83話
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
ある休日の昼間。
暇を持て余したユカとニナ。
ミコは折角の休日だからと少し遠くまで買い物に出掛けており、モモは家の用事で居ない。
「二人でレベル上げに行くのもアレよね……」
「じゃあユカちゃん。こないだ送っといたやつやらない?」
「……まぁ、暇潰しにはなるかな」
そんな会話をして一旦ゲームからログアウトする。
ニナは以前、ユカに幾つかゲームをプレゼントしていた。ジャンルは様々だが、くすぐり要素があるという点は共通している。
ユカはニナと通話をしながらゲームを起動し、ニナが作ったプライベートルームへ入る。
「さて、ちゃっちゃと設定済ませちゃいましょうか」
ニナはそう言ってゲームの設定を始める。
「そもそも、これ何のゲーム?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
「よくあるスゴロク系のパーティーゲームだよ。ルールは、やりながら説明するね」
ニナは返事しながらも画面を操作する。
「流石に2人だけだと盛り上がりに欠けるから、NPCを2人加えるけど……。ユカちゃん、容姿に要望とかある?」
「……別に。無いかな」
「じゃあ気に入ってるこの子とこの子にしよっと」
ニナが画面を弄ると、2人の前にNPCの女の子が現れる。
片方の名前は「マナ」。黒いロングの髪に黒の瞳をして巫女服を着た少女。
もう片方の名前は「ルリ」。茶色いショートボブにブレザータイプの学生服を着た少女。
「なんだろう。ゲームがあれだからか、巫女服の隣に立っているからか。コスプレ感が強いわね」
「いやー、この服を解放するの大変だったんだよ」
このゲームはやりこむとNPCの容姿や着せれる服が増えていく仕様になっている。
「NPCの強さは最強にして、ステージはランダムにして、と。よし、始めよっか」
ニナがゲーム開始を押して、4人は転送される。
「……見た感じは普通のスゴロクゲームね」
ユカは周りを見渡して呟く。ランダムに選ばれたステージは宇宙ステーションの様な場所だった。銀色の丸い大きな部屋に、窓の外には宇宙が広がっている。
『ようこそ、宇宙ステージへ!』
ユカ達の前に緑色のドレスを着たピンク色の髪の少女が現れる。
『私が皆さんのサポートをする「ナビィ」と申します!』
自己紹介が終わるとすぐに手を振って頭程の大きさのサイコロを4人の目の前に出現させる。
『まずは行動順を決めます!サイコロを振ってください!』
4人がサイコロを投げた結果、行動順はマナ>ルリ>ニナ>ユカの順になる。
「NPCが先ね」
「まぁ、説明しながらなら丁度いいかな」
『ルールは簡単です。決められたターンが終了するまでにできるかぎり沢山のポイントを集めた人が勝利です!』
ナビィの説明が終わると早々にゲームが開始され、最初のマナがサイコロを投げて4を出す。
「これ、ゴールとかあるの?」
「無いよ。今回は15ターンで設定してあるから、15ターンが終わるまで同じコースをずっとぐるぐるするよ」
マナが進んだ4マス目は、宝箱が描かれた黄色のマスだった。
「あのマスは?」
「宝箱マスだよ。宝箱が出現して、それを開けるかどうかを選べるよ」
「……もしかして、トラップとかある?」
「勿論!……ただ、「宝箱の鍵」っていうアイテムがあればトラップを回避して開けられるけどね」
マイはそのまま宝箱を空けて100ポイントを手に入れる。
「100ポイントって多いの?」
「多くはないけど、少なくもないって感じかな。多い時は最終的に1万ポイント超えるし」
続けてルリがサイコロを振って、1を出して剣と盾が描かれた赤色のマスに止まる。
「あれは?」
「バトルマスだね。あれはハイリスクハイリターンだよ」
ルリは赤いサイコロを続けて振る。
「バトルマスはね、もっかいサイコロを振って難易度を決めるの。難易度が高いほど敵が強かったり多かったりするんだけど、その分クリアした時に貰えるポイントも多い。ただ、負けると次のターンまでずっとくすぐられる」
ルリは6を出す。
「難易度6引いてる」
「さて、これでNPCの戦闘も眺められるから見学しよっ」
ニナは目の前にタブレットのような物を出して、ユカにも出し方を教える。
タブレットには戦闘エリアに転送されたルリの様子が映されていた。その向かい側には巨大な水色のスライムが蠢いている。
「スライムかー。流石6、いいの引いたね」
「これ、敵の種類ってどのくらいあるの?」
「さぁ?私も未だに出会ったこと無い敵とかいるし、結構多いよ」
「どうやって戦うの?これ、あっちと違ってRPGじゃ無いでしょ?」
「スタンブレードっていう、まぁ要するにスタンガンの棒バージョンみたいな武器が渡されるから。それで殴る。倒れたら倒した扱いになるから安心。人が相手なら1~2回殴れば倒れるけど、あぁいう大型の敵だと10回ぐらい殴らないと倒れないから、かなりきつい」
