18話
3人は平原を駆け、南東のハーピーの巣がある小さな山を目指す。
ハーピーは人間の胴体に、手の部分が翼で、下半身が鳥の魔物娘である。その特徴通り、空を飛び、頭上から一匹が足で両手を掴んで吊るし、がら空きになった上半身を他のハーピーが自慢の翼でくすぐる攻撃をしてくる。その為、最低でも2体以上で行動する。
ハーピーの羽は相手をくすぐる事に特化して作られた羽で、羽系の道具でハーピーの羽以上にくすぐったい物は無いとリリィが豪語する程である。
「みこはもうちょっと周り見て行動しよう?」
移動しながら先程のアラクネ戦の反省会を行う3人。
「分かっててもかかるってあの事を言うんだね……」
明後日の方向を見るミコ。
「本当、貴女って考え無しに動くわよねぇ……」
モモの指摘に「うぐっ」と言葉を詰まらせ何も言えなくなるミコ。
「次は汚名挽回の活躍を……!」
「みこ、名誉挽回と汚名返上が混ざってるよ……。汚名を挽回してどうするの……」
徐々に顔が赤くなっていくみこ。
「汚名挽回……またくすぐられるのかな」
「う、うるさーい!」
顔を真っ赤に染めて抗議するミコ。
「まぁからかうのは程々にして、ハーピーの対策を考えるよ?」
「はーい」
「むぅ、みてろよ、私の槍で……!」
明らかに気合が入りすぎてるミコ。
「ハーピーは空中からヒットアンドアウェイの攻撃を仕掛けてきて、鳥の特徴を持った足で両手を掴んで拘束してくるから、これを避けつつ反撃するのが基本の戦闘よ」
「くくくっ、回避から反撃は私の得意分野だぜ!」
「何キャラよ、それ」
「後、ハーピーの巣の最上階にはクイーンハーピーがいるけど、私達じゃまだ勝ち目無いから、入り口付近での狩りになるからね?あまり奥に行かない様に」
そんな話を交わしている内にハーピーの巣に到着する。
「ついたよ。ハーピーは空から奇襲してくるらしいから、ちゃんと上見ててね」
「うん、分かった!」
「えぇ」
元気よくミコが返事をし、先頭を歩く。歩く事1分で空から3体のハーピーが襲ってくる。狙いは、当然先頭を歩くミコ。
「みこ!上っ!」
「へ?」
当然の様に捕まるミコ。
「流石、フラグ回収が早いわね」
何故かどことなく笑顔なモモ。
「上を注意しろって言ったのに……」
呆れて溜息をつくユカ。
「ちょっと!二人とも!助けてよっ!」
両手を捕まれ、空中で両足をバタバタと動かし、抵抗を試みるミコ。そんなミコに残りの2体のハーピーが近づいてくる。
「ちょっ、まって、私さっき沢山くすぐられたんだけど……」
体を捩ったり、足を動かしたりして何とか逃れようとするミコ。当然、逃れられる訳も無く、2体のハーピーが自慢の翼を使ってミコの体をくすぐり始める。
「ちょっ……止めて……くひっ……やっ、くすぐったい……」
段々と動きを早くするハーピー達。
「くっふふふふ!何、この羽……ふひゃぁっ!ふははははははっ!だめっ!くすぐったいっ!やぁっははははははははは!」
空中に吊るされ、何も出来ずにハーピーにくすぐられるミコを眺めて観察する二人。
「流石ゲームね、あのくすぐってるハーピー、翼動かさないで滞空してるわ」
「凄いくすぐったそう……流石はくすぐりに特化したハーピーの翼ね」
「二人共っ!見てないでたすけてぇぇぇっへへへへへへっははははははは!!」
翼を器用に動かし、服を捲り、素肌を直接くすぐり始めるハーピー達。
「ふひゃはははははははっ!!たすけっ!やっはははははははは!くすぐったいっ!あぁっはははははははは!!」
「流石に辛そうね……」
見かねたモモが術を発動する。
【聖術:モルトヒール】
モモの聖術によってミコのHPが全快する。
