八話
ようやく落ち着いたユカは教室を出ていき、そのまま受付へと戻って行く。
受付に戻ってきたユカはそのまま水中戦闘コースを選択する。
「では、室内プールの方へ移動してください。場所はそこの壁の地図で確認してください」
ユカは地図で場所を確認し、プールへと早足で向かっていく。プールの入口に辿り着き、中に入るとユカの体が光に包まれ、スク水に着替えさせられる。
(スク水って、新しいタイプの奴なんだ……。私はこっちの方が好きだから嬉しい……)
それは一般的なイメージのスク水と違い、スカートのようなフリルが付いた新しいタイプであった。
「皆さん、こちらに集まってください」
水着姿の教師と生徒が一か所に集まってるのを見て、ユカはそこに向かう。
「では、これより授業を始めます」
今度は周りの生徒に拘束されるという事は無く、教師は真面目に説明を続けていく。
「水中では、水位によって移動速度が低下するという特徴があります。水位が上がれば上がるほど速度低下は低下率が大きくなりますが、水泳スキルを上昇させる事によって軽減させる事が可能で、更に上昇させると逆に速度が上昇する事も可能です。また、頭部が水中にある場合、持続ダメージが発生しますが、こちらは潜水スキルか特殊なアイテムを使用する事によって軽減、または無効化する事が可能です」
今度の教師は真面目に説明を続けていく。
「では、百聞は一見に如かずという事で、実戦に移りましょう」
そういうとプールから突然水飛沫があがり、大量の触手が水面から顔を出す。
(……ぇ?)
プールでスク水少女とくすぐり合う姿を妄想していたユカは想像していなかった存在の登場に思考を停止させる。
「大量の触手を持つ水生型魔物娘、『シライト』です。今回の授業に協力してもらいました」
魔物娘、ユカは団長から女性型の魔物は魔物娘と一般的に呼ばれていると聞いていた。
『シライト』は巨大なイソギンチャクの様な魔物で、中央部に女性の膝から上が生えている姿をした魔物である。大小様々な白い触手を大量に操るだけでなく、麻痺毒も保有している、上級の海底ダンジョンのボスである。ちなみに女性部分は水着の様な物を着ている。
「では、ユカさんからどうぞ」
勿論、ユカ以外が選ばれる事も無ければユカが終われば授業も終わる。
「分かりました……」
内心はかなり乗り気である。
(って言っても、これ絶対勝てないよね?)
女性部分をくすぐってみたいとも思っていたが、それは無理そうだと結論する。
「取り敢えず突っ込む!」
相変わらず何も考えず突っ込むユカである。縮地を使い、一気に女性部分まで接近したユカであったが、足元の触手を踏んだ瞬間
「あ……」
当然の様に足を掴まれ、麻痺毒を打たれる。
「体が……痺れ……」
動けなくなったユカはそのまま触手に囚われていく。
「んんっ!ふっふふふふふ……」
早速の様にユカの体を撫で回し始める触手。女性は笑顔を浮かべてユカを見つめている。
スク水は密着性が高いので、中に潜り込まれることは無いが、くすぐりに対する防御力は当然低い。
「や、やめてぇ……やんっ!くふふふふふ……」
一本、また一本とユカの体をくすぐる触手が増えていく。
「これ、以上は……やぁっ!くっくくく……」
限界が近いユカ、すると女性部分がゆっくりとユカに近づいていき……
「ふーっ」
耳に息を吹きかける。
「ひゃぁんっ!?」
当然耐えられるわけがないユカ。
「や、やぁぁぁっははははははははははは!!」
息を吹きかけられた事によって我慢できなくなり、ダムが決壊したように笑い悶え始めるユカ。こうなってしまったらもう何もできない。
「あっははははははははははははは!!やめへへへへへへへへ!!」
触手は増え続け、ついに女性部分も手を使ってユカの体をくすぐり始める。
「やめてへへへへへへへへへへ!!くすぐったすぎるうううううううう!!」
既にユカの体の殆どに触手が群がっており、行き場を失った触手が周りでウネウネとうごめいている。
「きゃははははははははははは!!あっははははははははははははは!!」
一本一本は大してくすぐったくは無いが、ここまで数が多いと我慢できる人間は居ないだろう。
「やぁっはははははははははははははは!!あはっ、あははははははははは!!」
そうしてくすぐられる事暫く、飽きたのかそういう設定なのか、シライトはくすぐるのを止めてユカを解放する。
「は……はひっ……はぁ……」
ユカは放心状態でプールにプカリと浮かんでいる。
「このように、水生型の魔物は触手や麻痺毒を保有している種が多いです。しっかりと対策を取らなければこのようになるでしょう。では、これより10分間は自由時間とします」
教師がそう話を締め括ると、待機していた水着少女達が一斉にプールに飛び込みユカの方へ向かっていく。
「はぁ……はぁ……はへ?」
一方、教師の話を殆ど聞いていなかったユカは、自分が水着少女達に包囲されている事に気付く。
「ま……まって……まだ回復しきってな」
ユカが言い切る前に少女達はユカに群がっていく。
「まって、まって、まってってばあああああああはははははははは!!」
シライトからくすぐられた分が回復しきっていなかった事もあるが、水着は肌に密着していてくすぐりに対する抵抗力は低い。ユカは我慢する余裕もなく笑いだしてしまう。
「いやぁっははははははははははは!!あっははははははははははははは!!」
麻痺毒がまだ抜けきっておらず、ユカは体を動かす事も出来ず少女達に弄ばれる。
