第十七話 颯太の怒りと選択
クレアはその場に膝から崩れ落ちた。
倒れる寸前で颯太がクレアを支える。
「ソウタさん……!私は問題ありません。このくらいの傷、私の魔法で直ぐに直せます。だから……戦闘を、続けて下さい……!」
クレアは涙目で訴え掛けるが、颯太がクレアを見捨てるはずが無い。
だが、あの神のようなステータスを持つ颯太も、回復系の魔法やスキルは所持していない。
颯太の脳裏には、三つの考えが浮かんだ。
①レアリアを倒してスキルを奪い、クレアを治療する。
②素直に降伏して、助けて貰う。
③逃げる。
本当だったら、②を選ぶべきなのだ。
クレアの体力から考えても、レアリアを倒すまでに時間がかかればアウトであり、逃げてもこの状態で生きて帰れるとは思えない。
しかし、颯太は信じていた。
自分を、自分を信じて此処に来てくれたクレアを。
レアリアをキッと睨みつけた颯太は、手元に隠しておいた短刀を取り出す。
それを見たレアリアもニヤリと笑い、颯太に刀を向けた。
その刀は先程、クレアを斬ったもの。
「やっと本気になってくれたようだな、クドウ・ソウタ。戦いは本気でなければ意味が無い」
「……その為か」
レアリアの言葉に対し、颯太は低い声で言った。
「その為に……その為だけに、クレアを傷つけたのか?」
「そうだ。本当ならお前を狙っても良かったが、こっちの女を傷つけた方が本気を出させるには丁度良いとも思ってな」
レアリアが言い終わらない内から、颯太は地面を蹴っていた。
一気にレアリアとの距離を詰め、懐に潜り込む。
後にその場にいたドワーフに聞いた話なのだが、その速さは一秒にも及ばないものだったという。
だが、レアリアも王だけのことはある。
既に颯太の動きを先読みしていたのだ。
「アサセピア・ヴァルワシ!」
レアリアがそう叫ぶと、空中に現れた魔方陣から黄金の鎖が出現し、颯太の体を拘束した。
「其方は中々面白い、強さもある。だが、私には勝てぬ。お前に選択肢をやろう。一つは、このまま私に捕まり、忠実な家臣となること、勿論、他の兵士よりも監視の目は鋭いがな。だがその場合、そこの女は助けてやる」
レアリアは、そこで一旦言葉を切った。
「もう一つの選択肢は、此処から逃げることだ。まあ、そうすれば女が助かるという保証は無い」
颯太が考えたのは、ほんの一瞬のことだった。
「俺が二つ目を選ぶと思うか?一つ目の選択肢を選ぶに決まっているだろう」
「よし、連れて行け。女は私が治療し、目覚め次第この国から放り出す」
鎖に拘束されている颯太は、どうすることも出来ない。
されるがままに、城の廊下を進んでいった。