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80話

 期間限定ダンジョンの「海底洞窟」。その最深部に4人は辿り着く。

 その場所は、石造りの円形劇場のような場所だが、通路にあたる部分が水深2メートルほどの水路になっている。そして檀上は殆ど水没してプールのようになっているが、中心部にのみ半径1メートルほどの広さの円形の陸上がある。

 そして、その中心部で佇んでいるのが、水色の長い髪にフリルがたくさんあしらわれた深い海の様な青色と白色の水着を着た、一見すると儚げな印象を受ける美少女。下半身は水色に白と桃色の鱗を持った人魚。海底洞窟のレイドボス「人魚姫・ローレライ」が4人を出迎える。


「あれがローレライだね。やっぱり、めっちゃ可愛い」


 その姿を見るなり、似合わないにやけ顔をするニナ。


「さて、どんな感じで倒そうか」


 ユカは冷静に振る舞うが、内心ではテンションが上がっている。


「……?普通に攻撃すればいいんじゃないの?」


 いつも通り、何も知らないミコ。

 そしてミコに答えを教えるように、檀上のプールが轟音と共に巨大な水柱になる。


「うわぁっ!?何っ!?何事っ!?」


「あの水柱は、どんな攻撃も防ぐ防壁だよ。あれに守られてる限り、ローレライに攻撃を当てる事は不可能だね」


「で、あの水柱を解除するには」


 ユカがそこまで説明すると、劇場の水路から巨大な舌を持ったカツオっぽい魚が10体姿を現す。魚達は空中を水中の様に泳いで4人に向かってくる。


「ローレライが召喚する水棲系の魔物を全て倒すこと!」


 ユカは縮地で一番近い一匹に急接近する。


【忍術:火遁・業火】


 そして忍術を叩き込み、一撃で撃破する。


「そしたら、少しの間だけ水柱が解除されて、ローレライに攻撃を当てられるようになるわ」


「そんな簡単にいかないけどねぇ」


 ニナのぼやきと同時に、部屋全体に声が響く。


【音響:ソニックシャウト】


「耳を塞いでっ!!」


 予兆から察したニナの声が響き、4人はすぐさま耳を塞ぐ。その数瞬後、凄まじい叫び声が劇場全体に響き渡る。


「なに、今の……」


「耳を塞ぐのが間に合ってなかったら、数秒間動けなくなるヤバい技よ。今は魚との距離が遠いからいいけど、戦闘中にあんなのされたらたまったもんじゃ無いわ」


「あんな風に、ローレライ本体が攻撃を仕掛けて来るわ。大体が状態異常技だったり、行動を制限させてくる技だけど。共通する対処法は耳を塞ぐこと。だから、戦闘中でもローレライに意識を向け続けて」


「ちなみに、攻撃してくるタイミングはランダムだから」


「簡単に言ってくれるなぁ……」


 ミコは顔をしかめるが、自分はユカとニナの2人がやられない限り敵の矢面に立つことはないので、幾分楽な事に気付き、魔力強化の植物を生み出しながら表情を戻す。


【忍術:火遁・炎舞】


【死神技法:贖罪の火】


 ユカとニナの2色の炎が放たれ、残りの魚が焼き魚になる。それと同時にローレライを守る水柱が収まる。


「今っ!」


【忍術:雷遁・紫電】


【死神技法:冥府の炎】


 水柱が収まると同時に、一瞬で出せる最大火力をローレライに叩き込む。


「あれでバリアの耐久値が1割程度しか削れないって……」


「まぁ、2人で一割ならいい方じゃない?」


 2人の術が着弾と同時に再び水柱が上がり、再びローレライを守る。


「ローレライはバリア壊せばこっちの勝ちみたいなとこあるからね」


「バリア壊せば……うへへ……」


「ニナ、顔」


「ちなみに人魚は共通して脇が弱いよ」


「聞いてない」


 そんな事を言ってる間に水路から新たな魔物が出現する。


「クラゲ型か。動きは遅いけど、触手は多いし、捕まったらほぼ終わりだから気を付けなきゃね」


 ユカは縮地で一番近いクラゲに一気に接近する。しかし、縮地を行使した瞬間、響く声に気付き、4人とも咄嗟に耳を塞ぐ。


【音響:ポイズンバラード】


 ローレライの歌が響き渡り、4人共耳を塞いでいるため動けなくなる。


(これ、ヤバいかも)


