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〈風鈴の帆〉  作者: ふさふさ
夜の市場の章
6/27

〈夜のとばり〉

 ~手にしようとすれば指のすき間から流れてしまうほど、なめらかですごく薄い布。先が透けて見えていて、まるで本当に影をはがしたかのよう。あまりにも儚くもろそうなそれは、感触もあいまいで、重みも分からない。まるで本当の影のように実体がつかめない。~



 お早く買ってお早くおかえりくださーい。……何か用でもあるんですか。うちの商品をじろじろ見て。 はあ、商品を買いに来た……?

 ふぅん、そうですか。


 ……何ですかさっきから。話しかけてこないでくださいよ。え、その商品? 説明書き読んでください。 ……えっ、無い? ……ちっ。

 はぁーはいはい、それはですね。〈夜のとばり〉です。簡単に言えば、影を紡いで作った布ですね。 は? 意味がわからない? ……はあ、そうですか。


 …………。


 何ですか、まだ何か用があるんですか。私、いま新聞のクロスワードパズル解いているんですけど……えっと、「い」……。 ああはいはい。分かりましたよ、……んどくさいのがきたなー……。は? 何も言ってませんよ。

 ええっとですね、夜のとばりは夜にしか存在しない布なんです。つまり、朝が来れば消えてしまう布。でも、また夜が来ればそこに現れるんです。だから日中の移動は不可能。


 …………。


 え? それで何だって? 以上です。

 以上。

 ……使い方? 知りません。使いどころがあるかなんて知りませんよ。無いんじゃないですか?

 うん? 見つかりたくないお宝とかを、夜のうちにこの布にくるんで。それで日中の間だけ隠すのに使えるんじゃないのかって? あー……。

 はしゃいでいらっしゃるところ申し訳ないのですが、そんなん宝石だけそこに残ってとばりだけ消えますよ。話聞いてました?

 ……あーはいはい、失礼申し上げましたー。ちょっと、船が揺れるのでこっちに重心かけてくるのやめてください。風鈴鳴らしますよ。

 ……ご協力ありがとうございます。で、お買い上げは?


 …………。


 冷やかし、と認識していいですね。


(ちりん ちりん。)


(がしゃん がつっ どっぽん。)


 ありがとうございましたー。

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