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番外編 ネア3

書くのに割と手間取ってしまった……

 ギルド『アイリス』の幹部の一人、ネア。彼女が新実装されたマップの敵NPCに敗北した翌日。


「リベンジマッチなの」


 彼女は再び、敗北を喫した研究所に来ていた。だが、以前と違い隣にはDEMであるクレアがいる。


「ますたーっ!はやくーっ!」


 クレアが今にも飛び出しそうな勢いでぴょんぴょん跳ねる。


「分かったから落ち着くの」


 そうクレアを抑えるが、その目はリベンジに燃えていた。ネアはくすぐられるのは好きだが、それはそれ。純粋に、しかも自分と同じ技師に負けた事が余程悔しかったらしい。

 そうして研究所内に侵入する二人。当然、多くの敵NPCが襲ってくるが、何も出来ずにクレアが蹴散らしていく。クレアは既に相当強化されており、最上級でなければレイドボスと互角に戦える程まで成長している。


「さっさと出てくるのー」


 ネアはそんな事を言いながら殲滅された道を進む。

 そして遂に、最奥の研究室まで辿り着く。


「……居ないの」


 だが、そこは肝心の騎士団長はおろか、雑魚敵さえ居なかった。

 どういう事かと部屋を調べると、本棚の後ろに隠し通路を発見する。


「この奥なの」


 二人は隠し通路を通って奥へと進む。すると、まるで巨大ロボでも格納しているのかと疑うような広大な場所に辿り着く。


「ここは……」


 見るからに頑丈な作りの壁に囲まれたこの空間は何を意味するのかと考えていると、不意に声が響き渡る。


「また、貴女なのですね」


 部屋の奥。ネア達が入ってきた場所の反対側に、ネアを散々くすぐったシャリアが呆れた顔で立っていた。


「居たの。リベンジなの。今度は本気で行くの」


 そう言ってネアは先手必勝と言わんばかりに、対戦車ロケットランチャーを取り出し、発射する。


「随分と、手荒いですね」


 シャリアが指を鳴らすと、壁の一部が開き、そこから細長いレーザービームが撃たれ、ロケットを貫き、何もない中空で爆発させる。

 こうして戦いは唐突に始まる。


「クレア、ゴーなの!」


「了解っ!」


 魔法少女の様な衣装を身に纏ったクレアが、鎌を構えて突撃する。


【魔術:連火砲】


 突撃しているまま、クレアは魔術を発動する。魔術によって生み出された炎の連弾は的確にシャリアを狙っていた。


「貴女は……人間では無いのですね」


 シャリアはその挙動から、クレアが人間では無い事を見抜く。そしてバリアを発生させ、炎を防ごうとする。

 その瞬間、爆発にも似た音と共に強い衝撃がバリアに伝わり、ヒビが入る。見れば、いつの間にかネアが大きな狙撃銃を取り出しており、バリアを撃っていた。


「対策はバッチリ、なの」


 同じ技師であるネアは発生されるバリアは強い物理的な衝撃に弱いと知っていた。とは言え、大型車と衝突する程の衝撃でなければ殆ど効果が実感できないが。

 そこでネアは今回、対物狙撃銃を用意した。重くて取り回しが悪い為、普段はあまり使わないが。


「成程……、前回とはまるで違う。本気とは負け惜しみでは無いのですね」


 シャリアは懐から丸い物体を取り出し、クレアに向かって投げる。クレアはこれを横に大きく飛んで躱す。丸い物体は地面に衝突すると紫色の煙を周囲に充満させる。丸い物体は毒ガス爆弾だったようだ。


(しかし、これほど広いならある程度大きな兵器も使えそうなの)


 ネアは戦いながら、数ある発明品の中から何を使うかを考える。


(さて、どちらを優先するべきでしょうか……)


 シャリアは全能力の高いクレアを優先するか、プレイヤーであるネアを優先するか悩む。だが、鎌を構えて接近してくるクレアの方が脅威と判断しヘイトを向け、バズーカ砲の様な物を発射する。そこから飛び出して来たのは砲弾ではなく、大きな網だった。クレアは咄嗟に鎌で網を切り裂く。


