76話
まだ忙しいが続きそうです。
海底洞窟の途中。スキュラに散々くすぐられたミコが回復するまで陸地で休憩し、先へと進む3人。
「触手天国って言われるだけあるね……。触手持ちばっか……」
「まぁ、水中生物って触手もってるの多いし」
そんな会話につられてか、クラゲ型の魔物が4体現れる。
「このクラゲは、毒持ってた気がする。……クラゲ型って種類多いからなぁ」
「まぁ、陸上だし余裕でしょう」
ユカがそう呟くと同時に縮地で一気に接近する。
【忍術:雷遁・轟雷】
至近距離から雷の忍術を叩き込み、4体の魔物を一撃で倒す。
「雷使えると楽ねぇ」
クラゲ型の魔物は種類は多いが、雷に弱いという共通の弱点がある。
そのまま暫く陸地が続き、出て来る魔物を一撃二撃で倒して進んでいくと広い空間に出る。
「ここは、随分早いけどボス戦?」
警戒して進んでいくと、3人の前に軽装の鎧を身に着けた人魚が現れる。
「これは、『ジェネラルマーメイド』だね。所謂中ボスでハーフレイドよ」
ニナの説明が終わるとジェネラルマーメイドは戦闘態勢に入り、周囲に紫色のハリセンボンのような見た目の魚を9匹召喚する。
「周囲の取り巻きは、『ドクバクダンウオ』。倒すか、一定時間経過すると自爆するから、接近戦は避けた方がいいね。体に生えてるトゲに毒があって、自爆でトゲも飛ばしてくるからかなり気を付けて」
このゲームの毒は、毒状態の間ずっと何かにくすぐられている感触を味わう事になる為、普通のゲームより凶悪である。
「私が取り巻きを忍術で処理、ニナがボスに接近戦。ミコは後方支援で」
ユカがそう言い残すと縮地で接近し、雷の忍術を叩き込む。
人魚は流石に殆どHPを削れていないが、取り巻きは全て一撃で倒す。そしてそのまま自爆を回避する為、縮地で離脱する。
「あっ、ぶなっ!」
魚の自爆によって飛来するトゲは思いのほか飛距離があり、縮地で離脱したユカの元まで届いていた。
「距離が近いと回避は無理そうね……」
「なら、遮蔽物つくるね」
【豊穣:プラントウォール】
ミコは特殊拳銃を乱射し種をばら撒くと、そこから植物が生い茂り、植物の壁が幾つも完成する。
「再召喚早いなぁ……接近戦は論外ね」
ニナが人魚の方を向いて呟く。その言葉通り、ボスの周囲には取り巻きの魚が再召喚されていた。
「なら、私とニナで魔法メインで一撃離脱かな」
作戦変更を指示すると、人魚が自身の周囲に水でできた手を幾つも作り出す。そして魚たちが纏めて倒されない様に散り散りに動き回る。
「一匹ずつ処理していくしかないかぁ……あんまりお喋りする余裕は無さそうね」
そう言って行動を開始する3人。
【忍術:雷遁・稲妻】
【死神技法:断罪の火球】
【豊穣:ガーディアントレント】
単体攻撃の雷遁で取り巻きを一匹ずつ処理し、縮地で最寄りの遮蔽物に隠れるユカ。
遠距離系の魔法で人魚にダメージを与えるニナ。
ミコはアイテムボックスから取り出した大きな苗を取り出しスキルを行使すると、苗は急成長し、白いトレントになる。もしもに備えた防衛用のスキル。植物の魔物を生み出し操るミコの新たな力である。
「後半分……。って、やばっ!」
取り巻きの魚の数が半分を下回った時、残りの魚の体が膨れ上がり、爆発する。時間経過による自爆である。
ユカは咄嗟に近場の遮蔽物まで逃げようとするが、人魚の生み出した水の手の一つが静かに忍び寄っており、狙っていたかのようにユカの足首を掴む。縮地は敵に拘束された状態では使えないず、ユカは反射的に水の手を潰すが、そこから遮蔽物に隠れるまでの時間は無かった。
「きゃぁっ!くっ、やっ、ばっ……!ひゃはっ……!」
そして人魚に集中していたニナも、魚の自爆の予兆に気付かず、飛来するトゲに当たり、毒状態になる。
「うわぁっ!?しまっ、魚のこと忘れてたっ……!んぅっふ!」
2人の体にはすぐに毒の症状が現れる。まるで見えないナニカが全身を這いずり回っているかのような強いくすぐったさが全身を襲う。
「やっ、あっはははははは!たえられないっ!っひひひひひ!ひゃはっ!ひゃっはははははははは!」
