第9話:男の子だからね
今回はアースが女子に染まりかけています。
今、私はエンジョイクッキング!、している。
授業で、何度か調理したことがあるのだが、やはりと言うべきか、オーブンやらコンロやらは、魔導によって機能しているようだ。
まぁ、電力を魔力に引っ変えただけで、違和感無く使っている。
あの後は、どうしたって?、割と楽だったよ。
まずは、猪が光ったあたりで完全に、ばたんきゅうした、アルをコテージへ運び。
再び、山林に入って、襲い掛かってきた魔物を、撃ち殺したり、切り殺したり、もう殴り殺したりして、肉を集めて、通りかかった動物たちに山菜集めを手伝って貰ったりしたんだ。
おかげで、大漁大漁!、副産物みたいな物だけど・・・
山の支配者になっちゃった(テヘッ
「う・・・ん、ここは・・・何処?」
どうやら、姫様が起きたみたいですね。
「おはよう、お姫様、良く眠れた?」
「ここは、コテージ?」
「そうだよ。あっ!、もう夕飯できるけど、食べる?」
一呼吸置いて、アルが謝り倒してきた。
「アース会長、すみません・・・、情けないところをお見せしてしまって・・・。」
うん、もうアルがヒロインでいいじゃなかろうか?、シルビィ?知らんな。
「いいんだよ、気にしないで、それより夕飯食べよう?」
「本当に何から何まで、自分が情けないです・・・。」
今夜のメニューは、持参した白パンに山菜たっぷりコンソメスープ、魔物の肉を挽肉に加工し、キノコの旨みが煩くないくらいに溶けだしたデミグラスソースにてグツグツ煮込んだ、煮込みハンバーグです。
そしてデザートも忘れません。新鮮フルーツの盛り合わせです。
「アース会長って家庭的なんですね?、すごい。」
「そうかな?、やろうと思えばアルでもできるよ?」
「無理ですよ、こんなに凝ったもの、それにすごい美味しいでしすし。」
ふむ・・・、まぁ確かに、この体になってからはこういうのが自然と上手くなっていったのも事実。
女子力?、認めん!絶対に認めんぞ!
食事も無事に終わり、アルが質問してくる。
「アース会長・・・、あの後、猪はどうなったんですか?」
「ん?、あぁ・・・、この玉になったみたい。召喚石っていうみたいだよ。」
「え?、召喚石と言えば、噂でしか聞いたことはありませんが・・・。」
淡々と説明してくるアル。
簡単にまとめると、魔物は人間と相容れない存在であるが、稀に、例外が生まれるようで、その時に召喚石が生まれるそうだ。
「コレ・・・、どう使うんだろ・・・。」
投げればいいのかな?、ポケットに入りそうなモンスターみたいに。
「来い、猪!」
投げてみると、本当にモンスターをゲットするボールみたいに光った。
見てみると、モンスターを一狩り行くハンターが飼ってそうな、豚(猪)がいた。
おぉ・・・、なかなか可愛いな。
「何か・・・、品種改良されちゃったね。」
「ですね・・・。」
「可愛いからいっか。」
「ですね!」
擦り寄ってくる猪・・・(まぁ牙あるし)を撫でながら思う。
「名前どうしようか。」
「飼うんですか!?」
「もちろん。」
「決めた、今日から君は、ポップだ。」
喜んだのか、飛び回っている。
「感謝しますよ、ご主人。」
「いえいえ、どういた・・・、喋るんだ。」
「一応魔物ですからね、喋っても驚きはありませんが。」
その後は、映像通信の結晶で学園側と連絡を取ったり、一応、ポップのことを、みんなに紹介しておいた。
さて、もう寝るか・・・
【ご主人様、報告したいことが・・・】
「ん?、どうしたの?」
【破損されていたデータの修復が一部完了しました。】
スッと目が覚めた、カーテンから漏れ出た光が丁度顔に当たり、手を翳しそれを遮る。
