第八話 過去
*街の大図書館*
「こんなところに来て、一体何をする気なの?」
千晴が颯太に聞いた。
「なあ。お前は、俺のことをいつから知っている?」
しかし颯太はそれには答えず、逆に千晴に質問を返した。
「え?質問したのこっちなんだけど……。まあいいわ。確か、小学二年生の時じゃなかったっけ?颯太の方がこっちに転校してきて……。でも、あん時はまだ明るくて、結構モテてたよね。で、またどっか転校してったんだっけ。戻って来たのがこの春で、なんかめっちゃキャラ変わっててびっくりしたの覚えてるよ……。てか、それがどうかしたの?」
千晴は一気に言ってのけた。
颯太の方が、良く覚えてるな、と驚いたほどだ。
「い、いや、べ、別に!覚えたくて覚えたわけじゃないし!」
千晴が慌てている間にも、颯太は何か考え込んでいる。
そして、ある本棚の前で立ち止まった。
†ムーンタウンの歴史†
颯太はその中から、一冊の本を手に取った。
『大いなるシャラングリアと勇者』
§その昔、ムーンタウンは、大きな戦争のまっ最中だった。
人間国シャラングリア、獣王国レカルド、魔国カイダムの三国は、常に敵対関係にあった。
国境線は常に厳戒態勢で、敵国の誰であろうと、それが例え虫一匹、蟻一匹であっても、絶対にこちら側に入れない、そんな空気が常に漂っていた。
しかし、ある時だった。
人間国シャラングリアが、終戦を訴え始めた。
しかし、獣王国レカルドと魔国カイダムは、絶対にそれを認めなかった。
そこで人間国シャラングリアは、勇者を召喚することに決めた。勇者を召喚することで自分達の強さを見せ付け、戦争を終わらせようと考えたのだ。
召喚されたのは一人の少年。
名前は此処では語れないため、χとしよう。
χは、召喚された直後から、圧倒的な力を誇っていた。
敵の攻撃を華麗に避け、攻撃を放つ姿は見る者を魅了した。
また、その天才的な頭脳で、作戦や新たな技などを生み出していく。
獣王国レカルドと魔国カイダムは、自分達の国が滅ぼされることを恐れたのか、終戦を自ら申し出てきた。
そして、無事に三国終戦同盟を結び、見事平和な時代へと変わったのだ。
しかしχは、同盟が結ばれた後すぐに姿を消した。
その後、誰もχを見た者はいないが、皆こう信じている。
‘χは 絶対に生きている’と。 END §
颯太はその本を読み終えると、本棚に戻した。
「成る程な……。大体のことは分かった。後は、あれを調べるだけだ」
そう言って不敵な笑みを浮かべた颯太は、千晴に向き直った。
「千晴に、頼みたいことがあるんだ」
今後の展開……実は何も考えていません。
右手に神でも宿らないかな……。