(やはり通じない……。なら、次は……)


 シャリアは白衣の内側から何かのスイッチを取り出し、押す。すると天井の数ヵ所がパカッと開き、そこからロボットが落ちて来る。真っ白な、ドラム缶から脚が4つ生えた様な姿のロボットは、クレアの半分程の大きさしかない。それが10体現れる。


「これは、めんどくさそうなの」


 ネアはシャリアに注意しつつロボットを対処する様、クレアに指示を出す。

 ロボットは4つの足をガシャガシャ動かし、その遅そうな動作と違い、二人の予想よりも素早い動きを見せる。


「うわぁっ!?はやっ!きしょいっ!」


 クレアは予想よりも早い動きで急接近してきたロボットの一体を、ほぼ反射的に鎌を振りぬく。

 鎌がぶつかると、甲高い金属音が響き、ロボットは数メートル先まで弾き飛ばされる。だが、ロボットの損傷は胴体に僅かな傷が付いた程度で、何事も無かったかのように立ち上がる。


「思ったより頑丈なの」


 ネアはその一連の出来事から、通常攻撃では大したダメージを与えられないと知る。クレアでも最低で中級レベルのスキルでなければ装甲を抜く事は難しいだろう。

 すると突然、ロボットの頭(?)の部分がパカっと開き、そこからマジックハンドが一体につき4本現れる。


「うわっ、これはキツそう……」


 クレアが流石に厳しいとネアに目線で助けを求める。


「じゃあロボットだけに集中していいから、一人で頑張るの」


 ネアは、自分の事をまっすぐと見据えているシャリアに意識を集中し、ロボットはクレア一人に任せる。


「ようやく、1対1ですね」


 シャリアはネアに向かって言う。


「まぁ、仕方ないの」


 例えクレアがロボットを全て片付けても、自分が先にやられてしまっては意味がない。なので、ネアは最低でもクレアがロボットを全て片付けるまで耐える必要がある。


(とは言え、どうしたものなの……)


 開幕のロケットランチャーから、弾速の遅い兵器は通用しないと考えられる。シャリアのバリアは、ヒビが入っているとはいえ未だに健在である。壊そうにも、対物狙撃銃は機動力が低く、1対1では使えない。


(連射できる対物銃を用意出来れば、もう破壊出来てたかもなの……)


 ネアが持って来たのは、一発撃ったら再装填が必要になるタイプである。連射できるタイプは単発式より大きく、より重く、更に命中精度も若干落ちる。故にネアは今回単発式を持って来た。


(まぁ、今更嘆いても仕方ないの)


 手持ちの兵器でどこまで出来るか、考えを巡らせる。だが、ネアの考えが纏まるよりも早くシャリアが動き出す。

 シャリアが白衣の内側から取り出したスイッチを押すと、ネアから見て右側の壁の一部が開き、直径30センチ程の大きさのUFOの様なモノが現れる。それは、まるでオモチャの様な外見をしていた。それが5機現れる。


「数で攻めるつもりなの」


 そう呟いたネアは、そのまま次元倉庫を開く。そこから出てきたのは10体のアンドロイド。上位存在であるクレアと違い、剥き出しの機械の体に、目しか存在しない頭。体は鉄製なので、ファンタジーであるこの世界では少し心許無い防御力しか発揮できないが、手にはレーザーの弾丸を高速連射するレーザーマシンガンが握られている為、攻撃能力は高い。


「数には数、なの」


 ネアが指示を出すと、アンドロイド達は手にしたレーザーマシンガンをUFOに向けて一斉に発射する。


「10丁も光学銃を撃たれては、流石に眩しいわ」


 シャリアは眩しそうに目元を手で覆う。UFOを殲滅した後、レーザーマシンガンの銃口はシャリアに向けられたが、バリアによって阻まれる。電磁バリアはレーザーの様な光学兵器に対して滅法強いので大したダメージを与えられない。


(やはり物理攻撃じゃないと厳しいの)


