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52話

無し回。戦闘多め。

 GWの最終日。いよいよやってきたアイリスの幹部4人とユカ達と、リリィの妹のギルドとの模擬戦。


「意外と人が多いわね……」


 ユカが外に顔を出し、周囲を見渡しながら呟く。

 場所は、リリィがギルドの敷地内にあったコロシアムを使う事になっている。サッカースタジアムを改造したような建築物であるここは、元々は女の子がくすぐられている姿を皆で楽しむ場所だったが、見られたいという人が殆ど居なかった為、いつしか模擬戦用の場所になっていった。

 ユカ達4人は他の幹部4人、陰陽術師のエルザ、狩人のルルナ、機械技師のネア、そしてユカ達以外だと唯一のユニークジョブ持ちでもある降星術師のイリーナ、計4人と共に控室にいる。


「まぁ、あっちのギルドでも有名な強い人が結構いるから、団長抜きだとどっちが強いかは結構気になってる人多いからねぇ」


 イリーナが少し得意顔で言う。因みに両ギルド以外の人は来ていない。

 そんな8人の元にリリィが紙を持ってやってくる。


「ほーい、みんなー。対戦表持って来たよー」


 リリィは8人が囲っていた机の上に対戦表と書かれた紙を置き、8人が、それを覗き込む。


・先鋒:エルザ    対 ボーグ

・次鋒:ルルナ    対 ローザ

・中堅:ネア     対 フォーズ

・副将:ユカちゃんズ 対 淑女の集い

・大将:イリーナ   対 クブル


「ユカちゃんズって」


 その一文に真っ先に反応したのはミコだった。


「可愛いでしょ。パーティー名を決めてないって聞いたから、適当に決めておいたよ」


 リリィが得意げな顔をする。


「私達は知らない人ばかりね……」


 ユカが相手を確認して呟く。


「まぁ、あなた達はねぇ。でも、全員結構有名よ」


 ルルナが有名人と伝える。


「私の相手は豪腕君かぁ、めんどくさそう」


 イリーナが少し嫌な顔をしている。


「さて、私は行くから。がんばってねー」


 リリィはそう言い残して出ていく。

 8人は続いてルールを見る。

・HPの全損、もしくは降参等の敗北を認める発言で敗北。

・先に3勝した方の勝ち。

・回復アイテムの使用は不可。スキル等は可。

・パートナーの同伴は不可。

・くすぐり系の攻撃は一切不可。


「くすぐり不可なんだ」


 ニナが呟く。


「まぁ、どっちの需要も無いからねぇ」


「それじゃ、最初は私だから。行って来る」


 エルザが会場へ向かう。開始の位置に着くと、相手も反対側の位置に着く。エルザの相手は、白い髭を誂えた老紳士の姿をしている。


「あの人は?」


 ミコがイリーナに聞いてみる。


「ボーグ君。確かリアルでも男だったかな。紳士の恰好してるけど、職業は侍だった筈」


「1対1だと、エルザとは相性が悪いの」


 そんな事を話している内に、専用の場所で審判をしているリリィが「始めっ!」と開始の合図を送る。

 その隣には妹のリーシャが静観している。


【陰陽術:木符・創森林】


 開始して速攻、エルザは相手に向けて札を飛ばし、術を発動し、地面から木々が生えて急成長する。


「ふんっ!」


 ボーグは、手に持っていた杖から刀を出し、周りの木を切り払う。


「何、あれ?仕込み杖?」


 その様子を見ていたミコが問う。


「そ。彼はアレがしたくて侍になったぐらい」


 イリーナがそれに答える。

 ボーグはそのままエルザの方に突っ込む。


【陰陽術:金符・十器争乱】


 エルザは森を生んだ直後、早々に斬られると判断し、周囲に札を10枚撒く。そしてそれが金で出来た武器に変わり、接近してくるボーグに向かって飛んで行く。

 だが、それら全てがボーグの刀によって弾かれる。


(やはり止められないか……。詠唱の暇も無いし……)


 術を扱う職業には、詠唱を唱える事によって強力な術を発動する事が出来る。だが、1対1で、相手が強い物理職だと中々隙が生まれない。更に陰陽術師は札を飛ばす等の、発動に事前準備のある術が殆どである。


【陰陽術:土符・山鳴り】


 エルザが札を速攻で出し、術を発動させると、震度4程の揺れが起きる。流石に対処する術が無く、ボーグは一瞬体勢を崩す。


【陰陽術:式神・朱雀】


 一瞬の隙を突いて札を取り出し、式神を召喚する。札が強く輝くと、真っ赤な体を持った大きな鳥、朱雀が姿を現す。


「むぅ、呼ばれる前に決着をつけたかったが、流石に無理だったか……」


 朱雀はボーグの方を向くと、口を開けて爆炎と見紛う様な炎を吐き出す。

 だが、ボーグは驚くべき事に、刀で炎を切り裂いた。


「刀で炎って斬れるの?」


 ミコが独り言の様に呟く。


「出来るよ。相当きついけど。レベルを上げて、イベントをこなして、スキルを習得するだけじゃ出来ない芸当。タイミングよく、狭い角度で切らなきゃダメだから」


 4人の幹部の中で唯一のルルナが答える。

 炎を切られても、朱雀は未だに健在である。上空を飛んで、空から炎の雨を降らせる。切られた事を考慮し、数で押し切るつもりだ。だが、ボーグは正確に炎を躱し、避けられない炎は斬って防ぐ。


