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42話

 四人は新しい装備の材料であるミスリル鉱石の採掘ポイントの手前まで来ていた。


「結構広い感じの部屋だねぇ」


「如何にも戦闘用って広さね」


 そして部屋の反対側で待ち構えているのは、紫色の長いストレートのロングヘアーに赤と黒を基調としたキャミソール風の露出が多いゴシックワンピースドレスを身に包み、背中には蝙蝠のような羽が生え、スカートからは先が三角になっている尻尾を覗かせている『小悪魔』


「あれが小悪魔よ。幼い少女の姿をしてるけど、接近戦もこなせるし、魔法も強い強敵よ」


「ちなみにあれの上位種がサキュバスで、上位になれば妖艶な女性になっていくのよ」


 ユカが冷静に情報を伝える中、ニナはミコとモモにとってどうでもいい情報を伝える。


「さて、あの子を倒さないと目的まで辿り着かないからね」


 そう言ってユカが刀を抜き、他の3人も武器を構える。

 そしてユカが縮地で距離を一気に詰め、至近距離で【忍術:火遁・業火】の発動により、戦闘が幕を開ける。

 炎が小悪魔を包むが、小悪魔は平気そうにしている。ユカはその事を確認すると、後ろに飛び退く。


【死神技法:魂の葬炎】


 後ろに飛び退くと同時、蒼い炎がユカを追い越し、小悪魔に追撃する。


【豊穣:増魔の実】


 ミコが種を周囲に撒き、水を与える。すると植物が急成長し、人の頭部程の大きさの紫色の実が生る。その実が地面に落ちると、プシューという音を立てて紫色の煙が噴き出し、周囲に充満する。この煙には一定時間味方の魔力値を高め、魔法の威力を上げる効果がある。


「これ、効果は良いんだけど、もうちょっと色とかなんとかならないの?毒ガスみたいになってるわよ……」


 そこからほぼ動くことが無いモモがミコに苦情を言う。


「運営に言ってよ……」


 ミコはどうしようもないから我慢してと言う。

 二人がそんなやり取りをしてる間にも前線は戦闘を繰り広げている。

 小悪魔が魔法を行使すると、魔法陣から触手が出現し、二人を捕えようと迫るがニナは鎌で、ユカは刀で切り捨てる。


【忍術:土遁・破砕】


 ユカが忍術を発動すると、槍の様な形をした長さが5メートルはある土の塊が出現する。それは小悪魔に向かって真っ直ぐと飛んで行く。だが、それが小悪魔に届く事は無かった。


【魔術:エクスプロージョン】


 小悪魔が発動した魔術が大爆発を起こし、ユカの術を相殺する。

 その直後、小悪魔の足元に布の塊の様な物が転がって来る。小悪魔はそれを確認するなり、瞬時に遠くへ蹴り飛ばす。それはユカが予め作っておいた薬玉で、効果は睡眠である。


「やっぱりかかってくれないかぁ……」


「上手くいった所で眠ってくれる保障は無いけどね。多分耐性持ってるし」


 ニナの言う通り、ここまで適正レベルが高ければ、状態異常に対する耐性が無い敵の方が珍しい程である。


「素材は地味に貴重なのに……」


 ユカは薬玉を作るのに消費した素材を少し気にする。

 続いてニナが鎌を構え突撃する。


【死神技法:贖罪の火】


 ニナが放った5つの蒼い火の玉を小悪魔が処理している間に距離を詰める。


【死神技法:滅却の焔】


 手を伸ばせば届く程まで接近すると、新たな術を行使する。するとニナと小悪魔の丁度中間辺りで魔法陣が発生し、それが蒼い炎を生み、膨れ上がり、大爆発を巻き起こす。

 流石にこの距離でこの威力を叩き込めば無事ではいないだろう。そう確信しているニナは追撃しようと次の術を発動しようとする。その瞬間、ニナを中心に地面に半径1メートル程の魔法陣が広がる。


「何この魔法陣?」


 それはニナが発動したものでは無かった。ニナは術の発動を中止し、直ぐに逃げようとする。だが、僅かに遅かった。


【魔術:崩壊の魔手】


 小悪魔が術を発動すると、魔法陣が光り輝き、そこから白い手袋を着けたマジックハンドの様な手が20本現れ、一斉にニナに群がっていく。

 この魔術は本来、複数人を一斉に攻撃する為の魔法であり、だからこそ20本も出て来るのである。しかし、現在範囲内にはニナしかいない。よって、その全てがニナに群がる。


「ちょっ、これは……逃れられないっ!」


 手はニナの四肢に絡み付き、逃れる事を不可能にする。そうして逃げられなくしてから、肌触りの良い手袋で体をくすぐり始める。


「ふひっ……!ちょっとっ……!多いよっ……!」


 因みに今日のニナの服装はセーラータイプの学生服の様な服とスカートに、黒のオーバーニー。その上から黒いローブを着ている。死神は固有のパッシブスキルにより、黒い死神のローブを着ているだけで能力値にボーナスが加わる。その為、忍者と比べると服装が自由である。

