03 ナイトボア
テスト明日なのになぜあたしは書いているんだろうか。
謎に現れる余裕の所為か。
〈冒険者目線〉
その夜は二つの月が満月となる珍しい日だった。
どうしてこんな夜に、と思う。
二つの満月というのはあんまり縁起が良くないのだ。
俺達冒険者『黄昏の灯り火』は最近目撃されている、Bランク魔物ナイトボアの討伐のために夕闇の森に来ていた。
Aランクの俺達は普段、Cランクレベルのこの森に来ることはないのだが高ランクの魔物に出会ってしまってはCランクの冒険者がやられてしまう。
だから俺達が依頼を終わらせるまで、この森には他の冒険者は入って来れないようになっている。
「おい、グレン!ここに何かがいた形跡があるぞ!」
戦士のサメルが声を上げた。
周りを警戒しながら確認しに行く。
そこには人、一人分の寝そべったような跡が残っていた。まだ新しい。
「これは…」
「数分前までいたみたいね…まだ近くにいるかもしれないわ。」
ああ、仕事が一つ増えてしまったと魔術師のサラがため息をはく。
「人じゃなくて、小動物かもしれませよ?このくらいの動物はどこにでもいます。」
僧侶のアメリは早くナイトボアを探しましょうとせかした。
「…そうだなこれは俺の勘違いかもしれない、先を急ごう」
そう、言った時それは耳に流れ込んだ。
「ぐおおぉおぉぉおおおおお!!!!」
それは奴のスキルである『強者の威厳』だった。
あれは奴が餌だときめた相手を硬直させることができる。
「…っ行くぞ!!」
悪い予感がする。
「待ちなさいよグレン!ナイトボアはあなただけじゃ無理よ!!」
サラが腕を掴む、一人で突っ込んでいくなんて自殺行為でしかない。
だけど、
「助けてぇぇぇえぇええ!!」
その時、奴の方から悲鳴が聞こえた。
「くっそ!」
サラの腕を払い俺は声のする方へと走っていく。
後ろからメンバーが何か言ってる気がするが、気にしない。
今はこっちが大事だ。
たどり着くと、そこには何の装備もつけていない少女が固まっていた。
今にも食べられてしまいそうな危険な距離に冷や汗が流れる。
ドシュッ
ナイトボアを後ろから斬りつける。
奴はグウッとうなり声を上げてこっちに視線を向けた。
少女は気を失ってしまっている。
「俺が相手になってやるよ!」
そうして挑発し、奴は少女から俺へと標的をかえた。
ふと、思い出す。
ああ、この状況はあの時と同じだ。
今度こそ…
今度こそは守り通して見せる!!
奴を倒すため、俺は剣を構えた。
◇◆◇
「うぁあああ!!」
額に汗がにじむ。
あたしはベッドから飛び起きた。
あの化け物はどこにいったのだろうか。
ううっ
頭が痛い。
また横に寝そべる。
すると家にあるような白い天井が見えた。
…帰って来れた?
そう思ったが、次の瞬間にはそれが間違いだということがわかった。
「あら、気がついたのね。」
青い鮮やかな髪を持った綺麗な人がドアを開けて入ってきたから。
周りをよく見ると家具も内装もあたしの部屋とは全く違った。
「ここは…?」
少し古ぼけたような造りの小部屋だ。
窓ガラスはなく、木でできた扉で窓を閉じているようだ。
その女性に聞いてみる。
「ここは冒険者ギルドの医務室よ。あなたは装備を一つもつけないで森にいたの。覚えてる?
冒険者がかけつけなかったら、あなた食い殺されてたのよ?
自殺志願者さん?」
彼女はニコッと笑顔をむける。
目が笑ってないよ!
こわいからその笑みをやめてください!!
いえーい冒険者ギルド!!
きたーーーーーー!!!!