46話
霊園の奥へと、道中の魔物を蹴散らしながら進む4人。
「前回はこの辺まで来たんだよね」
ミコが周囲を見渡してそう言う。
「うん。モモさん、レベルはどう?」
ユカがモモの方を向いて尋ねる。
「流石にそろそろ上がりにくくなって来たわね」
モモは転職したばかりなので、流石に序盤はパワーレベリングさながら一体倒せばレベルが上がる程であったが、流石に上がりにくくなっていた。
「専用装備の製造スキルも手に入ったから、今日はもう引き返してもいいけど?」
習得したスキルを一つ一つ確認し、整理しながらモモは3人にそう言う
「製造の為の素材は持って来てないの?」
ニナがモモにそう聞く。
「アイテムボックスにもう空きが無いのよ。何が必要になるのかも分からないし」
モモはそう言って否定した。
プレイヤーなら誰もが使っているアイテムボックス。実はこれには容量による制限があった。アイテム一つ一つに容量が細かく設定されており、合計の容量値がアイテムボックスの最大容量をオーバーすると、移動速度が低下し、攻撃スキルが一切使えなくなるというバッドステータスが発生する。
なので、必要なアイテムだけを持ち歩き、素材等の戦闘の役に立たないアイテムは拠点の倉庫に収納しておくのが常識である。
「ん、じゃあ引き返す?そろそろレギオンが湧くだろうし」
レギオンはこのハテノ霊園で一定数のゴースト系の魔物を倒すと出現するハーフレイドボスである。
ユカ達は以前、この魔物に敗北している。しかしあの頃よりレベルが上がっている今ならば倒すのも十分可能ではある。
「そうねー。そうしよっか」
だがモモの装備が初期装備なので、流石にきついだろうと撤退を決める。
4人はワープクリスタルを使い、ギルドハウスへ帰還する。
モモは自室へ戻ると、素材を倉庫から取り出し早速装備を作る。出来れば露出が少ない装備であることを願って。
「成程……どうあっても恰好は変わらないのね……」
だがモモの願いは叶わず、初期装備と大して変わらない衣装が出来上がった。魔人使いもユカの忍者と同じように、専用防具を着ける事を前提としたステータスの為、素のステータスはそんなに高くない。
「……戦闘時だけこれを着て、普段は普通の服を着よう」
出来上がった服を見つめて、大きく溜息を漏らす。ユカと、その仲間二人なら別に見られても、少しは恥ずかしいが問題ないというのがモモの認識である。だが見ず知らずの他人には見られたくない。その為、これを着るのは戦闘時だけと決める。
「武器は、変わらず笛なのね」
茶色の笛を眺めるモモ。最初は何故専用武器が笛なのか分からなかったが、職業レベルをある程度上げスキルを習得していく内にその理由が判明する。
モモが習得したスキルは魔人への行動命令や魔人が使用できるスキルの解放が多いが、中には笛を吹く事で魔人や味方を回復したり、防御力を上げたりするスキルもあった。
つまり魔人使いは、魔人を戦わせて、後方で笛を演奏して味方をサポートする戦い方をする職業であるという事である。
「今度、スキル習得イベントでも探してみようかしら……」
聖術師と比べるとレベルの割に習得できたスキルの数は少ない。なのでイベントで習得できるスキルが多いとモモは考える。
だが今の所見当も付かないので、どうしたものかと唸る。
「私一人で考えていても分かりそうに無いわね」
数分程考え、その答えに至ったモモは部屋を出て3人の仲間が待つ喫茶店へ向かう。
いつもの喫茶店へ入ると、3人は適当に食べたり飲んだりして雑談していた。特にユカはいくら食べても現実で太ったりしないという理由で巨大なパフェを堪能していた。
余談ではあるが、現実で運動した後VRゲーム内で好きなだけ食べて欲求を発散するというダイエットをする人は少なくない。
「おまたせ」
「おかえりももっちー」
黒を基調としたシンプルなワンピースを着て現れたモモを見て、露出が多かったんだなと察し触れない様にする3人。
「さて、モモさんも戻って来たし。どうする?」
「時間が微妙よねー」