横を見ると、横たわるポップの代わりに緑色の宝玉があった。
「戻ったのか・・・・・・ねみゅ。」
ゆっくりと体を起こし、制服に着替える。
なれた動作で黒パンストを履き、続けてスカートのファスナーを上げる、慣れたくなかった動作が今では体に染み付いていて、若干寝惚けた状態でも自然と体が動く。
朝食を作るべく、キッチンへ向かう、今日は白米に味噌汁に焼魚、そして、甘めにした玉子焼きだ。
ついでに、主食と調味料は持参しています。
さて、並べた所で、アルを起こしに行くかな。
寝室は2つあり、隣り合わせになっている。
入る前にノックをする、
「アルゥー、ご飯出来たよ。」
返事はない、熟睡中のようだ
「入るよ・・・。」
ギィっと軋む音は無くスムーズに扉が開く。
ベットには膨らみが1つ、まぁアルなんだけど・・・
昨日、あれだけ寝て(気絶)してたのに、まだ寝るのか。
ええい、起きるのだ、という事で、肩を揺すりながら起こす。
「ほら、朝だよ。いい加減起きて欲しい。」
「んぅ・・・後五分・・・。」
駄目に決まってるでしょうに、朝から特訓だし、いい加減起きて欲しい。
起こすのに手こずっていると、後頭部を手で覆われた。
「うわっと・・・!」
成されるがまま、引き寄せられる。と言うよりいきなり過ぎて対応出来なかった。
そして、アルがキスしてきた・・・
まぁ仮面とキスしている訳で、私にダメージは無いわけだけど。
アルが目を見開き、突き飛ばされる。
「痛ッ!?・・・。」
すごい目泳いでるよこの男。
「あわわ・・・。」
「取り敢えず、朝食出来てるから。着替えて来てね。」
私はそうでもないが、アルはどうにも気まずそうだ。と思ったので、急いで扉へ向かう、扉を締める前に
「じゃあ私は先に食べてるから、早く来てね。」
「うん・・・。」
すっごい虚ろな目をしてたけど、大丈夫でしょ、たぶんね。
私が朝食を食べ終わった頃に、アルがやってきた。
すごい空虚な目してるんだけど・・・本当に大丈夫か?
サッと、席について、小さい声で「いただきます。」と聞こえる。
「どうぞ。」と促してやると、少しビクッと反応した。何をそこまで、怯えているのか・・・
その後は、食べている姿を頰杖付いてひたすら眺めていました。食事を振る舞うことに喜びを感じるようになったかもしれない。
女子力?、認めんぞ!
そんな訳で、洗い物をした後、指定された場所へと行く。時間的には十分前と言ったところだろう。
集合場所にはガズルくんだけいた。
「ガズル先輩、会長は?」
「会長は朝が弱くてな、時間内には来ると思うが。」
そうしていると、全員集まった。
「さて・・・、今日の訓練メニューだが、午前中はウォーミングアップ、昼食を済ませた後は昨日の内に山の頂上に仕掛けておいたフラッグを制限時間内で奪いあってもらう。」
何かなかなかハードっぽい感じ?
午前中は楽だった。そう思いながら、朝から用意していたサンドイッチと紅茶をバスケットから出す。
それを、訓練中の私をチラチラ見ていた、アルに渡す。一瞬頬が緩んだが直ぐにあの顔になる。
今日のアルは本当に変だ、午後のフラッグ争奪戦に一抹の不安を抱きながら、チョビチョビとサンドイッチを食べる。
フラッグ争奪戦のルールだが、至って単純、1時間もの間、フラッグを見つけ、奪い合ってもらう。
殺傷沙汰は勿論なしだが、それ以外なら大体が許容範囲と言うとんでもルールだ。
尚、会長たちはフラッグの隠し場所を知っているので、20分間は待機との事だ。
私は、ゴム弾をセットした銃に、ナイフを取り敢えず出しておく。実際は、換装魔法で随時交換可能なのだが・・・
まぁ、気分?
