117話
あけましておめでとうございます!
まだ1月だからセーフ・・・
「さて、今日はどうする?巨塔の続き行く?」
いつもの場所に集まったいつもの4人。
「それもいいけど、そろそろ新大陸行きたいなぁ」
ニナがミコの提案とは違う場所を提案する。
「新大陸か・・・。まぁ、私たちのレベルならそろそろ行けるかな」
新大陸は数ヶ月前に実装されたマップだが、当時はユカ達のレベルがまだ低かったので行っていなかった。
だが今はもう新大陸でも戦えるほどまでレベルが上がっているので、今日は新大陸へ行くことに決まる。
「ここから行くの?」
大陸南東の小さな港町へ辿り着く4人。
「ここから船よ」
新大陸は名前の通り大陸が違うので海を挟んだ向かい側にある。なので船に乗っていく必要がある。
「船に乗ってる間に襲われたりしないよね?」
「・・・」
「なんで黙るかな?」
やや不穏な感じを残しつつ、新大陸行きの船に乗る4人。
「ゲーム内くらい移動はスキップできてもよくない・・・?」
「2回目以降はスキップできるようになるわよ。船に乗るのは最初の1回だけ」
そうして船に揺られること5分後。
「ゆかちー、暇~」
「早いわね・・・」
「だって、何もないし」
「まぁ、もう元いた大陸が見えなくなったから、そろそろじゃない?」
「・・・?何が?」
ミコが首を傾げると同時に、轟音と共に船が大きく揺れる。
「まぁ、RPGで船っていったらお決まりだよねぇ」
そして船の船首付近に轟音の正体、巨大な白いイカが現れる。
「海の怪物クラーケン。まぁ、ド定番よね」
「触腕に捕まると食われるから気を付けてね」
「食われる?ドユコト?」
「そのまんまの意味だよ。捕まると食われて、体内でめっちゃくすぐられる、らしい。私もまだ食べられたこと無いから、実際はどんな感じなのか分からないけど」
「ま、新大陸でも戦えるかどうか試す試練てきなイベント戦ね。こいつを倒せないようならお前はまだ来るのが早いよってことよ」
クラーケンの巨大な目玉がユカ達を捉え、ひと際長く太い2本の触腕を動かして威嚇する。
「ま、火が通る相手だし、私達なら油断しなければ勝てる相手よ」
「になっち、それフラグじゃ・・・」
「ミコちゃんじゃないんだから平気よ」
「どういうことかな?」
「ふざけてないで、来るわよ」
ユカの掛け声と同時に触腕がユカ目掛けて伸ばされるが、大きく跳んで回避する。
「速いしデカいけど、動きが単純だから避けるのは簡単ね」
【忍術:火遁・轟炎】
反撃に忍術をクラーケンに向けて放つユカ。
「まったく効いてない訳ではないけど、やっぱり硬いわね」
クラーケンの表面が若干焼けたが、殆ど効いてないと言わんばかりに振る舞うクラーケン。
そしてお返しとばかりに漏斗からイカ墨を噴射する。
「うわっ!あぶなっ!」
ユカは縮地でなんとか回避する。
「あれは食らいたくないなぁ。ユカちゃんだから避けれたけど、私だと多分避けれないし」
「あれってイカ墨?食らうとどうなるの?」
「足が滑りやすくなるのと、目が見えにくくなる。そうなると格好の獲物だよね。直接的なダメージはないはず」
「近づきすぎると細くて短い方の触手に捕まりやすいから、割と近接職は厳しい相手なんだよね。私も魔法メインで遠距離に徹するかな」
ニナは鎌を構えつつも、術の発動準備をする。
「私はどうしようか?」
やることが分からないミコが聞いてくる。
「ミコちゃんはどうしようか?触腕を抑えるのは流石に難しいだろうから、イカ墨攻撃から守れる遮蔽物を作ってもらえると助かるかも?」
ニナの指示に従い、船上のあちこちに植物の壁を作り始める。
「なかなか倒れないわね」
戦闘が始まって早5分、触腕に捕まらないように注意しつつイカ墨攻撃を避けながらでは攻撃のチャンスが少なく、長期戦になりつつあった。
「大技を仕掛ける隙も無いからねぇ。的が大きいのが救い」
長期戦に嫌気がさしたのか、クラーケンが新たな行動を見せる。
2本の触腕と触手で船をガッチリ掴むと、大きく息を吸うような仕草をする。
「あ、これ不味いかも」
「後ろの2人も、壁に隠れて!」
4人が植物の壁の裏に隠れるとほぼ同時に、漏斗から大量のイカ墨が、船上を薙ぎ払うように吐き出される。