「もうむり、もうむりいぃぃぃぃぃっひひひひひひひ!!」
当然少女達の手が止まる事は無い。頭の付近に居た少女が二人、ユカの耳をぱくっと咥えてもごもごと舐めだす。
「んひゃぁっ!?ひゃぁっははははははは!!耳はだめぇぇぇぇぇええへへへへ!!」
口から離したと思ったら息を吹きかけたり、シライトから学んだくすぐり方を率先して実践していく優秀な生徒達である。
「ひゃぁぁぁぁぁっははははははははは!!ふひゃぁぁぁっへへへへへへ!!」
足の付近に居た生徒達はその二人を真似て、足の指を舐めだす。
「あひゃぁっ!?やぁぁぁぁぁぁぁぁっははははははは!!なめちゃだめぇぇぇぇぇへへへへ!!」
勿論他の少女達も手を休める事は無い。ユカはそのまま10分間、たっぷりとくすぐられた。
「あはっ……はひっ……ひ……ふ……ふぁ……」
やっと解放されたユカはプールに浮かんだまま虚空を見つめ、10分以上体を休めてからプールを出て学校を後にする。
気付けば現実時間でも夜遅くになっていた事に気付いたユカは早足で宿屋へと向かっていく。するとその途中、団長と出会った。
「ぁ……団長、こんばんわ」
まだ余韻が抜け切れておらず、疲れた様な挨拶をするユカ。
「こんばんわ、ユカちゃん。数時間ぶりだねぇ……。随分と疲弊してるけど、学校はやっぱきつかった?あそこは大人数でくすぐられる事が多いからねぇ」
「やっぱって、確信犯ですか……」
ジト目でリリィを睨むユカ。
「でも、楽しめたでしょ?」
ムフッと怪しい笑みを浮かべるリリィ。
ユカはうぐっと言葉を詰まらせ、リリィは図星かと心の中で呟く。
「ところで、これから何処に行こうとしてたの?」
リリィは単純な興味でそう質問する。
「ちょっと、宿屋に行ってみようかなぁって……」
ユカは素直に答える。リリィの顔に再び、怪しげな笑みが浮かぶ。
「へぇー。ちなみに今回で何回目?」
「二回目……です……」
その笑みを見て素直に答えたのは失敗だったかと後悔し始めるユカ。
「あの二人を随分と気に入ってくれたようで」
リリィはニヤニヤしながらユカを見る。
「まだ二回目ですよ……」
ユカは素直に認める恥ずかしさから逃げるように言い訳を口にする。
「にしては、随分とワクワクした様子で向かってったじゃない?」
ニヤニヤが止まらないリリィ。
「……私、そんな顔してました?」
ユカは恥ずかしさがこみ上げてくる感覚に襲われる。
「そういえばユカちゃんの部屋、プライベートルームって言うんだけど、さっきギルドハウスの2階に作っといたから、行ってみるといいよ」
リリィはニヤニヤしたままそう言って何処かへ去って行った。
(まぁいっか、行ってみよう)
何か嫌な予感はしたが、自分専用の部屋がどういうものか気になったのでユカはギルドハウスへと行先を変更する。
ギルドハウスに到着し、自分の名前が刻まれた名札がぶら下がった扉の前まで来たユカ。
(ここが自分の部屋、なんか緊張する……)
ドアノブを回し、ドアを開けて部屋の中へ入るユカ。すると扉の先には予想だにしなかった光景があった。
「おかえりなさいませ、御主人様」
そう言ってユカを出迎えたメイド服の少女二人は、宿屋の朱莉と水華であった。
「ぇ、なんで二人がここに……?」
ユカは予想外の光景に素直に疑問を口にする。
「団長が、本日からこちらでユカ様のお世話をするように言われたのです」
「御主人様がこの部屋で滞在中の間、身の回りの世話等をするよう団長様から御命令されました」
団長がやたらニヤニヤしてた原因はこれかと納得したユカ。因みにユカの事をユカ様と呼ぶのが朱莉で御主人様と呼ぶのが水華である。
「ではユカ様、お部屋のご説明をさせていただきますね」
そうして、二人はギルドハウスのプライベートルームについての説明を受ける。
部屋の内装は生産スキルや店で手に入る家具アイテムで自由に模様替えが可能であり、基本的な間取りは2LDKである。部屋の中でどれだけ大きな音を立てても外に漏れる事は無く、部屋の中にはユカ本人か、ユカが許可した者しか入れない等といった事を教わっていく。
ちなみに必要最低限の家具は既に揃っている。テレビも存在しており、ゲーム内でも現実と同じ番組を視聴する事が可能である。
(取り敢えず、家具とかは明日店まで見に行ってみよう)
ユカは細かい事は後に考える事にして早速の様にベッドに寝転がり、疲れた体を休ませる。
そんなユカのベッドに当然の様に入ってくる二人。
「ふふっ、ユカ様。くすぐられたいですか?」
悪魔の様に囁いてくる朱莉。
「ちょっと今日は……疲れたからもう寝たい……」
流石に学校であれだけくすぐられたら満腹のユカは素直に否定する。
「残念です……」
露骨にがっかりする朱莉。
だが水華は何か良い事を思い付いた様に笑顔を浮かべる。
「では、御主人様がお眠りになられますよう、耳元で囁いてあげますね?」
何を囁くのかと疑問に思ったが、どうせそういう事だろうなぁとすぐに察するユカだが、触られないならいいかと思い「じゃあお願い」と許可する。
すると二人はユカの耳元に顔を近づけ。
「こしょこしょ……こしょこしょ……」
「こちょこちょ……こちょこちょ……」
と囁き始める。
「ん……ふふっ……ふぁ……」
(囁かれているだけなのに、なんかぞわぞわしてくすぐったい……)
くすぐったくもあったが、同時にクセになるような独特の心地よさも感じたユカはそのまま眠りに落ちて行った。
耳舐めは15……耳舐めはセーフ……(謎呪文)