37話
作中の時間が全然進まない
ニナとミコが盗賊団のアジトに潜っている時のユカとモモ。二人は街の北西にある霊峰の中腹辺りに存在する洞窟の中の泉で聖術の習得に必要な儀式を行っていた。
「ふっ……くふっ……!んっ……ふふっ……!」
泉の中でモモは装備を全て外し、どうやっても外せない下着だけの状態で居た。
「ふひゅぅっ!んふっ……!ふっ……ぅっ……!」
そして、そのモモの背中をユカが筆で撫で回す。
「ふっひひひ……、んっふふ……んんっ……」
ユカが筆を動かし、モモの肌を撫でる度に声を上げ、体を震わせるモモ。
(何か変な気分になりそう……)
等と考えるユカ。
モモが今習得しようとしている聖術の習得法は、霊峰の洞窟の中にある聖なる泉に入り、泉の水を使って体に聖なる紋章を描く、という感じである。
「んぅぅっ……ふふっ……!ふはっ!んんっ……!」
その為、ユカがモモの事を筆でくすぐっているのである。
「はっ……んふっ……!くっ……ふふっ……!」
因みにこの儀式、ソロでも一応達成できるのだが、特殊なアイテムを泉に投げ入れ、現れた水の精霊にやって貰うという内容で、激しくくすぐってくる為多くの人は他の人に頼む。
「くっひひっ……!んふふっ……ふひっ……!はっ……!」
そんな時間も掛からず終り、二人は街へと帰還し、ミコとニナの二人と合流しようとする。
その頃の二人、ミコが盗賊団のアジトで思いがけず手に入れた『豊穣者の心得』を使い、ハーヴェスターに転職していた。
「ユニークジョブおめでとー……。ところで、どんなスキルが使えるの?」
ニナが名前だけでは判断仕様が無いスキルについて尋ねる。
「えっと、まず専用の種を撒いて、それに魔力が含まれた水をかけて、そうして急成長した植物を操って戦う感じかな?」
ミコが転職アイテムをくれた張本人であり、今はミコのパートナーであるアヤカに尋ねる。
「そうそう、そんな感じ。植物が生えてる場所だったら、周りの植物を操れるけどね。勿論魔物の植物は操れないよ」
「準備に時間がかかるけど、結構強い能力ね」
実際の強さはアヤカと戦った事により実証済みである。
職業レベルを上げればダメージを防ぐ蔓を纏ったり、一度だけダメージを跳ね返す黒薔薇を纏ったりする事が出来るようになるという。
「ん、ゆかちーから連絡だ……」
画面を開いてメッセージを確認する。
「ゆかちー達終わったって。合流しよ?」
「おっけー。どこにいるの?」
ミコとアヤカ、ニナとソフィナは二人の元へ歩き出す。
因みに後で団長から聞いて判明する事だが、盗賊団のアジトの被害者NPCは街等からランダムで選ばれて登場する為、アヤカの様な強力な力を持ったNPCが盗賊団を返り討ちにしているケースも稀にあるという。
喫茶店に集合した4人と2人。当然だがミコのユニークジョブにユカとモモは驚く。
「貴女までユニークジョブって、どんだけ運いいのよ……」
「みこまでユニークジョブになったかー……」
そのまま今日は何処へ行くかを相談する。
結果、ティクリス研究所跡の地下3階が今のレベルで最も効率が良いのらしいので、そこに行くことにする。
「なんだかんだ、ここに来るのも随分と久しぶりねぇ」
入り口まで問題なく到着し、ユカが呟く。
「4人になってから初めてでは?」
ミコがそう返し。
「やっぱくすぐりに機械は欠かせないよねっ」
ニナが期待に満ちた目で入り口を見つめる。それを聞いてモモはため息を漏らす。
入り口から内部に入る4人と2人。1階の敵は、かつて全滅した時とはレベルも実力も確実に上がっている為、問題なく突破して2階へ進む。
