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35話

ユカちゃん達の出番無いです。

ついでに言うとくすぐり少な目です。

 3月中旬。いよいよ大型アップデート当日。ユカ達は適正レベルにまだ達しておらず、情報も無いので一旦レベル上げに励む事にする。

 今回のアップデートで追加されたのは、現在存在する唯一の大陸から南東の海を隔てた先にある新大陸。

 流石にまだ一部しか実装されていないが、これからどんどん広がっていく予定だという。実装されたのは『ソレティコ王国』とその周辺。国家という存在が現れたのは今回が初である。


「たしか、4つの騎士団が存在するんだよね?」


 団長室に団長と副団長と4人の幹部が揃って出発前の作戦会議をしていた。


「師団長が実装されるって言っていたから、そのまんまの意味で捉えるなら1師団が1~2万規模よ」


「それ、多分無限湧きする理由みたいな意味でしか使われてないと思うよ。普通に考えて1万以上の敵を倒すとかきついし」


「普通に考えたら、4つに分かれている所に違和感を感じるの」


 アイテムボックスの中を確認し、いよいよ出発する7人。一人はイリーナのパートナーのステラである。

 南東にある港に移動し、船で海を渡り、新大陸へと問題なく到着する。港町ティギアーでまずはNPCから情報を集めるべく一旦解散し、手分けして聞き込む。

 約30分後、適当に見つけたレストランで集まり、情報を整理する。結果、分かったのは王はおらず、国を治めているのは姫であるという事。そして騎士団が4つに分かれているのは、それぞれ戦い方が分かれているからという事。

 まず「アルティナ」が率いる騎士団は力こそ正義という攻撃特化の集団。「レティシナ」が率いる騎士団は、魔法特化。遠距離から強力な魔法を放ってくる。「シャリア」が率いる騎士団は技術特化で、機械兵器やアンドロイド等をメインに戦う。最後に「ケーシャ」が率いる騎士団は速度特化で動きを捉える事すら困難だという。


「ワクワクしてきたね」


 リリィが輝いた瞳でそう呟く。


「場所が分かれているわね……。どうする?別行動する?」


 4人の騎士団長が居ると思われる場所は全部離れており、全部を一緒に回るとなると何時間もかかってしまう。


「丁度6ヵ所だし、そうだね」


 7人は身支度を整え、街を出発する。

 街を出た新大陸は、広大な平原が広がっており、整備が行届いた街道が遠くに見える城まで続いている。

 平原には所々に騎士と思われる女性が徘徊している。


「いやーっ!新しいマップはワクワクするなぁっ!」


 リリィが遠足に行く子供の様にワクワクした様子で飛び出していった。


「子供じゃないんだから……まったく……」


「いいんじゃない?元々別行動だし、リリィならPKされるなんてありえないし」


 残りのそれぞれの場所へ向かう。


 リリィサイド。

 リリィは敢えて騎乗系を召喚せず走って移動し、新しいマップを堪能する。

 ある程度走った所で、行く手を3人の女騎士が遮る。


『我が元へ参れ、小さな鬼を統べる姫よ』

【召喚術:ゴブリンプリンセス】


 リリィが術を発動すると、魔法陣からゴブリンプリンセスが姿を現す。


「3人程度なら余裕でしょ、やっちゃって!」


 リリィが指示を出し、「了解しました」と応える。


【魔術:紅蓮槍】


 ゴブリンプリンセスが術を発動し、炎の槍が3人の騎士を襲う。

 リリィも契約して驚いたのだが、ゴブリンプリンセスは意外な事に魔法で戦うキャラであった。普通のゴブリンは素の魔力値が低いので、最上位種の一種であるゴブリンウィザード以外に魔法を行使するゴブリンは居ない。それに、最上位種とは言え所詮はゴブリンであり、使ってくる魔法は最大で下の上ぐらいである。だがゴブリンプリンセスは上級すら使える事が可能であった。

 炎の余波の中、ゴブリンプリンセスは勝利を確信していた。しかし、炎の中から【魔術:捕縛光】という、黄緑色の光の弾に当たった者に巻き付いて自由を奪う拘束系の魔法が飛んでくる。


