表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/19

第十三話

 それは、みやなが魔力を集束させ魔力球を作り上げているのに集中している時だった。しのが、俺にこんなことを問いかけてくる。


「そういえば、明後日の試合。本当に審判とかは、やえちゃんが用意してくれるんですよね?」

「ああ。そういうことになってる。……そういえば、しのはやえと同じ学校だったよな」

「クラスも同じです。で、でも……私、人見知りで。やえちゃんも、あまり他人とはそこまでお喋りしないタイプだから」


 確かに、何かに一筋って雰囲気があるよな。それに、話しかけても何の話をしたらいいのか。マジックテニスの話や居合い術の話をしても、知識の量などで苦戦する。

 まあ、これは個人的な予想だ。

 普段のやえが、どうなのかがわからない俺にとっては、予想するしかできなからな。

 この際だ。やえのことをしのから少し教えてもらおう。


「それでも、やえのことを教えてくれないか? しのが知っている限りでいいからさ」

「ふおお!!」


 みやなのほうはまだまだかかりそうだし。

 指定した枠に収まるように魔力を集束させる。今やっているのは、そういう練習だ。魔力のコントロールの基礎としては、これが一番の方法だろう。

 俺も魔法科に居た時は、これをまずやらされた。


「わ、わかりました。えっと……やえちゃんは、物静かな子ですけど。努力家で、成績も優秀ですし、運動神経もすごいんです」


 完璧超人ってところか。それでいて、魔力も小学生の平均を上回っていると。


「授業でも、よく一番に手を挙げては、確実に正解を言っちゃうんです」

「間違えたことはないのか?」

「ない、ですね」

「なるほど。他には?」

「他には……あっ、よく休み時間には、読書をしています」


 読書か。マジックテニスについての参考書か何かだろうか。


「何を読んでいるかは、わかるか?」

「そ、そこまでは。ブックカバーで表紙とかは見えませんでしたから。でも、大きさから考えると小説、だと思います」


 彼女のことだから、ライトノベル系ではないだろうから。難しい活字が多い一般小説だろうか。なんだか、小説を読んでいる姿を想像したら、とても絵になる光景が浮かんでしまった。


「何から何まで、優等生って感じですごいな。他のクラスメイト達は、どう思ってるかわかるか?」

「私も、そうですけど。すごい人だなぁって。成績も優秀で、運動神経もすごくて。実家の居合い術もやっているのに、マジックテニスもやっている。私なら、疲労で倒れちゃいそうですよ……」