シルビィチームとは、逆の方向に進む、まずはフラッグを探さなければならないが・・・
宛が無い。
アルは変わらずあの顔でこっちをチラチラ見てくるし、どうしたものかな。
もう面倒だし、直接言ってみるか・・・
「ねぇ、アル、朝の事をまだ気にしているの?」
突然の問い掛けに戸惑うアル、だが覚悟を決めたのか、私を見てこう言い放つ。
「違うんだ。確かに朝の事は気にしているけれど・・・、でも元を正すとそれよりも前の出来事。」
特に心当たりが無い・・・、私は知らずうちに何かやらかしていたんだろうか。
私が悩んでいたら、
「アース会長が悪い訳ではないんです。あれは、僕の責任でアース会長には全く落ち度なんか・・・。」
「じゃあ・・・、一体全体何でアルは私をチラチラ見るくせして、目を合わせようとしないの?」
やはり、私に責任があるのではないかと心配していると。
「あの・・・それは、実は。」
何やら言いにくそうだ。
「うん、話してみて、じゃないとこの訓練に集中出来ないし。」
心が決まったのだろう、今日の朝以来初めて目を合わせた。
「アース会長が仮面をとってから・・・、その、忘れられなくて、朝もその夢できっとあんな事を・・・、今もまた見たい、そう思っていて、考えないように心を無にしてて、でも駄目で。」
溢れでた言葉は全て私に襲い掛かる。
そして、我思う、「お前もか・・・。」と。
「じゃあ私が結局悪いのね・・・、ごめんなさい、気付けなくて・・・。」
「いえ!、アース会長は全く悪くは!」
私はもう慣れ始めていた口調に気付き、絶望したが、続けてこう言い放とう。
「では、この仮面を脱ぎましょう。」
私は、仮面を脱ぐ、慣れさせるためだ。
実は、シルビィの時に慣れさせるために、普段は仮面を取って生活していた。
現に慣れた様で普通には会話が成立する。
少しでも私の表情に変化が有ると、おかしな事を言い放つが、まぁ、戦闘の時に仮面を外しても周りの敵に混じって、停止しないだけましだ。
素顔を晒した私を見たアルは、停止した、呼吸を忘れたように後から吸っている。
「アル、しばらくはこれで行きましょう。」
反応はないが、問題は無いだろう。
そのまま、フラッグを求め頂上へ向かうが・・・
そろそろ、会長たちが動き出す時間だ、会長たちはフラッグの場所を知っている。ので後を付けてみるか。
そう思い、道と言っても獣道だが・・・、それを振り返ると。
「アース会長、そういえばポップはどうしたんです?」
アルはどうにか話せる様にはなったらしい、それにしてもポップか・・・
ポップは一応この山に住んでいたらしいし、がむしゃらに進むよりかは、近道を案内してもらった方が良さそうだ。
「ポップは朝起きたら、元の召喚石に戻っていたよ、丁度いいし案内でも頼もうかな。」
宝玉を投げてみると、まぁ、ポップが出てくる。
「お呼びですかご主人。」
「ちょっと道案内でも頼もうかと思ってね。」
「そういう事ならお任せ下さい。」
ポップは先頭に躍り出る・・・
「では、何処まで?」
ああ・・・、忘れていた。正確には場所など分からないんだったな。
さて、どうするかと考えていると。
「場所は頂上、そこにフラッグがあるんだけど、すぐには見つからないと思うんだ。だからそこまで近道して、会長たちがフラッグを見つけ出した時に奪取って言う作戦なんだ。」
アルはこういう時には役立つ、話をまとめて話すのでやりやすいし、私が楽でいい。
ていう訳で、頂上まで近道していた。
「ご主人たち、もう頂上に近いですよ。」
「本当に?、思ったよりも早かったね。」
では、話をしながら立てた作戦を開始しないと。
「アル、そろそろ探知を。」
「了解です。」
アルは自身の手に杖を召喚する。
彼の腕より少し大きい杖を地面に突き立て魔力を練り上げる。
「『探知』。」
基礎の基礎の魔法を唱えたアル、杖に付いている彼の髪と同じ色をした宝石は、微かに光り、鼓動する、鼓動した時に波紋が生まれ、何処までも伸びていく。
「大丈夫です、僕たちが一番乗りの様ですから。」
「どれくらい差がついてる?」
少し唸った後で、口を開く。
「シルビアチームが後3分、会長チームが5分と言ったところです。ですが、確信はありません。」
