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25話

くすぐり少ないです。

やっぱRPGのパーティーって言ったら4人だよね。

 モモとユカと別れ、単独行動中のミコ。箱庭の商店街を巡り、途中買い食いもしながら当ても無く彷徨う。


(最近全滅する事多いなぁ……。くすぐられるの、嫌じゃないけど激しいのはあんまりなぁ……)


 途中で買ったフライドポテトを摘まみながら商店街を歩くミコ。


(……もしかして私達のPT、バランス悪い?)


 途中で閃いたというような顔をするミコ。元からゲームをよくやるミコは二人より先にその欠点に気が付く。


(ゆかちーは中衛、ももっちは後衛、私は……中衛っぽい動きしてるよね……前衛がいない……)


 団長に自分達とレベル近い人居ないか聞いてみようと心に決めて買い物を続行する事にしたミコ。

 因みにミコは先日モモに(買収して)承諾を取ってももっちとあだ名をつけて呼ぶことに成功している。

 その頃のモモ。折角の単独行動なので聖術師のスキル習得イベントに挑戦していた。

 挑戦とは言え、聖術師のスキル習得イベントの大半は教会や聖地での修行である。その為、モモは教会でイリスを模した女神像に祈りを捧げていた。だが当然、それだけで終わる筈が無いのがこのゲームである。


「ふっ……んん……くくっ……ふひっ……」


 祈りを捧げている体勢のままシスター達3人に羽帚で首筋や僅かに露出している素肌の部分をくすぐられ、5分間大声を出さず、態勢も崩さず耐える事。これが『エリアヒール』の習得イベントの内容である。


「くっ……んっ……ふふっ……」


 幸いにもシスター達のくすぐりは強くないので、大体の人は耐えられるイベントである。


「んく……ふっ……はっ……くひっ……ふっ……ふふっ……」


 ただ体勢を変えられないのが地味に辛く、反射的に体を動かしてくすぐりを防ごうとして失敗する者も少なからずいる。


「くっ……くくっ……ふっ……んっ……はふっ……」


 モモはもっとユカの役に立ちたい思いでこの修行をこのまま耐えようとする。

 一方、ユカは自室でリーンの性能をチェックしていた。


「ふむふむ。この術が補助系で、この術が拘束系ね」


「えぇ、そうよ。レベルが足りないから、今使える術はこのくらいね」


 ソファーに座って寛いでいる、金髪のセミロングに蒼い瞳、ミニスカートのサンタ服を着た160程の少女、サンタ娘のリーン。因みに何処がとは言わないがCである。

 先日パートナーに出来たものの、リーンの使えるスキルは妖術という、プレイヤーが扱えない術である為、把握するにはどういう術でどういう効果があるのか詳しく聞く必要があった。

 妖術はリリィが言うには実装予定スキルか、降星術師や忍者のようなユニークジョブのどちらかであるという。ユニークジョブは合計10種類あるのでどちらの可能性も十分にあるという。ユカはリリィが何処から情報を仕入れているのか気になったものの、聞かない事にした。


「こうしてみると、死霊術に近い感じなのかな?状態異常を撒いたり、拘束の種類が豊富だったり……。でも使役系は一つも無いのね」


 妖術で判明しているのは、感覚を共有する術や、無機物を操る術等がある。リーンが言うには、他にも髪を伸ばして操ったり、幻を見せたり、呪いをかけたりする事が出来るらしい。更に上位の妖術は自然災害まで起こせるという。

 因みに呪術は、設置型の専用アイテムを置く事で発動する特殊な術で、耐性無視の状態異常やステータス低下や、全身が誰にも触られていないのにくすぐったくなり、時間経過でくすぐったさが増していく等強力なモノが多いが、設置されたアイテムを破壊されれば解除されるという特殊な術である。


