45話
少な目(またk
モモはユカ達と蜃気楼神殿を攻略し、クエストの報酬で得たアイテムを早速使う為、街へとクリスタルで帰還し、教会へ向かう。
教会で転職の選択肢を選べば、そこに魔人使いの項目が確かにあった。
モモは迷わずそれを選択しする。転職すると、職業レベルが1に戻されてしまうが、モモは即決だった。
「お帰りー。どうだった?」
「見た目は……余り変わりないね」
教会から出てきたモモを迎える3人。
「えぇ、先ずは専用防具と専用武器が必要になるみたい。一応初期装備は貰ったけど……」
モモは何やら複雑な表情をする。
「どうしたの?」
ミコが疑問を率直に聞く。
「取り敢えずギルドハウスに戻らない?」
モモがそう言い、4人はギルドハウスの、ユカの自室に移動する。
ユカの自室でモモは初期装備を装備する。そしてユカとミコは、モモが複雑な表情をしていた理由に納得がいった。
「うぅ……」
武器は問題ない。茶色の笛で変わった所は見当たらない。
だが防具は、所謂アラビアンナイトの衣装であった。下半身は足元まで布で覆われている為、問題ない。だが上半身は、頭にヴェールの様な物が着けられ、腕は下半身と同じような布で覆われており、胴体には胸を覆い隠す様に、スポーツブラに似た形の衣装になっている。
簡単に言えば、上半身の露出が多いのである。何時かのミコと同じぐらいくすぐりに対する防御力は貧弱である。
「まぁ、うん。取り敢えず強い防具が作れるまでガンバロっ!」
ミコが頑張って励ます。
「まぁ、取り敢えずもう23時近いし。今日はこの辺で落ちましょうか……」
ユカが解散を促す。事実、もうそろそろ寝ないと明日の学業に支障をきたす。優等生であるユカとモモには重要な事であった。
「ん……そう言えば」
ニナが何かを思い出したように口を開く。
「マナー違反だけど、聞いていい?」
最初にそう断りを入れる。
「まぁになっちとも大分打ち解けてきたし、いいよー」
最初に承諾するのはミコ。ユカとモモも頷いて肯定する。
「前々から気になってたんだけど、3人って学生さん?私も学生だけど」
3人は頷いて肯定する。
「ついでに3人とも同じ学校の同じ学年だしねぇ」
ミコが追加情報を齎す。
「そっか、じゃあ……。橘優香さん、藍浦美琴さん、百瀬香織さんで合ってる?」
ニナのその一言で完全に凍り付く3人。
「え……何故分かったの?」
最初に口を開いたのはミコ。純粋に疑問をぶつける。
「同じ学校の、同じ学年だからね。そっかそっか、じゃあ明日話しかけてみるよ」
そう言って、今日はお開きとなり、4人ともログアウトする。
そして翌日。学校の授業が終わり、放課後。美琴と香織のクラスによる優香。
「放課後になったけど、来ないわね……」
香織は辺りを軽く見渡しながら二人にだけ聞こえる声量で呟く。
「そう言えば、二人と一緒に風紀委員室に来るよう言われてるのよね」
優香は思い出したように言う。
「風紀委員室?美琴、何かやったの?」
真っ先に美琴を疑う香織。
「ひどっ!?何もしてないよ!」
心外だと憤る美琴。
教室に居ても来る気配が無い。と言うより、ゲームの内容が余り人に知られたくないと思う人が多いからか、人が居なくなってから現れる可能性が高いと思い、一先ず3人は風紀委員室へと向かう。
「失礼します」
ドアをノックし、扉を開けて風紀委員室へと入る3人。だが、部屋の中には誰も居なかった。
「誰も居ない……?」
「おかしいわね……呼んどいて誰も居ないとかある……?」
待っていれば誰か来るだろうと思い、3人とも部屋に入る。その瞬間。
「隙ありっ!」
開きっぱなしの扉から一人の少女が3人にバレない様に部屋へ入り、ユカの両脇腹を突っつく。
「ひゃぁぁっ!?」
予想外の刺激に声を上げ、体を跳ね上げる優香。尚、扉は入ってきた少女が足で閉めた。
「なっ!?なっ!」
優香と他の二人は入ってきた少女を見て驚く。
「予想以上に良い反応だね。わざわざ仕込んだ甲斐があったよ。あ、私がニナだよ」
入ってきた少女は、まるで白い兎の様に、肌も髪も真っ白で、真っ赤な瞳を持ち、ユカ達と殆ど変わらない身長の美少女。髪はスカートの裾の辺りまで伸びており、今日はポニーテールにしているが、コロコロ変えており、決まった髪型は無い。
その少女の名は『二条成美』、現風紀委員長である。
「二条、さん。が、ニナ……?」
脳の処理が追い付かないユカ。
だがそれも当然と言える。学校内での成美とゲーム内でのニナは性格が違い過ぎるからである。学校では香織の様な、基本的に無表情不愛想で自分にも他人にも厳しい秀才である。
