者はいなかった。そしてリリィは意外にも渋い顔をしていた。

 理由は簡単で、オンラインゲームだとこのゲームの初期の頃の様に女性プレイヤーが襲われる事が頻発しかねないからである。


「お姉ちゃんは安心していいよ。新作はプレイヤー同士の合意無しのくすぐりは禁止にする予定だから」


 流石妹と言うべきか、姉の考えている事は大体わかっているようだ。


「まぁ、完成は少なくとも一年ぐらい先だし、作る以外の事はあんまり決まって無いから、私から言えるのはこんなもんかな」


「うん、じゃあ、皆!そんな感じでお疲れ!」


 リリィの雑な挨拶で模擬戦は終わり、各々自由に解散となる。

 夜も大分更けて、明日からは学校もある為、ユカ達4人はそれぞれの自室に戻ってログアウトする。


「新しいゲームか……。ちょっとだけ楽しみ、かも」


 優香は布団に潜り、どんなゲームなのか色々と妄想している内に眠りに落ちる。

ようやく模擬戦を全て書き終えました……

慣れない事してるのでいつもより書くのに時間が掛かる上に大分雑になった気が……

次回から通常営業に戻ります。


話に出てきた新作ゲームは、ユカ達がこの世界を遊び尽くしたら書こうかなって思ってる話になります。

まだぼんやりとしか決まって無く、書くにしても一年は先の事になると思うので覚えておかなくても大丈夫です。

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