「全体的にサポート寄りの性能ねぇ。取り敢えず明日辺り森にでも連れてってレベル上げなきゃ……」


 リーンの性能を一通り書き溜めたメモ用紙をアイテムボックスに収納すると、メイド服を着た水華と朱莉の二人が紅茶とケーキを持ってくる。


「ユカ様、こちらのテーブルに紅茶を置いておきますね」


「御主人様、ケーキも置いておきます」


「ん、ありがとう。二人もゆっくりしてていいよ」


 そう言ってユカは紅茶とケーキを食べ始める。


「たまにはこうやってのんびりするのも良いわねぇ……」


 等と呟きながら、今度は忍者屋敷から持って来た巻物を調べて忍術の習得方法を纏めていく。

 その頃、ギルドハウス内にある研究室でネアとリオがクレアの強化を行っていた。


「やっと私達と一緒に行動出来るくらい強くなったの」


「結構時間かかりましたねぇ……」


 そう呟いたネアとリオが、新調された装備を着てはしゃいでいるクレアを見て微笑む。


「DEM……デウスエクスマキナのイニシャルらしいの」


「機械仕掛けの神……という事は、イリスさんやアラディアさん達と同格まで成長するという事ですかね?」


 事実、未だに上限に達してはいないが既に全てのステータスが上級クラスの各職に匹敵する程高くなっている。


「この子専用のスキルも幾つかあるから、いずれはレイドクラスまで成長してもおかしくないの」


 因みにクレアが今着てはしゃいでいる装備は、『虹の髪飾り』『アストロペンダント』『魔法少女のワンピース(神威)』『アンリーシュタイツ(黒)』『魔帝のブーツ』『エーテルシールド』『ハルペー』と、全てを購入しようとすればトッププレイヤーでも中々手が出せない程高価な装備である。

 神威と名の付く装備は、『神威(しんい)の布』という素材で作られた装備という意味である。このゲームで服系の装備は、材料で性能に差がでる仕様である。


「それにしても、よくこれだけの装備を揃えられましたねぇ……」


 見た目は黒い鎌を持ち桃色の衣装を身に纏った魔法少女だが、物理、魔法、防御全てがトップクラスである。


「でも買ったのはハルペーぐらいなの。後はクレアの戦闘データ稼ぎのついでに集めた素材で作ったの。ヘーニャちゃんとエレノアちゃんが」


 エレノアとは装飾品作りにおいてアイリスで一番の腕前を持つプレイヤーである。


「ハルペーは持ってるボスを30回ぐらい倒したけど落ちなかったの……」


 ハルペーは黒い鎌の武器で、鎌は攻撃力と魔力が同じぐらい上昇する。攻撃力と魔力を同時に上げたいという人は殆ど居ない為、同クラスの武器と比べて安く売られている事が多かったりする。


「物欲センサー仕事しますねぇ」


「ますたー!早く戦ってみたい!」


「分かったから落ち着くの。取り敢えず適当なダンジョンに行ってみるの」


 そのまま3人は研究室を後にしてダンジョンへと向かう。

 同時刻、始まりの街の南に存在する街、『サウスフレイム』

 最上級ダンジョンの『奈落の洞窟』に一番近く、他にも南方で一番大きな街という事もあり、多くのプレイヤーが拠点にしている街である。

 そして何より、この街にはゲーム内で唯一の温泉施設があった。その施設の女湯にイリーナとステラが浸かっていた。


「はぁーー……極楽極楽……」


 このゲームの女性プレイヤーの数は少ない為、イリーナとステラは女湯をほぼ貸し切りの状態で利用していた。


「たまには体をゆっくり休めるのも大事」


 そう言うステラも湯の中で手足を伸ばして気持ち良さそうに目を瞑っている。


「仮想とは言え、温泉はいいわー……」


「ところで主、あっちの離れた所にある温泉はどんな温泉なの?」


 そう言ってステラが指差した先には、人が一人横になれるぐらいの広さの温泉があった。そしてイリーナはそれがどんな温泉か知っていた。


「あー……あれは……。まぁ入ってみれば分かるんじゃない?」


 イリーナの言われるがまま、一旦湯から出て温泉に近づくステラ。そして温泉の中をよく確認せずに温泉に入る。


「くっ……ふふっ……ちょっと……はひっ……魚がっ……」


 温泉の中に居たドクターフィッシュ達が、一斉にステラの体に群がっていく。


「くくっ……ふふっ……あはっ……もうっ……でるっ……!」


 耐え切れず、すぐに温泉から出てしまうステラ。


「もうちょっと入っていればいいのにー」


「主が入ればいいじゃないですか」


「くすぐられるのは好きだけど、今日は気分じゃないなー」


 そのまま二人は温泉を出て、個室に戻る。この温泉施設は別料金を払えば個室の休憩所を借りる事が出来る。借りれる個室は数パターンあるが、今回イリーナ達が借りたのは8畳程の広さの和室で、中央に丸いちゃぶ台が置かれ、部屋の隅には座布団が4つ置かれている。


