129話
前話から一か月半も経ってるってマジ・・・?
ユカ達は防具の素材を求めて、盆地の中央にいる金色の毛を持つ巨大な羊、『モフモーン』を少し離れた場所から眺める。
「ちょうど湧いてるし、他のプレイヤーも見当たらないからタイミング良いね」
「思ったより大きいね。・・・3階建ての家くらいない?」
「あの巨体だから、中々に耐久が高いボスなのよね。おまけに冷気に関しては無効レベルの耐性を持ってるよ。更に顔以外は物理に対しても高い耐性があるから、気を付けてね」
「気を付けようが無くない・・・?まぁ私たちのパーティーに冷気使いはいないけど」
「火の耐性はそこそこ、雷は少し有効ってところだね」
ユカは忍者刀ではなく、巨大な手裏剣に武器を切り替える。
「ゆかちー、今回はそっちなんだ」
「燃費悪いから普段使いはできないけど、ボス戦は積極的に使っていこうかなって。MPの自動回復とかあったらこっちメインに切り替えたいんだけど・・・」
「MP自動回復の効果がる装備はそれなりにあるけど、それの燃費の悪さをカバーできるぐらいの物は限られてくるなぁ」
「お金も素材も足りないねぇ」
「まぁ、そのあたりはおいおい考えるわ」
「それじゃ行ってみよー!」
ニナが号令を掛けると同時に走り出し、羊に向かって行く。3人は少し遅れて向かう。
ある程度ニナが近づくと、羊が4人に気付き、低いうなり声をあげて戦闘態勢に移る。
「気付いたね。来るよ!」
ニナが叫ぶと同時に、羊が体を大きく震わせる。すると、羊の体からたくさんの毛玉が飛び散る。
「うわ、何アレ。毛玉?なんか飛んできてない?」
「あの毛玉が取り巻きの変わりだね。自由に飛び回って体を擦り付けて襲ってくるよ」
ニナが羊の近くまで一気に接近すると、鎌を構える。
【死神技法:蒼炎の舞】
「狙うは顔、それ!」
蒼い炎を纏った顔を、ニナは羊の顔に目掛けて振り下ろす。
毛で覆われていない羊の頭に当たると、一瞬怯み、くぐもった声を漏らす。
「今ので3パーぐらい減ったかな?」
「ハーフレイド級だから、比較的柔らかいね」
思ったよりも楽に戦えそうだと一瞬顔を綻ばせると、その隙を突かれ、ニナが羊に襲われる。
「うぇっ!?ちょっ!」
ニナは羊に体を咥えられ、肩から上と、膝から下の一部分しか外から見えない。そのまま羊は口内で舌を動かし、口に中にあるニナのお腹付近を舐めまわす。
「ひゃあっ!やっ!だめっ!~~っ!あはっ!あぁっはっはっはっははっははははは!」
ニナは自由な腕に握られていた鎌を羊の顔に叩きつけるが、咥えられた状態のため殆ど力が入らず、殆どダメージを与えられない。
「うひゃぃっ!そこっ!だめっ!んにゃぁぁっはっはっはっはははははは!」
「何普通に反撃食らってるのよ・・・」
ユカが投げた大きな手裏剣が宙を自在に飛び回り、羊の顔を切り刻んで怯ませる。その拍子に、ニナが口から離れて落ちる。
「べふっ!うへ・・・。服がベタベタするぅ」
「不用意に飛ぶからでしょ。・・・あまり近づかないで。ばっちぃから」
「ヒドイ。うーん。舌の感触も悪くはないけど、一本しかないから、私的には触手の方が好きだなぁ」
「聞いてない」
ニナの感想を聞き流しつつ、手裏剣を操作して着実にダメージを与えていく。
「お二人ー!こっちも助けてほしいなぁって!」
少し離れた後方では、ミコとモモの魔人がたくさんの毛玉を振り払っていた。
「そのまま囮役よろしくー」
「こっちは本体削っておくから、任せた」
「いや数多いし!この毛玉消えないし!私達サポート職!」
「ミコ、喋ってないで迎撃して」
