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十話

 ユカが装備を新調し、現在団長室。


「見た目は……あまり変わらないんですねぇ……」


 新調した忍者服をお披露目しているユカの姿があった。


「うーん、流石ユニークジョブと言うべきか、低レベル帯の装備とは思えない能力値ねぇ。しかし、クノイチの服ってやっぱ可愛いねぇ……」


(所々に見える肌がえっちぃって言うのは言わないでおこう)


 リリィがユカを見つめながら真面目な感想を漏らして頭の中で不健全な妄想をしていた。実際、専用の忍者装備は数ランク上の性能をしていた。

 尚、このゲームには相手を意識して凝視すると相手の情報を見る事が出来るシステムが存在する。魔物やNPCが相手の場合は名前、HPバーやバフ、デバフが確認可能である。プレイヤーが相手の場合は少々勝手が違い、他にレベルも確認する事が可能である。また、フレンド登録してる場合は職業やステータス値も見る事が出来る。


「でも、攻撃スキルを全然覚えられてないです…」


 現在ユカが習得しているスキル。

・忍術:火遁

・忍法:縮地

・忍法:縄抜けの術

・忍術:分身の術

・忍術:隠れ身の術

・忍具製造

・薬学術

・手裏剣術


 忍法と忍術の違いは物理属性か魔法属性かの違いである。つまり、忍術は沈黙状態では使う事が出来なくなる。


「確かに、唯一の火遁も威力が低いし、手裏剣術は鉄鉱石を大量に保有してないと厳しいし。こうして見ると結構上級者向け?」


 ソファーで寛ぎながらクッキーをつまんでいたイリーナが思い付いたように口を開く。


「レベル上げ以外に何か習得法があるんじゃないの?私の魔法だって、半分ぐらいレベル以外で覚えたし」


 イリーナが言うように、スキルはレベルの他にイベントクリアでも習得できる場合があった。これは魔法職に多く見られる傾向があり、特に召喚術師はモンスターをソロで倒す必要があるのでレベルで覚えられる技能が数えられる程しかない。


「成程。なら、一度忍者屋敷に行ってみたら?」


 ユカはそんな方法もあるのかと、また一つ賢くなる。


「そいえば団長。来月の大型アップデートで新職業が3つ追加されるらしいけど、転職のご予定は?」


 ユカにとって初耳となる情報。公式サイトでは発表されていない事である。


「あると思う?」


 だよねー、と呟きクッキーに手を伸ばすイリーナ。


「新しい職業が追加されるんですか?」


「うん、武闘家と話術師と魔法戦士だったかな。武道家が今更追加されるのは何か変な気分」


「まぁ上位陣は転職する気ないけどねぇ。サブキャラ作って選ぶことはあるかもだけど」


 事実、過去に一回だけ追加されたことがあったが、レベルが高いほど転職率は低い傾向にある。


「取り敢えず、私は忍者屋敷に行ってきます」


 そう言ってユカは団長室を後にした。そして入れ違いでルルナが入ってくる。


「何かユカちゃんが飛び出してったけど、どうかしたの?」


「えっとね」


~スキル云々を説明中~


「忍者屋敷に行ったの?大丈夫かな?」


「今のユカちゃんなら大丈夫でしょ?道中に強い敵は出ないし」


 そう言うとルルナは驚いた表情を浮かべる。


「もしかして、団長知らない?今、東の森の手前の平原で謎の魔物が出るって噂……」


「あっ、ああああああああ!!」


 そこまで言いかけた所で大声を上げて椅子から立ち上がるリリィ。


「ちょっとー…。大声出さないでよ、びっくりしたじゃん」


「忘れてた……今日からハロウィン前夜祭だ……」


 リリィがそう呟くと、二人は疑問を浮かべる。


「ハロウィンイベント?そういうのって普通公式サイトに掲載されてるはずじゃ……」


「前夜祭は告知なしで突発で行うって情報があったの。東の平原に『ジャック・オ・ランタン』の下僕が出現し始めるって」


 そこまで言うと、リリィは部屋を飛び出していった。部屋に残された二人は。


「どうする?」


「平原に出るって事は大して強くないだろうけど、興味はあるから一回戦いに行ってみようかな」


 そうして二人は部屋を後にして、部屋には誰も居なくなった。

 その頃、ユカは街を出て平原を走っていた。  


(忍者屋敷に行くのも何か久々だなぁ……)