後1時間程で寝ないと不味い時間になる。一時間では狩場に行くだけで終わるだろう。そんな微妙な時間で何をしようかと思案するユカとミコ。
「それなら、少し聞きたい事があるのだけど。私のスキル習得イベントは何処にありそうかしら?」
モモはそう言って今まで習得してきたスキルについて3人に教える。
「んー……。魔人関係は正直全く思い浮かばないけど……。笛関係ならそういった場所に行けばいいんじゃない?」
ミコが半分適当に、思い付いたままに発言する。
「コンサートホールの事?」
ニナが思い当たる場所があるような返事をする。
「あそこは女の子を楽器に笑い声を楽しむ場所だから関係なさそうだけど……」
現実では関係がありそうな場所も、流石このゲームと言った所か、盛大にそっち方向に作り替えられていた。
「色んな街で演奏してるNPCとか探してみる?」
ユカが一番可能性が高そうな案を提案する。
「そうねー。それが一番いいかなー。結構大変だし時間かかりそうだけど」
街は大陸の中央にある始まりの街の他に、北と南に比較的大きな街が、西と東に小さな町がある。
「まぁ、こうして空いた時間に探してみるわ」
「じゃあ、ついでと言っては何だけど明日は北まで行ってみる?まだ行った事無かったよね?」
ユカがそう提案し、それに決定する。
一先ず今日は時間も微妙なので各々自由に街を散策しつつスキル習得イベントのヒントを探すという事で決定する。
ユカは最近狩りに行ってばっかで、街を回れていなかったなぁと思いつつ適当に街を歩く。
街は無駄に広大で、ユカは未だに全てを見て回りきれていなかった。
「相変わらず、街には色んな建物があるわねぇ」
道具屋の様な一般的な店もあれば、美術館や植物園等の施設。マッサージ店の様な直球の店もある。
「さて、どうしようかな」
ユカはゆっくり道を歩きながら本来の目的を忘れて建物を見て回る。
「現実なら普通の場所でも、このゲームだといかがわしい場所にしか見えないわね……」
様々な建物を見て、苦笑いしながら通っていく。
そして歩く事数分、水色の大きな建物の水族館へと入っていく。
安い入場料を支払い、入り口を通って奥へと進む。順路に従って進むと最初にクラゲの水槽が現れる。
当然ながら、このクラゲも含め水族館に展示されている生物は全てゲーム内にしか存在しない種であり、全てくすぐってくる。そしてご丁寧に端の方にふれあいコーナーという看板と入り口がある。
尚、このゲームの水棲系の生き物の殆どは夏季限定の上級ダンジョンでしか出現しない。その為、期間以外では水族館に来るしか会う方法がないのである。
「クラゲか……結構大きいのね。現実のもこの位なのかな……?水族館とか暫く行って無いからなぁ」
そう呟いて次の水槽に行く。すると次の水槽もクラゲだった。ただし先程のと違い、一匹一匹が小さく、手のひらサイズしか無かった。
「成程、集団で襲ってくるタイプね」
ユカの予想通り、このクラゲは集団で相手の体に張り付き、短いが大量の触手で蹂躙して攻撃してくるタイプである。
「あんまり気分が乗らないわね……。次行ってみよう」
そう呟いて次へと進む。
次の水槽に居たのは大量のドクターフィッシュ。少しそそられたが、これもスルーして次に進む。その次の水槽にはタコが居た。
「タコ……。定番と言えば定番ね」
しかしユカはこれもスルーして次へ行く。隣の水槽にはイカが居たが、これもスルー。
「オウムガイか……。随分と大きいわね……」
その次の水槽にはオウムガイが居た。だが、そのオウムガイは人を丸呑みに出来るのではと思えるぐらいに大きかった。ユカは端のふれあいコーナーの入り口を通って中へと入る。通路の先に用意されていた個室に入ると、部屋の鍵が自動で掛けられる。そして目の前には、正確には眼下に、水深5メートルはある水槽の水面が広がっており、中にはオウムガイがいる。
「これは、どうしろと……?」
ユカは水中呼吸を可能にする装備等を持って来ていない。
だが、ご丁寧にユカが入って来た出入り口の扉の横に10分だけ水中で呼吸が可能になるポーションが置かれていた。
