23話
遅くなりましたが明けましておめでとうございます。
親戚の家に挨拶に行ったり、コ〇ケの戦利品を堪能したり、仕事に行ったり、DQB2にハマったりして、気付いたらもうこんな日でした……。
くすぐり少な目回ですが本年もよろしくお願いいたします。
一月一日の昼、優香は学生寮を後にして駅へと向かおうとする。
年末はギルドの皆と集まる為に寮に留まっていたが、年始は流石に実家へと帰ると決めていた。
「ゆかちー、荷物持った?忘れ物無い?」
「無いけど……。何で貴女も居るのよ……」
部屋の鍵をかけて駅へと向かおうとすると、傍にいつの間にか美琴が居た。
「いやだって、近所だし」
「知ってるけど、そうじゃなくて……」
優香は諦めて、溜息を洩らし、駅へと向かう。美琴はそれについていく。
そのまま他愛のない話を交わしながら駅に到着し、電車に乗る。
「グリーン車とは贅沢ですな」
「一緒に乗ってるみこが言う?数時間かかるんだから、座りたいじゃない」
そのまま揺られる事数時間後、優香達は故郷へ到着する。
「それじゃー、また今度~」
美琴がそう言って手を振りながら隣の自分の家に向かっていく。それを見送り、優香は自分の家のチャイムを鳴らす。
「ただいま」
「……おかえり」
家の扉が開くと、優香と同じロングの黒髪に眼鏡をかけた、優香より少し大きい女性が出て来る。
「綾姉か、他は?」
「出掛けてるわ」
橘家は3人姉妹で、優香は次女である。そして今優香の前に居るのが長女の綾である。
「そっか」
家に入り、リビングの炬燵に入る二人。
「学校はどう?」
「何その、接し方の分からない父親みたいな話の切り出し方……。まぁ普通だけど」
そんな雰囲気のまま時間が経つと、扉が開く音がしてドタドタドタと音が響き、リビングに優香より少し小さい少女が入って来る。
「ただいまー!あっ、優姉おかえりー!」
「ただいまー、奈々は変わらず元気ねぇ……」
そのまま優香の元に駆け寄ってくる少女は末っ子の奈々。そのまま両親も入って来て、数ヶ月振りの一家団欒の時を過ごす。
そして数日後、優香は皆に見送られながら寮へと帰って行った。当然の様に美琴も一緒に連れて。
その夜。
綾の自室。
「ついに買ってしまったわ……。優香が帰って来る事忘れてて今日になってしまったけど……」
その手にはファンタジースマイルオンラインのカセットとVRゲーム機が握られていた。
「さて、早速……」
そう呟いてゲームを始める準備をする。
ほぼ同時刻。
アイリスの庭園内の一角にあるカフェでいつもの3人が集まっていた。
「モモさん久しぶりー……。なんかレベル上がってない?」
「ユカさんに会えない寂しさを紛らわせる為に狩ってたら上がってたわ」
「何と言うか……相変わらずだねぇ……」
運ばれてきたパフェを頬張り、笑顔を咲かせるユカ。それを恍惚とした表情で見つめるモモ。
「ところで、今日はどこ行く?」
見なかった事にして本題に入ろうとするミコ。
「邪教会行ってみる?入り口近くなら私達のレベルでも戦えるし」
そんな感じで話が決まり、パフェを食べ終えた後移動する。
道中の敵を無視して移動する事数十分。目的地に到着する。
「ここが邪教会……全体的に紫色で、いかにもって感じの建物だね。……で、どういった敵が出て来るの?」
「えーと、『邪神崇拝者』『ダークプリースト』『邪神の眷属』『邪神官』『ダークエンジェル』『邪神の依代』と言ったところかな。依代はレイドボスで、最深部に居るわ」
「私達のレベルで狩れるのは最初の3体だけね」
3人は一緒に中に入っていく。
同時刻。始まりの場所で緑色のロングヘアーに160ちょい程の身長の眼鏡をかけた少女、綾のアバターの『クーシャ』が降り立つ。
「ここが仮想現実……不思議な感じね」
そう呟いてチュートリアルを開始する。
戻ってユカ達。目の前には紫色の修道服を着た女性が3人、獲物を見つけたような笑みを浮かべて迫って来ていた。
「先制攻撃!」
いつも通りミコが突撃し、一人を槍で貫く。流石に一撃で仕留められないが、半分近くまで減らす。
残った二人が突っ込んで来たミコを捕えようと動く。
【忍術:雷遁】
ユカが術を発動し、小さな雷が迸る。
【聖術:ホーリーカッター】
モモが聖術で追撃し、二体を倒し、残りの一体のHPも残り僅かである。
「思ったより大した事無いね!」
「なんですぐフラグみたいな事言うかなぁ……」
ミコがフラグを立てた瞬間、突如一体が大声で笑いだす。
「え、何アレ怖い」
次の瞬間、一体の両腕が何本もの触手に変化し、HPが全回復する。
「何あれ……何をしたの……」
「みこがフラグ立てるから……」
「いやいや、私のせいじゃ無いでしょ!?」
等と話していると、触手が3人を捕えんと迫って来る。
ユカは縮地でこれを躱したが、ユカの方を見ていたミコと、身体能力が高くないモモが捕まる。
「さて、どうするか……」