「あ~~……ゲーム内と忘れるぐらい快適だわ~~……。ログアウトした後、つい風呂に入るの忘れそうになるんだよねぇ……」


 個室の座布団を二つ並べて布団の様にして、その上に寝転がる。


「行儀悪いですよ、主」


 普通に座布団の上に座り、ちゃぶ台の上に置いてあった緑茶と和菓子を頂くステラ。


「いーのいーの、硬い事言わない~~」


 動こうとしないイリーナ。


「ステラ~疲れたからマッサージして~~」


 うつ伏せの姿勢のまま視線だけステラに向けてねだる。


「は?嫌……いえ、そうですね。たまにはしてあげましょう」


 怪しい笑みを浮かべたステラが立ち上がり、イリーナに近づく。傍にまで来ると術を発動する。


【降星術:光縛】


 ステラの周りから星の光が溢れ、イリーナに集まり、イリーナの手足を拘束する。


「ん?ステラ?」


 イリーナの傍で正座すると、膝の上にイリーナの体を乗せる。


「それじゃ、マッサージしますね。お腹を」


 イリーナをひっくり返してお腹を上にして、両手で揉みだす。


「ちょっ……くひひっ……ひゃはっ……はひっ……やめっ……ふひっ」


「主、嫌いじゃないんでしょう?こうされるの」


 お腹を揉むように、時に楽器を弾くように指を動かしてイリーナをくすぐる。


「ひゃひっ!やっははは!あっははは!んふっ!ふっ……くっ……ふひっ!ふはっ!っははははははは!!」


 いよいよ限界に達し、ステラの膝の上で笑い悶えるイリーナ。


「ふふっ。さっきのお返しです」


 笑顔でお腹をくすぐるステラ。


「はひっ!ちょっ!ふはっははははははは!!もっ!ふひっ!やめっははははははは!!」


「仕方無いですね。このくらいで許してあげます」


 そう言ってイリーナを解放する。イリーナは天井を見上げ、大きく呼吸をして息を整える。


(しかし、このゲームのAIは本当に高性能ね……ほかのゲームじゃこんな行動は取らないだろうし、本物の人間みたい……)


 そんな事を考えながら寝転がっていると眠気に襲われたので、慌てて起き上がる。


 その日、東の果てに存在する墓地。古びた洋館がポツンと建っており、その周囲には何十、何百という墓が乱立するここは『ハテノ霊園』

 多くの不死系の魔物が出現するここには、『死神』という特殊な魔物娘が出現する。この魔物娘は黒のマントで全身を覆い、ドクロの仮面をつけている為、素顔を見た者は誰も居ない。そしてこの魔物は倒す事が不可能で、あらゆる攻撃を無効化してしまう。そして捕まってしまうと、どれだけHPが残っていようとお仕置き部屋に強制転移させられてしまう。しかし移動速度が遅いので、余程の事が無い限り捕まる事はない。

 余程の事と言うのは、背後から迫って来ていて気付かなかった場合や、わざと捕まる場合である。そしてかつてのユカのように、この死神の魅力に憑りつかれ、今日、死神に100回捕まった少女が現れた。


「死さえも恐れぬ貴女の心……恐るべし……これをあげるから二度と来ないで。さよなら」


 死神はそう言うと、紙束の様なアイテムを少女に渡して消えて行った……。

数日前

ミコ「ねぇ、百瀬さんの事をももっちって呼んでいい?」


モモ「は?嫌だけど?」


ミ「私友達はあだ名で呼ぶ人間だから!」


モ「嫌よ」


ミ「今度私のアルバム見せてあげるから!」


モ「貴女のアルバムなんて興味な」


ミ「私とゆかちーって小さい頃から良く一緒に遊んでたんだよね」


モ「好きに呼べば良いと思うわ」


ミ(ちょろい)

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