二話
それじゃ、改めて。ようこそアイリスへ。まずはギルドハウスに行って団長を紹介するわ」
「はいっ、よろしくお願いします」
ユカはエルザに連れられるまま街を歩いていく。
「ギルドハウスって街の中にあるんですね」
ユカは気になった事を素直に聞く。
「あぁ、ウチのギルドはこの中央都市にあるけど、全部が全部街にあるわけじゃない。この舞台となる大陸に点在する町や村に作るところや、森の中に作った奴もいる」
そんな他愛もない話をしながら歩くこと暫く、二人は『アイリス』のギルドハウスへ到着する。
「ここが、ギルドハウス?大きい…」
街の中心部に聳え立つ5階建ての巨大な貴族邸のような屋敷に、そこを中心として広がる巨大な庭園には様々な魔物が跋扈していた。
「あの…。なんでギルドハウス内に魔物がいるんですか…?」
ユカは少し顔を引き攣らせながらも内心を期待に膨らませながら質問する。
「あぁー…、それはだな。団長の職業が召喚術師でな、趣味で契約した魔物の殆どを敷地内に放し飼いにしてるんだよ…。時々団員が襲われる事もある…。まぁ街はセーフティーゾーンだからHPが0になる事はないから、好んで襲われに行く子もいるんだがな」
エルザは苦笑いしながらそう答え、ユカを敷地内に案内する。
そうして建物内に入り、最上階の一室へとたどり着くと、部屋の中から笑い声が聞こえてきた…。
「あ、あのー……。今は入らない方が良いんじゃないですかね…?」
「いや、いつもの事だし。終わるのを待っていたら何時になるか分からないからな。このまま入る」
エルザは大きくため息をつき、ドアをノックして開ける。
「や、やぁっ……ふっふふふ…ふひゃっ!?ひゃあっははははははは!」
扉を開けると魔法少女のような衣装に身を包んだ金髪の少女が、先端が綿毛のようになっている触手をもった植物型の魔物にくすぐられていた。
その奥では机付きの椅子に座り恍惚とした表情でそれを眺めてる桃色のロングヘアーの16歳ぐらいの見た目の少女が居た。
(何だろう、この状況。凄くうらやましい)
「団長、新しい子を連れて来ましたので一旦中断してください」
エルザは厳しい目で桃色の髪の子を睨み、そう言い放つ。
「ぇー、もうちょっと待って。今回のテーマは怪人によるくすぐり拷問だからー。情報を吐かせないとー」
「は、はひっ、ちょ、ふひひ、数が、多い…にゃあっ!?あ、あっははははははは!」
「新しい子が来てるんです。早くしてください」
「分かったよー…。ぶー…」
桃色の子はあからさまに不貞腐れた態度をとりながら魔物に手を向ける。
すると魔物は淡い光に包まれて消えていった。
解放された金髪の少女は床にぐったりと寝そべり虚空を見つめながら大きく呼吸をしている。
二人は慣れているのか全く気にせず話を進めていく。
「で、そっちの水色の子が新しい子?」
「あっはい、ユカって言います」
「私は団長のリリィ。職業は召喚術師。ようこそアイリスへ。歓迎するわ」
リリィと名乗った桃色の少女はさっきまでの非常識な光景の原因とは思えない程、礼儀正しく挨拶をする。
が、自己紹介が終わると早速のようにユカを食い入るように見つめ、本性が顔を出してくる。
「やっぱ水色髪も可愛いわねぇ……。ねぇ、くすぐっていい?」
「ふぇっ!?」
ユカは突然の質問に反応出来ず、反射的に一歩後ずさる。
「団長、そういうのは後にしてください。まずはギルドの説明から」
「はいはい、つれないなぁ…」
最早慣れた光景なのであろう、エルザはため息をついてから本題に入るようリリィを睨みつける。
「まず基本的なウチのルールとしては、脱退は自由。ただし、その際は誰かに伝える事。ギルドハウス内の施設は全て自由に使ってよし。他の誰かの入団を推薦する場合は4幹部か私の入団試験が必須。4幹部はエルザちゃんと、そこに転がってる金髪の…」
そこまで言いかけると、床に寝そべっていた金髪の少女が勢い良く立ち上がり自己紹介を始める。
「はいっ、4幹部の一人。イリーナって言います!職業は魔術師、仲良くしてねー」
「後、今は居ないけど狩人のルルナと、機械技師のネアが居るわ。今度時間が合えば紹介する。4幹部は私が鍛え上げた精鋭だから、襲われそうになった時に呼べば飛んで助けに行くわ」