「なっ!?」


【魔術:アースウォール】


 驚きつつもそれを防ぐ為、自身の目の前に土の壁を生み出す。


「今のでやられないのか。雑兵でこのレベルなら、団長クラスは間違いなく強いわね」


 そう分析しながら、ゴブリンプリンセスに指示を出し、リリィの周りにアースウォールを展開させる。


『夜より暗い深淵より来い、闇から生まれし神よ』

【召喚術:深淵の女神】


 言葉を紡ぎ、魔法陣からアラディアが姿を現す。


「おはよう、主人様」


 リリィが3人の騎士を示すと、アラディアは魔術を発動する。


【魔術:ダークブレイズ】


 アラディアの手から闇の塊が生まれ、3人に向かって放たれる。3人の騎士はそのまま闇に呑まれ、その場に倒れる。


「魔物娘と一緒でHPが0になると倒れるのか。……時間かかるけどくすぐればよかったかな」


 リリィはそのまま二人を連れて移動を開始する。

 少し進むと、また騎士達が3人、行く手を阻む。リリィは取り敢えずゴブリンプリンセスに戦うよう指示を出す。


【魔術:アクアバレット】


 今度は水の弾丸が魔法陣から幾つか騎士に向かって放たれる。

 しかし、先頭に立っていた騎士が盾でそれを防ぎ、後ろで控えていた軽装の騎士が一気に距離を詰め、ゴブリンプリンセスを押し倒す。そのまま馬乗りになり、両足でプリンセスの両腕を踏んで動けなくし、両脇を両手でくすぐる。


「くひっ……!ふふっ……!やめろっ……!はなっ……!ふひっ……!」


 くすぐられていては術の発動もままならず、ゴブリンプリンセスは為すすべなくくすぐられる。


「結構チームワーク良いのねぇ。もっと見ていたいけど、今は先を急がなきゃだし。アラディアちゃん、やっちゃって」


【魔術:闇の眷属】


 3人の騎士とゴブリンプリンセスの足元に魔法陣が広がり、黒く染まると、そこから真っ黒の触手が幾つも現れ、あっという間に4人全員を拘束し、くすぐり始める。


「なんっ!私はみかたぁっはははははははははははは!」


 騎士と一緒にくすぐられるゴブリンプリンセス。

 騎士が倒れるとゴブリンプリンセスは解放され、3人は目的地である王都へ移動を再開する。


 一方、フィア。


「さて、これはどうしましょうか……」


 フィアは港町での聞き込みで、ケーシャが良く周回しているというエリアへ向かっていた。街から一番近い事もあり、一番早く到着する。するとそこには情報通りケーシャがおり、目が合った瞬間問答無用で襲われる。黒のツインテールに赤の瞳、160程の身長に如何にも軍人と言った服装をしている。

 フィアは猛スピードで突撃してくるケーシャと自身の間に咄嗟に死霊術で生み出した、2メートル程の大きさの岩のゴーレムを壁にして時間を稼ぎ、リビングアーマーを50体召喚してケーシャと戦わせる。しかしリビングアーマーの軍団はケーシャに触れる事すら出来ず、手にした片手剣で片っ端から一撃で葬られる。これでは詠唱の時間すら稼げないので、一先ずゴーレムやリビングアーマーを次々と生み出し、突撃させて時間を稼いではいるが、このままではジリ貧であり、やがてMPが尽きて敗北するのが目に見えていた。


「1秒で3、4体やられてるわね……。しかもこっちをしっかり見てる。詠唱を始めれば他を無視してこっちに来るわね……」


 とはいえ黙ってやられる気はない。やられるにしても可能な限り情報を得る為、思い付く手段を色々試す。


【死霊術:マッドゴーレム】


 泥で作り出されたマッドゴーレム。その体は泥沼の様であり、迂闊に攻撃すれば泥に掴まれ、行動不能に陥る。

 だが、ケーシャが目に見えぬ速度で剣を振るい、マッドゴーレムは体内に存在する核を砕かれ、崩れていく。

 ゴーレムには核が存在しており、これを破壊されればどれだけHPが残っていようと崩れてしまう。だが、核の大きさは1センチにも満たない程小さい為、狙って破壊するのは至難の業である。