 等と思いながら走り、そして何かを見つけて急停止する。


(……?何、あれ?平原にあんなの居たっけ?)


 平原に出現する魔物はユカが最初に戦ったティキャットとスライムの二種類だけである。だが、ユカが見つけた魔物は明らかにそのどちらでも無い事が遠目からでも分かる姿をしていた。


【忍術:隠れ身の術】


 念の為、忍具製造と共に習得したばかりのスキルを発動する。

 隠れ身の術は一秒にMPを1消費して自身の姿を透明にするスキルである。当然、他プレイヤーや魔物に見つかる事は無い。

 透明状態になったユカは未知の魔物に近づいていく。かなり近づき、その姿もはっきりと分かるが、ソレが何かなのかはわからない。情報を見ても名前が???になっている。強いて言うならば、浮いてるカボチャ。ただのカボチャが根っこごと浮いてるナニカ。


(何かよくわかんないけど、取り敢えず攻撃しよ)


 何も考えずに行動するのがユカの癖である。


「せやぁっ!」


 透明状態からの不意打ち攻撃。当然浮いてるカボチャにそれを回避する術はなく、一撃で倒れる。


(ぇ、よわっ!)


 だが、本番はここからであった。カボチャは消える事無く、突然一部が破裂し口の様な物が出来て不気味に笑いだす。

 余りに突然の事に「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。そして周囲に緑色の霧が発生し、それはどんどん濃くなり、気付けば10M先も見えぬ程の霧が立ち込めていた。戦闘エリアは変わらず維持されている。

 そしてカボチャがゆっくりと浮かび上がり、目が生まれ、根っこが増え、手の様な物が生まれる。


(もしかして私、とんでもないのに手を出しちゃった……?)


 顔を引き攣らせながら目の前の敵を見据えるユカ。名前は『ジャックの下僕』ハロウィン限定の魔物の中で一番弱い敵である。それでも適正レベルは今のユカより上である。

 考える事を止め、縮地を使い接近し、刀で斬り付けるユカ。本体には効かなそうなので根っこを狙うが、それは愚策であった。一本を斬り落とす事に成功はしたものの、他の根っこに片手を掴まれ、動揺している内に他の触手が絡み付き、ユカを拘束していく。


(何か私、いつも同じ様な捕まり方してるような……)


 そんな身動きの取れないユカの背後から二つの手が近づいてきて、そしてそのままユカの脇をくすぐり始める。


「んっ……くっ……ふふふっ……」


 動きはまだ早くなく、余裕があるユカ。


「くひっ……ふふふふふふふっ……はひっ……」


 当然の様に動きは段々と早くなっていく。


「んふふふふふふふふ……はひっ!?」


 突如、ユカの体に絡み付いていた根っこがもぞもぞと動き出し、ユカの全身を刺激し始める。服の上からとはいえ、ユカを笑わせるには十分な刺激である。


「ちょ、聞いてなっ、あはっ、あははははははは!!」


 手がいつの間にか脇腹の方まで移動しており、ユカの脇腹を揉み始める。脇には伸びてきた蔓が撫で回すようにくすぐっていた。


「あははははははははっ!!多いぃぃぃぃぃぃっ!!」


 突然増えた刺激に我慢する事が出来なくなり、笑い悶えるユカ。


「くひひひひひ……はひっ、あはっ、あっははははははははははははは!!」


 良い反応をするユカに気を良くしたのか、脇を責める蔓を増やし、更に靴の中に蔓を潜り込ませ、足もくすぐり始める。


「あははははははははははははははっ!!足はっ、だめぇぇぇぇぇへへへへ!!」


 首を左右に振り抵抗するユカ。当然それでくすぐりが弱まる筈もない。そしてHPが残り2割を切りそうになったところで、ユカは縄抜けを発動し、拘束から抜け出す。そのまま逃走を図るが、問題はここからだった。


