表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/159

77話

すこし寄り道。

数話したら海底洞窟に戻ると思います。

 6月下旬。二日連続で海底洞窟へ挑んだ翌日の平日夜。

 ユカとミコは寮の催しで不在であり、モモは家の用事でログイン出来ないと連絡があった。つまり珍しくニナが一人で暇を持て余していた。


「折角だし、あそこに行こっかなぁ」


 そう呟いたニナは、水色のロリータドレスを身に纏った水色髪の少女、パートナーでスライム娘の「ソフィナ」を呼び出し、街の端に新しくできた大きな5階建ての屋敷へ向かう。

 海底洞窟と同じアップデートで追加された新しいソロ専用の施設。「絆の屋敷」という名前で実装されたその施設は、パートナーを効率よく育成できる場所である。


「皆と行動するときは連れて行かないけど、ソロの時は色んな所に連れまわしたいし、育てておいて損は無いでしょ。どんな事するのかは知らないけど」


 ニナはソフィナと共に屋敷の中へ入る。

 中へ入ってすぐ正面に、受付があり、そこにいる女性から施設の説明を受ける。

 要約すると、屋敷の5階最奥にある宝箱を空ければクリア。屋敷の中にはトラップが仕掛けられており、魔物も徘徊している。だが、プレイヤーは敵に対して一切のダメージを与える事が出来ず、パートナーに戦わせるしかない。魔物は基本プレイヤーしか襲わないが、パートナーが人型だった場合はパートナーも普通に襲われる。難易度は「イージー」「ノーマル」「ハード」の3段階あり、難易度が高くなるとトラップの数や種類が増え、魔物も強くなるが、パートナーもより効率よく育成できる。


「なら最初はイージーでどんなもんか様子見てみましょうか」


 そうして難易度を選択し、受付の奥にある扉からゲームを開始する。


「中は結構普通の屋敷なのね」


 ニナは当たりを見渡して呟く。


「早速魔物ね。ソフィナ、ゴー!」


 2人の前に現れた魔物は、一言で言い表すなら空飛ぶ毛玉。宙にフワフワと浮いている毛玉からは8本の触手が伸びている。その魔物の名は「フワ玉」。まんまの名前である。


「2体だけなら、大丈夫」


 ソフィナは右手から粘液を溢れさせ、それを剣の形に固定して固める。

 ソフィナは粘液で作られた武器で近接攻撃がメインだが、魔法も使える優秀な子である。そのまま剣を振るい、2体の魔物を難なく倒す。


「まぁ、イージーならこんなもんかぁ」


 二人はそのまま先へ進む。


「そう言えば、私の攻撃が効かないって事は、ソフィナが捕まったら終わりなのよね。じゃあイージーでもそんなに油断できないかなぁ」


 とはいえ、ソフィナは結構育てられている為、出現する魔物は一撃で倒されていく。


「お、階段みっけ。案外簡単に見つかったわね」


 2人は階段を上り2階へ上がっていく。

 そうして少し進むと、駆動音を鳴らしながら新たな魔物が現れる。


「一階からそうだけど、見た事無い魔物ばっかねぇ。それに、機械系かぁ。種類も統一されてないのはめんどいなぁ」


 8本の蜘蛛の様な足に6本の腕を持った人型のロボット。名前は「徘徊型擽手ロボ」。それが4体現れる。


「ソフィナ。魔法メインで戦って。力強そうだから、捕まったら終わりだと思ってね」


 ソフィナは手から粘液を溢れさせ、杖の形で固定する。


【魔術:エナジーブラスト】


 ソフィナが杖を魔物に向けて術を行使すると、白い爆発が発生する。その直後、爆煙の中からロボが一体飛び出し、ソフィナの両腕を掴む。


「嘘っ、仕留めそこなった!?」


 だが、他の3体は倒せたようで、煙が晴れた後、消えていた。

 そしてロボは余っている4本の腕を使い、ソフィナの脇と脇腹をくすぐり始める。


「んひゃぃっ!んっふふふふ!やめっ……!やっ!あぁっはははははははは!はげしぃっ!っひひひひひひ!」


 ソフィナはスライムだが、魔物娘だからか人に近く、くすぐられると上手くからだを粘液に変えたり、粘液を操ったりできなくなる。


「ひゃぁっはははははははは!あはっ!はぁっ!あぁぁ~~っははははははは!」


 つまりソフィナには自力で拘束から逃れる方法は無い。


「やぁぁぁっははははははははは!あはっ!あっはっはっははははは!はぁっ!はぁっ!はぁっはははははははは!」


「これソフィナが倒れるまで、私お預けかな?なんか、脱出させられる方法とかあるのかな」


 くすぐられているソフィナを眺めながらニナは色々と考えを巡らせる。


「あっはははははははは!たすけてぇっ!っはぁ!はっ!あぁっはははははははははは!」


 ソフィナは自由な足を使ってロボを蹴ったりしているが、ロボの動きは一切緩まず、くすぐる手は動きを変えて更に追い詰める。


「はぁ~~~っ!あぁっはははははははははは!あはっ!やぁぁっははははははははは!」


「あれ、いつの間にこんな物が……」


 ニナはアイテムボックスを開いてみると、入れた覚えのないアイテムが追加されている事に気付く。アイテム名は「脱出の光」、効果はパートナーの拘束を即解除するというもの。だが、一度使うと再使用に20分かかるため、連続で捕まると助けられない。