 当然、ネアもそれは理解していた。チラッとクレアの方を見るが、ロボットはまだ半分以上残っており、まだ時間がかかりそうだ。

 そうこうしている内にシャリアはレーザーで作られた剣を振るいレーザーマシンガンを連射し続けるアンドロイドを一体づつ斬り捨てる。


「なら、プランBで行くの」


 そう言ってネアは次元倉庫から何かを取り出す。尚、プランBは今適当に考えた作戦で、元々練っていたものでは無い。

 ネアは取り出した物を背中に背負うと、いつも使っている6連発式ではなく、散弾銃の様な見た目をしたグレネードランチャーを右手に携える。


「じゃ、行くの!」


 ネアはそう言って駆け出す。それと同時に背中に背負った物から炎が翼の様に噴き出し、ネアの速度を飛躍的に高める。ネアが背中に背負った物はブースターだった。

 ネアが咄嗟に思い付いたプランBは、ブースターによる高速移動を活かした接近戦である。


「なるほど、技師らしからぬ戦闘方法ですね」


 シャリアは最後のアンドロイドを斬り、ネアの方を見ると、納得したように呟く。そして同時に、どう対処するか頭を悩ませる。最初の様に弾を空中で撃ち抜くのは難しい。それが成功したところで、既に有効範囲の中だろう。起爆地点が自分の近くの地面か空中かの違いしかない。ネアはそんな事お構いなしに接近し、最初の一発をお見舞いする。

 放たれた一発はシャリアの足元で炸裂し、バリアの耐久値を更に減らす。ネアは銃口の部分を前に動かし、撃ち殻を排出する。


(弾は後3発……無駄撃ちは出来ないの)


 今回のグレネードランチャーは、接近戦用であり、対象と10メートル以上離れていれば撃つ事が出来る。自分への被害を考えなければもっと近くから撃てる代物である。

 ただし、一丁に入る弾は最大4発。一発撃ったので残りは3発。グレネードランチャーは再装填に時間と手間がかかる為、接近戦で悠長にやっている暇はないだろう。


「くっ、この……!」


 シャリアの白衣の内側からロボットアームが3本、唐突に現れ、ネアに向かって伸びて来る。だが、ブースターによる高速移動についていけず、そのアームは何も無い宙空を掴むだけである。


「もう、一発!」


 直線距離を一気に加速し、すれ違いざまにグレネードランチャーを一発撃つ。放たれた弾はほぼ垂直に飛行し、バリアに直撃する。弾の爆発音と共に、ガラスが砕けるような音が響き、この一発でシャリアのバリアが完全に破壊される。


「これは、不味いですね……」


 バリアが破壊されれば、あらゆる拘束技や、くすぐりによる攻撃も受け付けてしまう。


「これで後は捕まえるだけ……なの」


 ネアはニヤリと笑う。

 そして、残り二発のグレネードランチャーを腰に掛け、次元倉庫から新しいグレネードランチャーを出す。チラッとクレアの方を見ると、ロボットは残り2体まで減っていた。


(あっちももうすぐ終わりそうなの)


 それを確認すると、新しいグレネードランチャーを一発、シャリアに向けて発砲する。銃口から飛び出た弾は、放物線を描き、シャリアの足元で起爆する。


「しまった、これは……!」


 弾は起爆すると破片ではなく、黄色いガスを撒き散らす。新しく取り出したグレネードランチャーに装填されていたのは麻痺の毒ガス弾頭だった。爆発の衝撃に備えていたシャリアは完全に対応を誤り、ガスを思いっきり吸って、ゆっくりと地面に倒れる。


「こうなってしまえば、こっちのものなの」


 ガスが充満する中、ガスマスクを着けたネアが倒れているシャリアに近づく。そして両手を掴み万歳の姿勢にし、両足も同様に真っ直ぐ伸ばす。そして、ついでとばかりに靴も靴下も脱がす。


「最初は優しく~……とかしてる暇は無いの。麻痺が解ける前に体力を削り切らないといけないの」


 麻痺で動けないとはいえ、シャリアのHPはまだ十分残っている。麻痺が解ける前にそのHPを全て削り切らないと、最悪二度目の敗北となる。


「だから、強くいかせてもらうの」


 そう言ってネアは次元倉庫を開き、シャリアの傍に人が一人入るぐらいの大きさの機械で出来た箱を置く。箱の一部が開くと、そこから先が丸くなっている直径数センチのコードの様な機械触手が何十本と現れる。それは生物的な動きを一切見せず、一直線にシャリアの体に向かう。