【陰陽術:式神・白虎】


 勿論、エルザは朱雀とボーグの戦いを悠長に眺めている訳が無い。次の術を発動させ、純白の体を持った体長4メートルはある虎、白虎を呼び出す。

 陰陽術の式神の最上位である朱雀、白虎、玄武、青龍、麒麟。それぞれが違った特徴と力を持っており、状況や敵に応じて使い分けるのが陰陽術師の常識である。

 朱雀は物理系には弱いが、魔法の耐性が高く、攻撃も炎をメインとした戦い方をする。白虎は朱雀と真反対。物理特化であり、魔法や遠距離攻撃は殆ど使えない。だが金色の爪は鉄も容易に切り裂き、動きも俊敏である。更に白い表皮は、なまくら剣では傷も付けられない程硬い。


「白虎まで出て来おったか」


 ボーグは後ろに飛び退き、朱雀と白虎を視界に捉える。そして、心の中で優先順位を決める。

 白虎が地を蹴り、一息でボーグの元まで接近し、金色の爪を振り下ろす。ボーグは刀でそれを受け流し、次が来る前にジャンプして、白虎の背中に乗り、白虎が反応する前に更に飛んで、飛んでいる朱雀に向けて居合斬りの様に刀を振るい、斬撃を飛ばして朱雀を両断する。切られた朱雀は札に戻る。


「斬撃を飛ばすなんて出来るんだ」


「勿論出来る。けど、かなりの魔力を込めなきゃ朱雀を両断なんか出来ない」


 ユカ達は余り知らなかったが、物理職でも魔力は使う。むしろ魔力を使わなかったら、ただ武器を振り回してるだけの一般人である。

 ボーグが着地する瞬間を狙い、振り返った白虎が腕を横薙ぎに振るうが、ボーグは刀でこれを防ぐ。


『木火相乗、八卦にて姿を為せ』

【陰陽術:八卦之符・火雷灰塵】


 ボーグが式神に気を取られている間に、エルザは詠唱を済ませ、術を発動させる。

 手にある札が光り輝き、魔法陣の様に八卦を宙に描く。そして、ボーグに向かって真っ白な炎と雷がレーザービームの如く発射される。

 

【闘技:心頭滅却】


 直撃は避けられない。そう悟ったボーグはスキルを発動させる。闘技とは、前衛職ならばどの職でも習得が可能な特殊なスキルで、その効果は補助や身体強化が多い。今回ボーグが発動させたものは、魔法防御力をかなり上昇させるスキルである。効果はかなり高いが、一歩でも移動すれば解除され、再使用まで一分のインターバルがある為、使いどころが難しく、発動するタイミングも重要である。


「防がれたか……」


 エルザはすぐさま次の手を考え、札を取り出す。そして、術が消えると同時に離れていた白虎がボーグに襲い掛かる。


「ぬぅっ……、白虎は厄介ですな……」


 大きな体躯に見合わない速度で駆け回り、生半可な攻撃ではまともなダメージを与えられない程高い物理防御。それでいて前衛職ですら直撃を食らえば大ダメージを食らう爪の一撃。物理攻撃しか使えない上に、前衛職としては防御力が低い侍であるボーグにとって白虎は相性が悪い相手だった。因みに、白虎は魔法に対しては紙と言えるほどに防御が低い。


【剣技:居合・結界】


 ボーグは一度、刀を鞘(仕込み杖)に戻すと、腰を低くして構える。そこに白虎が飛び掛かると、目で捉えられない程の速度で切り裂く。そして、白虎に確かな傷を与える。

 侍の固有能力の一つ。【剣技:居合】系統の技は、防御力をある程度無視して攻撃する事が出来る。どれ程無視出来るかは、使用者と対象の能力に依存する。

 これによって白虎にも確かなダメージを与える事が出来る。とはいえ、白虎は素早く動き回る為、一撃を与える隙が少ない。


「術師と侍が互角の勝負してるの、何かアレよね」


 二人の戦いを見ていたニナが呟く。


「どっちも防御が薄いから、先に直撃を食らった方が負けかなー」


 イリーナが二人の戦いを見て分析する。


「陰陽術師はどちらかと言うとサポート職だから、物理職とあそこまでやり合えるのはエルザちゃんだからかなー」


 ルルナも感慨深げに呟く。

 控室でそんな事を話し合ってる内にも戦いは進んでいく。

 白虎の一撃を的確に受け流し、そうして生まれた隙を突いて強烈な一撃を放ち、ようやく白虎を撃破する。

 エルザは白虎が撃破された瞬間、上級の陰陽術を放つ。

 だが、ボーグは横に大きく跳躍してこれを躱し、直ぐにエルザとの距離を詰める。詠唱アリの術を発動した直後でもあり、エルザに接近を防ぐ術は無く、そのまま至近距離で刀による強力な一撃を食らい、HPを一気に削られる。


「っ!」


 立て直す隙も無く、そのまま刀による連撃を食らい、HPを全て削り取られる。


「はい、しゅーりょー」 


 リリィが合図を出し、初戦は終了となる。


「初戦は私達の勝ちね」


 リーシャがリリィにドヤ顔で言う。


「まだ4戦あるから分からないよー」


 リリィも良い笑顔で答える。

 そしてエルザが控室に戻ってくる。


「ごめん、負けちゃったわ」


「気にしないで良いの。私かルルナのどっちかが勝てば、ほぼ勝てるの」


 ネアのさりげない一言でユカ達は一瞬体を強張らせる。


「さて、次は私ね」


 ルルナはそう言って会場の方へ向かう。

滅茶苦茶時間がかかった本編。

次はルルナとネアの試合になります。


その前に番外編挟むかも。



某ゲームのイベントで敵のHPが約2%残って倒し損ねた私です。

おまけしてくれてもいいじゃん……

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