あくまで、探知は生命探知であって、それ以上を望むのであれば、上位の魔法になる。
寧ろ、この森の中から先輩たちを見つけ出したアルは凄腕という事の証明になる。
「フラッグ何てざっと見てありませんでしたよご主人。」
フラッグを探していたポップだが、どうやら見つからなかったようだ。
「じゃあ会長たちの到着まで身を潜めるしか無さそうだね。」
私は何もしていないので、せめて隠れる助けくらいはしようと思い、人差し指を突き出し唱える。
「『完全消失』。」
この魔法は一応上位魔法だ、中位には隠密と言う魔法があるが、透明になるだけ、それに対してこれは、姿、音、足跡等の痕跡さえ無くなる。
欠点と言う欠点は、攻撃を受けるとすぐには解除されることだが、今回に限っては関係ない。
私が上位魔法を唱えた事にびっくりしているようで、私とは別の方向に口をパクパクしている。
その後、魔法を解いて、説明してやった。
現在、スニーキング中の私たちだが・・・
まだ来ない・・・、余談だが、私は上位魔法を魔道書等で調べ、会得した訳だが・・・
実は、森羅万象を閲覧出来るようになってからは、その必要はなくなったようだ、今では自動更新という便利機能が私を強くしている。
最上位魔法という物もあるが、どれも危険なため出来れば使いたくはないな・・・
そう思っていていると、人影が見える、アルに声を掛けるという頷いた。
同じパーティーだった場合は、完全消失を共有すれば、姿が見えるようだ。
なんともご都合設定。
「人影は・・・、無さそうだな。」
「ふん!、当たり前だ。俺達がどれほどこの山を行き来したと思っている。」
まぁそうだな・・・、と頷いているガズル。
「来ましたね。」
「うん、後はフラッグを掻っ攫うだけ。」
真っ直ぐ岩場の方へ向かっていく。
それにしても、シルビィたちが遅いのが気になる。
「流石に岩に埋め込んだとは思うまい。」
そういいながら、会長は岩に手を翳し、フラッグを取り出す。
汚い、流石会長汚い。
「じゃあ、奇襲に行こうか。」
私は、目の前でムカつく行為を行う会長を威圧しながらアルに言った。完全消失が無ければ気付かれていただろうなと内心思ったのは内緒だ。
では、奇襲だ!、と思ったのも束の間、会長たちに向かって走っている少女がいた。
そうですね、シルビィです。
後ろにはメイ先輩が詠唱中です。
・・・完全にヤル気じゃないですかヤダー
「アル・・・、様子を見よっか。」
「そうですね・・・。」
まず、シルビィが会長に斬りかかった、がそれは、ガズルくんによって弾かれる。
「オルガンティア!、さっきのはヤル気でいったな!、貴様ルールを破る気か?」
「ガズル先輩、私は信じているんですよ。」
「何を?」
彼女は斬りかかりながら言う。
「これくらいでは、先輩達は死なないと!」
「この馬鹿者が。」
シルビィが楽しそうだ、まぁ、殺したりはしないだろうけど関わりたくない。
「座標固定、シルビア会長、離れて。」
何も言わず離れるシルビィ。
「『超爆発』!」
「甘い!!」
ガズルくんの周りで爆発が数度起こる。
だが、魔術障壁によって阻まれている。
シルビィたちは舌打ちをして、また斬り掛かる。
もう何度繰り返しただろうか。
お互いに満身創痍である4人に時間を告げるアラームがなる。
「ふっ、この勝負俺達の粘り勝ちだな・・・。」
シルビィは悔しそうだ。
だがこの勝負は、会長たちの勝利ではないな。
「会長、この勝負は私たちの勝利ですね。」
ギョッと私たちの方を見る先輩達、それも当然だ今の今まで存在を認知されて居なかったからね。
「何を言っているんだ?、フラッグは会長が持っているのだぞ?」
「そうだ、この俺がここに・・・。」
何やら探しているね。
「会長、探し物はこれですか?」
アルは現実を見せつける。
そうフラッグです。
はい、もちろん私がこっそり盗みましたが何か?
「・・・。」
「・・・。」
先輩達は固まって動かない。
まぁそんな訳で勝ったわけで、その後は、メイ先輩たちに褒められ、調子に乗ったシルビィがキスしようとしたので、地面とキスさせてあげたり、落ち込んだ会長たちを慰めたりしました。
実の所、夕飯時にもアルはアースの事をチラチラ見てました。




