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女剣士の装備はなぜエロい?!  作者: 沖田 了
第1部 狂気の劇場編
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4話 酒場の青年

ナルビア王国王都マナトナ。

大陸最大の国、ナルビアの政治と経済の中心地。

そこでは、全国から集まった商人や役人が忙しなく行き交い、活気に満ちていた。


しかし、それは主要な数本の街道に限る。


一方裏道に入れば、職業不詳の男たちが昼間から酒を呑んで騒いでいる。

ここにも昼になる前から馴染みの顔が酒を呑みに集まっていた。


「聞いたか!今度の週末、狂気(ヴァーンジン)劇場(テアトルム)が開かれるって話だ」


酒飲みは皆真っ赤な顔で、大きな声を出して会話する。

この時も、部屋の奥のテーブルに集まっていた数人の男の客がこんな話を始めた。


「なんでも、ザビヌの美人女剣士が主人の為に戦うんだとさ」

「それはまた、国王様も酷なことを提案されたな」

「狂気の劇場がどんなものか知ったら、その女ションベン漏らして逃げ出すんじゃねえのか」


ガハハハと、豪快な笑い声とともに、男たちはジョッキに入った酒を飲み干す。


「この前の狂気の劇場、ありゃ盛り上がったからな」

「奴隷だった三人の元剣士が人権復活のために蜘蛛の化け物と闘った奴だろ?結局三人とも死んじまったんだっけか」

「いや、一番初めに場外にはじき出された奴だけ奴隷に逆戻り。後の二人がお陀仏だよ」

「男のも面白いんだが、やっぱり俺は女が闘っているところを見るのが好きだな。なんだってあのエロい鎧がたまんなぇ」

「重量制限があるから、まともな鎧は着れないんだよな。そんでもって、戦わされる化け物も男の時とは一味違う」

「西の通りの連中がもう賭けを始めてるって話だぜ」

「なに?そりゃ聞き捨てならねぇな。俺たちも一口噛んだこうぜ」


男たちは机に残っていた飲み物を飲み干すと、会計を済ませ店を後にした。

一番騒がしかったグループが抜けたことで酒場はひと時の静寂を迎えた。


「ったく、安酒しか呑まねぇくせにデカイ態度とりやがって。済まないね、あいつらがいない時のウチは静かでいい店なんだよ」


やれやれ、といった様子で飲み散らかされた食器を片付けながら、この酒場の店主が話した。

相手はカウンターに座った赤髪の青年であった。

見た目では成人しているかどうか怪しいのだが、そんな野暮なことを聞く店主ではない。


「マスター、水割りのお代わり」


カウンターの青年が空になったグラスを掲げてそう言った。


「マスターなんてよしてくれ、店主とか親父とかの方が性に合ってるんだ」


机を片付け終えた店主が、手慣れた手つきで水割りを用意する。


「はいお待ち」


「ありがとう。あと、一つ聞きたいんだがさっきの連中が言ってた賭けってのはなんのことだ?」


「ああ、あれね。狂気の劇場が今度開かれるって言うだろ?それで、戦士がどれだけの時間持ちこたえられるかを賭けるんだ」


「持ちこたえられるか?勝つか負けるかじゃなくて?」


「もちろん、勝つって賭けることもできるがな。でも、お客さんだって知ってるだろ?狂気の劇場は、奴隷に希望を見させた後に地獄へ突き落とす。残酷な祭典さ。

俺はこの土地で長年商売をしているが、狂気の劇場で戦士が勝つことはほとんどないんだよ」


「なるほどね、だからみんな持ちこたえられる時間に賭けるのか」


青年は納得したように水割りのグラスを口に運んだ。が、唇に触れる寸前にふと思い直してカウンターに戻した。


「今日は酔っちゃいけない気がする。少し早いがお暇するよ」


「なんだい。戦争が終わったからゆっくりできるんじゃなかったのか?」


「まぁ、そのはずなんだけど。もしかしたら、楽しいことに参加できるかもしれないんだ」


青年はそう言い、注文したものより少し多めの小銭をバーに残して店を後にした。


青年は店を出ると大通りの方には出ず、さらに裏の路地を進んだ。

太陽の光が届かず、一年を通して湿気と埃っぽい匂いが立ち込める裏の街を青年は迷いなく進んで行く。

普通、若い男がこの路地に足を踏み入れようものなら、表通りを堂々と歩けないような連中にあらぬ因縁をふっかけられ、泣きを見る羽目になるのだが、そんな危険な目にあうこともなかった。

まるで、野生の猫のように、裏路地の中でも危険が少ない場所を見極めて歩いているようだった。


しばらく歩いて、青年は足を止めた。

そこは治安の悪い裏路地街の中でも、特に異質。貴重な薬や怪しげな呪詛の札、違法に入手したモンスターのツノや体液など、普通に生活していればまず関わることのない、闇の商人たちの店が並ぶ【脱落(ドロップ)(ストリート)

闇の世界のプロたちが集まる場所であった。



「やっぱり、来たんだ」


青年は、脱落街の一画にある鎧屋の前で足を止めた。

そこには、銀色の髪の目つきの鋭い少女が警戒心を前面に出した顔で青年を見ていた。


「と言うことは、やっぱりあなたはアラン・シールドなのね」


少女は半分納得、半分呆れた顔になって溜息をついた。


「いろいろと話したいことはあるとは思うけど、そんな奴隷みたいな格好でこの街に長居するもんじゃないよ。とりあえず、うちに入ってゆっくり話そうリーナ大尉」


銀髪の少女リーナは、赤毛の青年アランが自分の階級を知っていることに目を丸くした。

アランはそんなリーナの反応には興味を示さず、鎧屋【シールズ・アーマー】へと入って行った。

その後、少し迷った様子を見せていたリーナも後に続いた。






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