30話
短めー。
「よくぞここまで辿り着いた。我が最後の題を出そう」
スフィンクスがその場で動かず、そう言う。
「さて、最後だが……。お前達の1人を他の3人がくすぐれ。手を抜いたりしたと我が判断したら全員纏めてお仕置き部屋行きだ。さぁ、始めよ!」
(くっくっく、さぁ、醜く争え、仲間割れをするがいい!)
事実、この最後の難題が最もクリア率が低く、PTの仲間割れの原因になったりする。事前情報無しで挑んだ場合の話だが。
「ユカさん、お覚悟」
突然ユカを押し倒すモモ。
(は?何してんのこいつ)
ごもっともな感想を浮かべるスフィンクス。
「あの、モモさん……?その……」
(そうだ。反論しろ!争え!)
「ばっちこーい!」
(なんでやねん!)
キャラを忘れるスフィンクス。
「じゃあ私は後ろから脇をくすぐるね?」
ミコが後ろからユカの両脇に手を添え、くすぐる。
「じゃあ私は両足ー」
ニナがユカの足に近づく。
【死神技法:霊体化】
ピラミッドに到着する途中で職業レベルが上がり、新たに習得したスキルを発動する。
するとニナの両手が半透明になり、衣服をすり抜けてユカの両足の素肌を直接くすぐり始める。
モモは二人がくすぐり始めるのに合わせ、ユカの脇腹を揉むようにくすぐり始める。
「ふひっ……!くふっ……!ふっふふ!」
ユカは3人からのくすぐりを受け入れ、抵抗しない様に体を抑える。
「我慢するユカさんも可愛いわ……」
「何か、こういうのも久々にする気がする。小さい頃はたまにやったけど」
「ふっふっふ……我慢しなくてもいいんだよ……?」
全く手を緩めようとしない3人。
やがて、ミコがそっと顔を近づけ、耳に「ふー」と息を吹きかける。
「ひゃぁっ!?ぁっ、ずるっ、ぁっははははははははははは!」
その刺激で一気に笑い声が噴き出し、最早抑える事も出来ず笑い悶える。
「やっ、っはははははははははは!あはっ!あっはははははははははは!」
笑いだしたからか、3人は手を緩めるどころか、より手の動きが激しくなる。
「あはははははははっ!はげしっ!ぃあっははははははははははは!!」
そのまま5分程くすぐられるとスフィンクスが合図を出し終了を告げる。
「もうよい、お前達の絆の強さは理解した。お前達に我が宝をやろう」
そう言うと、広間の中央に大きさの異なる宝箱が3つ現れる。
「好きなのを一つ選ぶがよい」
ユカ達は取り敢えず宝箱に近づく。
「こういうのって小さいのが当たりと思わせて大きいのが良かったりするんだよね」
ミコがそんな事を呟く。
「普通の大きさが良いんじゃない?小さいのだとそんな良い物入って無さそうだし」
復活したユカがそう言う。
「じゃあ大きいの開けよう」
ニナが空気を読んでか読まずか大きい箱を空けに行く。他の3人は特に止める理由も無いのでそれを見守る。
「あっけまーす」
そう言って一番大きな宝箱を空けて中身を取り出すニナ。
「これは……?鉱石……?」
そう呟いたニナの手には人の頭程の大きさの赤い鉱石があった。
そして全員の目の前にアイテム入手画面が現れアイテムがボックスに仕舞われる。しかし、未鑑定アイテムと表示されている為、手に入れた鉱石が何なのかは分からない。
「取り敢えず、ヘーニャさんに鑑定をお願いしよう」
そう決まり、4人は街へとワープクリスタルで帰還し、ギルドハウスのヘーニャの工房へと向かう。
「……いらっしゃい」
口数は少ないが、笑顔で4人を迎える幼女……もといヘーニャ。
「ヘーニャさん、見てもらいたい物があるんだけど」
早速本題に入り、鉱石を見せるニナ。
「……これは、何?……見た事無い」
ヘーニャでさえ見た事が無いという事実に謎が深まる。ヘーニャは鑑定スキルを使い、鉱石を調べる。
「……これは、何処で?」
「ピラミッドの報酬で貰ったわ」
そんな言葉を交わしている内に鑑定が終わり、結果が出る。
「……日緋色金、……実在したとは」
言葉は少ないが、表情から驚いている事が分かる。
「どゆこと?」
イマイチ状況が呑み込めてないミコが質問する。
「……かつて、……存在したと言われた金属。……けど、見つからなかった」
日緋色金はかつてゲーム内で実装されたという噂が流れた、オリハルコンを上回る素材。しかし、当時数多のプレイヤーが探し回ったが見つからなかった為、ただのデマとされたのである。
「……多分、……売れば億はくだらない」
実感が湧いていない4人だったが、億という額を聞き、驚きを通り越してフリーズする。
「……どうする?……これで武器、作ってみる?」
丁度その頃、団長室では幹部4人とリリィが集まって、発表されたばかりの次回アップデート内容について話し合っていた。
次のアップデートで追加される内容。新大陸と、そこに栄える王国の精鋭騎士団。
4人の師団長と騎士団長がレイドボスとして実装されるという事で大いに盛り上がっていた。