 確かにな。それだけのことをやっているのに、体は大丈夫なんだろうか? 休んでいる時は、あるんだろうかと心配してしまう。

 そんな子が……俺を憧れの存在だと言っていた。マジックテニスの才能はあったけど、その他はいたって平均のどこにでもいる少年だからな。やえと比べると、天と地ほど違う。

 本来ならば、憧れられるような存在ではないんだ。


「よっしゃー!! できたぞー!! ねね!! できてるよね!?」


 話が一段落したところで、みやなのほうも何とか終わったようだ。どれどれと確認に行く。


「……うん。ばっちりだ」

「やったー!! さあ! 次は何をするの!」

「次は、魔力移動だ」

「魔力移動?」


 今のみやなは、精神が研ぎ澄まされている状態だろう。このまま継続して次のステップに行けば、順調にいけるはずだ。


「簡単に言えば、魔力を体中で動かす練習だ。しの、ちょっとやってみてくれるか?」

「は、はい!」


 お手本として、しのがその場に立ち、目を瞑る。

 魔力が体中から湧き上がるのを確認し、俺は指示を出す。


「じゃあまずは、左手だ」

「はい」


 目を瞑ったまま、しのは魔力を左手へと移動させる。


「おお!」

「いいぞ。次は右手だ」

「はい」


 その後も、順調に体中を魔力が巡り、一周したところでみやなが喋る。


「これなら、あたしでもできそう!」

「そうかな?」

「え?」


 俺は、意味深な言葉をみやなに送り、しのへと視線を向け直す。


「しの。次は、左右の手に同時。五十ずつだ」

「は、はい」


 魔力核に溜まっていた魔力を、しのは左右の手へと半分にするように移動させた。俺はタブレットを確認。

 これは、しのの左右の手足についている測定機とリンクしている。これは、俺がマジックテニスのために買っていたものを押入れから引っ張り出してきたものだ。

 画面には、左右の手の横に五十と表示されていた。


「すごいな。丁度五十ずつだ」

「ふう……なんとかうまくいきました」


 本来ならば、微妙に上回っていたり、下回っていることが多いのだが。さすがは、しのと言ったところか。


「これを、お前にもやってもらう」

「うう……ま、負けないぞー! やえちゃんと戦うためだもん! やってやるー!!」


 気合い十分に、魔力移動の練習へと取り掛かるみやな。最初は苦戦していたが、徐々に慣れてきて、0,5ぐらいの差まで近づいてきた。

 まだまだ完璧じゃない! とみやなは言うが、最初にしてはすごい結果だ。それに、時間も時間なだけにテニスの練習もそろそろやらないといけない。

 続きは、自分の家でということで、テニスの練習に移行し、日が沈む前に帰宅した。




・・・・★




「はあ、いい湯だった」


 運動の後の風呂と飯はやっぱり格別だな。母さんも、また俺がいっぱい飯を食べてくれるようになって嬉しいと笑顔だった。

 とはいえ、まだまだ。マジックテニスを本格的にやっていた頃は、今の二倍は食べていたからな。まあでも、少しずつだが胃袋もあの時に戻ってきているかな。


「ん? メールか」


 しかも、画像も添付されている。

 みやなからだ。

 俺は、すぐにメールを開き、内容を確認する。ちなみに件名は、やったぜ! だった。なんとなく、予想はできる。


「いい笑顔だな」


 添付された画像は、俺がそのままみやなに貸した測定機で、両手共に五十になった証拠画像だった。本当に嬉しかったのか。

 太陽のように眩しい笑顔で、ピースサインをしている。

 文章も顔文字で喜びを表しているだけだが、みやなの気持ちは伝わってきた。


「よくやったな。だが、あまり無理はするな。早めに休めよ……送信っと」


 返信を終えて、ベッドに寝転ぶ。

 そして、三十分ほどでスマホが鳴った。


「……わざわざ報告ご苦労様」


 そこには、パジャマ姿のみやなが写った画像が添付されていた。シンプルに水色のパジャマで、ツインテールを解き、ストレートヘアーになっているみやなだ。

 これから眠るよーっと書かれていた。

 現在の時刻は十時半。今日は、とことん魔力を消費したから、みやなも疲労しているだろう。早めに寝て回復させるのがベストだ。


「俺もそろそろ寝るかな」


 と、思ったが試合は明後日。

 もう少し、みやなの役に立てるようにネットで情報を集めるか。最近のマジックテニスの情報を。俺が離れている間、色々とあったかもしれないしな。


「集?」

「母さん?」


 パソコンに向かったところで、母さんがドアをノックする。

 部屋に通した後、母さんはベッドに座りこんなことを話し出す。


「明後日は、みやなちゃんの試合なのよね?」

「ああ、うん。そうだよ」

「あのコートでやるのよね?」

「そうなってる」

「じゃあ、母さんも見に行っていいかしら?」


 やっぱり、そのことか。祝日の時に、みやなにあって母さんはかなりみやなのことを気に入ったらしい。だから、みやなの試合を見に行きたいとすごくうきうきしている表情だ。


「まあ別にいいけど。周りに知られないようにな? あんまり、騒がしくなると」

「わかってるわよ。十分に。……ねえ、集」


 俺の承諾も得たところで、母さんは部屋から出て行こうとする。

 だが、ドアの前で立ち止まりこちらへ振り返る。


「今、楽しい?」


 そんな母さんの問いに俺は、小さく笑う。


「ああ、楽しいよ」

「そう。それは、よかったわ。それじゃあ、おやすみなさい。あまり夜更かししちゃだめよ?」

「わかってるって。母さんも、おやすみ」


 俺の素直な言葉を聞いた母さんは、笑顔で部屋から出て行った。

 そうだ。今、俺は楽しい日々を過ごしている。

 これもみやなのおかげだな。

 ……よし、調べるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