 ローレライの歌にはいくつか種類があり、歌によって効果や音が響く時間が変わる。今ローレライが歌っているのは、歌っている時間が最も長い歌で、効果は毒。

 歌自体は防げているが、ユカは縮地で接近したばかり。そして当然だが、魔物達は歌の最中だろうと構わず攻撃してくる。


(やめっ……、離してっ)


 クラゲは目の前で耳を塞ぎ動けなくなったユカの四肢に触手を絡める。そして耳を塞ぐ為ガラ空きになっている脇に触手を伸ばし、ブラシのような形状をしている部分を押し当て、そのまま上下に強く擦り付ける。


「くひっ……!くっ……!んっ……!ふふっ!はっ……!やっ、めっ!あはっ!」


 太い2本の触手がユカの脇腹を器用に掴み、そのまま揉むような刺激を与える。


「あはっ!やっ!今はだめっ!ひっ!ひゃぁっははははははははは!」


 強いくすぐったさから反射的に脇を閉じようとしてしまい、ローレライの歌が耳に届く。


「あっ!はぁっ!っはははははは!やっ!なにこれぇっへへへへへへ!」


 毒に侵され、全身を見えないナニカにくすぐられる感触に襲われる。


「はぁっはははははははは!あはっ!はぁっ!やぁっはははははははは!はっ!はっ!」


 特に脇と脇腹の2ヵ所は、触手によるくすぐったさと毒のくすぐったさを同時に与えられており、我慢が数秒で吹き飛ぶような強いくすぐったさを感じている。


「やっ、やめっ!やぁぁっははははははははは!あはっ!はぁっ!はぁっははははははは!」


 少しして、歌が終わり、自由に動けるようになったニナ達が動く。


「ユカちゃん、タイミング悪いなぁー……。ある意味いいのかな?」


「アホな事言ってないで、あの変態クラゲを早急に火葬して」


「ももっちって、ゆかちーが絡むと途端に過激になるよね……」


「いいからぁっははははははははは!はやっ!くぅっふふふふふふふ!」


【笛術:若草のメロディ】


 モモの笛の音が響き渡ると、ユカの体を侵していた毒が綺麗に消される。


「まずは触手からっ!」


【死神技法:死焔一閃】


 ニナが鎌を振るうと黒い炎が斬撃となって放たれ、ユカに絡み付きくすぐっていた触手を根元から切り裂く。


「はひっ……、はぁ……。休みたいけど……、戦闘中よね……」


 ユカは地面に倒れ込むがすぐに起き上がり、体に絡み付いた触手を一本一本ほどいて捨てる。


【死神技法:贖罪の火】


 ユカをくすぐっていたクラゲはそのまま蒼い炎に飲まれて消える。


「MP温存、とか、言ってる場合じゃ無いわね」


 ユカはアイテムボックスから切り札の日緋色金の手裏剣を取り出し、クラゲたちに向けて投げつける。


【忍法:仙刃烈火】


 手裏剣は炎を纏い、ユカの意のままに空中を飛び回り、クラゲを切り裂いていく。


「やっぱ、えげつないなぁ、それ。燃費の悪さだけがネックだけど」


「いや、これで燃費も低かったら強すぎでしょ」


 ニナは切り裂かれていくクラゲを見ながら呟き、最後の一体が倒れるのを確認するとローレライに向かっていき、ユカも手裏剣をローレライの方へ向けて飛ばす。


【忍法:操刃・塵桜】


【死神技法:冥府の炎】


 ユカの攻撃が手裏剣になっている分、先程よりもダメージが上がっているが、それでも1.5割しか削れない。


「ようやく4分の1……」


「レイドボスだからねぇ、2人で1割以上削れるだけいい方でしょ」


 再び水柱が上がり、今度は2メートル以上あるオウムガイと、カチカチと大きな音を鳴らす大きな二枚貝が姿を現す。


「2種類同時召喚になったか」


「しかも妨害系を引いたね」


 ローレライはバリアの耐久値が一定以下になると、召喚する魔物が複数種類同時に出現するようになる上に召喚数も増え、最終的に8種類を同時召喚してくる。

 オウムガイは触手によるくすぐり能力の高さと、殻の防御力が高い厄介な敵。

