先手必勝
まずは、私の家族を紹介するとしよう。
メインクーン。
アメリカンショートヘア。
この2匹だ。
メインクーン、メイン州のアライグマという意味だ。
温厚な性格をしていて、アライグマのように手先が器用だ。
アメリカンショートヘアは、有名で人気のある
警戒心が強く、悪戯好きなねこだ。
両方ともオス。
なぜオスかというと、オスの方がメスより比較的に大人しいという点で惹かれて飼った。
元来猫というのは敵から身を隠すため、トイレに砂をかける。
餌をこまめに食べる。
目を合わせると視線を外す。
新しい餌は食べない。
などが有名であるが、家猫として社会的にも、猫世界で備わっていた野生という本能は退化してしまったようだと、最近の猫本には書いてあった。
「ヒマだなー。いや、もうホント暇…」
で、あるからして、最近の猫の愛情表現は人間と大差ないという。
先程から、こちらをじっと見つめているメインクーン、別名『メイン』は、そんなことを呟きながら私を凝視していた。
仕事中なので、視線を交えるのはやめておこうと思う。
「いや、マジで暇だな。本当に暇だな。よいしょっと…」
無視を決め込むと、彼は身を翻してお腹を向けていた。
こちらを見るのも忘れない。
すると、今まで部屋の隅で大人しくしていた、アメリカンショートヘア、別名『アメ』が、ゆっくりと私の方に歩み寄ってきた。
無言で寄って来る、その姿は軽く忍びである。
私にぴとっと体を密着させるも、視線は別の方向を向いていた。
「ふッ…」
小さく笑ったのは、アメの勝利宣言だろうか。
「んだよ、アメは愛想ないくせに手だけは早いんだ。空気読んで主の邪魔をしない俺を見習えっての」
基本的に、アメが私に擦り寄っている時は、メインは近付かない。
テリトリーがあるのか、人が手を付けた物は嫌なのか。
そこは彼にしか分からない。