「あれ?なんでっ!?出れない!」


 通常、エリアの外まで出れば逃走判定になり、エリアが解除され逃げる事が出来る。だがハロウィン仕様の敵は違った。周りの緑色の霧が逃走を出来なくしていたのだ。

 エリアの端で壁を殴ったり叩いたりして出ようと試みるユカ。当然出れる筈もなく、背後からゆっくりとカボチャが近づいてくる。


「や、だして、や、やぁぁぁぁぁっははははははははははは!!」


 大量の蔓を伸ばし、あっという間にユカを拘束し再びくすぐり始める。


「あっははははははははははははは!!やだぁぁぁっははははははははは!!」


 そうしてユカはHPが0になる。尚、ユカはネア特製。デスペナ無効化ポーチという物を貰っていた為、所持金を失う事は無い。だが、もう一つのペナルティが待っていた。


「あれ、力が……」


 0になると同時に全身の力が抜けて指一本動かせなくなるユカ。魔物にHPを0にされた時、ペナルティとして5分間体を動かす事が出来なくなる。

 こうして完全な無防備状態になったユカの体に手と大量の蔓が群がる。


「や、やめ、今動けないからぁぁぁぁぁぁぁっははははははははは!!」


 どんなにくすぐったくても体は全く動かす事が出来ないユカは、ただ笑い声をあげる事しかできない。


「あぁっはははははははははははははははは!!!やめへへへへへへへぇぇぇぇぇぇぇっ!!きゃははははははははははは!!」


 そのまま5分間くすぐられ続けたユカは淡い光に包まれ、ギルドハウスの自室のベッドの上に転送された。

 一方、その頃リリィは。


「きゃっはははははははははははははは!!」


「触手に絡まれてくすぐられる天使最高!!!!」


 マリエルを召喚し、戦わせ、くすぐられる姿を堪能していた。


「ご主人しゃまぁぁぁぁぁぁっははははははははは!!たす、たすけへへへへへへへへへ!!」


「下僕でこの強さなら、ジャック本人はレイドクラスかなぁ。6人で挑めば倒せるかな……」


 残念ながらリリィはマリエルを助ける気はない。


「やぁっ!やめっ!やぁぁぁぁぁっははははははははははは!!足は、足は弱いのぉぉぉぉぉぉ!!」


 素足なのに足が弱点という天使。そんな右足には二つの手が10本の指でくすぐり、左足には10本の触手が這いずりまわっている。


「やめへぇぇぇぇぇぇぇっ!!あっははははははははははははは!!」


「ま、取り敢えずマリエルがやられたら適当なの召喚して倒して、召喚出来るようにしよっと」


 マリエルに安寧は訪れない。

 そしてイリーナとルルナの二人は。


「うっわぁ、弱っ!って思ったら。これは酷いね。しかも逃げれないのかぁ」


 余裕の態度の二人に近づくカボチャ。だが、二人に届くことは無かった。


【弓技:イグニッションアロー】


 ルルナの放った矢がカボチャに突き刺さると同時に、激しい爆炎を巻き上げて消し飛ばした。


「これ、初心者も良く通る平原にポップさせていいのか?」


「んー、こっちから手を出さなければ襲って来ないから大丈夫では?」


 実に気楽な様子で街へと戻って行った。

フライングハロウィン。

ハロウィンイベントの続きはギルド戦の後なので余裕でハロウィン過ぎると思います。

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