2階に到着し、少し歩くと早速とばかりに敵が出て来る。それはぱっと見ではUFOの様な宙に浮かぶ円盤だが、下の部分に先端が丸いチューブの様な物が何本もぶら下がっている。名前は『ティックゆーほー(試作)』相変わらずのネーミングセンスである。それが4体、ユカ達の前に現れる。
「流石に2階ともなると、一度に出て来る敵の数も増えて来るわね」
「まぁ、数の暴力は単純で厄介だからねぇ」
そんな事を言い合ってる内に、4体全部が一気に接近し、ユカ達の頭上を取ろうと動く。
「動き早くないっ!?」
流石はUFOと言うべきか、驚異的なスピードで動き回る。一体がユカの頭上を取り、チューブを触手の様に動かして捕えようとするが、縮地で移動してこれを躱す。
「えーっと、種を撒いて、こうっ!」
ミコが自分の周りに種を撒き、水を撒いて植物を生み出し、頭上に来ようとしてたUFOを絡めとり、動きを封じる。
「さて、アヤちゃんお願い!」
アヤカに指示を出して、動けなくなったUFOを斧で叩き潰す。
因みにミコも武器を、種と水を同時発射する特殊拳銃と斧に切り替えている。
「このっ、離してっ」
一方、モモ。聖術は発動に若干の時間が必要の為、発動前に捕まる。聖術で追い払おうとするが。
「ふひゃんっ!?」
チューブが2本、両耳にくっつき、吸い付く。
「ひゃんっ!やめっ、すわなっ、ひゃぁぁっ!」
やがてチューブがローブの中に侵入し、素肌をくすぐり始める。
「ひゃぅっ!ひゃめっ、くっひひひ……!」
体を捩って逃れようとするが、勿論逃げられない。
「ひゃはははははっ!はなしてっ……!」
【忍術:雷遁:天雷】
自分に向かって来たUFOを始末したユカが、忍術を放ってモモをくすぐっていたUFOを倒す。
「はぁ……、はぁ……、ありがとう、ユカさん……」
尚、ニナは蒼い炎を撃ち、UFOがニナの所まで来る前に撃墜されていた。
そのまま進むと、異形の魔物が4人の前に姿を現す。
「なに、こいつ……」
そいつは獅子の体を持ち、鷲の様な翼を広げ、顔は蛇の姿で5本の舌が口から出ている。何より特筆すべきは、背中に生えた100は超えるであろう触手が獲物を求めてウネウネと蠢いている。
「『キメラ‐Ω007』ね、こいつは」
ニナはその特徴的すぎる見た目から名前を言い当てる。4人ともキメラ系は初の遭遇である。
「キメラって、こんな見た目してるんだ……」
ミコが感想に困った末に出た言葉を呟く。
「まぁキメラって、複数の生物を合成してみたっ、みたいな感じだしね」
因みに、ニナが言うには他のキメラ系も中々特徴的な見た目をしているらしい。
中々攻撃してこない6人に痺れを切らしたのか、キメラは獅子の体を活かした跳躍で一気に距離を詰めて来る。
「皆、来るよ!離れて!」
ユカが皆の前に立ち、刀を抜く。キメラ系は一体でしか現れないが、その分強めに設定されている。
キメラは立ちふさがるユカに向かって5本の舌を伸ばして捕まえようとする。
「ユカさん、あぶなっ……!?」
危ないとモモが言おうとして、予想外の光景に言葉を詰まらせる。キメラの舌がユカを捕えた瞬間、ユカが消えたからだ。
【忍術:空蝉】
キメラ自身も全く予想していなかった光景に戸惑っていると、背後から強烈な雷が襲う。
【忍術:雷遁:天雷】
中級の中でも上位に位置する忍術を放ち、キメラを一撃で屠るユカ。
「今のは……空蝉の術?何か、随分と強いスキルを覚えたね……」
ニナが目の前で起きた現象から、ユカが使ったスキルを推測する。
【忍術:空蝉】
効果発動中、一回だけ攻撃を無効化し、攻撃者の任意の方向に瞬間移動するという強力なスキルである。効果時間は5秒で再使用に30秒かかるが、ほぼノータイムで発動出来る。
