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女剣士の装備はなぜエロい?!  作者: 沖田 了
第1部 狂気の劇場編
15/29

15話 終幕

闘技場の最上階。

実況席のちょうど真上に当たる場所には、限られた人間しか入ることができない観戦室があった。

外から中を覗き見ることができない特殊な加工を施したガラスで覆われた部屋で一人の男が狂気の劇場の様子を観戦していた。


「なるほど、鋼鉄松笠で出来た腰鎧か、さすがアランだよく考えてある。

鋼鉄松笠は水分を含むと傘の部分を閉じ、どんな衝撃にも耐えれるような守りの態勢をとる性質がある。それを利用した鎧というわけか」


男はちょうど向かい側の最前列に座る赤髪の男を見下ろしてそう呟いた。

男は満足そうに笑みを見せると、顔をアランから外さずに口を開いた。


「ザビヌの女兵は思ったより使えそうだ。そろそろ狂気の劇場の幕を下ろそうか」


男がそう言って左手を上げた。

するとその瞬間、クラゲ型のモンスターの体がなんの前触れもなく爆発した。

触手に巻きつかれていたリーナはなんとか抜け出したが、受身を取れず地面に叩きつけられそのままかを失い、爆発したモンスターもその巨体がゆっくりと倒れ完全に沈黙した。




観客は、呆気にとられていた。

リーナは劣勢ではあったが、鉄壁の鎧に守られまだ十分に勝機がある。クラゲ型のモンスターの方も、触手を何本も失ってはいるがリーナの両足を抑えているのは大きい。

今は本能に従いリーナの体内に卵を産むために躍起になっているが、それを諦めリーナを殺しにかかればどうなるか分からない。

そんな、大一番に突然生じた爆発。それも、クラゲの体内(・・)で生じた爆発に、観衆は初めに呆然とし、その後怒りを爆発させた。


「おい!どうなってんだ!」

「なんだあの爆発!ザビヌの奴がイカサマしたのか?」

「何があったか説明しやがれ」

「これじゃどっちの勝ちか分からねぇじゃねぇか!」


剣闘士とモンスターの極限状態での命のやり取りを見にきていた観衆と狂気の劇場で一儲けを企んで賭けをしていた連中は、突然の幕切れに納得がいかない様子だった。

下手をすれば、このまま観衆が暴徒と化して暴れ出しそうな雰囲気さえある。


その声は、今まさに観衆の怒りが行動となって現れる、そのギリギリのタイミングで流れた。


「皆の者、静まれ!」


放送席のミヤのさらに上から響いた声は、一瞬にして数万の人の行動を制して見せた。

これがもしミヤや他の誰かの声であったなら、半数ほどの人は声に耳を傾けなかったことだろう。

その声だったからこそ、人々は動きを止め口をつぐんだ。

その声には、逆らってはいけないと感じさせる何かがあったのだ。

声がした方向を見上げる。そこには、曇りガラスの奥に誰かが立っていた。

加工されたガラスのせいでその人物をはっきりと確認することはできなかったが、それでも観衆は、今の声が誰から発せられたものなのかを完璧に理解した。

曇りガラスの奥、うっすらと見えるその人物の影は王冠を被っていた。

ナルビアで王冠をかぶることが許されているのはただ一人しかいない。

だから、ナルビアの民はそれが誰なのか間違えようがなかった。


「ナルビア国第十四代国王マルク・ナルビアである」


ついさっき暴動寸前の観衆を鎮めた声が、ゆっくりと抑揚の効いた声でそう宣言した。

その瞬間、闘技場にいた全てのナルビア国民が右膝をつき最敬礼の姿勢をとった。

さっきまで、闘技の内容に不満を述べていた者達と同じとは思えない統率の取れたその動きにリーナとナターシャが目を丸くする。

闘技場内で最敬礼の姿勢をとっていないのは、二人だけだった。


「諸君、元気かね?私は元気である。

さて、今回の狂気(ヴァーンジン)劇場(テアトルム)は実に見応えのあるものであった。

幕の引き方に違和感を覚えるものも多いように見受けられるが、まず始めに断っておくと先ほどの爆発の指令を出したのはこの私だ」


国王の告白に、少なくないざわめきが起こる。

が、それもすぐに収まり、観衆は国王の次の言葉に耳を傾けた。


「知っての通り、今回の狂気の劇場の目的は、ザビヌで女性だけの特殊部隊を率いていたナターシャ嬢が我が軍にとって有益な働きをする見込みがあるかを精査すること。闘技者の生き死には、関係がない。

そして、今そこにいるリーナ嬢は後半こそ劣勢に追いやられていたものの、訓練された兵が数十人でようやく取られられるモンスターを相手に十分な実力をしました。

よって、これ以上の闘技は不要と判断しモンスターの処分を行なった」


国王のこの発言に、多くの人が面食らうことになった。

確かに、リーナの実力を確かめナターシャをナルビアの軍に入れるかどうかを見極めるのが今回の狂気の劇場の趣旨ではあったが、それはあくまでも建前であり、本質は戦争敗戦国でえるザビヌの兵と王族であるナターシャを辱しめ、国民の団結と優越感、そして奴隷に堕ちることへの恐怖を植え付けることだとほとんどの人がそう考えていた。

誰も、国王が本気でナターシャ部隊の実力を確かめようとしていたことに気がついていなかったのだ。ある一人を除いては……。


「ナターシャ嬢とリーナ嬢にかけられていた戦争犯罪の疑惑は、この場で無罪放免とし、二人には明日の午後我が城で正式に任官しよう。

そして……最後までリーナ嬢を守り通した見事な鎧を作った鎧師アランも同じ時刻に我が城へ来るように」


片膝をついていたアランは、顔を上げ国王マルクのいる観覧室を見上げた。

その顔に驚きはなく、静かな闘志をたたえた笑みを浮かべていた。








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