「マッドゴーレムの核がこうも容易く壊されるなんて……。なら次は」


【死霊術:ゾンビウォーリア】


 フィアの周囲に4つの魔法陣が現れ、そこから棺桶が出て来る。棺桶の扉が開かれると、そこから片手斧と盾を持った女性のゾンビが計4人現れる。

 因みにフィアはごく普通に行っているが、本来同じ術だろうと複数の同時発動というのはかなりの高難易度技術である。イリーナはこれを重点的に練習し、その結果が異なる複数の術の同時発動という離れ業の習得である。これがどれだけ難しいかと言うと、これをゲーム開発者の一人でもあるリーシャが聞いた時、「脳みそを複数持ってらっしゃるんですか?」と敬語で聞いたレベルである。

 ゾンビウォーリア達は何も言葉を発さず、ケーシャに向かって行く。フィアのゾンビウォーリアは相当鍛えられているが、ケーシャの一度か二度しか耐えれず、三度目には撃破される。


「なら……」


 フィアは再びゾンビウォーリアを4体生み出し、ケーシャの足止めをさせる。

 ケーシャが10秒足らずで4体全てを撃破すると、見計らっていたフィアが術を発動する。


【死霊術:死霊の手】


 普段拘束したりくすぐりに使ったりする死霊術:死霊の手。ケーシャの周囲に小さな魔法陣が幾つも浮かび上がり、そこから青白い肌の手だけが生え、ケーシャを捕えようと迫る。

 しかし、それより早くケーシャが動き、手の包囲網が完全に封鎖される前に脱出する。


「こうも早いと、捕まえる事も出来ないか……」


 そもそも死霊術師は召喚術師以上に数で戦う術師である。大量のゴーレムやゾンビで攻め、状態異常で敵を苦しめ、相手を追い詰めていくのが死霊術師の戦い方である。

 しかしケーシャはそれらを瞬殺してしまう為、死霊術師に取ってかなり相性の悪い相手である。


「次は……そうね」


【死霊術:オートマタ】


 魔法陣が三つ描かれ、そこからマネキンの様な人形のオートマタが3体現れる。

 しかしそれらも秒で倒される。生み出しては倒されるを繰り返し、フィアとケーシャの距離は縮まっていく。


【死霊術:ゾンビウォーリア】


 一番時間を稼げたゾンビウォーリアを生み出し、次の死霊術を発動させる。


【死霊術:ゾンビホプリテス】


 全身を重厚な鎧で包み、巨大な塔盾を持った防御特化のゾンビホプリテス。それを自身の周囲に4体生み出し、自身を囲ませる。


『我が時を、我が魂を籠めし人形よ。今こそ目覚めの時。さぁ、目覚めの口付けを』

【死霊術:オートマタ:ナノハ】


 フィアが詠唱を始めると、阻止せんと急接近を仕掛けるケーシャ。しかし防御特化のホプリテスの壁に阻まれ、遂に全ての言葉が紡がれる。

 そうしてフィアの前に現れたのは、一体のオートマタ。しかし先程のオートマタとは何もかもが違っていた。

 黄色のショートカットの髪を持ち、ブレザーの、学校の制服の様な服を身に着け、背中には160の身長より少し短いぐらいの両手剣を背負っている。


「ん……。おはようございます。創造主よ」


 目を開いたオートマタが言葉を発する。

 オートマタにはカスタムという概念がある。まず素体となるオートマタを素材を集めて作り出す。そうして作り出されたのが最初にフィアが作り出したマネキンである。使われた素材で多少左右はされるが、この時点では殆ど性能は変わらない。ここから様々な素材を集めると髪が生まれ、複雑な動きが可能になり、やがて自我が芽生える。自我が芽生えるとプレイヤーと同等の装備の着用が可能となり、かなり強くなる。

 しかし自我が芽生えた時点で、そのオートマタに名前を付けるのが必要になり、同時に上級の術とみなされ呼び出すのに詠唱が必要となる。フィアが考え得る最高の素材を集め、作り出された最強のオートマタが「ナノハ」である。