ユカは刀を構え、ダークプリーストの方を睨む。
「ぬるぬるブニブニしてて気持ち悪い……」
両手両足を掴まれたモモはIの字に拘束されており。
「はーなーせー!……結構疲れるな、この態勢」
ミコは両足を掴まれたミコは宙吊りになっていた。
「くっ……ふふっ……やっ……」
モモはお腹周りを触手でぐにぐにと揉むようにくすぐられ。
「ちょっ……くくっ……あはっ!まっ!っははっははははははは!!」
ミコは靴を脱がされ、ブラシの様になっている触手で足の裏をゴシゴシとくすぐられていた。
「んんっ!……ふふふっ!はなし……やんっ!」
「やっ!っははははははははは!!くすぐったいっ!あっははははははっはははははは!!」
ユカは取り敢えずくすぐられる二人を鑑賞して、そろそろ解放してあげようと一気に距離を詰める。
【忍術:火遁・業火】
ゼロ距離で中級忍術を直撃させ、一撃で葬る。
触手によるくすぐりから解放された二人はその場に座り込み、息を整える。
「あんなの居たんだねぇ……。まさかホラーゲームにありそうな変身をするとは」
数分待ち、落ち着いた二人が立ち上がると探索を再開する。
「そういえば、サンタ娘のリーンちゃんは連れてこなかったの?」
「あぁ……。まだレベルが低いしね。……まぁ初期レベルでも結構強いけど。もうちょっとレベル上がったら連れて行こうかなって思ってるわ」
因みにイリーナのステラは既にレベルマックスまで育てられていたりする。
そんな他愛のない話を交わしながら、3人は狩りを続ける。
その頃、街の周囲に広がる平原の一か所。
「……嫌」
クーシャは不意打ちの麻痺攻撃を食らい、草原に倒れていた。近くには3人の男が下衆な笑いを零しながらゆっくりと近寄って来る。
「ラッキーだぜ。こんな上物にありつけるとはなぁ」
3人がクーシャに襲い掛かろうとする。
「嫌!」
反射的に目を瞑るクーシャ。
【槌技:メテオハンマー】
3人とクーシャの丁度中間辺りの位置。突如爆音の様な音が響き、土煙が盛大に吹き荒れる。
土煙の中から見える人影は、180程の大きさで、スカートを履いている事が伺える。
「クブル君!女の子に当たったらどうすんのよ!」
遠くから、まるで王子のような恰好をした少女が走ってこちらに向かってくる。その隣には白髪に髭を蓄えた老紳士が付き添っていた。
「大丈夫よ~。ちゃんと当たらない様に考えてやってるからぁ~」
煙の中から聞こえた口調は女性だったが、声は明らかに男性だった。3人の男達は恐怖に顔を歪めていた。
「おい、どうする!」
「どうするも何も、逃げた方が良いに決まってるだろ!」
そんな事を言い合った後、少女と紳士が来ているのと逆の方向へ走って逃げようとする。
「逃げれると思ってるのか?」
しかし、3人の道を塞ぐように両手槍を持った男が現れ立ち塞がる。
そんな事が起きてる間に土煙が晴れ、人影が姿を現す。筋骨隆々の体にセーラー服を着た、大男。その姿を見て3人は顔を絶望に染める。
「豪腕のクブル……やはり薔薇色連合か……」
「そうよ、恰好の獲物が見つかって良かったわ」
そうこうしている内に少女と紳士が到着する。
少女は、麻痺は解けたが状況が分からず、座り込んでるクーシャに近寄る。
「貴女は……多分女の子が好きでしょ?なら、私の姉が女性専用のギルドを作ってるから、ボイスチャットの面接はあるけど……。それさえ問題なければ紹介するよ?」
「あ……、お願いします!」
クーシャにとって願ってもない話である。
「じゃ、私はこの子をお姉ちゃん所に届けて来るから。そいつらは自由にして良いわ」
「素敵。それ最高。リューシャちゃんマジ感謝」
どこか恍惚とした表情で恐怖を覚える笑みを浮かべるクブル。リューシャと呼ばれた少女はワープクリスタルを使い、クーシャと共に街へと帰還した。
このゲームに二つしか存在しない女性が所属しているギルド。一つはリリィが作った女性専用ギルド『アイリス』。もう一つは、リリィの妹であり、同時にゲームを開発した運営チームの一人でもあるリューシャが作った、ギルド『薔薇色連合』
アイリスに所属している女性プレイヤーの安全が保障されている最大の理由が、このギルドの存在である。リリィとリューシャが姉妹というのは本人達が広めた事もあり、かなり有名である上、薔薇色連合はアイリスの次に強いギルドだといわれている。このギルドのメンバーの共通点は、BL好きである。なので中身は女性だがキャラは男という人も多く在籍している。
つまり、アイリスのメンバーに手を出せば、薔薇色連合のターゲットにされるという事である。薔薇色連合に歯向かったとしても、アイリスの精鋭達も加わってくる為、勝利は不可能に近い。よって、アイリスのメンバーは初心者であろうと、襲う者は皆無に等しいのである。
実は一桁話の時から登場は確定していたリリィの妹。姉が百合で妹はBL好きですが姉妹仲は良いです。