 手はそんなニナの服の上からくすぐっていたが、次第に服を捲って中に侵入し、素肌を触り始める。


「ふひゃっははははははははは!だめっ!おおいっ!あはっ!あっはははははは!」


 気付けば右足だけ持ち上げられ、靴を脱がされる。そして靴下越しに2本の手が足裏を責める。


「あははははははっ!ひゃっははははははは!やぁっははははははは!」


 四肢は完全に絡み取られ、若干宙に浮いており、一切の身動きが取れなくなっている。


「ふひひひひっ!ひぁっはははははは!はひっ!ふひっ……!んっ……!やっはははははははは!」


 そしてこの術は術者本人は自由に移動出来る。その為、未だにユカは小悪魔と攻防を繰り広げていた。


「あはははっ!あはっ!っはっはっは!はぁっはははははははは!」


 ニナがくすぐられてる間にもユカは忍術で小悪魔を攻撃し、小悪魔はそれらを食らったり防いだりしつつユカとの距離を徐々に詰めていく。


「やっぱ、私の魔法じゃあんまりダメージが出ないかぁ……」


 小悪魔は魔法に対する防御力もまた高く、ユカの忍術では満足なダメージを与えられない。因みに忍術は魔力値依存で威力が決まるが、刀を使った剣術等は戦士や侍と違い筋力値ではなく敏捷値と器用値に依存している。ユカはステータスを敏捷値と器用値を高くし、それらの次に魔力値に割り振っている。その為、ユカの魔力値はモモやニナより低い。


「やるしかないか……」


 小悪魔との距離も大分縮んで居る為、ユカは覚悟を決めて刀を抜く。そして縮地で僅かな距離を縮め、先手を打つ。


【剣技:旋風・二重】


 ユカが刀を振るい、二重の斬撃が小悪魔を襲う。物理防御は魔法程高くは無いので、確かなダメージを与える。しかし致命傷には至らず、そのまま小悪魔は怯む事無くユカを捕まえる。


「やばっ、はなしっ!」


【魅了の魔眼】


 ユカが抵抗するより早く、小悪魔がユカを見つめ魔眼によって魅了にかける。


「抵抗しないで」


 小悪魔が優しく囁く。


「……はい」


 ユカは指示に逆らえず、一切の抵抗をしなくなる。


「両手を上げて、降ろさないでね?」


 小悪魔の指示に従い、ユカは両手を上げる。そうして無防備になった脇に両手を這わせ、くすぐり始める。


「ふひゅっ!くひっ!ふふふっ!」


 魅了の拘束力は強く、ユカは指示に一切逆らう事が出来ない。


「ひゃはっ!くすぐったいっ……!ふひゃっははははははは!」


 小悪魔は嗜虐的な笑みを浮かべ、ユカをくすぐり続ける。


「あははははっ!はぁっ!はっ!ひゃはっ!ひゃっははははははははは!」


 どれだけくすぐったくてもユカは抵抗する事が一切出来ない。


「ふひひひひっ!ひぁっはははははははは!はぁっ……!はぁっはははははは!」


 だが、それをただ傍観する訳がない人物が一人いた。


「ぶっ〇す」


「ももっち!?キャラ違うよ!?」


 モモの怒りが頂点に達しそうになっていた。


「私が植物で攻撃するから、ももっちは……」


 すぐに回復と補助をと言い終わる前に、モモが術を行使する。


『大いなる光は、罪の一切を照らし映す。騙る事なかれ、光の神は虚偽を嫌う。愚かなる罪人よ、神の怒りを知れ』

【光輝聖術:ディバインラース】


 モモを中心に魔法陣が広がり、モモが言葉を紡ぐ度に光が強くなる。そして全ての言葉が紡がれた時、魔法陣が一際強く光ると、途端に弾ける。弾けた光はモモの頭上に集まり、光の珠となる。光の珠は急速に膨れ上がり、直径が2メートルを超えると急激に萎む。否、圧縮される。そうして膨大な破壊力を秘めた光の珠はレーザービームの様に小悪魔のみを正確に捉え、撃ち抜く。

 光が収まると、小悪魔は残りのHPを全て失い、その場に倒れていた。


「何、今の……」


「こないだユカさんと習得した聖術よ。詠唱が有る上に消費が激しいから今まで出番が無かったけど」


 術者が倒れた事により、ニナも解放され、ユカも誘惑が解ける。息を整えるのに若干の時間を要したが。

 念の為回復して、4人は先を進み、無事にミスリル鉱石を入手する。


「長かったわね……」


 モモがミスリル鉱石を眺め、呟くように言葉を漏らす。


「最終武具の材料になるオリハルコンは更に奥にあるよ。日緋色金を使うなら取りに行く必要は無いけど」


「オリハルコンを守るボスはレイドボスだしねぇ……流石に4人じゃ厳しいわよ」


 全員分のミスリル鉱石を確保すると、4人は街へと帰還する。そしてモモとニナはヘーニャの元へ向かう。ユカとミコは専用武器になる為、自分で作らねばならないからである。

 そうして、ヘーニャの工房からは今日も笑い声が響く事となった。

ブクマ、評価、感想ありがとうございます。

感想は何て返せば良いのか分からないので返信はしていませんが有り難く読ませて貰っています。

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