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女剣士の装備はなぜエロい?!  作者: 沖田 了
第2部 求道者の翡翠編
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29話 アランの願い

ずいぶん酔ったな。


アランは空になった瓶を見てふとそう思った。

アランは元々酒に強い方ではなかった。

戦勝パレードの日、リーナと初めて会った時もアランは泥酔していた。

その後、狂気の劇場が開かれる噂を耳にした時も、リーナが自分の元を訪れることを予感して酒は控えた。

とは言っても、普段は一瓶で酔ってしまうほど弱くはない。

それだけ気疲れしていたと言うことか、とアランは一人納得した。

冷めてしまった鳥のもも肉の残りを口に放り込む。濃い味付けのおかげでそれなりに美味い。

昔のことを思い出し暗い気分に浸っていたが、それを打ち払うように顔を両手で叩いた。


「俺の願望は一つだけだ」


リーナの狂気の劇場の直前、闘技場の外でマンドレと出会った際に言った言葉をアランは口にした。

マンドレはアランの願望を、魔女の呪いから解放されることか何かだと勘違いしているようであったが、それは違う。

六年前のあの事件以降、アランの心の中にあるのは、再びマンダラを目覚目指せると言う願いだけであった。

呪いを受けた不自由な身でありながら闇街で鎧屋を続けているのは、それが一番マンダラを救う近道であると考えたからだ。

マンダラを眠りに誘っている元凶求道者の翡翠は、人智を超える能力を有するとして、保持、仕様が禁止されている「越智の道具(トランサオーティル)」と呼ばれるものの一種。

越智の道具(トランサオーティル)は、古来より武具や防具に装飾されていることが多く、闇の売人たちの手によってそう言った商品が売り買いされている。

アランのような闇の鎧師には、古い鎧に取り付けられた越智の道具(トランサオーティル)を新しい鎧につけ直して欲しいと言った依頼が舞い込んでくることがあった。

そう言った依頼人たちは、往往にして他の越智の道具(トランサオーティル)にも精通していた。

彼らは、自らが所有する越智の道具(トランサオーティル)の自慢をしながら、これから手に入れようと考えている越智の道具(トランサオーティル)の効果と副作用を説明し、自分ならこう使うと言う願望をアランに聞かせた。

実際、求道者の翡翠に関する情報も何人もの顧客から仕入れていた。(リーナの狙いは、アランが当事者であることを除いて間違っていなかったのだ)


六年前、自分の技術を過信したアランは、自分が無知であると知らないまま、求道者の翡翠を取り入れた鎧を作った。

その結果は六年経った今でもアランに呪いをかけている。

雪山の魔女とは違う自分自身で作り出した呪い。

それは、雪山の魔女の呪いよりも重く、だからこそ必ず解かなければならない呪いだった。


呪いの記憶が残るこの場所に足を運んだのは、この決意を確かめるためだった。


「俺はあいつを必ず解放する」



「その願い私が叶えてあげようか?」



その声は、アランすぐ後ろから聞こえた。

だが今ここにはアラン以外にいるはずがない。

それは憶測や過信ではなく、純然たる事実。

それでも、後ろから声がしたと言う事実がアランの体を動かした。

振り返りざまに、後ろに一歩飛び退がる。もし誰かがいた場合に備えてだ。

だが、案の定そこには誰も居なかった。


「越智の道具か?」


何も居ないその空間にアランが問いかけた。


「流石に鋭いな」


声は、アランが見つめる誰も居ない暗闇から帰ってきた。

アランは咄嗟に足元の石を掴むと声が帰ってきた方へ投げた。

石は何かにぶつかることもなく、弧を描き飛んでいった。


「姿を消す類の物じゃないな、声を飛ばす道具(オーティル)か」


「さすが、闇の商品に精通しているだけのことはある。

これはね、元々盗み聞きをするための道具(オーティル)なんだけど、こうやって私の声を届けることもできる」


「で?人が黄昏ている時にそんな危ない道具を持ち出してきて何の話だ」


「早速それを聞くのか。私が何者なのか、と言うことには興味がないのかな?」


「それは聞かなくてもわかるさ。この時期にこんな手段で俺に接触してくる奴なんて一人しかいない」


暗闇は何の変化もない。

かすかに吹いた風に揺れた木の葉が笑っているように見えた。


「では話が早い。もう一度言おう君の願いを私が叶えてあげよう」


「ふん、言いたいことは山ほどあるが、まず一つ聞かせてもらおうか。

お前の狙いは何だ?」


「そう警戒するな。私は君と敵対するつもりはないんだよ」


「君と、ってことは俺以外とは敵対するつもりなのかな?」


「それこそ、君には関係のない話だと思うけどね。

かわいそうな彼女の目を覚まさせてあげるのが君の願いなんだろ?私ならそれを叶えられると言うだけのこと」


「リーナとナターシャを使って何を始めるつもりだ?」


「私は、ナルビアの将来のために動いている。今言えるのはそれだけだ」


「それが人にものを頼む時の態度なのか?」


「おいおい、勘違いしないでくれ。私は君へ救済の道を提示しているに過ぎない。

私にとって君が首を横に振ることは小さな障害でしかない。それなのにこうしてチャンスをあげているのは、今後君の存在がナルビアにとって有益であると判断しているからだ。

だが、私に逆らうというのならば、評価を反転させ今この場で抹殺することさえ可能だ」


暗闇の声と同時に、アランを取り囲むように十体の影の戦士が現れた。

黒い鎧と黒い面、目だけが白く光っている。

体型は成人男性のそれだが鎧の中身が生きているものでないことはすぐに察しがついた。


「こらも、越智の道具の一つさ。

君が首を横に振れば、すぐに君の体は八つ裂きにされるだろう」


暗闇の声には愉悦も興奮もない。

淡々と、事務的な声でそう言った。










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