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女剣士の装備はなぜエロい?!  作者: 沖田 了
第1部 狂気の劇場編
5/29

5話 鎧屋アラン・シールド

これまでのあらすじ


戦争に敗れ捕らえられた女兵士リーナは、軍法裁判にかけられ奴隷にされそうになる。

しかし、ナルビアの国王の提案で自らの戦士としての強さを証明することになる。

一方、昼間から酒を飲んでいた青年、アランは狂気の劇場が開催されることを知り、鎧屋である自宅へと帰った。

物語は、その鎧屋【シールズ・アーマー】に二人が入って行ったことらから再開される。


♦️ ♦️ ♦️


シールズ・アーマーの一階は、工房になっていた。

珍しい素材が並ばられ、大きな釜や金槌などの工具、見積書の山で散らかっていた。

アランはその工房の奥にある階段を登り二階へと上がる。リーナもそれに続いた。

二階は書斎と居間になっていて、アランはリーナを居間へ通した。

居間と言っても、薄い絨毯が引かれた部屋に小さなテーブルが置いてあり、その周りに背もたれのない椅子が四つ置いてあるだけの簡素な空間である。


「さて、まず何から話そうかな」


椅子に腰掛け一息ついたアランがそう問いかける。

リーナは不審そうな目で部屋を見渡し仕掛けや罠がないことを確認した後、アランに向き直った。


「アラン・シールド。あなたの名前はザビヌにも届いているから知っていたわ。ナルビアに変態的に鎧作りの上手い一家がいる。現当主は四代目で、ナルビアの特殊部隊にも採用されているって」


「そう、それは話が早くて助かるよ」


リーナの言葉にアランには少し照れたように頭をかいた。

だが、リーナの言葉は全てが真実というわけではなかった。

リーナがアランの事を前から知っていたのは事実。

だが、四代まであることや特殊部隊に採用されるほどの鎧を作るということは、裁判までの数日の間に看守などから仕入れた情報であった。


「その鎧屋が、どうしてあの時私に声をかけたの?」


あのパレードの日、酔っ払ったアランがリーナに話しかけた。

その時の口ぶりは、まるでその後の裁判の詳細を知っているかのようだった。

それが、リーナには不思議でならなかったのだ。


「ちょっとした、気まぐれだよ。

もしかしたら、とっても面白そうなことに首を突っ込めるかもしれない。だから、唾をつけて置いただけのことさ」


「面白そうなこと?」


「戦争で捕らえられた女戦士。そいつが、狂気の劇場へ出るかもしれないって話を軍にいる知人から聞いていてたんだ。

もしそれが本当なら、あの時以来の最高のショーが観られるかもしれないと思ってな」


アランは子供のような笑顔を浮かべてそう言った。

リーナは、失望と諦めが混ざった溜息を一つ吐く。


「つまりは、あなたも私が惨めにやられる様を楽しみにしているってわけね」


「ん?狂気の劇場が見せしめのためのショーだって知ってたのか?」


驚いたようにアランは肩をすくめて見せた。だが、それがバカにしている仕草であることはバレバレだ。

リーナはまた溜息を吐きたい気分になった。


「いいえ、でも、あの話を聞けば大体わかるわ。ナターシャ様の有能性を証明するために私の能力を計るだけなら、数万人の群衆は必要ないはず。

これは、私が負けることが前提の出来レース。そうでしょ?」


「ま、そういうことだね。それに、ただの見せしめじゃない。民衆に人権を持つことの優越感と奴隷にだけはなりたくないという恐怖を与えるための晒し者にされるのさ」


アランにそう断言されてリーナは顔をしかめた。

そうだろうと腹を括っていても、いざ断定されると心に焦りと不安と憤りが混ざったざわめきが溢れそうになった。

それでも、ナターシャを救う可能性がほんの一握りでも残されているなら、リーナはその可能性にかける。

それがどれほど不平等な勝負だとしてもだ。


「それに、ここに来たってことは俺に頼みがあるんだろ?」


表情を曇らせたリーナの顔を笑みを浮かべつつ見つめるアランがそう言った。

リーナは服の中にしまっていた巾着を取り出した。

これは、軍法裁判の後解放される時に渡されたもの。

中には10万ルビア分の硬貨と一週間後に行われる闘技の規則について書かれた羊皮紙が入っていた。

リーナは巾着から羊皮紙を取り出しアランの前へ置いた。


「ここに、本番で使用する鎧、武具は支給された資金と闘技者の財産の限りで取得するものとすると書かれているわ」


「今回の闘技の性質を考えると、闘技者の自身に扱いやすい武具の手配を命じるのは特に不自然じゃない。むしろ、そうでなければやる意味がない」


羊皮紙に書かれた内容を斜め読みしていたアランの目が一瞬止まった。


「なるほど、この規則は確かに難題だな」


「ええ、だから私はあなたにそれを頼みにここはやって来たの」


リーナはここで初めて全ての警戒を解き、机に手をついて頭を下げた。

アランはそんなリーナと羊皮紙を交互に見比べて頭をかいた。

羊皮紙にはこう書かれていた。


・今闘技では、闘技者の技能を計るのが目的であるので、闘技者の鎧、武具に制限を課す。闘技者が身につける鎧は夏瓜半分の重さまでとし、鎧を装備できる範囲は不正防止のため頭部、胸、腰回り、足首より下、手首より先に限るものとする。

また、武具に関しては特殊な呪詛、魔法、モンスターの性質を付与されていないものに限る。


夏瓜はその名の通り、夏にとれる果物で重くても1キロほど。その半分となれば、一般的な鎧の1/20である。

さらに、防御範囲の制限がかなり厳しい。


「表通りの鎧屋じゃこんな注文受けられないって言われて。あなたにしか頼めないの」


「これは高くつくぞ。ここにある10万ルビアじゃ手付金にもならない。残りはどうするつもりなんだ」


羊皮紙から顔を上げアランが尋ねた。

すると、リーナは突然立ち上がり、来ていた服の胸元と、太ももの下を大きくはだけさせ、自身の肌をアランに見せつけた。


「私には今この体しかないの。だから、料金が足りないっていうのなら、この体を使ってなんでもするわ」


リーナの突然の行動を見てもアランは驚くことなく、むしろ冷静に笑顔を浮かべていた。







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