だがゲーム内では攻め側でも受け側でも楽しめる、言ってしまえば変態気味な子である。本当に同一人物なのか疑うのは当然である。
「まぁ、私は学校で大分キャラ作ってるからねぇ。そういう反応になるだろうなって思って不意打ちしたんだよね」
成美の言う通り、不意打ちでユカの脇腹を突っついた事により信憑性はかなり高くなった。
「という訳で、リアルの私もよろしくー」
と、元気よく挨拶を終え一呼吸空いた時、部屋の扉が開き先生が入って来る。
「どうしましたか?先生?」
その瞬間、まるで別人になったように人が変わる成美。
「いや何、優等生二人を風紀委員室に呼び出したと聞いてな、何をやらかしたと思って来てみたんだ」
「成程。ですが大丈夫ですよ。人手が足りなくて少々仕事を手伝って貰っただけですから」
それは3人がよく知る成美の学校での普段の姿だった。
「そうか、それはもう終わったのか?」
「えぇ、恙無く終わりました」
そのまま何事も無く会話を終え、先生は部屋から出ていく。
「凄い豹変するわね」
まるで別人が乗り移った様な変わりようを目撃し、素直な感想を言うユカ。
「学校では中学からずっとこのキャラで通してるからねぇ」
苦笑いで答える成美。この事実を知ってるのは3人以外だと親だけであるという。
「まぁ挨拶も終えたし、帰ろっ!」
こうして4人は荷物を纏めて帰宅する。
「ところで、今日はどうする?」
校門を抜け、ある程度歩くと成美がキャラを解き3人に聞く。
「香織さんの職業レベルをある程度上げたいから、今日は少し適正レベルが低い場所に行こうかなって思ってるわ」
「じゃあハテノ霊園は?死霊系はHPが低い傾向にあるし。レギオンにリベンジ出来るよ」
そう話は纏まり、4人は一旦別れ、数十分後ゲーム内で再会する。
必要なアイテムを買い揃え、道中の魔物を全て無視して4人はハテノ霊園に到着する。
「ここに来るのも久々ね」
「まぁ、レギオンに負けた日以来一回も来てないからねぇ。死霊術師は何かと来る必要があるから通うらしいけど」
こうして4人は霊園の中へと侵入する。とは言え、入り口付近の魔物は4人にとっては既に雑魚である。
「ゴーストが出てきたね」
そんな4人の行く手を阻む様にゴーストが2体現れる。
「折角だし、どういう戦い方するのか見てみたいなぁ……」
ニナが期待を込めた眼差しをモモに向ける。
「分かったわよ……」
モモは観念したように前へ進み出て、笛を構える。
すると、笛の穴から群青色の煙が噴き出し、中空で集まると人の形を作り、あっという間に群青色の肌に黒い髪をポニーテールにした魔人が降り立った。
「完全に使役系の能力だね。まぁ職業名から察しはついてたけど」
モモが笛を振って指示を出す。魔人は指示に従い、ゴーストに殴りかかる。
「殴るのっ!?」
何か魔人らしい凄い攻撃でもするのかと思っていたミコは普通に殴った事に驚く。
その後も何度も殴るが、ゴーストに効いてる様子はない。それもその筈で、そもそもゴーストを始めとした霊系は高い物理耐性を持っている。
「まだレベル低いからこれぐらいしか出来ないけど……」
モモは助けてと目で訴える。だがよそ見をしている間に、もう一匹がモモの死角から忍び寄り、モモの脇腹を両手で掴む。
「ひゃぁぁっ!?」
そのままゴーストは素肌を晒している脇腹を揉むようにくすぐる。
「ひゃっふふふふ!ちょっと、はなれてっ!はふっ!ふっふふふふふ!」
モモは腕を振り回し、体を捩ったりして振り解こうとするが、ゴーストの体をすり抜けて動きを阻害できない。
「ふひゃんっ!ねぇっ、たすけてっ!んっふふふふふふ!」
ゴーストは指をまるでピアノでも弾くようにリズミカルに動かし始める。
「ふひゃぁっはははははははははっはぁっ!いい加減っ、怒るよっ!」
そう言ってモモが睨みつけてきたため、ニナが渋々といった表情で蒼い炎を纏った鎌を構え、ゴーストに向かって振り下ろす。それは的確にゴーストのみを叩き潰し、一撃で撃破する。
その間にユカが魔人と殴り合ってたもう一体を忍術で撃破する。
「早くっ、助けなさいよっ……!」
そう言って3人を睨むモモ。
「いや、美少女がくすぐられる姿は幾ら見ても良いものだよ?」
ニナが隠す気のない欲望丸出しの発言をし、モモは呆れたのか諦めたのか、ただ項垂れる。
「まぁ、取り敢えずこのまま奥へ進みましょう。以前より奥に行くかはモモさん次第ね」
そのまま4人は霊園の奥へと、道中襲い来る魔物を蹴散らしながら進む。
昨日PCが突然ブルースクリーンに……
一応こまめに保存はしていますが、こわい……
そろそろ寿命かなぁ……