「あの敵を迎え撃って」


 フィアが指示を出す。


「了解しました」


 丁度ホプリテスが撃破され、ケーシャが迫るが、ナノハが両手剣を軽々と振るって迎撃し、ケーシャはそれを剣で防ぐが、大きく後ろに弾かれる。


【剣技:グランドクロス】


 ナノハの両手剣が炎を纏い、ケーシャを地面ごと十字に切り裂く。しかしケーシャのHPはほとんど減らない。


「レイドボスなのにバリアは張っていないのね。敵性NPC扱いだからかしら。しかしHPが高いわね……」


 二人の実力自体はほぼ拮抗しているが、HPが違いすぎる為このままではやがてナノハがやられてしまうだろう。

 フィアはその結論に達し、これはソロで戦う相手では無いと判断し撤退の隙を窺う。


 その頃ネア。

 王都より少し南西の方にある王国の研究施設。


「失敗したの……」


 ネアの担当場所がここで、ネアはいつもの助手とクレアを連れて来ていなかった為、不慣れなソロプレイをしている事になっている。


「単独行動でも平気と思ったけど、思ったより敵が強いの」


 ネアはP90を元に再現したサブマシンガンを手に研究施設内部を慎重に進む。

 元々ネアは銃火器を持って戦うFPS系のゲームを好んで遊んでいた。その為、VRゲームにおける銃の扱いはかなり慣れている。本来銃はかなり当てにくく、それをメインに戦う機械技師が上級者向けと言われている理由の一つでもある。


「……これ、敵も技師?」


 研究施設に湧く敵は、全員が銃を手にしている。敵性NPCはプレイヤーと同じように何らかの職業に就いている設定なので、全員が技師でもなんら不思議ではない。


「という事は、騎士団長も職業に就いているという事なの?」


 ここまで考えた所で、ネアは撤退し皆との合流を考えていた。

 もしここにシャリアが居たとして、技師同士の戦いでレイド級を相手に自身が勝てる可能性はかなり低いと考えての結論である。


「……少しでも情報を集めてみるの」


 普段率先してくすぐられに行く助手の陰に隠れているが、ネアもどちらかと言えばされる方が好きである。

 敵を銃で倒し、奥地へ進む。所々小さな研究室に入っては研究書を手に取り、中身を拝見する。


「ほぅ……こういう事も出来るの……」


 殆どはネアにとって既知の情報だったが、幾つかはネアすら知らない技術や理論が書かれていた。

 出てくる敵を倒し、研究室を占拠しつつ先を進むと、他の研究室より一回り大きな研究室に辿り着く。


「……ここは?……始めて見る機械もあるの」


 他の部屋より広いのに敵は一人もいない部屋に、ネアは警戒しつつも好奇心に勝てず、物色し始める。


「ここの書物、全部纏めて持って帰りたいの……」


 厳密、自身の所有物ではない物を持って帰る事は出来ない。素材アイテムは別だが。


「この機械は……?どんな風に動くの……?」


「気になるのでしたら、試してみては如何ですか?小さな侵入者さん?」


 不意に背後から声をかけられ、慌てて振り向き、声の主を確認する。


「……小さいは貴女に言われたくないの」


 声の主は130程度の身長に桃色の髪を左にサイドテールで結び、ミニスカートのワンピースの上から白衣を着た少女、シャリアであった。

 ネアよりは大きいが、130はかなり低い方である。


「私より小さい子は初めて見ましたわ。私はシャリア。4つの騎士団の内の一つを任されている騎士団長にしてこの研究施設の最高責任者ですわ。以後、お見知り置きを」


 礼儀よく挨拶をするシャリア。


「ネアなの。機械技師なの」


 ネアも簡単な挨拶をする。


「ネアさん、ね。さて、どうです?気になるのでしたら試して貰って構いませんよ?」


 シャリアはネアが興味を示していた機械に視線を向けて問う。


「貴女が被験体になるなら試すの」


「ふふっ、それなら、無理矢理なって貰うだけですわ」


 その言葉で、戦闘が始まる。


(広めとは言え、室内だから狭いの。大型兵器の類は無理なの……)