「んぅぅぅっ!っふふふふふ!ふふっ!ふぁっはははははははは!あはっ!あぁぁぁっ!っはははははは!」
2人はあまりのくすぐったさに立っている事すらままならず、倒れ込む。
一方、ミコ。
「どーーしよっかなぁーーー」
ガーディアントレントの裏に隠れて魚の自爆をやり過ごしたまではよかったが、人魚が残りは一人とばかりにミコに猛攻を仕掛けていた。
ミコは妨害用の植物をばら撒き何とか凌げてはいるが、2人の解毒ができず、攻撃手段の少ない現状ではジリ貧である。
「はぁっ!はぁ~~っはははははははは!あはっ!あっはははははは!」
「んふぅっ!ふっふふふふふ!ふはぁっ!っはははははは!あはっ!あぁぁっはははははは!」
2人を襲うくすぐったさは解毒しない限りどれだけ体を動かそうが逃れる事はできない。
「はひっ!ひっ!ひひっ!ひぁっはははははははは!はぁっ!あはっ!あっははははははは!」
「やぁっははははははははは!はぁっ!はぁっははははははは!やぁんっ!んぅっふふふふふふ!」
むしろ暴れるほどスタミナが無くなりまともに動けなくなる。それが分かっていても動かないというのは不可能に近いが。
「あっははははははは!あはっ!はぁっ!はっ!はひっ!ひっ!ひゃぁっはははははははは!」
「ふぁっはははははは!あはっ!あっははははははは!はぁっ!はっ!やぁぁぁっははははははは!」
毒は自然治癒しないので、薬を取り出して飲むか術やスキルで治癒しなければHPが0になるまでくすぐられ続ける事になる。
「あぁっは!あはっ!はぁぁっ!はっ!あっははははははは!あぁっはははははは!」
「ふぁぁ~~~っ!っははははははは!あはっ!はぁぁぁ~~っははははは!んふっふっふっふ!」
だが、予め出していたりしない限り、くすぐられている最中にアイテムボックスから薬を取り出して蓋を開けて飲むのは不可能に近い。そう言った事もあり、毒を治癒する薬は持っていない人が多く、ユカ達も持っていない。
「あははははははっ!あはっ!はぁっ!はぁっ!ひゃぁっはははははははは!」
「ふゃぁっはははははははは!んぅぅぅっふふふふふふ!はっ!はっ!あぁぁぁ~~~っ!んっふふふふふ!」
2人がHPを減らしていく中、ミコが人魚の操る水に足をとられ、そのまま捕まってしまう。
「ちょっ、やぁっ!離してっ……!」
ガーディアントレントは人魚の放った水の一撃で倒されており、両手を水で拘束され万歳の姿勢にさせられたミコに人魚を引き剥がす術は無い。
そしてガラ空きになったミコの両脇を人魚の両手がくすぐり始める。
「んぅっ!んっふふふふふ!やめっ……!あはっ!はぁっ!はなしっ!……はひゃぁっ!」
人魚の手はヌルヌルした液体で濡れており、それが服に染みて段々とくすぐったさが増していく。
「あっ!あっ!あはっ!はぁっ!あぁっははははははははは!やめっ!やっ!やぁっははははははははは!」
こうなってしまえば自力での復活は不可能であり、全滅コースである。
「あはっ!はっ!あぁぁぁ~~~っははははははははは!はぁっ!やめっ!やっ!やぁぁっはははははははは!」
服は人魚の手にあったヌルヌルした液体でぐっしょりと濡れ肌に張り付いており、最早くすぐったさを余計に増すばかりとなっている。
「んぅっふっふっふっふふ!ふぁぁぁっはははははははははは!あはっ!はぁっはっはっはっはぁ!あぁっはははははははははは!」
地面に押し倒され、上に人魚が乗っている状態でくすぐられており、どれだけ体を動かして抵抗を試みても刺激が弱まる事は無かった。
「んぅ~~~~~っ!あはっ!あぁっははははははははは!はぁっ!はぁぁ~~っははははは!やぁぁ~~~っめぇぇっ!」
人魚の指がミコの脇をかき回す度にミコの体が跳ね上がり、止まらない笑い声が響き渡る。
「あはっ!あぁ~~~~~~っはははははははは!あはははっ!あぁっ!っはは!はっ!はぁっん!あぁっははははははは!」
3人は強制帰還させられるまでくすぐられ続けた。
ミコ以外は満足気な顔をしていたが。
まだ暫く海底洞窟が続きそうです。