第六話 力試し
*シャラングリア城*
ブラックドラゴンが現れたと言う話を聞いて、城は大騒ぎになっていた。
「それで?そなた達は全員で避難してきたのかね?」
王であるハビル・シャラングリアが千晴達に問うた。
「それが……まだ向こうに、フィルさんと工藤……ソウタがいます」
「何だとっ!?皆の者、すぐに応戦しろ!」
いくら二人が強いと言っても、SSランクのブラックドラゴン相手に持ち堪えられるのは、多く見積もっても15分。
二人の無事を祈りながら、皆は負傷兵の手当てや、力の付与に専念した。
*沈黙の森*
「おい、フィル。どうするつもりだ?」
「さあ。まあ、頑張って下さいよ。私は暫く休憩します。先 貴方が放った攻撃、結構効いているようですから」
「はあ?さっきまでピンピンしてたくせに、良くそんなことが言えるな」
颯太はため息をつきながらも、ブラックドラゴンと対峙した。
「……行くぞ」
一言だけ言うと、颯太はブラックドラゴンの顔の位置(約八㍍)まで飛び上がる。
「ガルル……!」
ブラックドラゴンは颯太を睨みながら威嚇する。
しかし、颯太がそれに動じる気配は全くない。
ボオォォォォォ!
ブラックドラゴンは遂に、黒き炎のブレスを吐き出した。
颯太はそれを軽く避けると、無独唱魔法を発動させた。
だが、ブラックドラゴンは少し動きを止めたものの、また動き出してしまう。
「フィル!」
颯太は叫ぶ。
「ふう。仕方ありませんね。では、行きましょうか」
フィルはそう言いながら、ゆっくりと立ち上がった。
「……雷神ノ術」
フィルが静かに呪文を唱える。
すると、ブラックドラゴンの頭上から雷が落ちた。
確かに颯太の魔法よりも威力は強いが、やはり足止め程度にしかならない。
「では。ソウタさん、貴方は城へ行って下さい。此処は私が片付けましょう」
フィルは唐突に言った。
「は?お前、何を言っているんだ?さっきの魔法使ったせいで、頭でもおかしくなったのか?」
「いいえ、正常ですよ。ただ、嫌な予感がする。貴方は、城を守ることに専念して頂きたい」
「……なら、これでどうだ?」
そう言って颯太が取り出したのは、先程の魔道書だった。
「……」
フィルはそれを黙って見つめている。
「太陽の神よ、月の神よ、我にその力を示せ。我は選ばれし五つの星を持つ者である。我の願いを聞き分けよ。願わくば、我に力を与えたまえ」
颯太が呪文を唱え終わると同時に、フィルがそのばに膝をついた。
「フィルッ!」
颯太はフィルのもとに駆け寄った。
その際、死ぬ前のブラックドラゴンからスキルや魔法を奪うことも忘れない。
「貴方という人は……昔から……人に、迷惑をかけて…ばかりですね」
颯太は、その言葉に違和感を感じた。
「“昔から”?一体どういうことだ?」
勿論、フィルに問い返す。
「やはり…覚えて、いませんか……。まあ、当然……と言ったら、当然ですが……。いつか……貴方にも…分かるときが……来ますよ」
颯太は、回復魔法をかけ始める。
しかし、ドラゴンにつけられた傷は深い。
治癒しても、中々治らない。
「無駄です……諦めなさい。後、最後に一つだけ。あの…ドラゴンは、何者かによって……この森に…放されたと…考えて良いでしょう。気を付けて…下さい。誰かが……貴方を……狙っています。今回の……これは……簡単な“力試し”だと……思っておいて……下さい」
フィルはそこまで言うと、糸の切れた人形のように動かなくなった。
「クソッ!」
颯太は、自分の無力さと力のなさを悔やむのであった。
文章書くのって難しいですね。