2人が会話している間もルリとスライムの戦いが続く。
「結構上手く戦ってるわね」
「強さ最強に設定してあるからね。まぁ、最強でも難易度6は勝てるか半々ってところだけど」
「あ、勝った」
「っち」
小さく舌打ちするニナ。
「分かりやすいね、ニナは」
「まぁね」
勝利したルリは500ポイントを入手して元のマスに戻って来る。
「次は私か、ほい!」
ニナがサイコロを投げると5が出る。
「5マス目はー、イベントマスか」
ニナが着いたマスは、ビックリマークが描かれた緑色のマスだった。
「ユカちゃん見てるー?」
ユカの前にニナの顔が映った画面が表示される。
「これで距離が離れても会話出来るからー!」
「やや鬱陶しいわね」
「ひどい」
わざとらしくショックを受けたような顔をするニナ。
「ここのマスはね、ランダムで何らかのイベントが発生するの。得するか損するかも分からないんだよね」
ニナの目の前にルーレットが映った画面が表示され、ルーレットが回り始める。
「それ!」
ニナは画面をタッチしてルーレットを止める。
【女性船員の誘惑に乗ってしまい、2人がかりで次のターンまでくすぐられる。抵抗しなければご褒美にアイテムを貰える】
結果が表示された瞬間、ニナの周囲に2人の女性が現れる。
「抵抗?するわけないじゃん」
ニナはすぐに手を上げて万歳の姿勢をとる。2人の女性はそんなニナの体に手を伸ばしてくすぐり始める。
「やっ、んっ!んっふふふふ……!ふぁっは!ははっ!はぁっ!んっ!ふひっ……!」
ニナは両手を上げたまま、反射的に抵抗しようとする自分の体を必死に抑えて震える。
「あっはははは!ははっ!ひっ!んっ!くっふふふふ……!くすぐったいっ……!」
女性たちは抵抗しないニナの腋や腰、脇腹、お腹に手を伸ばし、指先を蠢かせてくすぐる。
「やぁぁっ……!っははははははは!やっ!あはっ!はぁっ!はぁっははははは!」
「これ、もう振っちゃっていいのかな……」
ユカの手元には既にサイコロがあったが、ニナがまだくすぐられている為、自分のターンなのかよく分かっていなかった。
「まぁ、良いのよね。多分。えいっ」
ユカが出した目は2。
「少ないなぁ……」
ユカが止まったマスは、何も描かれていない青色のマス。そして50ポイントがユカに与えられる。
「一番面白くないマスに止まったわね……」
「やっ!あっははははははははは!はぁっ!はぁっ……!はひゃぁっ!ひゃぁっははははははは!」
ユカが行動している間もくすぐられ続けるニナ。
【1ターン目終了:マナ100P/ルリ500P/ニナ0P/ユカ50P】
そして2ターン目になり、NPCのマナがサイコロを振って2を出す。着いたマスは、プレゼントが描かれた青色のマス。
「ニナ、あのマスは……。答えられる状況じゃ無かったわね」
「あはははっ!はぁっ……!あぁぁ~~~っははははははは!あぁっ!あっははははは!」
そのマスはランダムでアイテムを一つゲットできるマスで、マナはサイコロを一度に2個振れるアイテムをゲットした。
続いてルリのターン。サイコロを振って5を出し、マナと同じマスに止まって同じアイテムを入手する。
「あはっ……!はぁっ……!おわった……!」
そしてニナのターンになり、くすぐりから解放される。そしてニナは一度も腕を下ろしたり逃げたりしなかったことにより、呪いの藁人形というアイテムを入手する。
「藁人形かぁ、まぁ使えなくはないね」
「どんなアイテムなの?」
「一度だけ、くすぐられるイベントを他の子に擦り付けられるアイテム」
「……なるほど」
自らくすぐられに行くニナにはあまり必要のないアイテムである。
「っと、早く振らないと。それ!」
ニナは3をだして宝箱マスに辿り着く。
「罠こないかなーっと」
トラップも無く、ニナは100ポイントを入手する。
「なかったか……」
続けてユカがサイコロを振って、また2をだす。
「また少ない……」
2マス進み、ユカも宝箱マスに着く。
「まぁ、空けないって選択肢は無いわよね」
ユカは出現した宝箱を空けた瞬間、【宝箱には大量のポイントが入っていたが、呪われていた。次のターンまで2つの手にくすぐられる】と書かれた画面が表示された。
「えぇ……」
ユカの困惑をよそに、2つの真っ白な手が空中に現れてユカに迫る。
「……幽霊だからか、触れないのね」
ユカは手を捕まえてみようとしたが、ユカの手は空中に現れた手を触れずにすり抜けてしまう。
そして手はユカの腋に狙いを定めてくすぐり始める。
「んっ!くっ……!んっふふ!ふっ……!んんっ……!ふっ……はぁっ……!んっふふふふふ!」
【2ターン目終了:マナ100P/ルリ500P/ニナ100P/ユカ550P】
番外編にしようと思ったけど、書いてみたら結構長くなりそうだったので本編にしました。
後3~4話続きそう。