「ほら、HP回復したわよ。後は頑張りなさい」
「ちがっ!そうじゃなぁぁっはははははははははははは!!」
(流石にちょっと可哀想に思えてきた……)
思うだけで行動に移さないユカ。
「あっはははははははははははは!!この羽っ!くすぐったすぎっ!やぁっはははははっははははははは!!」
「流石に助けない?」
「ユカさんが言うなら。えいっ」
【聖術:ホーリーライト】
モモが術を発動すると、杖の先から小さな光の玉が生まれ、ミコを掴んでいるハーピーに炸裂し、怯ませる。そして解放されたミコが地面に墜落する。
「ぶへっ!?ふひ……はぁ……はぁ……」
そのまま地面に倒れ、息を整える。
「さっさと仕留めるかぁ……」
【忍術:雷遁】
【聖術:ホーリーランス】
ユカの手から小さな雷が迸り、モモが杖を構え、術を発動すると光の槍が生まれ、ハーピーに向かって飛んで行く。
そのまま遠距離攻撃でハーピーを全員倒し、ミコの出番が無いまま戦闘が終わる。
やがて息を整え終わったミコが起き上がって合流する。
「ひどいよ……二人共……」
「いや、ちゃんと上を警戒しなかったみこが悪いし」
「汚名挽回、見事だったわね」
「うぐぅっ!」
そんな3人はドロップ画面を確認する。
「結構落ちるのね」
「まぁ翼に沢山付いてるからねぇ。この調子なら後2~3グループで集め終わるかな。思ったより早く終わりそう」
その3人の頭上から、次のグループのハーピーが、無警戒な3人を襲う。狙いはユカ。
「ふへぇっ!?」
変な声を上げながら空中に吊るされるユカ。しかも先程より一体多い、計4体のグループである。
ハーピー達は早速の様にユカの体を翼でくすぐり始める。
「ぷっくくくく……なにこれ……くひっ……だめっ、くすぐったすぎ……ふはっ!あっはっはははははははははは!!」
呆然と見上げる2人。
「全然気付かなかった……ゆかちーの犠牲に感謝」
「はぁ……くすぐられてるユカさんも素敵……」
一人、危ない方向に進もうとしている。
「あっははははははははははははは!!服っ!全然いみなぁっははははははは!!」
「どうする?助ける?私遠距離攻撃出来ないけど」
「私、もうちょっと眺めていたいわぁ」
恍惚とした表情を浮かべるモモ。
「ふひゃはははははははははっ!ははははっははっ!ふひっ!ひっひひひひ!あはっ!あっはははははははは!!」
「どことなくゆかちーが嬉しそうなのはくすぐられて笑顔になっているせいかな?」
深く考えない様にしたミコ。
「はひひひひっ!ひゃめっ!たしゅけっ!あははははははははははっ!!」
「今助けます、ユカさん!」
ユカに求められればすぐに応じるモモに口を尖らせるミコ。
【聖術:ホーリーランス】
モモの術がユカを拘束しているハーピーに直撃し、解放されるユカ。
(というか、ゆかちーは縄抜けで抜け出せたんじゃ……)
深く考えない事にしたミコ。
残りのハーピーがモモに向かって飛んでくる。
「甘いっ!」
モモは余裕で回避する。
「出番っ!」
みこが攻撃を躱されたハーピーを槍で薙ぎ払い、倒す。
くすぐられ慣れているからか、ミコよりも早く復帰したユカも術を発動する。
【忍術:火遁・業火】
人すら呑み込める程の業火が生まれ、ハーピーを2体纏めて撃破する。
【槍術:ソニックスピア】
残ったハーピーが反応する前に、ミコがスキルを発動し、槍で突き刺し、倒す。
「おつかれー。集まったー?」
「4体居たからか、結構集まったね」
「これなら作れそう?」
「そうね、十分集まったと思うわ」
3人は満足そうに街へと帰って行った。
モモちゃんくすぐりたかったけど特に思い付かなかったから次回に後回しにしました。