122話
ユカとミコがランチを終えた後、ミコがログアウトして1人になったユカの元にニナが合流する。
「ユカちゃんおつー。あれ、ミコちゃんは?」
「宿題忘れていたからログアウトさせた。今頃は宿題を片付けてるんじゃない?」
「あー、数学の宿題がいっぱい出てたもんねぇ・・・。ユカちゃんは?」
「昨日の内に終わらせてるわよ。ニナは?」
「もち終わらせてるよ」
「ならよかった。で、どうする?」
「2人でレベリングするのもアレだし、遠くいくのも違うし、どうしようか」
「近場かつそんなに時間の掛からない手軽なクエストとかあればいいんだけど」
「うーん。私達ここに着いたばかりだからよく分からないしねぇ。探せばありそうだけど」
「ネットで調べてみようか」
「団長に聞いたら・・・って思ったけど、今日居ないんだ」
「まぁ、あの人って本来は毎日ログインできるような人じゃないし」
「んー、それもそうか」
「んっと、『夜の学校で調査』っていうのがあるっぽい。検索したら一番上に出てきたね」
「夜じゃないと受けれない系じゃない?」
「いや、専用マップに飛ばされるから昼でもいいらしいわ」
「ふーん。内容は?」
「ネタバレが嫌だから詳し内容までは見てないけど、この街にある学校で怪奇現象が起きてるみたいな噂があるから調べてって感じらしいわ」
「ん、街から出ずに済ませられるなら丁度いいかな」
「そういえばユカちゃんってホラーは平気なの?クエスト名的にホラーっぽいけど」
「平気ではないけど、このゲームならガチホラーにはならないでしょ」
「それはまぁ、分かる」
2人はネットで調べたクエストの受注場所に向かう。
街の中にある大きな学校の正門の前、そこにスーツ姿の女性教師が立っていた。
「あの人ね。話しかけてみましょう」
「おっけー。・・・すみませーん。そんなところでずっと立ってて、どうかしましたか?」
「ん?あぁ、私はこの学校の教師をやっているのだが、最近生徒達の間で怪談話が流行っててな。それ自体は問題無いんだが、この手の話が流行った時は学校内に死霊系の魔物が潜んでいることがあるんだ。だから騎士団や冒険者に調査して欲しいんだが、中々来てくれなくてな・・・」
「私たちがやりましょうか?」
「本当か?なら、助かる」
ここまで会話を進めると、ユカ達の前に確認ウィンドウが表示される。
「『転送されますが準備はよろしいですか?』か。まぁ準備する物も特にないし、平気よね?」
「おっけー」
「んじゃ、OKっと」
ユカがOKを選択すると、2人は夜の校庭に転移される。
「ガチホラーじゃないってのは分かっているけど、夜の校舎って不気味ね」
「ちなみに具体的なクエストのルールは?」
「えっと、いつの間にかアイテムボックスに入ってたこのお札を、指定された場所で使えばいい。で、指定された場所は全部で10か所。私たちの体力が0になったら失敗。あと、生身の女生徒に攻撃したらダメ。ただしくすぐりはOKだって」
「ほうほう。指定された場所は?」
「屋外のプール、1Fの体育館と保健室、2Fの美術室と1-A教室、3Fの家庭科室と科学室、4Fの音楽室と図書室、最後に屋上ね」
「10か所は多いねぇ。手分けする?」
「拘束されてくすぐられたら終わりだし、分かれるのはリスク高くない?」
「2人いようが拘束されたらおしまいじゃない?」
「それはそうだけど・・・。とりあえず屋外のプールは2人で行きましょう」
「それもそうだね」
屋外にあるプールへ向かう2人。校庭の隅にある入口のカギは掛かっておらず、すんなり入れる。
「んー、普通の学校のプール」
「プールのどこでこのお札を使えばいいのかしら」
「あれじゃない?あの光ってるところ」
入口の反対側のプールサイドに、不自然に地面が光っている箇所があった。
「まぁ、他にないし、そうね・・・。ニナ1人で行く?」
「え?いいの?」
「まぁ最初だし。どんな感じなのか見たいし」
「んじゃ、いってきまーす」
お札を持って歩いて光ってる場所へ向かうニナ。半分ほどを通り過ぎた時、プールに異変が現れる。
「え?うわっ。ニナ、プール見て!」
「うん?」
プールの水面から何十本もの白い腕が現れ、ニナの方へ伸びていく。
「え、うわっ、こわっ!」
腕はニナの体を掴み、プールへと引きずり込んでいく。
「あ、結構力は弱いかも・・・ひゃんっ!」
何とか踏ん張ろうと抵抗を試みると、何本かの腕がニナの体をくすぐり邪魔をする。
「んっふふふふふ!うぁっ、やばっ、いっ!うぇぶっ!」
そのまま遂にプールに落ちる。
「ぶはぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁぁっはっはっはっはははははは!」
すぐにプールから顔を出すが、大きな笑い声を響かせる。両手両足は拘束されていないが、体を何本もの腕が掴み、くすぐっている。
「あぁーーーーーっはっはっはっはははははははははは!にげれなっ!あっはっはっはっはははははははは!」