「つい最近覚えたのよ。慣れるのにちょっと時間かかったけど」
6人は先に進み、もう少しで3階への階段に到着するところで新たな魔物に行く手を阻まれる。
「機械系って、やっぱ特徴的な見た目してるよねぇ~」
現れたのは、宙に浮かぶ円盤。ただし先程のUFOと違い、面積の広い底面が前を向いている状態になっており、円盤の周囲には手首から先までしかないマジックハンドが円盤一つに6個浮いている。それらが計8体現れる。
「数が多いわね……。特に手……」
モモが嫌そうに顔を歪める。
「本体の円盤を潰せば手も停止するはずだよ。確か」
ニナは豊富な知識で攻略情報を教える。
エリアの形成が終わると、計48本の手がユカ達を捕えようと一気に襲い掛かってくる。
「おおいよっ!」
ミコは開幕早々、足元に銃を撃って植物の防壁を生み出して対処するが、全ては止められず、3本が接近してくる。
「アヤちゃん……は無理か」
アヤカに助けを求めようとしたが、アヤカ自身も迫ってくる手を振り回している斧で追い払おうとしている最中であった。
「あっ」
そしてアヤカの方を向いた隙を突かれ、一本がミコの右手首を掴み、持ち上げようとする。
流石に持ち上がりはしないが、変な体勢になってバランスが取れず、まともに動けなくなる。
「はなしてっ……!」
マジックハンドは手首から先しかない為、掴まれている状態では破壊は難しく、苦戦していると反対側の手首も掴まれてしまい、万歳の体勢にさせられ、遂に足が地面から離れ宙に浮かぶ。更に植物で足止めさせられていた手もミコの元に合流する。
「これは……まずい……」
4本の手がミコの周囲で一旦止まる。すぐに襲ってくると思っていたミコはどういう事かと手を睨みつける。すると、手の指先が変形し、形を変えていく。
1本は指に小さな穴が沢山空き、そこから白い液体を出し始める。1本は指先が筆の様になる。1本は指のパーツの様なモノが取れ、中から舌のような見た目の指が現れる。最後の一つはブブブと駆動音を鳴らして振動を始める。
「うわぁ……」
それらを確認したミコは露骨に嫌な顔をする。しかし、手はお構いなしにミコの体に群がっていく。
因みにミコは転職と同時に防具も変える……。等といった事は一切していない為、相変わらずのくすぐりに対する貧弱な服装である。
「うひっ!?ふっ……くふふっ!」
指先が筆の手が、服の中に潜り込んでお腹を撫で回す。
「くひひひっ!ふふっ……!けっこう……っ!あひゃぁっ!」
舌の様に変形した指がガラ空きの右の脇の下をくすぐると、気持ち悪いようでくすぐったい刺激に身を捩る。
「あはっ!これいじょう……はひゃっ!」
白い液体を出す手が反対側の脇をくすぐり始める。液体はヌルヌルしており、くすぐったさを増していく。
「ひゃはははははっ!やっ、やめっ!」
振動する手が脇腹や腰の辺りをくすぐりながら不規則に動き回る。
「あはははははははははっ!たえらっ!っははははははははははは!それっ、はんそくっ!」
脇をくすぐっていた手が位置を交換し、舌の手がヌルヌルになった脇をくすぐり始める。するとくすぐったさが一気に増す。
「だめぇっ!っはははははははははははは!ひゃはははははっ!たすけっ!っへへへへへへへへへ!……はぁっ、はぁっ……?」
突如くすぐっていた手が全て止まり、何事かと円盤の方を見るとアヤカが斧で円盤を破壊していた。
周囲を見渡すと他の面々も何とか対処できており、くすぐられていたのは自分だけだと自覚し、顔を少し赤らめながら合流する。
そのまま3階へと進んでいく。