 ミサイルや巨大ロボット等の強力な兵器類は、強力故に大きすぎるという欠点を抱えていた。その為、屋内戦では使用できない。

 一先ずは様子見と、手にしている銃をシャリアに向けマガジンに残っている弾全てを撃ち尽くす。

 しかし、銃弾は全てシャリアの周囲に展開されている光の壁に阻まれ届く事は無かった。


(レイド特有のバリア?いや、光が違うの……。なら、バリアを展開している装置が何処かにある筈なの)


 強力なバリアを展開する装置。それ自体の存在はネアも知っていた。しかし、バリアを強力なモノにすればする程、装置も比例して巨大化していくため、持ち運べるサイズだと大した防御力にならない為、防衛戦等には役に立つものの基本役に立たない物という結論を出していた。

 だがここに来るまでに寄った研究室で、装置を小型化に関する研究書があった為、ネアはそれが完成し、運用しているのだと想定し、対策を考える。


「まずは強度が分からないとどうしようもないの」


 そう言って、次元倉庫から6発連射できる回転弾倉式のグレネードランチャーを取り出し、シャリアに向かって1発だけ発砲する。

 弾はバリアに直撃し、爆発を巻き起こすが、バリアは未だ健在でシャリアは無傷で佇む。


「今度はこちらから行きますよ」


 シャリアがそう言って、当然の様に次元倉庫を行使し、バズーカ砲を取り出す。これにネアは、くすぐりしかしてこない筈の敵が普通の兵器を取り出した事に驚き、警戒する。

 バズーカ砲をネアに向け、シャリアが引き金を引くと、そこから1センチ程度の子蜘蛛型のロボットが大量に発射される。


「成程、なの」


 子蜘蛛は着地すると我先にとネアに向かっていく。ネアはこれをグレネードランチャーで纏めて破壊する。

 子蜘蛛の全滅を確認してシャリアの方へ視線を戻すと、シャリアは自身と同じぐらい大きい、巨大なメガホンを取り出していた。


(まずいの……っ!)


 それが何なのかを知ってるネアは急いで回避しようとするが、それより早くシャリアが装置のスイッチを入れる。


「くっ……!くひゅっ……!しまっ……たのっ……!」


 体を触られている訳でも無いのに、くすぐったそうに体を捩らせるネア。

 これはメガホンの向いている方向に存在する相手を音波による振動でくすぐるという装置である。

 欠点としては、直線上の相手にしか効果が無い為、当てるのが中々難しいというところ。


「ふふふっ、もっと楽しませてあげますから、じっとしていてくださいね?」


 シャリアは続いて、拳銃程の大きさの光線銃を取り出して、ネアに向けて発射する。


「はひっ……!?体が……しびれっ……」


 光線銃から発射された光がネアの体に当たると、ネアは体が痺れて動けなくなる。シャリアはメガホンのスイッチを切り、ネアに近づき、お姫様抱っこでネアが興味を示していた機械へ連れて行く。


「やめっ……、離すのっ……」


「離す訳無いじゃありませんか。侵入者には、お仕置きをして差し上げなければなりませんからね」


 長方形の大きな箱のような機械は、シャリアが近づくと棺桶の様に開く。シャリアはその中にネアを十字の形で入れる。

 機械の蓋が閉まり、ネアはさながら人体切断マジックの切られ役のような状態にされる。


「ほら、貴女が気になっていた装置ですよ?どうなるかは、身をもって知ってください」


 シャリアが装置のスイッチを押す。


「んひっ!?ひぁっはははははははははははははははは!」


 途端、我慢する事すら出来ず、ネアが普段からは想像できない大声で笑い悶える。


「なにっ、これぇっへへへへへへへへへへへへ!」


 ネアは箱の中で何が起こっているのか全く把握できない。伝わってくるのは異常なまでのくすぐったさ。


「まだ未完成なのですが、丁度良い被験者が現れて助かりましたわ」


 中では大量の、指だけがネアの肌を余すところなくくすぐっていた。


「あはっははははははははははははははは!!やめるのっ!っははははははははははははは!!」


 指は一本一本が細く、それでいて他の指の動きを邪魔しないように動き、ネアにくすぐったさを与える。


「あはっ!あはっははははははははははははははは!あははははははははははははっ!覚えっ!てるのっ!っははははははははははははは!!」


 ネアはそのまま、随分と久々に敗北の味を味わう。

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