何とか逃げ出そうと両手両足をじたばた動かすが、水面を叩くだけで何の効果もない。
「なるほど、ああいう拘束の仕方もあるのね・・・」
「やぁぁっはっははははははははは!やめっ!あぁっはっはっはっはははははははは!」
「しかしどうしよう。ダッシュすれば腕を躱して向こう側まで行けるかな・・・。あ、そうだ」
「あぁっははははははははははは!そこやっ!っはははははははは!」
ユカはダッシュで光る場所へ向かい、ある程度まで接近すると縮地で一気に光る場所まで辿り着く。
「私にはコレがあったわね。お札をペタっと」
「あぁっはっはっはっはははははははは!はぶっ!」
ユカがお札を地面に貼ったと同時にニナをくすぐっていた腕が消え、プールに沈むニナ。
とはいえすぐに浮かび上がり、泳いでプールから脱出する。
「うへぇ、びしょびしょ・・・」
「ま、2~3分で乾くし、少し休憩しましょ」
現実なら乾くまで数時間かかるだろうが、この世界はゲームなので2~3分程度で乾いてくれる。
ニナの服が乾くまで休憩した後、2人は校舎に入る。
「さて、どうする?二手に分かれる?」
「分かれていいと思う。2人で10か所回るのは時間がかかりすぎるし」
「なら、保健室と体育館、どっちがいい?」
「んー、保健室で」
そんなやり取りの後、ユカは体育館へ、ニナは保健室へ向かう。
体育館へとたどり着いたユカ。
「場所は・・・壇上か」
体育館の一番奥、壇上の上に光る場所を見つける。
「さて、この状況、すんなり通してくれるかしら」
問題は壇上までの道。体育館のいたるところに何故かマットが敷かれていた。
「縮地で詰めるにも、ある程度近付かなきゃだし・・・。ま、ここでウダウダしててもしょうがないわね。行きましょう」
警戒しながら歩いて移動し、マットの横を通り過ぎようとすると、突然ユカは何かにマットに向かって突き飛ばされる。
警戒はしていたが、何の前触れもなく突き飛ばされれば回避も防御も難しく、マットの上に倒れる。
そしてユカが起き上がるよりも早く半透明の腕がユカの両手を掴んで押さえつける。
「なるほど、幽霊だから襲われるまで見えないって訳ね」
マットの上に仰向けで倒れているユカは、自分を取り囲む5人の少女を見る。少女達は全員が半透明なので幽霊だと一発で分かる。
「・・・製作者の趣味を感じるわね」
少女の幽霊達は全員がバスケットボールか何かのユニフォームを着ている。
少女達は言葉も発さずにユカをくすぐり始める。
「んっ!んぅっふふふふ!ちょっと、くすぐったぃ・・・!」
(戦闘は無いんだし、もうちょっとくすぐりやすい服に着替えておけばよかったかな)
ユカはいつも通りの忍者服を着ている。人の手が潜り込めるような隙間は少なく、くすぐりに対する防御力はそこそこ高い。
すると上半身をくすぐっていた4人の内2人が、防御が薄い足の方に移動する。
「あ、そっちはちょっとまずい」
ユカは変わり身の術でいつでも脱出できるため、割と余裕な態度。
足に移った2人は靴と靴下を脱がし、太ももで足を挟んで逃げられないようにすると、両手で足の裏をくすぐり始める。
「ふぁぁっ!あっははははは!はぁっ!ふぅぅんっ!んっふふふふふふふ!」
残っている2人は服の上から脇や脇腹をくすぐっていたが、ユカの耳や首筋にターゲットを変える。
「ふぁぁっはっはっはっははははは!やぁっ!耳とくびっ、力ぬけるぅっ!んっふふふふふふふふ!」
明らかに良くなった反応に気を良くしたのか、少女達はくすぐる動きを早く激しくしていく。
「んぅっふっふっふっふっふふふふ!はぁ~~~っはっはっははははははははは!」
(・・・そろそろ抜けましょうか)
【忍術:変わり身の術】
ユカは変わり身の術で幽霊の少女達からのくすぐりから逃れる。
「学校でくすぐられるっていうのも何か、不思議な感じ。とりあえず、マットの傍を歩くと襲われるって感じかな」
ユカはマットに極力近付かないように動き、縮地を使いこなして壇上まで辿り着き、光る場所に札を貼る。
「これで大丈夫よね。・・・折角だし、少し着替えましょ」
ユカはアイテムボックスを操作し、装備を変え始める。
一方のニナ。
「ここが保健室。うーん、普通の保健室ね。さて、光る場所は~?」
保健室に入ったニナは部屋を見渡すが、光る場所は見当たらない。
だが、カーテンが閉まっているベッドが3つ並んでいる。
「これはアレだね。3つのうち正解が一つで、外れを引くとベッドに引き込まれてくすぐられるやつだね。私には分かる」
少し悩んだ後、真ん中のベッドに狙いを定める。
「ここだぁ!」
カーテンを勢いよく開けると光り輝くベッドが、正確にはベッドの下が光っている光景が現れる。
「当てちゃったぁ」
少し残念そうなニナ。そのままベッドの下に潜って札を貼り、保健室を後にして、2Fへの階段前でユカと合流する。
そういえば気付いたら初投稿から6年経ってるんですね
6年も・・・?