 シャリアの元に到着すると、服の裾等の隙間から中に入り、丸い先端が彼女の素肌を優しく撫でる。


「んくっ……!ふぅっ……!ふふっ……!やめっ……ぁはっ!」


 僅か数十秒で体のあらゆる場所に到着し、先端で撫で回し始める機械の触手。一本だけなら大した刺激にはならないが、それが数十となれば別である。


「すこ、しはぁっ……!遠慮というものをっ……!ふぁっ……!ははっ!」


 全ての触手が到達し、およそ数十秒。突然、全ての触手の先端が『ブブブ』と駆動音を鳴らして振動し始める。


「ふぁっ!?ぁはっ!あはっ!やめっ!あっははははははは!」


 それは大抵の人は我慢出来る筈も無い刺激を与える。


「やぁっはははははははは!あはっ!はっ!ぁっははははははは!」


 それは彼女も例外ではなく、今まで見せた事のない表情で笑う。


「こん、なのっ!あっは!ははっ!姫様以外っ、されたことないのにぃっ!やぁっははははは!」


(姫様……、会った事無いけどそんな事してるの……)


 彼女は一応、騎士団長という立場。ならば、国の姫にもあった事はあるだろう。ネアはまだ見ぬ国の姫の姿を想像する。


「あはっははははははは!やめっ!っははははははは!」


「どうやら、あっちも終わったみたいなの」


 気付けば麻痺毒の霧が晴れていた。綺麗になった視界の先には勝ち誇るクレアと、その周囲に転がるロボットの残骸があった。


「くっふふふふふ!ふぁっはははははははは!」


 ここまでくれば、例え麻痺が解けるまで耐えられたとしてもシャリアの勝ち目はほぼ無いだろう。


「さて、それじゃ交渉といくの」


「あはっ!?はぁっ……!はひっ!ひぁっははははははははは!」


 彼女はネアの視線を、笑いながらも真剣な目で返す。


「貴女の研究データを渡して欲しいの。そしたら、今すぐ機械を止めて帰ってあげても良いの」


 ネアの要求は、シャリアの研究データ。


「くぅっ……!ふふっ!それ、はぁっははははははは!」


 シャリアのHPは既に半分まで減っていた。このまま無視した場合、まだあと半分もくすぐられ続ける事になる。


「あはっ!あっははははははははは!はなしっ!できないからぁっはははははははは!とめてぇっへへへへへへ!」


「ふむ……。まぁいいの」


 ネアは機械を操作し、念の為四肢に触手を絡ませて麻痺が解けても身動きが出来ない様にしてからくすぐりを一旦止める。


「はぁっ……!はぁっ……、はぁ……」


「早くするのー」


 麻痺が解けるまでの時間稼ぎの可能性もある。ネアは早く言うように催促する。


「データは、渡す事は出来ないわ……。けど、教わるなら良いわ」


 ネアは、言葉の意味を理解するのに時間を使う。


「どういうことなの?」


 結果、理解しきれなかった。


「そのままの意味よ。姫様からはデータに関して渡すなとは言われたけど、教えるなとは言われてないもの。だから、私を同行させなさい」


「……いいの?」


 言葉の意味を理解したネアは、それでも聞き返す。彼女は仮にも騎士団長という立場がある。


「貴女が国に仇を為すような人物ではなさそうですし。私達が駆り出されるような事態はそうそう起こりませんから。率直に言えば騎士団長というのは暇なんです。それに、貴女にも興味が湧いてきましたから」


「なら、それでいいの」


 そう言って拘束を解除し、装置を仕舞う。


「では、これからよろしくお願いしますね」


 ネアの画面に、シャリアがパートナーになったと表示される。

連続で機械の責めになってしまうけど、前話がネア活躍回だったので技術を盗んだ話は丁度いいかなと思ってこの話をチョイスしました。

10話ぐらい前に最初の1割ぐらいまで書いて筆が止まって、そのままほったらかしになっていた話だったりします。

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