第4話:甘い話の裏にも甘い話がありました
毎度稚拙な文申し訳ございません。
まずは情報収集だよね!
RPGとかでは話し掛けないと始まらないイベントってあるもんね。
・・・私今気付いた、話し掛けづらいよ、すごい個性的な奴らばっかりだし、片やピエロ姿、片や全身包帯、更には人外だよ。
(【ご主人様は猫の仮面付けていますしね。】)
馴染んでたから、気付かなかったなんて言えない。
とりあえず片っ端から行ってみるか。
結果は、
・宿屋の場所がわかった。
・この都市で一番人気のギルドの場所がわかったよ。
・絶賛お祭り中だよ。
てな感じだった訳です。
じゃあギルドに行ってみようか、一番気になるうえに、あわよくば入れるかもだし。
身分がきちんと保証される上にその国の優待権を得られるらしい。それに依頼をこなした時の報酬もマチマチではあるけれど高い。
目の前には、大きな建物、三階建てだろうか2階にはテラスが見える、石レンガでここまでの物を作るなんて考えたくもない労力だ。
扉を開いてみるとギィと軋む音がしながら、景色が変わる、中では食堂が見えている。
依頼から帰還したのだろう冒険者がワイワイと賑やかだ、右を見ればガツガツ肉を貪り、左を見ればグイグイと酒を煽る。
チラチラ見られている気もするが、きっとロリコンなのだろう、こっち見んな!
見られながら真っ直ぐ進むと、カウンターがある。
そこには営業スマイルを浮かべている可愛い受付嬢がいた。結婚したい。
「どうしたの?迷子になっちゃった?」
「いえ、ここに用があって、どうしたらギルドに入れるのかなって。」
「う〜ん、貴女には少し速いかもしれないわね。」
失礼な女である、結婚の件は考えさせて貰う、でも速いと来たか、さてどう墜してやろうか。
「それにウチのギルドでは、今やっているタッグトーナメントで勝ち残った人じゃないと入れないの。」
いや厳密言えばある、試験で合格すればいいらしい。けれど難易度がこの数ヶ月で急上昇したらしく、誰もクリアできないようである。
いや私は受かる自信などないしトーナメントで勝ち残る自信もないが、すると後ろが騒がしい。
「へへへ、こんなチビ助がトーナメントで優勝?
ありえねぇw、優勝はこのガズル様なんだからなぁ。」
絵に書いたような噛ませである。でもね、言われた当事者である私から言わせると・・・
ウザすぎです本当にありがとうございました。
「へぇー、おじさん強いんだァ、でもさぁ口だけなら、誰でも言えるんだよ?」
「何だとぉぅ!?、このガキこっちが下手に出てりゃ、調子に乗りやがって!!」
いつ下手に出てたんだこいつ、と思っていたらこのガズルってやつ大剣を手に掛けてやがる。
見た目だけならしっかりとした筋肉量があるだろうその体、きっと当たったらマズイな。
【《統率者の権威》による強制隷属を推奨します。】
サムさんサンキュ、いつも助かるわ。
「『動くな』。」
するとガズルはうっと呻き声をあげて動かない。
喜べガズル、私の能力の実験台第二号は君だ。
ついでに言うと一号はあのスライムだ。
「お姉さんこんな奴放っておいて、トーナメントのエントリーをお願いします。」
「え?・・・ええ、でもこれはタッグマッチですのでお1人では・・・。」
肝心要の所を見落としていた。
諦めようと思っていたその時、後からまた声が、今度は可愛らしい声で。
「話は聞かせて貰ったわ!」
振り向くとそこには、ウェーブのかかった金髪が肩まで伸び、つり上がった目に蒼瞳の、私と同い年か少し上程の美少女がいた。
「貴女は?」
「私は、シルビア・オルガンティア、さっき言ったように話は聞かせて貰ったわ。私も、ペアがいなくて、いえ、私にふさわしい相手がいなかったの。」
いなかったと言うか、まぁ私と同じく認めてもらえなかったんだろうと、容易に想像できる。
「私は、アース・オキューリア、じゃあ私と何かどうかな?」
「ええ、私もそう思って話しかけたの、是非お願いするわ、貴女は私にふさわしい程の力を感じるもの。」
(【《カリスマ》の《魅了》の影響ですね。】)
なるほどね、でも断る理由ないですしOKしちゃったよ。
「では、登録、お願いできる?」
「ハイ、アース・オキューリア様とシルビア・オルガンティア様ですね・・・登録、終了致しました。明日の11時にアマネリ闘技場にお集まりください。」
彼女の口調にはもう子どもだという認識ではなく、プロの冒険者に向けるそれだった。
て言うかさっきアマネリ闘技場って言った?