「まぁ、一応幹部とか役職は作ってあるが。基本的に身分差みたいなのは無いから、気軽に話しかけてもらえればいい」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
そうして一通りの説明と自己紹介が終わると、ユカはこの世界について様々な事を教えて貰う。
序盤は何処がレベル上げに向いているのか、どういった職業が似合いそうか、街に居る一部のNPCは勝負を挑める等といった事を教わっていく。
ユカはその中でも一つの話に興味を惹かれていた。
「忍者屋敷…?」
「うん、街の東にある森の中にあってね。まぁ簡単に言えばアスレチックみたいなもんかな」
「3階建ての屋敷内を、徘徊しているクノイチ達に捕まらない様にゴールを目指すって場所なんだけど、報酬が豪華だけどその分難易度が高いのよね。ちなみに捕まったら当然……。あぁ、因みにHPが減る事は無いからデスペナを気にしないで挑戦できるよ」
「興味があるなら行ってみるかい?」
ユカは頷き、そのまま忍者屋敷へと向かっていった。そうして移動すること暫く、ユカは屋敷へと到着した。
「ここが忍者屋敷。外観は普通の屋敷なんですね」
「まぁ、忍者だから目立っちゃダメなんじゃないか?ここはソロ専用だから終わったらこれを使って帰ってくればいい」
そう言ってエルザは一つのクリスタルの様な物を渡した。
「これは?」
「これはワープクリスタル。これを使えばギルドハウス前まで一瞬で帰還できるよ。それじゃ、私は戻るね」
「はい、ありがとうございました」
そういってエルザは消えていった。
(さて、行ってみますか)
ユカは期待を膨らませ忍者屋敷へと足を踏み入れた。
入口から中に入ると、すぐ先に受付があった。受付で説明を聞き、入場料を支払い、いよいよゲームを始める。
(ゲームの世界でゲームをするってなんか変な感じね…。それにしてもクノイチかぁ。どんな子がいるんだろう…)
中はまさに和風の屋敷といった佇まいである。全体的に木造で扉は木の引き戸と襖の二種類、床は部屋が畳で廊下が木で出来ている。
ユカは物音を立てないようにゆっくりと周囲を警戒しながら進んでいく。そうして移動すること暫く、ユカはついに。
カチッ
「カチッ?」
罠を踏み両手を縛られ天井から吊るされていた。
(身動きが取れない……。手以外は動かせるけど、脱出は絶望的かなぁ……)
そうして吊るされて暫くすると、不意に天井が開き女の子が降ってきた。
栗色の長いストレートヘアーを持つ12歳程の見た目の少女はユカをじっくりと観察すると。
「女の子が来るなんて、珍しい事もあるもんだねぇ」
黒色の、やたら露出の多い忍者衣装に身を包んだ少女はそう呟くと、早速とばかりに手をワキワキさせながらユカに近づいていく。
対してユカは、思ったより幼い少女が出て来た事に驚きつつも、期待を膨らませて少女の手を見つめていた。
そんなユカの心境を知らない少女は、ついにユカに飛び掛かる。
「や、ふぅ…ん…やっ、は…ひっ…」
ユカは自分のお腹を服を上から優しく撫で回す少女を傷つけないよう必死に抵抗しようとする自分を抑える。
そんな事は知らない少女は背後に回り、服の中に手を入れ脇腹を揉むようにくすぐりだす。
「ふっ、やっ、はひっ、いきなりっ、はげ…あっはははははっははは!」
急に強くなる刺激にとうとう笑いを堪える事が出来なくなるユカ。
「やぁっははははは!はっ、はひっ、ひひ…ふふふ…ふにゃっ!?にゃっはははははははは!」
どうにか我慢しようと試みたが、耳に息を吹きかけられて、あっさり失敗する。
「おねーさん良い反応するねー。こっちはどうかな?」
そう言うと右手を脇に移動し全ての指を巧みに操りユカの体をくすぐっていく。
「だ、めぇ…あっはははははははははははははは!!」
右手で脇を、左手で脇腹を、首筋に息を吹きかけて、少女はユカをくすぐっていく。
「やぁっははははははははは、はひっ、ひひっ、ひにゃっははははははははは!」
そうして10分程くすぐられた後、ようやくユカは解放された。
「は……はひっ……ひ……」
「中々いい反応だったよー♪また来たねー」
少女はそう言い残し何処かへ消えていった。
そしてユカは…
(ヤバイ、ハマりそう…)
気に入っていた。
そしてユカはレベリングもろくにせず、忍者屋敷に入り浸っていた。