 二枚貝は貝殻を常にカチカチ鳴らして、歌の予兆を分かりにくくさせられる妨害系の敵。


「縮地はさっきみたいなことがあるから危険ね。MPケチってたら負けそう」


 ユカは手裏剣を仕舞うこと無く構えて、投げつける。


【忍法:操刃・烈破】


 炎を纏う手裏剣が敵全体を切り裂きながら弧を描くように飛びまわり、ユカの手元に戻る。

 だが手裏剣は最初のオウムガイ一体を撃破したものの、残りは殻と貝殻に隠れて耐え切る。ダメージが全くない訳では無いが、あまり減っていない。


「あ、やばっ」


【音響:へんてこポップ】


 魔物の殻と貝殻に手裏剣がぶつかった音が大きく、予兆に気付けなかった歌が響き渡り、後ろで警戒していた2人を除くユカとニナが聞いてしまう。

 どこか気の抜けるような音が響き、4人は力が抜けたようにその場に倒れる。

 今の歌の効果は、一定時間ほとんど動けなくなる状態異常の脱力。


「これは、まずい……」


 ユカに二枚貝が近づき、ニナにオウムガイが近づく。

 そしてユカは膝から下が食べられるように貝殻の中に咥え込まれる。


「んふっ!くっ……!ふふっ!はっ、はぁっ……!足だけ、集中狙い……?」


 ユカの足は貝殻の中で沢山の下に舐められているような感触に襲われるが、タイツがある程度刺激を和らげてくれている。


「ふっ、くっ……!ふひゃっ!はっ……!や、粘液が、染み込んでっ……!」


 貝の内部で分泌されている粘液が、タイツにどんどん染み込んでいき、段々と刺激が強まり余裕が無くなっていく。


「あはっ……!はぁっ……!やっ……!はひっ!ひっ!ひぁっはははははっ!あっはは!あはっ!」


 そして遂に笑いだすが、体は脱力して殆ど動かない。


「やぁぁぁっははははははははは!はげしぃっ!っひひひひ!ひゃぁっははははははは!ははっ!はぁっ!はぁっはははははははは!」


 一方のニナは体の殆どをオウムガイの触手が覆っており、強烈なくすぐったさに笑い悶えていた。


「はひっ!ひっ!ひぁっははははははは!くすぐったいっ!んひっ!はぁっ!あっははははははははははは!」


 オウムガイはタコ型やイカ型の魔物と違い、細い触手しか無いが、その分数が圧倒的に多い。


「ひぁっははははははは!はぁっ!あはっ!はぁっはははははははは!やぁっ!やぁっはははははははははは!」


 数の多い触手はニナの体に絡み付き、スカートの裾や上着の袖から中に入りこみ、素肌を撫でたり突っついたり吸盤を擦り付けたりして全身に多種多様な刺激を与える。


「あぁっは!あっははははははははははははは!はぁっ!はぁっ!はぁっはははははは!やっはははははははは!」


【笛術:若草のメロディ】


 歌が収まったところで、モモが状態異常回復の曲を奏でる。


「あっはははははははは!はぁっ!このっ!」


【忍法:縄抜けの術】


 ユカは久々に使った縄抜けの術で貝殻から脱出する。


【忍法:操刃・風車】


 そして手裏剣が放たれ、嵐の様な斬撃を浴びせて全ての敵を倒す。


【忍法:操刃・塵桜】


 そのままの勢いで、水柱が収まったローレライに攻撃を加える。ニナはくすぐられた後の余韻で動けず、間に合わない。


「流石に一人じゃあんまり削れないわね……。一旦2人の元まで引いてMPを回復しないと……」


 ユカは2人の元まで縮地で退いて、アイテムボックスから取り出したMP回復薬を飲む。


「はぁっ、はぁっ……。流石に、あの量の触手はきつかった……」


 ニナはようやく立ち上がり、鎌を構える。

ローレライは長くなったので2話に分けました。

次は来週(予定)になります。


それはそうと、海外で遂にくすぐりマシーンが開発されたらしいですね。

早く市販してくれないかなぁ……

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