あの神様何してんだ本当に。
「了解よ、では今後の事をゆっくりあの席で話しましょう、アースちゃん。」
「あ、実は、その、宿屋が取れてないので、ちょっと。」
「あら?そうなの?・・・では私が取った宿屋が近くにあるの、良かったらどう?」
これは好都合なんだったらそこで打ち合わせをすればいい。
「本当ですか?ではお願いします。えっとオルガンティアさん?」
「あら?そんな他人行儀じゃなくていいのよ、私たちバディじゃない?気軽にシルビィでいいわ。」
「うん、ありがとう、シルビィ。」
そういう訳で【シルビィが仲間になった。】
宿屋まで移動した私たち、思った以上にいい所だ、高級ホテルのロビーのようだ、この分だと街の様子以上に文化や生活水準は高いのかもしれない。
「チェックインお願いします。」
「申し訳ございません、既に部屋がいっぱいでして。」
まじかよ、ここまで来て・・・
(【今現在祭りが催されています。恐らく原因はそれでしょう。】)
おのれ、祭り!だがしかしどうしようか。
「では私の部屋にもう一人入れてくれて構わないわ、確かダブルベッドだったはずですしね。」
「わかりました、ではそのように。」
ラッキー、良かった手間が省けた。
「ありがとう、シルビィ、でもいいの?」
「構わないわ、だって私たちバディですもの。」
部屋は広かった、赤と白を基調とした部屋で煩くないくらいの装飾、文句の付けようがない。
「すごいね、でもお金大丈夫かな?結構持ってるほうだけど・・・ねぇシルビィ、・・・シルビィ?」
アレ?シルビィの様子が・・・
いや本当に大丈夫か?何か下向いて黙ってるんだが、何か怒らせること言ったっけ・・・
その時カチャっと鍵だろうかしまった音が部屋に響いた。
「え?シルビィ何で鍵なんか・・・」
その問に答える前に視界が切り替わる、知らない天井だ・・・
三人称視点に切り替えるとどうやらシルビィにベットへと押し倒されたらしい。
ふぁっ!?どういうことだってばよ!
一人称視点に戻すと目の前には妖艶な雰囲気を漂わすシルビィの顔があった、息が顔に当たってくすぐったい。
「ずっと気になっていたの、貴女が検問所から出てきた時からずっと・・・」
怖いよ、ストーカーじゃん、とりあえず振り払わないと。
全く動かない、何で?《絶対強者》は?
「シルビィ痛い、『早く降りて』よ。」
「ここまで来て・・・何を言っているの?、来たという事はそういうことでしょう?」
まぁそういうのもそそるけど、なんて言いながら彼女は力を弱めない。
《統率者の権威》まで・・・なんで?
(【現在ご主人様はショックでグロッキー状態になっていて、一般人と変わりありません。】)
何だってぇ〜、私メンタル弱すぎ〜。
「それにこの仮面の下とっても気になるわ、だから取っちゃうわね。」
ゆっくり仮面に伸びる手、お腹に乗るシルビィの重みと上でひとまとめにされた手首は強く押し付けられている。
そして、仮面が取り払われるその時、シルビィは見た、この世の美その物を、薄暗くても眩しいほど輝いてみえる。
彼女は目を閉ざしたい、だが閉ざすことは出来ないでいる、目を閉ざしたらそこから消えてしまうかもしれない、故に閉ざせない。
アレ?シルビィが動かない、今なら行けるはず。
《絶対強者》で無理矢理シルビィを退かす。
「え?ちょっ、どこからそんな力、キャン!」
「『動くな』!」
シルビィは動けないようだ、良かった・・・効いたよ。
まさかシルビィが百合だとは・・・男の私ならご馳走様なんだけど流石にされる側だと無いな。
「『顔は動かしていいよ。』」
「これは、あの男と同じ、やっぱり能力持ちだったのね。」
「シルビィ、約束して、変なことはしないと。」
外れた仮面をつけ直しながら、そう言うと・・・
「いいわ、でも、キスまでは「断る!」
「分かりました、だからその椅子降ろして!」
一息ついて、シルビィの拘束は解いた。
「じゃあ、作戦会議?始めましょうか。」
「ですわね。」
何も無いかのように始まる作戦会議。
だが彼女たちの戦い明日、どこまで仕上げることが出来るのか。
今回はちょっとやりすぎたかな、いや普通ですよねうん。
私は悪くない、強いられていたんだ〜!
ついでにガズルはアースが出てから1時間後やっと動けるようになりました。