後方の2人を集中的に襲う毛玉は羊の一部だからか、いくら攻撃しても距離が少し離れるだけで消えることがない。
「実際、あの毛玉の相手は大変だから、2人が集中的に狙われて囮やってくれるだけでも結構助かるのよね」
ニナがそう呟くと鎌に炎を纏わせて羊に向かう。
「MP回復するから、ニナ少しの間よろしくー」
ユカはポーションを開けて手裏剣の操作で減ったMPを回復させる。
「うーん。風を起こす植物で遠くに吹き飛ばすのは、ダメだよね?」
「そんなことしたらユカさんの方に向かっちゃうかもしれないでしょう。ちゃんと囮としての役割を務めなさい」
「私を盾にしているももっちに言われたくないけど!?」
「私の専用防具、露出が多いから仕方ないでしょう・・・。あなたと違って私はくすぐりの防御力低いのだから」
ミコが巨大な根を生やして動かして、毛玉を虫を追い払うように相手にする。
その後ろでモモが呼び出した魔人に指示を出し、根をすり抜けてきた毛玉を追い払う。
意外としっかりしたコンビネーションで捕まらずにターゲットを維持し続けている。
だが数が多く、段々と対処しきれなくなってきている。
「ミコ、根を抜いてくる毛玉が増えてきてるわよ」
「いや、そんなこと言われたって・・・」
やがて、ミコの真上から根をすり抜けてきた毛玉が、ミコのうなじ辺りから服の中に入る。
「んひゃぁっ!?何っ!?何か服の中に!?ひゃぃっ!やっ!あはっ!やばっ!」
ミコがくすぐったさに気が逸れると、根の動きも鈍くなり、その隙を突いて大量の毛玉がミコに殺到する。
「あっ、ひゃっ!あぁっはっはっははははは!だめだめっ!はなれっ!ぇっへっへっへへへへ!」
あっという間に全身が毛まみれになるミコ。
「うぁっ!あはっ!やぁぁ~~~っはははははははは!だめだぁっはっはっはっはははははは!」
「これマズいわね・・・」
くすぐられているミコを少し離れた場所から見ているモモ。今のところ毛玉は全てミコを狙っているため無事だが、モモの防具はお腹も脇も露出しているので出来れば襲われたくない。
「やぁぁっはっはっはっははははは!たすっ!たすけっ!あぁーーっはっはっははははは!」
「ちょっと、こっち向かないでよ!」
自分の場所がないと悟ったのか、ミコの視線に反応したのか、新たにやってきた毛玉が次々と矛先をモモに向け始める。
「あっはっはっははは!はぁーっ!はぁーっ!はぁーっはっはっはははは!」
「この数、私じゃ無理っ!・・・っ!やっ、来ないでっ!ふゃっ!」
魔人に指示を出して多少追い払うも、多対一ができないモモはあまり時間も稼げず、毛玉に襲われ始める。
「むりむりっ!あぁ~~っはっはっははははははは!あはっ!はぁっ!あぁっはっはっはははは!」
「んっふふふふ!やめっ!はなれっ・・・!ひゃんっ!やっ!ふふっ!~~~っ!」
ついに2人して毛玉になってしまう。
「あっはっはははははは!もっむりっ!ひゃぁっはっはっはははは!」
「はぁっ!んっふふ!ふぅっふっふっふふ・・・!やっ!あはっ!ふひゃぅっふっふっふふふ!」
2人してくすぐられ、先にくすぐられていたミコの体力がもうじき半分を切るところまで減ると、毛玉は急に動きが止まり、消えていった。
「はぁっ!はぁっ!はぁーっ!はぁー・・・!」
「お、おわった・・・?」
ユカとニナが本体の羊を倒したため、羊の一部だった毛玉も消えていった。
「お疲れ様。・・・大丈夫?」
「ハーフレイドはまだ何とかなるねー。ユカちゃんは色んな属性使えるし」
「無事、素材も手に入ったし、帰りましょうか」
4人は街へと帰還する。
最近ドライアイがヤバイ