「あ、あぶなぁ・・・」
「甲板がイカ墨まみれね・・・」
そして触腕を巧みに使い、船を大きく揺らす。
「うぉっとっとっととぉっ!?」
大量のイカ墨と海水で濡れた甲板を大きく揺らされ、4人とも態勢を崩して転んでしまう。
そしてそのチャンスを見逃さないクラーケンは、触腕で比較的前にいたユカとニナを捕まえる。
「まずっ!」
「やっば」
【忍法:縄抜け】
ユカだけは拘束脱出スキルで触腕から逃げるが、ニナには逃れる術はなくそのまま口元まで運ばれる。
「うわっ、ちょっと楽しみだけどこれは普通に怖い」
巨大な以下の口元に運ばれ本能的な恐怖を感じるものの、どんな風にくすぐられるのか少し楽しみな様子。
そんなニナの気持ちを知ってか知らずか、すぐにそのまま口の中へ運ばれ飲み込まれる。
「になっちー!」
「まぁ、死ぬわけじゃないから大丈夫よ。多分・・・」
「実際、あれはどうするの?」
「救出方法は、クラーケンを倒してしまうか、食われた人が体内で暴れ回るか。そしたら漏斗から吐き出されるってネットに書いてあったわ」
「えっと、つまり?」
「外にいる私達ができるのは、ニナさんが力尽きる前にクラーケンを倒すことね。ニナさん、多分暴れないし・・・」
「・・・できる?」
「さっきの大技がHPが30%を切ったときに確定で使ってくる技だから、多分・・・」
とにかくなるべく早くクラーケンを倒す、と方針が決まり、ユカは多少のリスク覚悟で攻撃を叩き込む。
一方、食われたニナ。
「うべぅっ!」
飲み込まれた後、少し広めの空間にたどり着く。
「ここは、胃?ちょっと変な臭いするし、360度どこ見渡しても肉なのはさすがにちょっと、怖いね」
周囲を見渡して、少し嫌な顔をする。
「さて、普通に考えたら早めに出た方がいいんだけど、ちょっとくすぐられたいなぁ」
どこか期待した表情でそう呟くと、その声が聞こえたのか、肉の床に異変が起きる。
「にゅぉっと!?」
急にニナの足が沈み、足首から下が飲み込まれてしまう。靴は履いているのでくすぐられる心配はないが、態勢を崩して四つん這いの姿勢になってしまう。
「これ開発した人、いい趣味してるよねぇ・・・」
床に着いた手もそのまま沈み、身動きが取れなくなる。そして壁や床から人差し指ほどの太さの触手が伸びて来る。
「こうやってくすぐってくるんだぁ・・・」
ニナの予想通り、伸びてきた何十本もの触手は無防備になった脇やお腹に伸びて、先端を撫でるように這わせてくすぐり始める。
「ふぅっ!んっ!くっ!っふふふふふ!くすぐったぃ・・・!」
一本一本はそこまで強い刺激ではないが、身動きの取れない状況と触手の数が、ニナに与えられるくすぐったさを増幅させていく。
「んぅっふふふふふ!あっ!これむりぃっひひひひひひ!あぁーーっはっはっはははははははは!」
あっという間に我慢が限界を迎え、大声で笑いだす。
「やぁぁぁ~~~っはっはっはっはははははははははは!あはっ!はぁっ!はぁぁぁっ!」
何十本もの触手が先端を上下に素早く動かし、ニナの肌をくすぐる。
「あっはっはっはははははははは!ははっ!はぁっ!やぁっははははははははは!」
ここで足首を加えていた肉壁に変化が生じる。何やらモゾモゾと動き出す。
「はひっ!ひゃぁぁっはははははははははは!や、やめっ!」
ニナは異変に気付く。足を掴む肉壁が器用に動き、ニナの靴を脱がしている。
「きよぅっ!すぎぃっひひひひひひひ!ひゃぁぁ~~~っっははははははははは!」
靴が脱げて防御力が激減したニナの足を、そのままグニグニと揉むようにくすぐる。
「あぁっはははははははははは!あっは!はぁっ!はぁっ!これ、やばっ!ぃっひひひひひひひひひひ!」
激しいくすぐりにHPをみるみると減らし、残り20%を切ると、肉壁が大きく動き始める。
「はひっ!やっ!こんどは、なにぃっ!?ぶべっ!」
どこか苦しむように肉壁が蠢くと、ニナが漏斗から外に吐き出される。
「ぶへぇっ!」
くすぐられて疲弊している状態で着地できるはずもなく、甲板に激突する。
「になっち、大丈夫?」
「甲板に直撃はひどくない・・・?」
ニナの状態はお構いなしに、船は障害がなくなったので再び進み始める。
ニナが回復しきるとほぼ同時に、新大陸へと一行は到着する。