「あぁ~~~~っははははははははははは!はぁっ!はぁっ!はぁぁっ!はひゃっ!ひゃぁっははははははははは!」


「もうちょっと見てたいけど、流石にイージーで失敗するのはやだから、余裕あるうちに助けとくかぁ」


 ニナは水晶玉のようなアイテムを取り出して掲げると、強烈な閃光が放たれ、ロボに当たると怯んで手を放し少し後ろに下がる。


「はぁっ!はぁっ!倒れてぇっ!」


【魔術:マジックバレット】


 ソフィナの手から放たれた魔力の弾丸がロボに当たり、その一撃で倒れて消える。


「めず、らしく、すぐ、たすけ、て、くれた、ね……」


 息を切らしながら疲れ果てたように座り込むソフィナ。


「まぁ、あのまま堪能しても良かったけど、イージーで失敗するのはちょっと、ね……」


 5分程休憩し、2人は先へ進む。


「お、階段。ペースいいねぇ」


 2人は階段を見つけ、3階へ進む。


「でも確か5階だよねぇ。結構時間かかるなぁ」


 その後、襲ってくる魔物をソフィナが危なげなく倒し、4階への道を探す事十数分。4階への階段を発見し、4階へ進む。


「機械、植物、魔法生物、鳥、死霊、種類が豊富だなぁ……。魔法と物理、両方使えるパートナーじゃないときつくない?」


 ソフィナは両方使える為、殆どの相手に対して優位に立ち回れる。不意を突かれなければ体を粘液に変えて逃れる事も出来る。


「階段発見。これでいよいよ5階だね」


 5階へ移動する2人。


「最奥、まぁボスとかいるよねぇ」


 2人はほぼ一本道の廊下を進んでいく。


「4階までと違って廊下は一本道なのねぇ。……カチッ?」


 一本道の廊下を進んでいくと、ニナは足元からカチッという音がし、足元に魔法陣が広がる。


「トラップっ!?」


 咄嗟に飛び退こうとするが、それよりも早く魔法陣から伸びてきたマジックハンドがニナの足首を掴む。


「きゃんっ!」


 そして飛び退こうとした瞬間に掴まれた為、そのまま体勢を崩して仰向けに倒れる。そして魔法陣からたくさんのマジックハンドが現れ、倒れたニナの体に群がっていく。


「んひっ!んっ!んっふふふふふふ!ふっ!ふぁっははははははははは!あはっ!数がぁっ!おおいっひひひひひひ!」


 ニナは珍しく拘束されていない両手を振り回して払い除ける。だが、それでも防ぎきれない数が全身を襲いくすぐってくる。


「あっはははははははは!あはっ!あはっ!はぁっ!はぁっははははははははは!」


 尚、ソフィナはカチッという音が聞こえた段階で急いで離れていた為、捕まらずにすんでいた。


「やっ!靴脱がさっ!あっはははははははははは!足っ!くすぐっ!やぁっははははははははははは!」


「なるほど、ニナちゃんの言う通り、眺めるのも悪くないね」


 ソフィナはいつもの仕返しとばかりに助けようとせず傍観していた。


「あぁっはっはっは!あはっ!はぁっ!んやぁぁっははははははははは!やぁっ!やっ!あっはははははははははは!」


 足や太もも、腰に脇腹にお腹、腋から首筋に耳まで。くすぐったく感じられるあらゆる場所にマジックハンドが伸びて細長い指を蠢かせる。


「んっふふ!ふひっ!ふぁっははははははは!あはっ!やばっ!あっ!あっはははははははははははは!」


 脇を閉じても既に入り込んだ手の動きを抑えられず、手で払い除けてもすぐに戻って来る。身を捩っても的確に追いかけて、暴れても決して離れないマジックハンド。


「んぅっふふふふふ!ふぁぁっはははははははは!あぁっ!あはっ!はっ!はぁぁっははははははははははは!」


「でも、これどうやってニナちゃんを助けられるのでしょう……。近くの部屋に停止スイッチでもあるのでしょうか」


 ソフィナはそろそろ助けようとするが、助ける方法が分からずにいた。


「あぁぁっははははははははは!はぁっ!はぁぁ~~~っははははははは!やっ!やぁっはははははははは!あはっ!ひっ!はぁっ!」


「ん~~~~……まぁ、いっか」


【魔術:エクスプロージョン】


 普通に救出する方法を考えることを放棄したソフィナは、ニナが倒れてくすぐられている魔法陣に向けて術を発動する。

 魔法陣に当たった術は爆発を起こし、ニナごと魔法陣を破壊する。


「げふっ!」


 前衛職に匹敵する防御力を持つニナは、レベル差もあるためHP3パーセント分のダメージしか受けなかった。散々くすぐられていたため、残りHPは1割を切っているが。


「もう、少し……。まともに、救出、できない、の……?」


「普段の仕返しです」


 5分程休憩し、回復してから先へ進む2人。すると、小さな部屋に辿り着く。その部屋の中央には宝箱が置かれていた。


「ボス戦ないんかい」


 ニナは警戒する事無く宝箱を空けてクリアする。ミミックであるという可能性もあったが、ニナはこれがトラップなら部屋がもっと広いということを知っているため、それがトラップの類ではない事を見抜いた。


「んー……、難易度低いからかなぁ。あんま成長しなかったね」


 屋敷の外へ帰されて、報酬画面を見て呟くニナ。難易度イージーを選んだからか、合計2階くすぐられた割にはソフィナのレベルは1しか上がらなかった。


「次はノーマル行ってみよっかぁ」


 ニナはそう言って、ソフィナを連れて屋敷の中へ戻って行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