尚、水中呼吸系の能力無しに水中に潜れば、30秒後に最大HP5%の割合ダメージを1秒間隔で与えられるので、それらの能力無しでの水中戦闘は不可能である。
「成程、これを飲めと。で、くすぐられないと出られないのね」
試しに扉を開けようとしてみるが、鍵が掛けられているので出られない。扉の脇には『5~8分くすぐられれば解放されるからネ』という文章が書かれた看板が立っている。要するにこれは、水中呼吸のポーションの盗難防止である。因みに水中呼吸系の能力が付与されている装備があればポーションを使う必要は無いが、そこまでして盗む程価値のある物でも無かったりする。
ユカはこんな事もあろうかと用意していた何時かのスク水に着替え、ポーションを手に取って一気に飲み干す。そして水槽の中に入る。水中に潜ると、ユカの顔をシャボン玉の様に空気が纏う。
(これが水中呼吸の能力か……。わざわざ周囲に空気を纏うのは笑い声を上げる為ね……)
運営のこだわりを感じつつ、オウムガイに接近する。するとオウムガイの方もユカの存在に気付き、その触手を伸ばす。水中では満足に動く事も出来ない為、ユカは呆気無く四肢を触手に絡まれ拘束される。
(これは……。今後水中戦闘の機会があったら練習するべきね)
四肢を絡めとられたユカをオウムガイは触手で自身の元へと引き寄せる。そして大量の触手を体に這わせ、水着の上からくすぐり始める。
「んぅっ……!ふぅっ……!んっ……くくっ……!」
水着は肌に密着しており、中に触手が潜り込む事は無い。逆に言えば、水着の上からの刺激でも素肌と大差無いという事である。
「ふひっ……!くふぅっ……!んっ……ひっ……!」
最初は何かを試す様な、優しく撫で上げたり、突っついたりするだけだったが、段々と刺激が強くなっていく。
「んふっ……!んんっ……!ひぁっ……!ふふっ!」
2本のか細い触手は、ユカの脇の窪みを先端で執拗に、かき回す様に動く。
「んっ……はひっ!んふふっ……!ひゃぅっ……!」
4本の触手がユカの脇腹を左右同時に突っつけば、体が跳ねる。タイミングをずらしてみれば抑えきれない笑い声が漏れる。
「ふぅっ……、んふっ……!ふっ……ひぁっ……!」
太ももに蔓の様にしっかりと絡み付いた触手は、上下に動く。僅かではあるが、確かな刺激をユカに与える。
「んぁっ……!ふふっ……!ふひっ……ふぁ……!」
そして触手の中でも特に細いのが2本、ゆっくりとユカの顔に近づく。そして耳の中へと侵入し、敏感な場所を撫でて刺激する。
「んひゃぁっ!やっ!だめっ!っははははははは!」
その刺激が、ギリギリで耐えてきたユカを瓦解させる。
「あはっ!っはははははははは!ぁっははははは!」
こうなればもう耐えられない。ダムが決壊するかの如く笑い声が流れ出る。
「あぁっははははははは!っはは!はぁっははは!」
主に耳の刺激のせいで、ユカの意識は上半身に向いていた。その為、触手がユカの両足を短い触手がびっしり生えてるオウムガイの口の中へと運んでいる事に気が付かない。
「やぁっはははははは!んふふっ!ふぁっははは!」
そして遂に、両足が口の中へと運ばれ、膨大な数の短い触手がユカの足を覆う。
「んにゃぁっ!?っははははははははははははは!」
足全体が短く細かい触手で覆われれば、それだけで襲ってくるくすぐったさは並大抵ではない。
「んやぁっははははははは!あはっ!っはははは!」
口内の触手は別に動いている訳では無い。だが、くすぐったい刺激から反射的に逃れようとする動きが、僅かではあるがユカの足を動かす。
「んんっ!っひひひひ!ひぁっはははははははは!」
その僅かな動きが、足と触手との間にくすぐったい刺激を生む。
「んひゃぁっはははははははは!あはっ!はぁっ!」
それは例え頭で理解できても防ぐ事はかなり難しいだろう。
「あはっ!あっははははははは!ははっ!あはっ!」
オウムガイは約8分、存分にユカをくすぐるとご丁寧に水槽の外まで運び解放する。
ユカは5分程、余韻に浸りつつ呼吸を整えると、いい時間いなっている事に気付きログアウトする。
次話は残り3人の街探索になるかも(未定)
見直して誤字とか見つけると少し凹む……