22話
くすぐり無しです。
クリスマスイベントから数日、12月31日の夜。アイリスのギルドハウスのイベント用大広間で年越しパーティーを全員で行っていた。
普段は始まりの街、『ティーツタウン』や、世界の様々な場所に点在する小規模な街等で店を経営したり、長期滞在で狩りを行っていたりする者達もこの日だけは全員帰ってくる。
当然、ユカ達3人もこの場に居た。
「改めてみると、凄い人が多いよねぇ……」
ユカが周囲を見渡し、呟く。
そんな中、団長リリィが遅れてログインし、会場に姿を見せる。
「皆おまたせー!」
「遅いの。もうちょっと早く来て欲しいの」
「いやー、冬のコ〇ケ行って来て、帰ってちょっと横になってたらいつの間にか……」
「何故横になるのよ……。目に見えた結果じゃない……」
壇上へ上がるリリィ。
「まー、今年の2月にゲームがリリースされて、私がギルドを立ち上げて、女性プレイヤーの安全を保障できるように色々と手を回して、濃い一年ではあったけど……」
フィアと4幹部を見つめ、視線を全体に戻す。
「私一人じゃ出来ない事もあったし、皆には沢山お世話になったけど、来年もまたよろしくー!!」
そう言ってリリィが手に持っていたグラスを掲げると全員が一斉に「乾杯っ!」と声を上げる。
「そういえば、年末になんか限定モンスターとか出て来るかと思ってたけど、そんなことなかったね」
イリーナが思い出したようにつぶやく。
「クリスマスイベントの直後だし、流石に作ってる時間無かったんでしょう」
あったらあったでめんどくさそうだと、エルザは苦笑いを浮かべる。
ネアとリオが自棄気味に酒を飲むルルナに近寄る。
「またどうしたの……」
「こないだの忘年会で、また『女性だとは思いませんでした』って新人に言われたのよ……」
「それはまぁ……、描いてる内容がアレですし……」
フィアは死霊術同士で集まり談笑している。運営が発表したアップデート予定に新しい死霊術の実装があったからか、その表情は活き活きとしていた。
「いよいよ、決定打となり得る高火力の死霊術が実装されるわ……。これで火力不足から解放される……!」
「楽しみですねぇ。上級レイド等だと壁しか出来なかった死霊術にようやく陽の光が……!」
死霊術は数や状態異常、高耐久のゴーレム等が得意な半面、特に終盤において火力不足に悩まされていた。それが解決しうる新たな術が近い内に実装予定だと発表されたのだ。
ユカ達3人は一つのテーブルに集まって、食べ物や、初めてお酒を味わっていた。体に影響は一切ない為、仮想現実では20歳未満でも飲酒が可能なのである。
「これがお酒……。苦い……」
「カクテルっていうのは結構甘いわよ?ユカさんの分取ってきましょうか?」
「ワイン……個人的に好みかも……」
やがて3人は今までを振り返る。
「今思い返しても、中々濃厚な一年だったわねぇ……。来年から2年生かぁ……」
「2年生も、ユカさんと一緒のクラスだといいわぁ……」
「くすぐられる事に若干抵抗を感じるけど、やってみると結構面白いよね、このゲーム」
「……正直私は、二人が始めるとは、ゲーム買った時は微塵も思っていなかったけど……。来年もまたよろしくね」
「ユカさんのお願いなら、何でも聞いてあげるわ」
「私自身も結構楽しんでるし、助かってるし、お互い様って奴だよー」
やがて、年越しの時間がやってくる。残り1分程で、団長は再び壇上へ上がる。
「今年も残り僅かだけど、来年もよろしくー!!」
カウントダウンが始まり、団長が5から大声で数える。
「5!」
全員の表情は明るく、楽しげである。
「4!」
ユカは今までに見せた事の無い表情をする。
「3!」
次の年ではどんな事が起きるのか、期待に胸を膨らませる。
「2!」
全員が、手にグラスを持ち、備える。
「1!」
部屋全体に、カチャンと音が響き渡る。
「あけましておめでとう!!」
早いかもしれないけど明けましておめでとうございます!2019年もよろしくお願いします!
冬コミ参加した人はお疲れ様でした。